Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第708話

 狙いに関しては当たりを付けていた。 
 仕掛けるタイミングは――テロリストのボーンヘッドが再度、滑腔砲を発射。
 胴体部分に命中。 思った以上に上手い。 

 しっかりとさっき当てた場所に命中させて傷口を広げている。
 クリーチャーは空いた穴を埋めようとしていたが、そうはさせないとヨシナリが滑腔砲を二連射。
 装填に時間がかかる事もあって二連射以上は出来ないが、時間を稼ぐぐらいは可能だ。

 テロリストが追い打ちをかけるように再度砲撃し、歩兵がロケットランチャーやミサイルランチャーを撃ち込んでいく。 それにより胴体部分の半分近くが抉れ、内部が剥き出しになる。
 奥に心臓のような脈打つ何かが見えた。 どう見てもアレだ。

 見えており、射線が通っているなら彼女の狙撃は必中と言える。
 露出した瞬間、それに大きな風穴が開いた。 
 クリーチャーはビクリと大きく身を震わせると力なく崩れ落ちる。

 「お見事です」
 「た、大して距離もないし、射線も通ってたから簡単だった」

 ――にしてもマジで何なんだこいつは?

 クリーチャーの死骸を見て内心で首を捻る。 
 死骸はあちこちの隙間からオイルとも血液ともとれる異様な液体を撒き散らし、構成しているパーツが脱落。 生々しい湿った音を立てながら物理的に崩れて行った。

 「感じからしてあの核みたいなものがパーツを結合させてたって所か?」

 崩れ方からしても真っ当な構造をしているとは思えない。
 それにしてもキモい生物だった。 いや、生物なのだろうか?
 そんな疑問を抱いていたが、考えても仕方がない。 

 「さて、化け物退治も終わったし行きましょうか?」
 「うん。 ところでこいつ等はどうする?」
 
 グロウモスは小さくテロリスト達を振り返る。 
 明らかにポイントの対象だ。 ついでに戦闘能力もほとんど残っていない。
 楽に仕留められるだろう。 普段ならついでだしやっちゃいましょうと言っていたかもしれなかったが、あの母を失ったらしい子供の姿が脳裏にチラついて軽々に口にできなかった。

 ゲームとは分かっているが、どうにも奥歯に物が挟まったような嫌な感じがするのだ。

 「……まぁ、仕留めた所で大した額にもならなさそうですし、放置でいいでしょう。 実を言うと推進剤やら弾薬やらを結構使ったんであんまり無駄撃ちしたくないんですよ」
 「分かった。 機体は――」
 「助け賃って事でそれは貰っておきましょう」

 はっきり言って自分で仕留める事に抵抗があるだけでそれ以上の感情はない。
 言い方は悪いが見えない所で死ぬ分には一向に構わないと思っていたからだ。
 特に攻撃を仕掛けてくる様子もなかった事もあって、ヨシナリはボーンヘッドを加速させ下層へと向かう。 グロウモスはテロリスト達を一瞥するとヨシナリの背を追った。


 ――ヨシナリぃ。 ちょっと気を使いすぎじゃない??

 グロウモスには全てお見通しだった。 テロリストを見逃した理由も彼女は全て分かっている。
 ヨシナリはグロウモスと二人きりというこの状況に酷く緊張しているのだ。
 その為、普段の合理性が鳴りを潜めている。 テロリスト達を見逃したのはそれ故だろう。

 このミッションはテロリストの殲滅も含まれている。
 つまりあの連中を見逃す理由はない。 
 軽く踏み潰せばポイントに化けてくれる美味しい状況を棒に振った理由。

 それはグロウモスに対して自分は弱者を痛めつけるような格好の悪い真似はしないと訴えているのだ。
 要は格好をつけており、グロウモスに対するポイント稼ぎ。
 
 ――ふふ、なんて可愛い奴なんだろう。

 もうヨシナリから漏れ出るグロウモスへの好意が手に取るように分かる。
 ヨシナリの全ての行動はグロウモスの気を引くという目的に収束している以上、いつものような合理性を発揮できないはずだ。 それが分かっているグロウモスがやるべき事はたった一つ。

 ――そう、全てを受け入れる事だ。

 ヨシナリの行動を否定せず。 後ろで腕を組んで分かっていると頷いてやればいい。
 女としての器の大きさを見せつけつつ、お前の気持ちは分かっていると暗に伝えているのだ。
 こうなると男女の関係としての格付けは終わったような物ではないのだろうか?

 ヨシナリの好感度はゲームで言うならカンスト所かメーターを破壊して更に伸びている状態だ。
 3000%は伊達ではない。 
 こうなるとヨシナリはグロウモスと会話をするだけで胸を高鳴らせ、平常心を保つのに必死のはずなのだ。 口数が少ないのもその所為だと分かっている。 

 「クヒッ、フヒヒッ」

 思わず笑みが漏れてしまう。 危ない危ない。
 上手に隠さないとヨシナリに自分が浮かれていると勘違いされてしまう。
 もう、問題ないような気もするが、主導権は常にこちらが握っていたい。
 
 舐められないように毅然とした振る舞いをしなければ――


 「クヒッ、フヒヒッ」

 ――どうしよう。 怖い。

 後ろでこちらの背中を見ながら不気味な笑い声を漏らしているグロウモスに若干の恐怖を覚えながらもヨシナリの意識の大半は下層――三層の事を考える事に割かれていた。
 アレを仕留めた事は大きい。 お陰でこのフロアは比較的、安全に移動できるはずだ。

 あのクリーチャーは喰えば喰うほどにデカくなると思われる以上、活動時間が長ければ長いほど大型になる。 さっき仕留めた個体は巨大だったが、20メートルもなかった。
 機体やテロリストを手当たり次第に食って大きくなったにしては小さすぎる。

 つまりは食い物が残ってなかったのだ。 
 そう考えると出て来るにしてもさっきの奴以下のサイズになる。
 中央のエリアを抜けて下層へ向かうリフトへの最短ルートを進む。
 
 防衛戦の時は時間が経過していたという設定の為か森のような有様で、施設が自然に埋もれるような形になっていたが、こちらは随分と様子が違っている。
 しっかりと管理がなされているのか、自然の浸食が少なく整備されている事は明らかだ。

 ただ、戦闘の痕跡が多く、あちこちが破壊されている。

 ――広いからなぁ……。

 敵の性質上、狭い所で相手をするのはあまりよろしくない。 
 何より数を活かせないからだ。 そんな事を考えながら下層へのリフトが見えて来た。
 戦闘の痕跡はあるが接敵は無し。 リフトは当然のように破壊されていた。

 ヨシナリの見立てではこの下の三層こそがあのクリーチャー達の発生源だ。
 油断はできない。 気を引き締めようと小さく息を吐いて縦穴へと機体を飛び込ませた。
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