Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第710話

 「要するにここは化け物の生産プラントって感じですかね? それにしてもよくもまぁテロリストがこんな設備を用意できましたね」
 「ここは元々、ずいぶん昔にバンカー――要は緊急時に避難する為の地下施設として作られたみたいなんだけど、テロリスト達が発見して再利用したって」
 
 グロウモスはでもと付け加える。

 「設備に関しては元々あったみたい」
 「元々あったって事はこの怪しい研究施設も最初からあったって感じですか?」 
 「うん。 ここにはそう書いてある。 今見てるのはこれの持ち主の日記みたいな物なんだけど、ここに来てからの事が簡単に書いてあった」

 これの持ち主? 適当に拾った目玉と腕で認証を突破したのに?
 
 「このタブレット端末って基本的にどれも同じで認証した相手に合わせて中身が変わるみたい。 だから、正確にはこの目玉と腕の持ち主の記録になる」
 「あぁ、なるほど」

 ログインすると中身が認証したユーザーの物に切り替わるのようだ。
 エーゴン・ゲオルグ・カウフマン。 ドイツ地区出身の両親から生まれたらしい。
 どうやら両親がナノマシン移植を拒んだ結果、テロリストとして故郷を追われたようだ。

 大きなテロ集団に合流したカウフマン氏は両親の影響を受けて研究者としての道を志した。
 最初はタンパク質でコンピューターを創る研究に始まり、それが気が付けば生物兵器の開発に傾倒していったようだ。 本人の強い希望というよりは必要に迫られてだった。

 テロリスト達は戦力的に余り充実しておらず、主な戦力はボーンヘッドや鹵獲Ⅰ型だ。
 それも仕掛けて来た政府軍から奪った物で独自開発、生産したものではない。
 つまり減れば補充するのが難しいのだ。 その為、粗製トルーパーに代わる戦力として生物兵器をと求められた結果、あの大きなカプセル――バイオリアクターとやらで怪しげな実験をするに至ったと。

 「確かに設備は揃ってますけど、そんな簡単にあんな化け物を作れるものなんですかね」
 「そうでもなかったみたい」

 分野は近くても方向性が違う事をするのは中々に辛かったらしく、カウフマン氏の日記には長々と苦悩が綴られていたらしい。 
 自分の研究は生活を豊かにする為の物だとか、人を傷つける為に利用される事への抵抗が強い等々。
 
 「なんか、嫌で仕方がないって感じ」
 「苦労してたんですねぇ……」

 テロリストも大変だなぁと思いながら日記は進む。 
 感情はさておき、やらなければならない事は往々にして存在する。 
 そう割り切って舵を切ったのは良いのだが、当然ながら難航した。

 骨子の部分は最低限の形にはなっていたのだが、肝心の制御が難しかったようだ。

 「ごめん。 なんか専門用語が多くて読めても意味が分からない所が多い」
 「そこはいいですよ。 どうせ俺も理解できませんし」

 しばらくの間、失敗した事に対する苛立ちや周りの期待という名のプレッシャーが重いと愚痴ばかりだったようだ。 ダメ押しとばかりにここ最近、新たに加わった新戦力が活躍している事もあって居心地も悪くなってきたらしい。

 「酷いな。 やりたくない事やらされて結果が出ないからと圧をかけるのか……」
 「なんか偉い人に当てつけみたいなこと言われたとか書いてある」
 「ところで新戦力って何ですか? それっぽい物は見ませんでしたが……」
 
 グロウモスはちょっと待ってと端末を操作。 
 
 「あ、あった。 独自開発したって事になってるリベリオンフレームの試作機がかなりの戦果を挙げてるみたい」
 「した事になってる?」
 「うん。 元々、エンジェルフレームの設計図を盗んで作ったんだけど、表向きには独自開発したって事にしてるみたい。 すっごい文句が書いてある。 恥知らずだって」

 どうやらテロリスト達は政府軍――要はプレイヤー側のシステムに侵入して情報を盗み出すような真似もしていたようだ。 その中の一つがリベリオンフレームの基礎となったエンジェルフレームの設計データという事だろう。

 「えーっと『鹵獲した制御ユニットの調整に自分が大きく貢献したのにあいつらは戦果にしか目を向けない』だって」
 
 聞けばリベリオンフレームは三機製造されたのだが、一機は以前の戦闘で喪失。 一機は現在稼働中のエース機、最後の一機はそのエースに何かがあった時の為のパーツ取り用に保管しているとの事。

 「――へぇ」
 
 それを聞いてヨシナリの口から思わず声が漏れる。
 デッドコピーとは言え、エンジェルフレームに触れる機会に恵まれるかもしれないと聞いて少し興味がわく。

 「それの場所ってわかりますか?」
 「えーっと、駄目。 持ち出された後みたい。 ここの襲撃に関しても事前にリークがあったとか既にでかなりの数が脱出してる」
 「リーク? 言われてみれば迎撃の対応が思った以上にスムーズでしたね」

 事前に知っていたと考えればなるほどとなる事が多い。 
 つまり馬鹿正直に指定されたルートで行っていれば敵が待ち構えている場所に突っ込む形になったという訳だ。 

 ――これ、味方側は知ってるのか?

 知らずに戦力を送り込んだ? それとも知ってて送り込んだ?
 後者であった場合、色々と意味が変わって来る。 
 仮にそうであった場合、この手のミッションではナビやガイドが当てにならない事になるからだ。

 「まぁ、ない物は仕方ありませんね。 続きをお願いします」

 内容的にそろそろ核心部分だろう。 グロウモスはえーっとと言いながらタブレット端末を操作。
 
 「えっと研究が大きく進んだのはさっき触れた政府軍から盗み出したデータを解析した結果みたい」
 「……この人、さっきパクリ機体見て恥知らずとか言ってませんでした?」
 「ま、まぁ、それで研究は進んだんだって。 詳細は数字とかよく分からない記号ばっかりで分からないけど、かなり深い部分に隠してあったとある生物の生体データとだけ書いてある。 それをシミュレーションで合成して使えそうって結論に至ったみたい」

 ――この有様で?

 「えっと、恐らくは政府軍が作った生体兵器の試作型と思われるって書いてあるけど、この人にも元が何だったのかはっきりわかってないみたい」
 「えぇ……。 そんな物を作ろうとしてたんですか?」
 「うん。 日記にも懸念点がいくつかあるけど、問題があればその都度修正をかければいいと考えたみたい。 元々研究してたバイオチップを組み込む事で制御するつもりだったって書いてある」

 ――まぁ、失敗したんだろうなぁ……。

 結論が見えているだけあって妙な虚しさがあった。
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