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第711話
前置きが随分と長かったがこの先から例のクリーチャーについて触れられている。
名称は開発段階で暫定的に付けられていた『ジスルフィド』。
元々の形状は人間の心臓に似ているデザインで、起動する為には何らかの生物の体内に埋め込む必要があるようだ。
これまでの有様を見れば埋め込まれた者は死ぬのが前提としか思えない。
戦力不足に困っているのに貴重な人員に対してそんな真似をする事が理解できなかった。
「トルーパーに代わる戦力として用意したのに人間を使い潰すのか」
「人間より機体の方が大事だったんじゃない?」
「あ、パイロットより機体の損耗を抑えたかったんですね」
入手が困難である以上は仕方のない話なのかもしれない。
実験として最初は犬や猫、猿などの動物に始まり、徐々にスケールアップしていったようだ。
さて、何故生き物に埋め込む必要があるのかというと、生体兵器だけあって非常にカロリー消費が激しく、バイオリアクターから出すと数分と保たずに餓死するとの事。
さて、こいつ等には何ができるのかというと喰った物を取り込んで自己に組み込む事ができるようだ。
人間を喰えば喰ったパーツ分大きくなれる。
グロウモスを襲った個体は恐らく横に居た死体を喰っただけだったので、あの程度だったと見ていい。
要は喰った物のモザイクを作り出す器官という訳だ。
当然ながら喰えば喰うほどに大きくなるが、大きくなった分、カロリー消費も大きくなるので飢餓感は収まらない。
移植された生き物はどいつもこいつも常に腹を減らし、何も与えずに閉じ込めると自分の手足を喰い始めたとの事。
グロウモスは入っていた動画ファイルを見てうわと小さく声を上げる。
ヨシナリも横から覗き込んだが、余り見ていて気持ちの良い物ではなかった。
色んな生き物が狂ったように自分の手足に齧りついている様子からそっと目を逸らし、グロウモスは続きに目を通す。
「これ、使い物になるんですか?」
「なると思ったみたい。 取り敢えず休眠状態にしておけば動き出す心配はないけど、移植先が死んだ場合は動き出すように弄ってあるって」
「あぁ、だからあのテロリストの死体はあのタイミングで動き出したんですね。 それはそうと宿主が死んでるのにどうやって制御するつもりだったんでしょう?」
ヨシナリの認識ではジスルフィドは飢餓感こそ凄まじいらしいが、喰った分だけ強くなるという分かり易い特徴がある。 制御は当人の脳を使うからこそ移植という形を取っているのではないか?
そんな疑問が自然と湧いてきた。
「うん。 どっちにしろ飢餓感で自我が溶けるから意味ないって」
「あー、もしかして敵の拠点で死んだ場合、動かして嫌がらせしようって感じですかね」
「運用としてはそれでいくつもりだったみたい」
「性質悪いなぁ……」
一応、例のバイオチップとやらで外部から制御できるように研究していたのだが、記述を見る限り余り上手くいっていないようだった。
この様子だと肉体はただの入れ物で本当の意味での知能はバイオチップが担う形にしようとしていたのかもしれない。
「というかその理屈で言うならあのカプセル――バイオリアクターの中身って何だったんですか? これまでの内容を見る限り、単体では機能しないように見えるんですけど」
「えーっと、並行して研究していたジスルフィドと同じ生物由来の細胞を合成して専用のボディを作ろうとしたみたい。 その試作品が入ってたんだって」
「試作品ねぇ……」
ヨシナリは割れたバイオリアクターを一瞥。
破片の飛び散り方から、内側から破壊されたそれは中身が飛び出してきたであろう事は明らかだった。
グロウモスの後ろでスクロールされるファイルのリストを眺めていたがそろそろ終わりそうだ。
一応、弱点に関しても記されてはいたが、余り参考にはならなかった。
本体を叩くという分かり切った内容だったのだが、どうやら喰った素材を取り込む事で本体の強度も上がるらしくサイズに比例して固くなるとの事らしい。
「機体なら鉄とかの鉱物、生き物だけならカルシウム、キチン質の外殻、複合ならそれが混ざった感じになるって」
「あんまり参考にならないなぁ……」
――で、日記の内容は最近の物となった。
事前にリークがあったので基地内は慌ただしく脱出の準備を始めた。
重要人物や資材の搬出を最優先にし、非戦闘員はその次、最後に戦闘員が殿を務める事となるのだが、ジスルフィドは先陣を切らせる形で防衛に参加させるつもりだったようだ。
記述の最後は眠らせていた試作品を覚醒させた所まで書かれており、そこから先は何も書かれていなかった。
「まぁ、この有様を見れば後の展開は何となく分かりますね」
恐らく覚醒させたと同時か少し後にジスルフィドは制御を受け付けずに暴走。
ここの人間を手当たり次第に事して喰った後、他のカプセルに入った仲間も次々に制御を離れて暴れ出したと。
テロリスト達は犠牲を出しながらも当初の予定通り、基地の外へ誘い出してプレイヤーにぶつけようとしたといった所だろう。
グロウモスはタブレットを操作して常にログイン状態を維持する設定に変えた後、端末を懐に入れる。
「……情報的に微妙だったね」
「まぁ、分かった事はあったので無駄ではなかったと思いたいですね」
「これからどうする?」
「予定通り地下に行きましょう。 反応炉を破壊します」
正直、それぐらいしかやれる事を思いつかなかったというのもあった。
ジスルフィドに関しては気になる事も多かったが、直接戦闘はリスクが大きい。
始末は上のプレイヤー達に任せれば何とか――なるかは怪しいが投げておけばいい。
「この様子だと特に障害もなく降りられそうなんでさっさと片付けましょう」
「そ、そうだね」
ヨシナリはボーンヘッドにグロウモスはⅠ型にそれぞれ乗り込んで移動を開始。
手に入れた端末は日記帳だけでなくこの基地の間取りや他の情報も入っている。
中にはこの基地の何処が物資の貯蔵庫である事も含まれていた。
このバンカーは敵に侵入された場合に備え、内部で戦闘できるように各所に燃料や弾薬の集積所は各フロアにいくつが存在する。 その内の一つで補給を済ませて更に下層へ。
第四層はインフラ関係の設備が集中している場所で最下層の次に制圧されると不味い場所だ。
物音もなく、何もいないが、懸念点だけはあった。
戦闘跡があるのだ。 それと撃破されたであろうジスルフィドの死骸がいくつか。
どうやら何かと戦って敗北したようだ。
名称は開発段階で暫定的に付けられていた『ジスルフィド』。
元々の形状は人間の心臓に似ているデザインで、起動する為には何らかの生物の体内に埋め込む必要があるようだ。
これまでの有様を見れば埋め込まれた者は死ぬのが前提としか思えない。
戦力不足に困っているのに貴重な人員に対してそんな真似をする事が理解できなかった。
「トルーパーに代わる戦力として用意したのに人間を使い潰すのか」
「人間より機体の方が大事だったんじゃない?」
「あ、パイロットより機体の損耗を抑えたかったんですね」
入手が困難である以上は仕方のない話なのかもしれない。
実験として最初は犬や猫、猿などの動物に始まり、徐々にスケールアップしていったようだ。
さて、何故生き物に埋め込む必要があるのかというと、生体兵器だけあって非常にカロリー消費が激しく、バイオリアクターから出すと数分と保たずに餓死するとの事。
さて、こいつ等には何ができるのかというと喰った物を取り込んで自己に組み込む事ができるようだ。
人間を喰えば喰ったパーツ分大きくなれる。
グロウモスを襲った個体は恐らく横に居た死体を喰っただけだったので、あの程度だったと見ていい。
要は喰った物のモザイクを作り出す器官という訳だ。
当然ながら喰えば喰うほどに大きくなるが、大きくなった分、カロリー消費も大きくなるので飢餓感は収まらない。
移植された生き物はどいつもこいつも常に腹を減らし、何も与えずに閉じ込めると自分の手足を喰い始めたとの事。
グロウモスは入っていた動画ファイルを見てうわと小さく声を上げる。
ヨシナリも横から覗き込んだが、余り見ていて気持ちの良い物ではなかった。
色んな生き物が狂ったように自分の手足に齧りついている様子からそっと目を逸らし、グロウモスは続きに目を通す。
「これ、使い物になるんですか?」
「なると思ったみたい。 取り敢えず休眠状態にしておけば動き出す心配はないけど、移植先が死んだ場合は動き出すように弄ってあるって」
「あぁ、だからあのテロリストの死体はあのタイミングで動き出したんですね。 それはそうと宿主が死んでるのにどうやって制御するつもりだったんでしょう?」
ヨシナリの認識ではジスルフィドは飢餓感こそ凄まじいらしいが、喰った分だけ強くなるという分かり易い特徴がある。 制御は当人の脳を使うからこそ移植という形を取っているのではないか?
そんな疑問が自然と湧いてきた。
「うん。 どっちにしろ飢餓感で自我が溶けるから意味ないって」
「あー、もしかして敵の拠点で死んだ場合、動かして嫌がらせしようって感じですかね」
「運用としてはそれでいくつもりだったみたい」
「性質悪いなぁ……」
一応、例のバイオチップとやらで外部から制御できるように研究していたのだが、記述を見る限り余り上手くいっていないようだった。
この様子だと肉体はただの入れ物で本当の意味での知能はバイオチップが担う形にしようとしていたのかもしれない。
「というかその理屈で言うならあのカプセル――バイオリアクターの中身って何だったんですか? これまでの内容を見る限り、単体では機能しないように見えるんですけど」
「えーっと、並行して研究していたジスルフィドと同じ生物由来の細胞を合成して専用のボディを作ろうとしたみたい。 その試作品が入ってたんだって」
「試作品ねぇ……」
ヨシナリは割れたバイオリアクターを一瞥。
破片の飛び散り方から、内側から破壊されたそれは中身が飛び出してきたであろう事は明らかだった。
グロウモスの後ろでスクロールされるファイルのリストを眺めていたがそろそろ終わりそうだ。
一応、弱点に関しても記されてはいたが、余り参考にはならなかった。
本体を叩くという分かり切った内容だったのだが、どうやら喰った素材を取り込む事で本体の強度も上がるらしくサイズに比例して固くなるとの事らしい。
「機体なら鉄とかの鉱物、生き物だけならカルシウム、キチン質の外殻、複合ならそれが混ざった感じになるって」
「あんまり参考にならないなぁ……」
――で、日記の内容は最近の物となった。
事前にリークがあったので基地内は慌ただしく脱出の準備を始めた。
重要人物や資材の搬出を最優先にし、非戦闘員はその次、最後に戦闘員が殿を務める事となるのだが、ジスルフィドは先陣を切らせる形で防衛に参加させるつもりだったようだ。
記述の最後は眠らせていた試作品を覚醒させた所まで書かれており、そこから先は何も書かれていなかった。
「まぁ、この有様を見れば後の展開は何となく分かりますね」
恐らく覚醒させたと同時か少し後にジスルフィドは制御を受け付けずに暴走。
ここの人間を手当たり次第に事して喰った後、他のカプセルに入った仲間も次々に制御を離れて暴れ出したと。
テロリスト達は犠牲を出しながらも当初の予定通り、基地の外へ誘い出してプレイヤーにぶつけようとしたといった所だろう。
グロウモスはタブレットを操作して常にログイン状態を維持する設定に変えた後、端末を懐に入れる。
「……情報的に微妙だったね」
「まぁ、分かった事はあったので無駄ではなかったと思いたいですね」
「これからどうする?」
「予定通り地下に行きましょう。 反応炉を破壊します」
正直、それぐらいしかやれる事を思いつかなかったというのもあった。
ジスルフィドに関しては気になる事も多かったが、直接戦闘はリスクが大きい。
始末は上のプレイヤー達に任せれば何とか――なるかは怪しいが投げておけばいい。
「この様子だと特に障害もなく降りられそうなんでさっさと片付けましょう」
「そ、そうだね」
ヨシナリはボーンヘッドにグロウモスはⅠ型にそれぞれ乗り込んで移動を開始。
手に入れた端末は日記帳だけでなくこの基地の間取りや他の情報も入っている。
中にはこの基地の何処が物資の貯蔵庫である事も含まれていた。
このバンカーは敵に侵入された場合に備え、内部で戦闘できるように各所に燃料や弾薬の集積所は各フロアにいくつが存在する。 その内の一つで補給を済ませて更に下層へ。
第四層はインフラ関係の設備が集中している場所で最下層の次に制圧されると不味い場所だ。
物音もなく、何もいないが、懸念点だけはあった。
戦闘跡があるのだ。 それと撃破されたであろうジスルフィドの死骸がいくつか。
どうやら何かと戦って敗北したようだ。
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