Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第712話

 四層を進むにつれて戦闘の跡は深く大きくなっていく。
 
 「この様子だとジスルフィドと何かが戦いながら下層に向かって移動したって感じですかね」
 「ジスルフィドが付けたものと思われる移動痕と銃器で破壊された後の位置関係を見ると何かが追いかける形になってると思う」

 ヨシナリは地面に視線を走らせると確かにその通りだった。
 明らかにジスルフィドの移動跡を追いかける形で銃撃を行ったように見える。
 設備もかなり破壊されており、ここはもう放棄するしかないだろうなと思っていると聴覚がある音を捉えた。

 戦闘の音だ。 銃撃と爆発。 それが連続して響いている。
 特にこの四層は何もいない事もあって下層からの音がよく響く。
 ヨシナリとグロウモスは顔を見合わせると小さく頷く。

 「俺が先行します。 何かあれば援護を」
 「分かった」

 下層に降りる為の縦穴に飛び込み、最下層――パワープラントへ。
 通路を進みながらマップを確認。 音の感じから発生源は反応炉のある最奥だ。
 音を立てないように慎重に進み、開けた空間が見えて来た。 

 そこでは――

 「うわ、凄い事になってるなぁ……」

 動力を担う空間の中央――反応炉があったと思われた場所には巨大なモザイクが居た。
 無数のトルーパー、無数の生物を取り込んで巨大な塊が同じく塊で作った触手のような物を振り回し、生えている銃口や砲口から弾を吐き出している。

 まるでハリネズミだ。 対するはテロリストのボーンヘッドとⅠ型。
 彼等は巧な連携で塊――ジスルフィドを撃破しようと猛攻を仕掛けているが今一つ効果が出ていない。
 だが、その中で一機だけ非常に動きが良い機体が居た。 

 背面の四連ブースターが特徴的で装備は大型ライフル、突撃銃と腰には実体剣。
 足にレガースが付いている点も既視感を加速させる。 
 リベリオンフレーム。 装備構成と挙動から防衛イベントの時に現れた機体と同一だろう。

 ――何であいつがここにいるんだ?

 リベリオンフレームはジスルフィドの弾幕を綺麗に引き付けて躱し、触手攻撃を誘発して味方に攻撃が行かないようにヘイト管理を行っている。 
 上手い。 以前に戦った時よりも機体に対する解像度が上がっているのか動きに無駄がなかった。

 疑問はあったが何とも奇妙な事になっている。 
 明らかにテロリストからすれば命を懸けた最終決戦といった様子で、何を犠牲にしてでも目の前の化け物を仕留めるといった不退転の覚悟のような物が窺えた。

 「ど、どうする?」
 「うーん、どうしましょう?」

 今はどちらも二人に気付いていない状態なので、考える時間はあるがどちらに味方をするのか悩ましい場面だ。 テロリストの殲滅を優先するのならリベリオンフレームを狙えばいい。
 あいつがテロリスト達の要だ。 失うと後はジスルフィドが勝手に全滅させるだろう。

 逆にテロリストに味方してジスルフィドの撃破を狙う場合。
 この状況では猫の手も借りたいテロリスト達は余計な詮索はしてこないだろう。
 混ざる分には問題はないはずだ。 だが、撃破のビジョンが見えない。

 あのジスルフィドは反応炉に取りついてエネルギーを得ているようだ。
 恐らく最初は削って餓死させるつもりだったのだろうが、埋め込まれるような形でトルーパーのジェネレーターらしきパーツがいくつか明滅している点を見ると供給は問題ないようにみえる。

 闇雲に仕掛けてもあまり意味がない以上、まずはテロリストの狙いを看破する所から始めたい。
 もしも勝ち筋があるのならヨシナリとしては乗っかりたかった。
 
 「ヨシナリはテロリストよりもジスルフィドを仕留めたいの?」
 「本音を言えばそうですね。 あいつの方が仕留めた時の満足感が強そうなんで。 あ、でもそれを押し付ける気はないので反対なら遠慮なく行ってください」

 こちらも本音だった。 
 付き合わせる形になっている事もあって彼女の意思は可能な限り尊重したかったからだ。
 これがマルメルだったら付き合えよという所なのだが、グロウモスの場合は話が変わって来る。

 グロウモスは特に難色も示す事もなく、何も言わずに大きく頷いた。 
 まるで分かってると言わんばかりだ。

 「えーっと? 俺に合わせてくれるって事でいいですか?」
 「うん」

 即答。 ヨシナリはそれに感謝しつつありがとうございますと小さく頭を下げた。
 
 「ジスルフィドに仕掛けるのは分かったけど具体的にはどうするの?」
 「基本的にはテロリストに隙を作って貰って漁夫の利を狙う形で行きます」

 お互いに本来の機体を持っていないのだ。 
 ホロスコープがあれば漁夫の利を狙わずにそのまま独力で勝ち筋を探るのだが、そうもいかない所が中々に悩ましい。 

 「恐らくですが、あの連中は闇雲にしかけているように見せているだけで考えがあると思います」
 
 根拠はリベリオンフレームの動きだ。 明らかに時間稼ぎを念頭に置いた挙動。
 上からプレイヤーが来ている以上、時間は有限だ。 
 テロリストの視点で見るなら一刻も早く仕留めたいはず。 

 さて、テロリストがあの化け物をどう仕留めるか? 
 ジスルフィドには燃費という分かり易い弱点がある。 
 それを補うために反応炉にへばりついているのだ。 

 ――まぁ、ちょっと考えれば分かる事だな。

 反応炉の停止作業中なのだ。 テロリスト達はその時間を稼ぐ為に全力で注意を引いている。
 
 「狙うのはそこだな」

 首尾よく停止させてエネルギー供給を断てばあいつは勝手に自滅する。
 完全にくたばる前に一刺し。 これがヨシナリ達が漁夫の利を掻っ攫える最適解だ。
 ただ、この作戦には不確定な要素がある。 それはテロリスト達が作業に失敗する事だ。

 ヨシナリはマップを表示。 ボーンヘッド内に入っているマップにはそれらしい記載はない。

 「ここの下に制御用のコンソールがあるみたい」

 グロウモスがタブレット端末を見ながらそう答えた。 
 どうやら端末には詳細なマップ――恐らくは見られたら困る類の情報も入っているようだ。

 「うん。 ここからなら近くのメンテナンスハッチから降りられる。 私が行って来るからヨシナリはⅠ型を使って」
 「いいんですか?」
 「FPSは慣れてるから大丈夫。 代わりに携行火器は全部貰っていい?」
 「どうぞどうぞ」

 グロウモスは二人の機体に積んでいた装備品を全て背負うとアバター状態で近くにあったハッチを開くと下へと降りて行った。 
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