Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第715話

 ヘイトが移るだけならそこまでの問題はないのだが、位置関係が悪かった。 
 攻撃を仕掛けたテロリスト達はコンソールを背負っている形になる。
 つまり下手に躱すと作業中で動けないテロリストが狙われる事になるのだ。

 ジスルフィドはテロリスト達に向けて突っ込もうと前傾姿勢。
 二人は左右に分かれて躱そうとする。 そうなると当然勢いのまま突っ込むので非常に困るのだ。
 グロウモスは小さく溜息を吐くと、拳銃を抜いて逃げようとするテロリストの片方の足を撃ち抜いた。

 ジスルフィドの目の前で転倒。 そのまま食らいつく。
 バキバキと嫌な音を立ててテロリストが噛み砕かれる。 
 突撃銃に切り替えてジスルフィドへと連射しつつ、意識は他のテロリストの警戒にも割く。
 
 あんな真似をした以上、敵対は避けられない。 実際、残った一人がこちらに銃を向けている。
 撃ってきたら仕留める事を視野に入れよう。 そんな事を考えながらジスルフィドのヘイトを自分に向けさせ、再度向かってこさせる。

 ジスルフィドの攻撃手段は触手を飛ばすか、本体による体当たり。 
 遠距離の相手には触手で拘束して本体で喰らいつく。 この二種類だ。
 つまり、触手で狙われた時点でターゲットは決定している。

 コンソールから意識を逸らす為、壁を背負えばそのまま狙って来るので時間は稼げる。 
 問題はこの状況に存在するテロリストだった。
 仲間を殺された奴がどう動くかだ。 コンソールを守る事を優先する?

 それとも仇であるグロウモスを狙う? どちらにせよ敵である以上、警戒は解けない。
 牽制を織り交ぜる事で何とか注意を引いてはいるのだが、弾薬の消耗そろそろ深刻だ。
 その辺に転がっている銃器も勘定に入れなければならないのは非常に不味い。

 何故なら弾が入っているかも怪しいからだ。 
 加えて、ジスルフィドの注意をコンソールから引き離す関係で常に壁を背負わなければならない事もあって空間の中央近くに転がっている銃器には触れない。

 壁際に沿って逃げ回る事でこの状況を維持している事もあって、そろそろ難しかった。
 言っている間に突撃銃が弾切れ。 投げ捨てて触手を躱しながら、さっき落としたライフルを拾って銃撃。 アバターの火力では仕留めるのは不可能な以上、執拗に足回りを狙って機動力を削ぐしかない。

 ――早く、早くしてよ!

 時計を見ている訳ではないが、数分は経っているはずだった。
 テロリスト達の手際の悪さにイライラしながら今度はライフルの弾が切れる。
 舌打ちしてライフルを投げ捨て、落ちている短機関銃を拾って連射。 足を削る。

 対して弾が残っていなかったのか即座に弾切れ。 拳銃に持ち替えて連射。
 同じ個所を何度も狙ってどうにか切断。 マガジンを交換しながら触手を躱す。
 拳銃の破壊力では簡単に切断できない。 つまり手数を増やすしかないのだ。

 壁に突っ込んで来たジスルフィドを躱し、予備の拳銃を抜いて両手二挺で連射。
 後ろ足を二本切断。 同時に二挺ともホールドオープン。 弾切れだ。
 壁から抜けたジスルフィドが復帰しようとして転倒。 これ以上は捨て身で行くしかない。

 ――が、同時に反応炉が停止。 電灯が落ちるが予備電源に切り替わったのか再度点灯する。

 取り敢えずは首尾よくいった事に胸を撫で下ろし、踵を返して通路へと引き返す。
 用事は済んだ以上、あのテロリスト達がどうなろうが知った事ではなかったからだ。
 欲を言えば仕留めてポイントに変換してやりたい気持ちもあったが、武器は全て弾切れ。

 どうしようもない。 
 Pが少しでも欲しいグロウモスとしてはやや後ろ髪を引かれながらもヨシナリの援護に向かう為に走る速度を上げた。

 
 ――来た。

 乗り換えたⅠ型のセンサーシステムはボーンヘッドの物よりも高性能という事もあって、戦場の変化をより詳細に捉える事が出来た。 
 反応炉から吐き出される凄まじいエネルギー供給がダウンし、バンカー全体の機能が一気に停止。
 
 即座に予備に切り替わって電灯は付いたが、ジスルフィドへの供給は完全になくなった。
 これであの化け物は放っておいても餓死するだけだ。 

 ――だが、それは許さない。

 ここまで我慢してきたのだ。 最低限、あの化け物を仕留めて報酬を貰わなければ割に合わない。
 付き合ってくれたグロウモスの頑張りに報いる為にもここで成果を上げておきたかったのだ。
 通路から飛び出すとライフルでジスルフィドの胴体部分――反応炉に取り付いている関係で瘤のような状態になっている個所の中央を狙う。 

 さっきから観察していたしていた事もあって強度や動きの傾向は既に掴んでいる。
 強度は中々の物だが、斥力フィールドも空間歪曲もない適当な装甲と肉で覆っただけのミルフィーユなら貫くのは難しくない。 一発、二発と同じ個所を執拗に狙う。

 一発目で装甲に穴が開き、二発目で中の肉がはじけ飛ぶ。
 三発目を撃つ前に大口径の銃弾が無数に突き刺さる。 
 どうやらこちらの動きに同期してテロリスト達が傷口を抉じ開けにかかったのだ。

 不意にプチプチと音声が途切れている所を見ると通信が入ってきているようだが、聞こえないので無視する。  
 このテロリスト達はかなり統率されており、その頂点となっているのがリベリオンフレームだ。
 ヨシナリの動きに真っ先に同期したのもリベリオンフレーム。 
 
 だから他の機体も同期したのだろう。 ライフルの弾が切れたと同時に突撃銃に持ち替えて連射。
 とにかく傷を広げる事が重要だ。 エネルギー源が消えた事で再生力が大きく落ち込んでいる。
 ジスルフィドの最大の長所は捕食した質量をそのまま自らの物として取り込む事ができる点だ。

 つまりは喰った分だけデカく頑丈になる。 
 シンプルではあるが成長を許すと手が付けられなくなるという怖さがあった。
 そして欠点としては燃費が非常に悪い事。 例の日記にも記されていた内容だが、ジスルフィドはその特性故に常に喰わないと餓死の危険に晒され続けている事もあって喰らう事に非常に貪欲だ。

 ――ただ、目的がはっきりしているから挙動から動きが簡単に読めるんだよなぁ……。

 エネルギーを効率よく得る為に反応炉にへばりついたのだろうが停止した以上はそれが己の首を絞める結果となったのだ。
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