Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第716話

 あの大型個体は損傷を補填する為――簡単に言うとHPを回復する為に最大HPを削っているような物だ。
 全快したとしても最大値が減っている以上、回復しているとは言えない。
 寧ろ、そんな状態では動く事すら消耗に繋がる。 
 
 エネルギーを補給する為に周囲の機体を取り込みたいのだが、テロリスト達は心得ているのか距離を取って遠距離から削りに徹しており、手の届く位置には高機動のリベリオンフレームのみ。

 どうしようもなかった。 
 銃弾、砲弾が雨あられと降り注ぎジスルフィドは足掻きとばかりに触手を振り回すが徐々に動きが鈍くなり、ヨシナリが突撃銃の最後のマガジンを撃ち切った所で完全に動きが止まる。

 ジスルフィドは最期に一度、大きく触手を振り回したがリベリオンフレームは僅かに上体を仰け反らせて回避。 触手が力なく落ちたと同時にその機能が完全に停止した。
 
 ――ヤバそうな相手だったけど弱点が分かれば楽勝だったな。

 タフさに目が行きがちだが、エネルギー源を断つという割と深刻な弱点に気付ければ楽な相手だった。
 ヨシナリはさてと周囲をぐるりと見回すとテロリスト達は無言で銃を向けて来る。
 当然の反応だった。 

 通信にも応答しない、識別からここに居るはずのない機体という事も把握しているはずだ。
 この機体は上で避難誘導をしているはずなのだ。 
 そんな機体がこの最下層まで降りて来たのなら警戒するのも仕方がない話だった。

 音声の途切れが激しくなった。 大方、何か喋れと催促しているのだろう。
 残念ながらヨシナリのアバターは音声を外部に出力する事は出来ない。
 通信で味方と意思疎通は出来るが、味方以外とのコミュニケーションは厳しく制限されている。

 ――どちらにせよ、相手の反応を見ないと何もできないな。

 空気的に誰かが動いたら他も引っ張られる。 
 そんな予感はしていたが、変化は意外な所で起こった。 
 リベリオンフレームだ。 何やら僚機に指示を出したのか、テロリスト達の機体は警戒しつつも銃口を下ろすとヨシナリから目を離さずに徐々に後退を始める。

 ヨシナリはコックピット内でマップを呼び出すとテロリスト達の向かった先を参照。
 どうやらこの先は潜水艦のドックがあるようだ。 
 恐らくはそれでここから脱出すると見ていい。 

 やがてリベリオンフレーム以外の機体は奥へと姿を消し、ヨシナリと無言で対峙する事となった。
 リベリオンフレームは銃をマウントすると大破したであろう機体が持っていた実体剣を投げてよこす。
 受け取ったヨシナリは意図を掴みかねていたのだが、リベリオンフレームが持っていた剣を構えた所で察した。

 そしてダメ押しとばかりに指を曲げてかかって来いとアピール。
 ヨシナリは無意識に笑顔になる。 分かり易く喧嘩を売られたからだ。
 無言で剣を構えた。 思考は明瞭だ。 全く怒っていない。

 決して目の前のリベリオンフレームの挙動が自分の動きに微妙に似ているのが気に入らないなんて事はない。 回避のモーション――特に引き付けてからの躱し方が苦労して身に付けたそれに似ているからでは決してない。 別に真似られるのが嫌いという訳ではなかった。

 実際、ヨシナリも他人のプレイを自分の動きに取り入れているのだが、目の前のリベリオンフレームに関してはチートのように自分の挙動をそのまま盗まれたような異様な不快感を覚えるのだ。
 見当違いの事を考えている事は自覚していたが、こればかりは理屈ではなかった。

 本能的な部分が囁くのだ。 目の前の不愉快な存在を叩き潰せと。
 ヨシナリは剣を構えながら考える。 目の前のこいつは何なんだと。
 中身が防衛戦の時に現れた時の奴と同じなのは挙動から明らかだ。

 自分に似た挙動なのは恐らくだが、チートのテンプレートにヨシナリの挙動が使われているとみていい。 SやAならともかく、何故自分のようなランカーでないプレイヤーのモーションパターンを取り込んでいるのかは不明だが、目の前にいる以上は呑み込むしかなかった。

 構え方も鏡写しのようにそっくりだ。 
 このパクリ野郎といった思考は呑み込んで冷静に相手を観察する。
 スペックに関してはⅠ型とリベリオンフレームではかなりの差がある以上、正面から打ち合うのは避けたい。 

 相手もヨシナリに対して似たような感情を抱いているのかは不明だが、観察されている事だけは分かった。 
 できれば先手は取りたくない。 理由は単純なスペック差だ。
 前の限定ミッションで遭遇したリベリオンフレームは規格外のジェネレーターを搭載しているだけあって出力に物を言わせる雑な戦い方だった。

 目の前の機体は恐らくは通常のジェネレーターという事もあって出力に物を言わせたゴリ押しはしてこない。
 そしてこちらとの性能差を理解している上、挑発までしたのだ。
 高い確率で先に仕掛けてくる。 そこを返り討ちにしてやるとヨシナリは敵機へと集中。

 ――来る。

 互いの間合いは剣を振るには少し遠い。 当てたいのなら一歩か二歩は必要だ。
 フェアに踏み込む? 冗談だろ? 折角、相手より優位な条件が揃ってるんだ。
 使うに決まっている。 リベリオンフレームは踏み込むと見せかけて背のブースターを噴かして加速。
 
 全力の刺突を繰り出して来た。 想定よりも遥かに速く鋭いそれは矢のようにヨシナリを射抜く。

 ――はずだった。

 ヨシナリは突きこまれた切っ先を剣の腹で受けて流し、そのまま巻き込んで跳ね上げる。
 速さだけは大したものだったが、ふわわやモタシラの動きを何度も見ているヨシナリからすれば捌くのは簡単だった。 

 流石に相手の勢いが強すぎて思い通りに流す事は出来なかったが、武器を奪っただけでも上出来だろう。 
 リベリオンフレームは流石にこんなにもあっさりと躱されるとは思っていなかったのか僅かに硬直していたが、即座に立て直して蹴りを放つ。

 ――おいおい、剣の勝負じゃなかったのかよ!?

 剣を跳ね上げた事でリベリオンフレームは大きく仰け反るような体勢になっており、そんな状態で放たれた蹴りは効果を発揮しない。 
 ヨシナリは冷静に半歩分、下がって回避。 次の行動を脳裏で組み立てるが、性能差があり過ぎる。

 「こりゃ後、二手か三手で詰むなぁ」

 せめて距離が取れたのならやりようはあったのだが、これは無理だ。
 捨て身で一撃入れるかと考えているとリベリオンフレームは咄嗟に後退した。
 僅かに遅れて銃弾が地面を薙ぐ。 振り返るとさっき乗り捨てたボーンヘッドが居た。
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