Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第717話

 どうやらグロウモスが戻って来たようだ。
 ボーンヘッドはガトリングガンで弾をばら撒きながら滑腔砲を二連射。
 初めて乗った機体とは思えないほどの精度でリベリオンフレームを狙う。

 リベリオンフレームは応射しようとしたのだが、当然ながらヨシナリも黙って見ている訳はなかった。
 持っていた剣を投げつける。 回転しながら飛んで来たブレードに照準が狂う。 
 グロウモスは後退しながら更に滑腔砲を二連射。 

 リベリオンフレームは対処に迷うように視線を彷徨わせたが、ややあって諦めたのか踵を返して奥へと飛び去って行った。

 「だ、大丈夫?」
 「えぇ、危ない所だったので助かりましたよ」

 心配そうなグロウモスの言葉に安心させるようにそう返す。
 
 「下はどうでした?」
 「停止作業を援護したけど、終わったらすぐに離れたから分からない」
 
 そこであぁと察した。 
 リベリオンフレームは下の仲間が逃げるまでの時間を稼ぐ為にヨシナリを挑発したのだろう。 
 あっさり引いたのは味方が安全圏まで辿り着いたからだ。 

 問題の反応炉の停止は成ったが、達成してしまった以上はこれからどうしたものかと考える。
 ヨシナリとしては正直、最下層を制圧した時点でもう終わりだと思っていた事もあって先の事はほぼノープランだった。

 「どうする?」
 「そうですね……」

 反応炉を完全に破壊する事も考えたが、ジスルフィドごと派手に弾を撃ち込んだ事もあって既に使い物にならない有様でこれ以上何かをする必要もない。

 上に引き返すのも選択肢の一つではあったが、ヨシナリとしては奥が気になる。
 理由としては以前の防衛イベントの時はここが行き止まりで先がなかったからだ。
 今後役に立つかは微妙だが、一応は見ておくぐらいはしておきたい。

 「精々、テロリスト達が逃げ出した後の脱出口がある程度で今頃は塞がっているぐらいでしょうし、あんまり見る意味はないと思います。 戻った所で残ったテロリストもジスルフィドも討伐されているでしょうし、折角なので奥へ行った方が得る物があるかなと思いまして」

 グロウモスは何故か「ふ、ふーん」とよく分からない反応をした後、行くと頷いた。
 

 反応炉の奥は更に地下への道が隠されており、位置的には海底よりも更に下――完全に地下だ。
 通路に関してはマップに表示されていない事もあって秘匿されている可能性が高い。
 ただ、グロウモスの持っている端末には情報があった事から限られた者にしか知らされていない秘密の通路といった所だろう。 

 秘匿されているだけあって整備が行き届いていないのか全体的に傷んでいる印象を受けた。
 光源も最小限、明らかにここ最近まで碌に触っていない通路だ。
 途中、メンテナンス職員の宿泊用の部屋や倉庫と思われる空間がいくつがあった。

 ――どれも空だったが。

 「一応、物はあったみたいだね。 持ち出された跡がある」
 「事前にリークがあったらしいので、逃げ支度をする時間はあったみたいですね」

 ヨシナリとしてはそのリークというのは非常に胡散臭いと感じていた。
 ボーンヘッド、鹵獲Ⅰ型、リベリオンフレーム。
 特に最後のリベリオンフレームを見れば前回の限定ミッションと同じテロ組織なのは間違いない。

 流れ的に前回の砂漠からここまで逃げて来たといった所だろう。
 あれだけの拠点を手放した後にも関わらず、すぐに次の拠点を用意できたというのだろうか?

 「せ、世界中に支部があってそこに転がり込んだとか?」

 疑問を口にするとグロウモスがそんな事を言った。 それになるほどと頷く。 
 新しく用意したというよりは似たような組織に合流したと考えるのが自然か。 
 プレイヤー側の対応にも疑問が残る。 

 包囲殲滅は前回と同じ流れなのは有効だと分かっているから理解は出来た。
 だが、前回取り逃がしている以上、同じような退路を想定していないのは不自然だ。
 もしかするとこの地下通路の先には戦力が布陣しており待ち伏せでもしているのだろうか?

 プレイヤーは所詮、前線に送り込むだけの戦力だ。
 詳細を知らせないという判断は理解はできるが、裏を返せば完全に殲滅できるとは思われていないとも取れる。 

 ――まるでアニメや漫画とかで偶に見る引き延ばしだ。

 対策は練っているのかもしれないが、この杜撰な対応だけを切り取ればそんな印象を抱いてしまう。
 到着。 潜水艇用のドックだ。 規模を考えると結構な数の人間を収容できそうだった。
 当然ながら空で全て逃げ出した後だ。 資材の類も一切残されていない。

 残っているのは無人の施設と揺れる水面だけ。 
 本当の終点だ。 ヨシナリは折角だし水中も見てやろうかと思ったが、このⅠ型は水中戦を想定していなさそうな造りという事もあってやめておいた。

 本音を言えば引っかかる点は多々あったが、もう見る場所もない以上は潮時だろう。
 
 「ここまで付き合ってくれてありがとうございました。 そろそろ――」

 戻ろうと言いかけた所でウインドウがポップアップ。
 作戦終了と書かれていた。 その後、よく分からない無数のウインドウがポップアップと処理完了による消失を繰り返し最後に「整合性チェック作業中」とインジケーターが出現し――完了表示と共に意識が落ちるように真っ暗になった。


 気が付けばユニオンホーム内の自分の部屋にいた。
 ヨシナリは少しぼんやりとした頭で一瞬前まで自分が何をしていたんだったかと思い返す。
 
 「あー、確か限定ミッションをグロウモスさんとやって――」

 すると記憶が芋づる式に脳裏に広がっていく。
 そう、何故かアバター出撃という訳の分からない出だしだった。
 ICpwはロボゲーなんだからロボットに乗せろよよ突っ込んだのは記憶に新しい。

 流石にFPSをやりたい気分でもなかった事もあってグロウモスと二人で機体を探したのだ。
 そして都合よく放置されたボーンヘッドを見つけて二人で地下基地――バンカーに侵入してテロリストを始末しながらⅠ型を奪って最下層まで行ったんだった。

 機体を手にいれたのは非常に良い判断で、敵戦力の大半は歩兵だった事もあって楽に片が付いた。
 ガトリングガンで文字通りの鎧袖一触だ。 トルーパーに関してもお粗末なものだった。
 テロリストの操縦技術に関してはピンキリを表現したかったのだろうが、高くてもEでG以下の腕の奴までいたのは正直肩透かしだ。 

 ――バランス調整は必要だろうなと思ってしまう。

 最下層に居たリベリオンフレームは恐らくボスとして設定された機体だろう。
 こいつだけは手強かった。 単純にスペック差もあったが、二人で協力して撃退したのはいい経験だ。
 時計を確認するとまだ時間はある。

 「ランク戦やるか」

 そう呟いてヨシナリはウインドウを操作した。
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