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第718話
――優勝したい。
ヨシナリは心の底からそんな事を考えていた。
次のイベントはユニオン対抗戦。 四回目の挑戦だ。
一回目は四回戦。 二回目、三回目は三回戦で脱落。
一回目はラーガストの力で上がったような物だったので『星座盤』の戦果としてはカウントできない。
つまり現状、三回戦の壁を突破できずにいるのだ。 本来なら四回戦ぐらいを目指そうとか言う所なのかもしれないのだが、ヨシナリとしてはそんな生温い覚悟で行くと負けると思っていた。
だから、目指すは優勝なのだ。 懸念材料の一つであったタカミムスビの戦闘を見れた事も大きい。
サーバー対抗戦の時にグロウモスをわざわざ本陣に残したのは『思金神』上位勢の戦力を見る為でもあったのだ。
タヂカラオに聞いても良かったのだが、彼は三軍に復帰した以上、スパイのような真似をさせる事は出来なかった。
個人技、連携を高めるのは当然としてもう一つ重要な点として空枠を埋める事は必須だ。
あと二つ。 可能であれば即戦力となれるプレイヤーが欲しかった。
「タクティカル。 それで私に声をかけたのか」
『星座盤』のユニオンホーム。 ヨシナリと向かい合う形で見慣れないアバターが居た。
子供のような小さな背丈、タイトスカートにブラウスといったさっぱりとした服装。
頭部にはヘアバンドが装着されており、おでこがキラリと輝く。
顔の造詣は限りなく人間に近くなっており、可愛らしい見た目だ。
これはランカー全員に言える事なのだが、彼等、彼女達は主にPを通過として扱う関係で既存の通貨であったGをほとんど使わなくなるのだ。
結果、アバターぐらいにしか使う所がなく、気が付けば誰もが凝った見た目になるらしい。
「はい。 見た所、無所属との事なので、力を貸していただければと思いまして」
戦力が欲しいと思っていたヨシナリが真っ先に声をかけたのが彼女だった。
理由はいくつかあるが、まずは無所属である事。 これは非常に大きい。
何故なら誘っても角が立たないからだ。
諸々の面倒事がないのならタヂカラオやポンポンを引き抜きにかかっていただろう。
加えてAランクという高い戦闘能力。
これだけ好条件が揃っている相手に声をかけないなんてありえないとすら思っていた。
「勿論、正式所属しろとまでは言いません。 次のユニオン対抗戦の間だけ、助っ人として来てくれませんか?」
特にドローンを用いた攪乱が得意なのも魅力だ。 今の「星座盤」に足りないピースと言えるだろう。
アイロニーはふーむと考えるような素振りを見せる。
「シニカル。 ただで力を貸せと?」
そう言ってニヤリと笑って見せる。 ヨシナリは内心でまぁそうなるよなと呟く。
一応ではあるが、こうなった時の事も想定していた。
ただ、アイロニーの趣味嗜好などに明るくない事もあって、まずは相手の出方を窺う。
「えーっと報酬は何を支払えばいいですかね? やっぱりPですか?」
ジェネシスフレーム購入の為に溜めているので、あまり大きな金額は動かしたくはないが必要とあれば身銭を切る覚悟はあった。
「……最初はそう考えていたが、返事をする前に教えて欲しい。 あれは何かな?」
彼女の視線を追うとそこにはアルフレッドの占有スペースがあった。
最初は大きなクッションと天幕のような物だけだったのだが、気が付けば立派な犬小屋になっていた。
押し開きの扉と周囲にはカラフルな色彩の花が植えてあるプランターが並んでいる。
中はふかふかのクッションが敷き詰められており、非常に快適な空間となっているらしい。
何故こんな事になっているのかというとメンバー達が買い与えているのだ。
特に世話になる機会の増えたグロウモスが力を入れているとかいないとか。
アルフレッドは嬉しそうにしているとの事でユウヤも少し喜んでいた。
「あぁ、アルフレッドの家ですよ」
「――ユウヤの支援機の名前と記憶しているが?」
「そうですよ」
呼ばれたと思ったのか中からアルフレッドがすっと顔を出した。
アルフレッドはどうかした?といった様子でヨシナリを見つめる。
ヨシナリは何でもないと戻るように促そうとしたが、アイロニーの視線が釘付けだった。
――ははぁ、そういう事か?
内心でほくそ笑む。
ヨシナリは手招きするとアルフレッドは無言でヨシナリの膝上へ。
腹を見せるアルフレッドを撫でながらアイロニーへと視線をむけると彼女の視線は完全に吸い寄せられている。
「あぁ、もしかしてご存じありませんでしたか? 支援AIにはこうしてアバターを与える事も可能なんですよ」
こうして直に触れていると本当に完成度が高い。
造詣ではなく中身がだ。 さっきまで小屋に籠っていたのは来客を察してだろう。
そう、察しているのだ。 学習によって成長させる必要がある以上、ここまでのクオリティに持って行くのは並大抵の事ではない。
ユウヤがどれだけアルフレッドに愛情を注いでいたのかがよく分かる。
少なくとも彼はアルフレッドをペットではなく「親友」として扱っていた。
アルフレッドもそれに応える形で成長したのだろう。
ある意味、彼はユウヤの分身とも言える存在だ。
アイロニーはそうかと生返事。 何を求めているのかは分かり切っていたが、ここは溜める所だろう。
顎の下をくすぐると甘えるように頬を摺り寄せて来る。
トイプードルのような見た目のアバターは非常に愛くるしい。
ヨシナリとアイロニーの様子を見て事情を察したのか、今日は中々にサービスをしてくれる。
くんくんと甘えるように鳴き声まで上げ始めた。
――はっはっは、こいつぅ。 あざといけど可愛いぞ。
「あぁ、ちなみになんですけど、ユニオンメンバーはこいつを触り放題なんですよ」
言外にメンバーにならないとおさわり禁止だと匂わせる。
「…………なにも言っていないが?」
「ちょっとした入会特典の話をしただけですよ。 ――まぁ、冗談ですって」
ヨシナリはアルフレッドを抱き上げると目の前のテーブルの上に置く。
「触ってもいいですがアルフレッドはウチの備品ではなくメンバーです。 その辺を念頭に置いて頂けると助かります」
アイロニーはぷるぷると手を震わせながらそっとアルフレッドに手を伸ばして抱き上げる。
アルフレッドはされるがままだ。 そっと胸に抱き寄せる。
アイロニーが震え出した。
「ぷ」
「ぷ?」
ヨシナリが首を傾げるとアイロニーがくわっと目を見開く。
「プリティカル! なんだこの可愛い生き物は!? 凄いぞ! AIは育成次第でここまで行けるのか!? こんなナリで戦場ではしっかりとサポートしてくれるというのか!?」
アイロニーはプリティカルと繰り返してアルフレッドを撫でまわし始めた。
ヨシナリは心の底からそんな事を考えていた。
次のイベントはユニオン対抗戦。 四回目の挑戦だ。
一回目は四回戦。 二回目、三回目は三回戦で脱落。
一回目はラーガストの力で上がったような物だったので『星座盤』の戦果としてはカウントできない。
つまり現状、三回戦の壁を突破できずにいるのだ。 本来なら四回戦ぐらいを目指そうとか言う所なのかもしれないのだが、ヨシナリとしてはそんな生温い覚悟で行くと負けると思っていた。
だから、目指すは優勝なのだ。 懸念材料の一つであったタカミムスビの戦闘を見れた事も大きい。
サーバー対抗戦の時にグロウモスをわざわざ本陣に残したのは『思金神』上位勢の戦力を見る為でもあったのだ。
タヂカラオに聞いても良かったのだが、彼は三軍に復帰した以上、スパイのような真似をさせる事は出来なかった。
個人技、連携を高めるのは当然としてもう一つ重要な点として空枠を埋める事は必須だ。
あと二つ。 可能であれば即戦力となれるプレイヤーが欲しかった。
「タクティカル。 それで私に声をかけたのか」
『星座盤』のユニオンホーム。 ヨシナリと向かい合う形で見慣れないアバターが居た。
子供のような小さな背丈、タイトスカートにブラウスといったさっぱりとした服装。
頭部にはヘアバンドが装着されており、おでこがキラリと輝く。
顔の造詣は限りなく人間に近くなっており、可愛らしい見た目だ。
これはランカー全員に言える事なのだが、彼等、彼女達は主にPを通過として扱う関係で既存の通貨であったGをほとんど使わなくなるのだ。
結果、アバターぐらいにしか使う所がなく、気が付けば誰もが凝った見た目になるらしい。
「はい。 見た所、無所属との事なので、力を貸していただければと思いまして」
戦力が欲しいと思っていたヨシナリが真っ先に声をかけたのが彼女だった。
理由はいくつかあるが、まずは無所属である事。 これは非常に大きい。
何故なら誘っても角が立たないからだ。
諸々の面倒事がないのならタヂカラオやポンポンを引き抜きにかかっていただろう。
加えてAランクという高い戦闘能力。
これだけ好条件が揃っている相手に声をかけないなんてありえないとすら思っていた。
「勿論、正式所属しろとまでは言いません。 次のユニオン対抗戦の間だけ、助っ人として来てくれませんか?」
特にドローンを用いた攪乱が得意なのも魅力だ。 今の「星座盤」に足りないピースと言えるだろう。
アイロニーはふーむと考えるような素振りを見せる。
「シニカル。 ただで力を貸せと?」
そう言ってニヤリと笑って見せる。 ヨシナリは内心でまぁそうなるよなと呟く。
一応ではあるが、こうなった時の事も想定していた。
ただ、アイロニーの趣味嗜好などに明るくない事もあって、まずは相手の出方を窺う。
「えーっと報酬は何を支払えばいいですかね? やっぱりPですか?」
ジェネシスフレーム購入の為に溜めているので、あまり大きな金額は動かしたくはないが必要とあれば身銭を切る覚悟はあった。
「……最初はそう考えていたが、返事をする前に教えて欲しい。 あれは何かな?」
彼女の視線を追うとそこにはアルフレッドの占有スペースがあった。
最初は大きなクッションと天幕のような物だけだったのだが、気が付けば立派な犬小屋になっていた。
押し開きの扉と周囲にはカラフルな色彩の花が植えてあるプランターが並んでいる。
中はふかふかのクッションが敷き詰められており、非常に快適な空間となっているらしい。
何故こんな事になっているのかというとメンバー達が買い与えているのだ。
特に世話になる機会の増えたグロウモスが力を入れているとかいないとか。
アルフレッドは嬉しそうにしているとの事でユウヤも少し喜んでいた。
「あぁ、アルフレッドの家ですよ」
「――ユウヤの支援機の名前と記憶しているが?」
「そうですよ」
呼ばれたと思ったのか中からアルフレッドがすっと顔を出した。
アルフレッドはどうかした?といった様子でヨシナリを見つめる。
ヨシナリは何でもないと戻るように促そうとしたが、アイロニーの視線が釘付けだった。
――ははぁ、そういう事か?
内心でほくそ笑む。
ヨシナリは手招きするとアルフレッドは無言でヨシナリの膝上へ。
腹を見せるアルフレッドを撫でながらアイロニーへと視線をむけると彼女の視線は完全に吸い寄せられている。
「あぁ、もしかしてご存じありませんでしたか? 支援AIにはこうしてアバターを与える事も可能なんですよ」
こうして直に触れていると本当に完成度が高い。
造詣ではなく中身がだ。 さっきまで小屋に籠っていたのは来客を察してだろう。
そう、察しているのだ。 学習によって成長させる必要がある以上、ここまでのクオリティに持って行くのは並大抵の事ではない。
ユウヤがどれだけアルフレッドに愛情を注いでいたのかがよく分かる。
少なくとも彼はアルフレッドをペットではなく「親友」として扱っていた。
アルフレッドもそれに応える形で成長したのだろう。
ある意味、彼はユウヤの分身とも言える存在だ。
アイロニーはそうかと生返事。 何を求めているのかは分かり切っていたが、ここは溜める所だろう。
顎の下をくすぐると甘えるように頬を摺り寄せて来る。
トイプードルのような見た目のアバターは非常に愛くるしい。
ヨシナリとアイロニーの様子を見て事情を察したのか、今日は中々にサービスをしてくれる。
くんくんと甘えるように鳴き声まで上げ始めた。
――はっはっは、こいつぅ。 あざといけど可愛いぞ。
「あぁ、ちなみになんですけど、ユニオンメンバーはこいつを触り放題なんですよ」
言外にメンバーにならないとおさわり禁止だと匂わせる。
「…………なにも言っていないが?」
「ちょっとした入会特典の話をしただけですよ。 ――まぁ、冗談ですって」
ヨシナリはアルフレッドを抱き上げると目の前のテーブルの上に置く。
「触ってもいいですがアルフレッドはウチの備品ではなくメンバーです。 その辺を念頭に置いて頂けると助かります」
アイロニーはぷるぷると手を震わせながらそっとアルフレッドに手を伸ばして抱き上げる。
アルフレッドはされるがままだ。 そっと胸に抱き寄せる。
アイロニーが震え出した。
「ぷ」
「ぷ?」
ヨシナリが首を傾げるとアイロニーがくわっと目を見開く。
「プリティカル! なんだこの可愛い生き物は!? 凄いぞ! AIは育成次第でここまで行けるのか!? こんなナリで戦場ではしっかりとサポートしてくれるというのか!?」
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