Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
721 / 865

第721話

 そこは真っ白な空間だった。
 あるのはパイプ椅子と少し離れた位置には玉座のような豪奢な椅子の二つだけ。
 ホーコートはこの状況にやや困惑していた。

 メッセージの内容はあなたに魔法をかけてあげる。 
 興味があるならここに来なさいと指定されたエリアへの移動方法が記載されていた。
 迷った。 ヨシナリに頼り過ぎるなと言われたばかりだからだ。

 だが、「魔法」の効力を知っていたホーコートの心は大きく揺れる。
 前回のユニオン対抗戦。 「烏合衆」との戦い。
 「魔法」を使う事により、ホーコートはAランクであるフェボル相手に相打ちにまで持って行けたのだ。

 効力に関しては疑いようがない。 簡単に結果を出したいのなら即座に飛びつきたい話だ。
 結局、話だけでも聞いてみたいと中途半端な気持ちでここまで来てしまった。
 街の中の特定の位置へと向かうと穴に落ちるような感覚と共にここに辿り着いたのだが――

 「こんにちは。 えーっと、ホーコート君で良いのかしら?」

 不意に声をかけられはっとやや俯いた顔を上げるといつの間にか玉座に女が座っていた。
 モザイクのように輪郭は分かるが、詳細までは不明だ。
 だからホーコートに分かるのは相手が女であるという事、髪が長い事。 この二点だけ。

 「ど、どうも。 ここに来ればいいと言われたんですけど……」
 「そ、まずは自己紹介しておきましょうか。 私はロッテリゼ。 えーっと、魔法使いとでも思いなさいな。 さて、仲良くお喋りするような仲でもないし、早速本題に入りましょうか?」

 ロッテリゼと名乗った女はパチンと指を鳴らす。 
 彼女の背後に映像が映し出された。 内容はホーコートが「星座盤」に所属してからの戦闘だ。
 
 「――ミツォノロプロフのお情けで残ったテストサンプル。 総合評価はえーっと、低いわねぇ。 MODのモーションパターンは最小限、右旋回からのアタックのみ。 まぁ、これじゃ通用しても精々Eランクぐらいまでね」

 ロッテリゼはウインドウを出現させると慣れた手付きで操作。
 何かを呼び出すと表情が分からないにも関わらず笑った事と明らかな変化。

 「あぁ、あなた魔法の呪文を使ったのねぇ? どうだった? びっくりするぐらい強くなれたでしょう。 まぁ、アレを使ってもベースがゴミだとAランク相手に相打ちが精一杯か」

 せめて撃破ぐらいはして欲しかったわと付け加えるとホーコートに視線を戻す。

 「さて、私があなたに提供できるのは更なる力。 欲しいでしょう? ランカー相手でもそこそこ以上に戦える力」

 ここまでの流れで相手の意図を理解できないほどホーコートは馬鹿ではなかった。
 相手はホーコートに更なるチートを授けると言っているのだ。
 ただ、非常に怪しかった。 それに何故ホーコートなのかも分からない。

 「た、確かに欲しいっすけど、何で俺なんですかね。 他にも声をかけられそうな相手は居るんじゃないんですか?」
 「居るわよぉ。 あなたはその為の布石」

 即答。 反応を見てもホーコートには驚きは少ない。
 ロッテリゼは提案を持って来てはいるが明らかにホーコート自身には興味がなさそうだったからだ。
 
 「まぁ、後で忘れて貰うから教えてあげるけど、このゲームってプレイヤーのバイタルだけじゃなくてメンタルに関しても数値化してデータの収集を行うのよ。 ――で、特定の提案に対してそのプレイヤーの性格や行動から返答を予測するシミュレーターシステムがあるの」

 ロッテリゼが再度、パチンと指を鳴らすと背後に複数のウインドウが展開。
 並んでいるのはヨシナリ達「星座盤」のメンバーとその横にはホーコートにはよく理解できないグラフや数値。 その中で一際目を引くのが赤文字で表示された数値だった。

 ヨシナリ――0.0015% マルメル――1.15% ふわわ――0.0034%
 グロウモス――0.5% ユウヤ――0.0011% ベリアル――0.0009%
 シニフィエ――0.3% そしてホーコート――78%。

 「これ、何の数字か分かる?」

 分からなかったが、ホーコートだけ圧倒的に高い以上、良くない物である事は間違いなかった。
 沈黙を不明と解釈したのかロッテリゼは楽し気に笑う。

 「これね、今と同じ提案をした場合、相手が頷く可能性を可視化したものなの。 凄いわねぇ? 普通は低くても20%切らないのにあなた以外は一番高いので1%ちょっと。 初めて見た時は私もちょっと驚いちゃったわ」

 背後のウインドウが切り替わる。 戦闘シーンへと。
 ヨシナリとベリアルが見た事もない敵と戦っていた。 
 映像では二機がエーテルを展開する事で機体を強引に接合。 一機へと合体した。

 「エーテルの性質上、不可能じゃないけど思いついて実行まで持って行けるのは素直に脱帽よ。 それに馬鹿みたいに出力が跳ね上がるから簡単に扱えないのにオペレーター相手にあそこまで戦えるのは更に凄いわ」

 実際、凄まじい戦いだった。 ヨシナリ達の機体は敵機と瞬きのような攻防を繰り広げている。
 凄すぎる。 ホーコートはそんな感想しか出ないほどに圧倒される戦いだった。
 だが、敵機の猛攻はその上を行き、徐々に追い込まれていくヨシナリ達。

 そして敵機のブレードがヨシナリを貫き、ホロスコープが自爆した事による爆発が発生。
 咄嗟に回避した敵機をベリアルが背後から貫き、戦闘は終了した。
 そして映像が切り替わる。 これはホーコートも知っている映像だった。

 インド第二サーバーとの戦い。 カンチャーナというプレイヤーとの戦い、その最終局面。

 「あの子はね。 私のお気に入りで、そこそこ力を入れて支援してあげたのにアメリカ、ロシア、日本と対抗戦で三連敗もするんだもの。 ガッカリよ」

 最後に映像はヨシナリのアップに切り替わった。 ロッテリゼはニチャリと笑う。
 
 「どちらの戦闘もキーとなったのはこの彼。 いいわねぇ。 本来なら日本サーバーは担当外だから手を出しちゃいけないんだけど欲しくなっちゃった。 彼ならMODの力を最大限に活用できる。 このままでもランカーにはなれるとは思うけど、私が力を貸せばSランクにもなれる。 それどころかその上まで行ける。 オーバーSランクに、Ωに手が届くかもしれない」
 「だったら、俺じゃなくて先輩に声をかければいいじゃねぇか!」

 目の前の女の気持ち悪さに思わず語気が荒くなった。
 ロッテリゼは肩を竦め、でもと前置きし――
感想 0

あなたにおすすめの小説

局地戦闘機 飛電の栄光と終焉

みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

森のカフェしっぽっぽ

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。 一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、 猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。 しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。 地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。 ただし、異世界人は地球には来られない。 行き来できるのはサトルだけ。 向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、 頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、 静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、 サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。 仕事に疲れた会社員。 将来に迷う若者。 自信をなくした人。 サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。 そして、棚の影で震えるジル。 怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。 それでも店からは逃げない。 その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。 これは―― 福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。 震えながらでも前に立つ者が、 今日も小さく世界をつなぐ。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。