Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第723話

 次々と伸びているケーブルを迎撃。 
 徐々に処理に困ってエネルギーウイングによる加速で距離を取る方向にシフトしたのだが、何らかの干渉が働いているのか一定以上の距離が取れない。

 途中で機体が進まなくなるのだ。 
 進まなくなるタイミングで上下左右に逃げるが、段々と逃げ場がなくなってきた。
 ケーブルの飛んでくる速度は速くはないが、手数が多い。
 
 この時点でもう察していた。 
 いくら撃ち抜いても切断してもケーブルは元に戻り、次々と飛んでくる。
 ここは掻い潜って本体を処理したい所ではあったが、今のホーコートの技量では逃げ切れない。

 ――あぁ、先輩。 やっぱりあんたが正しかったよ。

 こうしてチートを取り上げられ、素の実力がなければ対処ができない状況に放り込まれると嫌でも理解できてしまう。 本当にヨシナリの言う通りだった。
 チートは所詮は外付け。 自分の実力ではない。 こうして簡単に剥ぎ取られてこのザマだ。

 ヨシナリの話を聞いてはいて理解もしていたつもりだった。
 それでも手放さない選択をしたのは自分だ。 だから、この結果を受け止めなければならない。
 脳裏に浮かぶのは無心に反復練習を繰り返すヨシナリの姿だった。

 「……先輩、すんません」

 突撃銃の弾が切れたと同時に無数のケーブルがホーコートの機体を絡め取る。
 同時にエラーメッセージがポップアップ。 
 内容は『当機はハッキングを受けており、このままでは機体の制御を奪われます』と言った物だ。

 それにも既視感を覚えたがもうどうにもならなかった。

 「ま、思ったよりは粘ったけどこの程度ね。 だーいじょうぶよ。 これから雑魚で愚図なあなたをつよつよにして周りの皆にMODの素晴らしさを広める立派な広告塔にしてあげる。 ――次に目が覚めたら全部すっきりしているわ。 だから安心してね?」

 ロッテリゼはじゃあお休みと口にしたと同時にホーコートの意識は徐々に浸食され溶けるように消えて行った。
 
 
 「うーん。 まぁ、こんなもんかなぁ。 うん、後はランク戦で調整するわ」

 ありがとなーと姉がフィールドから姿を消す。
 それを見送ったシニフィエは小さく溜息を吐いた。 

 「まったく、好き勝手してくれるなぁ……」

 漏れる言葉には僅かに疲労が滲む。
 それもそのはずで彼女の機体は切り刻まれ、バラバラになっていたからだ。 
 ついさっきまで姉――ふわわの模擬戦に付き合っていたのだが、結果は惨憺たるものだった。
  
 自分で自分を憐れみたくなるほどに徹底的に叩きのめされた事もあって、普段は気にせず前向きにが信条の彼女も少し気分が落ち込む。 次のイベントはユニオン対抗戦。 
 『星座盤』の最高記録は四回戦と聞いているが、その時はラーガストという規格外の怪物が居たからでその当人も三回戦突破と同時に抜けた事もあってあっさりと負けたとの事。

 ――あんなのが居たら負ける訳がないか。

 フランスサーバーとの対抗戦で少しだけ見たが、あれは完全に別の世界、別のゲームをやっているとしか思えない。 勝てる勝てないを論じる次元を超越していた。
 このゲームの頂点はあんなのかと軽く引いたのは記憶に新しい。 

 ――話を戻そう。

 その例外を除けば全て三回戦落ち。 
 義兄ヨシナリはそろそろもっといい成績――具体的には優勝を狙っている。
 その為に空枠を埋める為に動いているようだ。 

 聞けばマルメルも一人助っ人を連れて来るとの事で今回は枠が埋まりそうとの事。
 誰が来るかまでは聞いていないが、今の『星座盤』に混ぜても埋もれない実力者だろう。
 さてとシニフィエは考える。 現実的に考えて『星座盤』は優勝できるのか?

 不可能とまでは言わないが、難しいだろう。 
 上位になるとメンバー全員がAランクで固めた厄介なチームばかりになる。
 そんな相手に勝てるのだろうか? 連携に穴のあった『烏合衆』相手に負けたのだ。
 
 『思金神』の上位メンバー相手に勝てるビジョンが見えなかった。
 
 ――ただ、いい所までは行けそうなんだけどなぁ……。

 義兄を筆頭にメンバーの成長は著しい。
 Aランクの二人は元々強かったのだが、ここに来て更なる伸びを見せている。
 ユウヤもベリアルも向上心が強かった事を踏まえても伸びが凄まじい。

 今の動きを見ると初めて会った時とは別人と言ってよかった。
 マルメル、グロウモスも信じられないほどに強くなっている。
 姉に至っては訳が分からない。 技量だけでなく、装備の更新も行っている。

 どうやら例のメーカーとまた連絡を取って新しい装備を要求したようだ。
 その試し斬りにシニフィエが声をかけられたのだが、本当に酷い目に遭った。
 
 ――というか皆、強すぎじゃないですかねぇー。

 ヨシナリは総合力のお化けのような強さで指揮は勿論の事、遠近距離を選ばずに高い戦闘能力を誇り、キマイラフレームの特性を完全に引き出している。
 マルメルは中衛としての完成度が非常に高く、敵の引きつけ、味方の支援だけでなくハンドレールキャノンによる一刺しと隙あらば抑えだけなく撃破も狙う。

 姉はもはや説明不要の怪物だ。 それに加えてAランクの二人と助っ人。
 最後に懸念材料であるホーコートだ。 彼に関しては評価を低く見積もらざるを得ない。 
 元の技量が低いのは仕方がないが、チートによって底上げして多少は戦えるようにしている事もあって全く使えないという事はなかった。 

 それを差し引いてもシニフィエの評価は「いないよりマシ」レベルだ。
 チートで底上げしないと使い物にならない時点でどうしようもない。
 シニフィエもこのユニオンでは下の方だとは思っているが、ホーコートは浮いているレベルだ。

 大規模戦では気が付いたら撃墜されており、他のイベント戦でも碌な戦果を挙げていない。
 シニフィエとしては本気で勝ちたいのならホーコートを外して他を入れた方がいい。
 具体的にはDランク以上の中衛をこなせるプレイヤー。 
 
 それが完璧に機能すれば三回戦ぐらいは越えられるかもしれない。
 
 「でも、それをやらないんだろうなぁ……」

 それなり以上に同じ時間を過ごしたのだ。 義兄の性格はよく分かっている。
 他人のやる気や熱意を尊重するが故に彼はホーコートを決して見捨てない。 
 少なくとも本人が辞めるというまでは。

 「まぁ、私もあんまり人の事は言えないから、頑張っていい所を見せますか」

 シニフィエはそう呟くとウインドウを操作。 ランク戦へと移動した。
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