Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第729話

 次に「豹変」についてだ。
 戦力の内訳はアークエンジェルタイプが4、プリンシパリティ2。
 それに加えてポンポン、まんまる、ニャーコとツェツィーリエとなる。
 ジェネシスフレームが四機と言うだけでもかなりの脅威だ。

 ツェツィーリエはベリアルの抑えに回っている以上、指揮はポンポンが執っていると見ていい。
 彼女の用兵は実に堅実だ。 
 囲むというよりは常に手を出し続けてこちらから考える余裕を奪い去る事を目的とした動かし方。 

 これをやられるとヨシナリとしては非常に厳しかった。
 本音を言えばあれで仕留めたかったのだろうが、ギリギリで邪魔が入ったのは誤算だっただろう。
 マルメルには感謝しかない。 不利を悟ったヨシナリが森へ逃げ込んだのを見るや絨毯爆撃に切り替えたのも良い判断だ。 攻撃のばら撒き方も良く練られている。

 一応は想定している様で他の敵群に突っ込んで引っかき回そうとしたのだが、進路を制限されていた。
 鼻先に落とされると回避する為に旋回せざるを得ない。 
 ご丁寧に誰もいない所――敵からも味方からも引き剥がしにかかっているのも厄介だ。

 動かし方に余裕がある点からマルメル達が囲まれたのを見てこちらに切り替えたのだろう。
 8機もつぎ込んでいる時点でヨシナリの脅威度を高く見積もっており、確実に仕留めるといった強い意志を感じる。 

 残りの1機――ニャーコなのだが、ホーコートが想像以上に頑張っており、未だに落とされていない。
 ちらりと視線を向けると肉薄しようとしているニャーコを追い払うように銃弾をばら撒いていた。
 Aランクプレイヤー相手に普通に戦えている時点でかなり強化されているのが分かる。

 さてとヨシナリは思考を切り替える。 どうやってこの状況を打開するか?
 下手に隙を見せるとそこから崩しに来ることを理解しているようで、何をしても対処できる位置から攻撃を続けている。 

 ポンポンが露骨にこちらを観察している点からも下手に動くとあっさり狩られるだろう。
 一番いいのはマルメル達がこちらに来てくれる事で、それまで何とか粘りたい所だが――
 変形して減速。 目の前にプラズマグレードが落ちて爆発が発生する。

 ――動く前にまんまるさんの機体をもう少し見ておきたいな。

 思い切った動きをするには不確定な要素が多い。 今は逃げ回って隙を伺うしかなかった。

 
 ――あぁ、ウゼぇ!

 マルメルはあちこちから飛んでくる銃撃や砲撃を躱しながら苛立ちを露わにする。
 またコンシャスが仲間を引き連れて襲ってきたのだが、マルメルとしてはそろそろ勘弁してくれよと言った気持ちが強い。 しかも開始早々にこれだ。

 今回は大型ユニオンを引っ張れなかったのか、ランカーを抱えていない規模の中小を味方につけたらしい。 コンシャスの姿は確認できたがそれ以外のランカーの姿は見えなかった。
 前回と比較すると数こそ倍だが、質に関してはかなり劣るとみていい。

 本来であるならヨシナリやベリアル、ユウヤといった足の速い面子で攪乱するのが良いのだろうが、更に厄介な事に「豹変」が同じタイミングで襲ってきたのだ。
 
 ――いや、逆か。

 「豹変」が行ったのを見て攻め時だと判断したのだろう。
 この状況を厄介な事にしているのはヨシナリが剥がされた点だ。
 指揮官としてチームを引っ張る役がいない以上、メンバーは自己判断で動く事になる。

 ふわわ、ケイロンは真っ先にコンシャスを仕留める為に突っ込んで行き、シニフィエはそれに続いた。
 ユウヤは思った以上に冷静で攻撃の密度の薄い場所を狙って徐々に接近している。
 グロウモスはこの場では打開の鍵になるのではないかと思っていたのだが、流石に相手もそれを理解しているのか集中的に狙われているお陰で逃げ回るだけで精一杯のようだ。

 アイロニー、アルフレッドは迷彩で姿を消したのか見当たらない。
 
 ――やっぱ、ヨシナリがいなくなると纏まりに欠けるなぁ。

 ポンポン達もそれを理解しているからこそ、畳みかける事でヨシナリに思考する余裕を与えないようにしている。 
 マルメルとしてはどうにか切り抜けて欲しい所だが、ここは自分が頑張っていい所をみせる場面だろう。 

 さて、俺はどう動くのかが正解なのか? 
 この集まりはコンシャスが中心になっている以上、頭を潰せば纏まりがなくなる。
 ならこのまま行くか? いや、ふわわ達が行った以上、追いかけてもあまり意味がない。

 ――まぁ、引っかき回すのが無難か。

 ここで狙うのは攻撃密度の薄い所ではなく、濃い所だ。
 前までならもう少し慎重に動くが、今は更新した装備を試したくて仕方がない。
 起動。 両足に搭載されたフロートシステムが機体を僅かに浮遊させる。

 推進装置と併せて滑るように進む。 使いこなすまで少しかかったが、慣れると非常に快適だ。
 木々を縫うように森を抜け、即座に敵を捕捉。 マウントされた銃に手をかける。
 アノマリーではなくもう一つの方だ。 

 突撃散弾銃アサルト・ショットガン『リトル・クロコダイル』
 アリスが以前に使っていた銃で、光学兵器に偏った関係で使わなくなった物を譲り受けたのだ。
 二つのドラムマガジンには散弾と大粒の入ったスラッグ弾の二種類が入っている。

 雨のように降り注ぐ攻撃をエネルギーフィールドと自前の装甲で防いで突破。 
 森を抜けて開けた場所へ。 敵の構成を確認。 
 パンツァータイプが5、ソルジャータイプが5。 

 補足と同時にリトル・クロコダイルを構え、フルオート射撃。
 慌てて後退しようとしたパンツァータイプがスラッグ弾の連射を受けてハンマーか何かでぶん殴られたかのように穴だらけになる。 

 「ひゅう、こりゃすげぇや」

 アノマリーならもっと撃ち込まなければ撃破できないような相手が一瞬だ。
 ソルジャータイプが即座に散開。 囲みに来た。
 
 「へ、何のためにマガジンが二つ刺さってると思ってんだよ」
 
 機体側からの操作でスラッグ弾から散弾に切り替わる。 接近しながら再度フルオート射撃。
 凄まじい速度で連射された散弾は圧倒的な攻撃密度で敵機に襲い掛かる。

 射程の短さがネックではあるが、裏を返せば射程内で完全に捉えればまず躱せない。
 敵機が次々と穴だらけになって大破。 凄まじい威力だ。
 
 ――これならふわわさんでも殺れるかもなぁ。
 
 新しい武器の威力にマルメルは小さく笑う。 
 まずはここの掃除からだと思考を切り替えながら次の獲物に銃口を向けた。
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