Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第730話

 攻撃が緩んだ。 恐らくマルメルが崩しに行ったのだろう。
 それを悟ったグロウモスは可変形態で逃げ回るのを止め、人型に変形。
 並走していたアルフレッドとセンサーリンク。 

 同時に事前に飛ばしていたドローンのステータスを確認。 
 健在である事を確認してスコーピオン・アンタレスをすっと構える。
 発射。 放たれたエネルギー弾はドローンを反射して離れた位置にいる敵機を射抜く。

 『星座盤』の初期位置はやや北よりの中央。 
 元々、近いマップの北端を目指す形だったのだが、早々に包囲された事でこの状況だ。
 囲んで押し潰す。 寄せ集めの集団では細かな作戦行動は難しいと判断しての事だろう。

 その選択自体は間違っていない。 
 ただ、裏を返せば包囲、攻撃と全ての行動が雑である事の証左とも取れる。
 マルメルは早い段階でそれを理解しており、真っ先に敵の数が多い場所――北側に突っ込んで削りに行った。 北側が最も多いのは進行方向だったからだ。
 
 前回は布陣を許した結果、負けたのだからそれを封じに行く思考は理解できる。
 結果、マルメルの行動で攻撃密度が大きく落ち込んだ。 
 それをありがたいと思いながら、グロウモスは西側の敵を削りに動いた。

 アルフレッドのシックスセンスがあれば敵の位置をかなり正確に割り出せる。
 反射ドローンも二回反射はまだ練習中だが、一回なら充分に当てられるクオリティに仕上げて来た。
 色々と試したが光学迷彩機能付きの反射ドローンが一番しっくりきた。

 スコーピオン・アンタレスは大出力だけあって減衰しても充分に敵機を貫ける。
 察しの良い者は直ぐに気付くがそうでない者は空から攻撃されたと錯覚してドローンの方へと闇雲に銃撃を繰り返す。 それにより更に攻撃密度が落ちる。
 
 更に発射。 結果、グロウモスの攻撃する隙が生まれるのだ。
 命中。 ソルジャータイプを撃破。 ターゲットを捕捉、発射、発射。
 反射、反射、命中、命中。 撃破、撃破。 レーダー表示から一つ、また一つと敵機が減っていく。
  
 ちらりと空を見ると『豹変』がヨシナリを追いかけまわしている。
 それを見て僅かに歯が軋む。 

 ポンポン。 あの泥棒猫め。 私のヨシナリを殺そうなどと図々しい真似をよくも。
 後で必ず始末してやるからなと上空を睨みつける。 

 本音を言えば今すぐにでも喰らわせてやりたいが、まだ早い。
 もう少し地上の敵を削らなければならない。 
 乱戦である以上、ある程度の掃除をしておかないと何が起こるか分からないからだ。 

 
 ――何が起こってるんだ??

 コンシャスは呆然と広がる光景を見つめていた。 
 この対抗戦が始まる前の話だ。 彼はもう理屈なく確信していた。
 恐らくどこかで『星座盤』と当たると。 何故なら三回連続でエンカウントしたのだ。

 あの疫病神のような連中はいつまでも付き纏って自分の運気を下げ続けるのだと根拠なく信じていた彼は四回目こそ乗り越えるべく事前に手を打ったのだ。
 具体的に何をしたのか? 交流のある全てのユニオンに予選で手を組まないかと提案したのだ。

 予選で遭遇したのなら数に物を言わせて蹂躙してやる。
 ベリアルやユウヤは化け物のように強いが物量で押し潰してしまえばいい。
 そう考えていたのだ。 

 満を持してやって来た当日。 
 事前に協力を取り付けたユニオンが五つも同じブロックに居たのは幸運だったが、ランカーがいなかったという懸念は残った。 ともあれ、数は確保できたのだ。 それで良しとしよう。

 開始と同時に早々に『星座盤』を発見。 やはり来たなこの疫病神どもと睨みつけ。
 味方の集結を待って仕掛けに行ったのだ。 今回に関しては幸運がコンシャスに味方した。
 何故なら『豹変』が先に仕掛けていたからだ。 ちなみにイベント前に協力を申し出たが断られた。

 ランカーを多く抱える彼女達に同期して仕掛ける事で分断までできたのだ。
 これは運命がコンシャスに勝てと囁きかけているのだとしか思えない。
 包囲も上手くいった。 後はそのまま握り潰すだけだ。

 遠距離から徹底的に削り、消耗させた後に個別に撃破していく。
 要注意はランカーの二人だが、他のメンバーも侮れない。
 ヨシナリ、ホーコート、ベリアルは『豹変』が抑えているので無視。

 マルメルは中距離戦機体。 遠くから削り潰せばいい。
 グロウモスは狙撃特化。 その為、砲撃で消耗を誘い、狩場に追い込んで処理。
 ふわわ、ユウヤ、シニフィエがコンシャスを狙って来るのは分かっていた。
 
 猪のような連中は闘牛士のように削りながら逃げ回り消耗を誘いつつ他が片付くのを待つ。
 各個撃破。 それが『星座盤』を処理する為の最適解だ。
 
 ――が、良かったのはそこまでだった。

 突っ込んで来るのは想定内だった。 
 顔ぶれもユウヤ、ふわわ、シニフィエと血の気が多い、または接近戦で力を発揮するプレイヤー達。
 なのだが、何故か先頭にケイロンが居て真っすぐに突っ込んで来ていた。
 
 ――なんで??

 あいつ『烏合衆』なんじゃなかったのか? 何で『星座盤』に所属してるんだ?
 意味が分からなかった。 
 前回、タヂカラオが居た事も驚愕だったのだが、今回は移動していない事を確認済だ。

 補充はあってもランカーはないと思っていたのだが、どうやってあの個人主義の『烏合衆』から引き抜いたのかさっぱり分からなかった。
 想定外だが対処法自体は変わらない。 逃げ回って各個撃破を――

 不意に北側の味方機の反応がごっそりと消失。 十機以上が瞬く間に撃破されている。 
 コンシャスが居るのは東側から戦況の把握に努めていたのだが、減り方が早すぎた。
 北が減り始めた所に合わせて西側の数も減り始める。 位置的にグロウモスの仕業だろう。

 反射ドローンと直接狙撃の合わせ技で次々と数を減らしに行っている。
 レベルアップしている事はインドとの対抗戦で理解していたが、こいつ等の成長に関しては異常と言っていい。 

 特にマルメルは最初に当たった時はランク相応の腕しかなかったはずだが、今ではランカーと比べても遜色ないほどの殲滅力を見せつけていた。
 破綻する可能性も考慮していたつもりではあったが、ここまで速いとは思わなかった。

 コンシャスはクソと内心でそう吐き捨てながら自分の仲間を率いて後退。
 進路上には無数の罠を仕掛けてある。 これで削って消耗を――
 
 『タクティカール。 多勢に無勢は理に適っているが、数だけでまともに統制を取れていないのはあまりよろしくないな』

 ――そんな事を考えていると不意に何処からかそんな声が聞こえた。
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