Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第733話

 ツェツィーリエが強くなったようにベリアルも前のままではない。
 プセウドテイのアップグレードも既に済ませている。
 諸々の事情で手元にPを残しておかなければならなく、いくつかのアップグレードは保留としたが、彼の得た闇の叡智は更なる飛躍を遂げた。 周囲への警戒は起こっていない。 

 勝つ為に戦友に倣ってまずは観察から入る。 
 当人を助けに行きたい気持ちはあったが、目の前の相手を屠るのが先だ。
 半端な気持ちは身を滅ぼす。 今は撃破に全てを傾ける時なのだ。

 そう自分に言い聞かせ、ツェツィーリエの機体と挙動に意識を向ける。
 かなり大きく戦い方を変えたというのが最初に出た感想だ。
 両足を器用に振り回す事で死角を削って転移に対する対策としている点も面白い。

 明らかにベリアルを意識した立ち回りだ。 機体に関しても股関節の可動域が広がっている。
 以前までなら全身を独楽のように回転させる事で横回転からの蹴りを軸とした戦い方だった。
 今は上下を入れ替える事で縦も加わってより躱し難くなっている。

 だが、足は二本。 回転は上がっても繰り出す武器自体は変わっていないのだ。
 膝の屈伸を利用して右からの連撃。 エーテルの爪で打ち払う。
 跳ね返る勢いで体勢を整えて回転し左から薙ぐような蹴り。 
 
 短距離転移で躱すがその場で回転する事でそのまま転移先に蹴りが飛んでくる。
 明らかに転移の兆候を掴んでいる動きだ。 センサー系も強化しているのだろう。
 ベリアルは小さく仰け反って回避。 一撃躱して満足してはいけない、即座に次が来るからだ。
 
 転移で死角に回らずに僅かに後退。 

 ――すまん戦友よ。

 内心で魔弾の射手に詫びる。 何故なら目の前のツェツィーリエは紛れもない強敵。
 それを打ち倒す欲求に抗えないからだ。 
 だから、この瞬間は他の全てを忘れ、目の前の敵を屠り勝利する事に全てを傾ける。

 「貴様が我が闇にどこまで抗えるのか、見せて貰うぞ!」

 
 ――しぶとい。

 ポンポンはしくじったと内心で失敗を悟る。
 可能であればヨシナリを速攻で撃破し他を一機ずつ潰すつもりだったのだが、想定以上に粘られてしまった。 森に入った段階で追いかけるべきだったか?
 
 こちらは数がいる上、厄介な相手が後に控えている以上は可能な限り安全に処理したいというのは少々欲張りすぎだったようだ。 
 コンシャス達が勝つ可能性もなくはないが、ポンポンはそれはないと半ば確信していた。
 
 ヨシナリを欠いて纏まりを失ったとしても「星座盤」は強い。
 必ずあの包囲網を突破してこちらに襲い掛かって来るだろう。 
 上から見ていたが、明らかにメンバーが増えていた。 

 一機は動体にそれらしい反応はあったがステルス性能が高いのか捕捉しきれない。
 だが、もう一機は目立つ機体という事もあってすぐに分かった。
 ケイロン。 「烏合衆」所属のはずなのに何故か移籍しているのだ。

 一体、どうやってあの個人主義の集まりから引き抜いたのかさっぱり分からないが、厄介なランカーが一人増えている事だけは確かだ。 

 ――恐らくはもう一人も高ランクのプレイヤーだろうナ。

 可能であればコンシャス達には正体だけでも暴いて欲しいが、ヨシナリに集中している事もあって意識は割けない。 八機で集中砲火を浴びせているのだがまだ生きている。
 だが、無傷ではない。 明らかにそこそこの数、被弾してる。

 ヨシナリとしては逃げ回って味方の助けが来るまで粘る構えのようだ。
 
 ――まぁ、こっちも無策って訳じゃないゾ!

 余り早い段階で見せたくはなかったが、コンシャス達の反応が半分を割った。
 向こうはもうそろそろ片が付きそうだ。 あれだけの数で囲んでおきながらこの体たらく。
 せめて何人か削れよと言いたくなる。 

 「まんまる!」
 「はいぃ、準備できてるよぉ……」
 「範囲に入ったらやれ。 パンドラを切る前に仕留めるゾ」
 
 まんまるは小さく頷きつつ砲撃。 彼女のジェネシスフレームの力はこういった場でこそ活かされる。
 ジェネシスフレーム「サークルアーク」。 それが彼女の機体の名称だ。
 赤いカラーリングと重厚な見た目が非常に目を引くデザインで、見た目通りの火力と堅牢さを誇る。

 武装としては両肩の四連装のプラズマグレネード射出機構。
 攻撃範囲が非常に広く、至近距離で爆発すると磁場を発生させてEMPに近い効果を発揮し、センサー系を僅かな時間麻痺させる。 それが両肩で八門。
 
 胸部には大口径のレーザーキャノン。 照射時間も長く、そこそこの範囲を文字通り焼き払える。
 背面には試作型のホーミングレーザー発射機構。 名前の通り、ロックオンした敵機に向けてレーザーを放つ代物なのだが、試作型と銘打たれているだけあって精度はあまりよろしくない。

 一応は曲がるのだが、極端な軌道は描けない事もあって命中精度はそこまで良くはないが、どんな姿勢でも安定して発射できる代物と考えれば中々に有用だ。 
 防御は高出力のエネルギーフィールドと複合装甲の合わせ技だ。 
 空間歪曲は機体のサイズもあって賄えないと判断して採用は見送ったらしい。

 飛行は重力制御とエネルギーウイングの両方を採用し、機体を大型化する事でジェネレーターとコンデンサーも大出力、大容量の物へ。 
 それによりペースさえ維持すれば安定して火力を出し続けられる。

 ――というのがこれまでに見せて来た情報だ。

 ヨシナリの戦いは情報を集める所から始まる。 つまり、まずは視てくるのだ。
 一通り情報を集めた後に対策を練り、仕留めにかかる。
 同格以上に対してはほぼ確実にそれを実行するのだ。 

 つまり、そこで偽の情報を掴ませれば思惑を外す事ができる。
 不意にレーダー表示からコンシャスの反応が消えた。 どうやらやられてしまったらしい。
 他も時間の問題だろう。

 「何発打ち込んだ?」
 「六発。 バレないように気を付けたから多分、大丈夫だと思う」
 「よし、次で追い込む。 無理に真ん中に入れなくてもいい。 範囲に入ったらお前の判断で起爆しろ」

 ヨシナリは味方から引き剥がしつつ撃破を狙うような攻撃を繰り返しこちらが罠を張っているという匂いを念入りに消した。 まんまるが砲撃に紛れて追い込む予定の場所に撃ち込んだ代物――爆発すると周囲に電磁パルスとプラズマを撒き散らすミサイルを打ち込んである。

 これの強みは遠隔で起爆する事が可能な点だ。
 既に狩場に追い込む直前まで来ている。 後はヨシナリが飛び込んでくれるだけでいいのだが――
 
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