Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第735話

 ――ど、どうしよう。

 まんまるは彷徨うように砲口をヨシナリに向けていたが、捉えきれない。
 知ってはいたが、パンドラを解放したホロスコープの速度は簡単に捉えられなかった。
 速いのもそうだが、距離感が絶妙だ。 ポンポンから付かず離れずの距離。

 まんまるの位置を意識してのポジショニング。 
 ポンポンの相手をしながらそこまで気を配れる事に改めて恐ろしさを感じる。
 これでランカーでないのだから訳が分からない。

 少なくとも自分にはあの立ち回りは真似できない。
 センスの差を見せつけられて少し落ち込むが、そうも言っていられなかった。
 銃弾が飛んでくる。 ポンポンがあらかじめマーキングしていた事もあって「星座盤」のメンバーの居場所はほぼほぼ割れていた。 

 まんまるの現在地はフィールドの中央からやや北西寄り。
 そこからやや西側でヨシナリがポンポンと交戦中。 
 東に離れた位置にベリアルがツェツィーリエと交戦中。

 この二人に関しては手出し無用だ。 どちらにせよかなりの高速戦闘になっており、援護が難しい。
 ポンポンからも一騎打ちになったら手を出すなと言われていた。
 彼女からすれば最悪、この体勢に持って行くまである程度削れればいいとでも思っていたのかもしれない。 

 もしかすると心のどこかで自分で仕留めたいといった思いがあったのだろうとまんまるは勝手に思っていた。 
 ユウヤ、ふわわ、シニフィエ、ケイロンは更に東。 

 コンシャスが居た本陣を強襲する関係で人数を割いていたのだろう。 
 それと姿が見えないもう一人もあの方向に居るはずだった。 
 マルメルは北、グロウモスやや西寄り。 

 相手が低ランクばかりだった事を差し引いても十数機居た敵機を単騎で相手できているのは凄まじい。
 特にグロウモスの殲滅力はランクから逸脱している。 一発で一機落としている事もあって既に西側に展開していた敵機群は壊滅しており、北に移動してマルメルの援護に回っているのだ。

 ――あの連中の成長速度は異常だゾ。

 以前にポンポンが言っていた事だったが確かにその通りだとまんまるも思う。
 グロウモスは元々、狙撃に関しては非常に優れていたと思ってはいた。
 マルメルに関しては格下とすら思っていたのだが、今はどちらと戦っても負けるかもしれないと思ってしまう程には脅威と認識している。 だから、速やかに数を減らさなければならない。

 まんまるは即座にグロウモスを捕捉して照準。 特に厄介なのは彼女だ。
 生かしておくと強力なレーザーで次々と数を減らされてしまう。
 今ので発射位置は分かっている。 発射しようとして咄嗟に横に回避行動。

 ポンポンとセンサーリンクを行っているお陰で周囲の変化に対しての反応は上がっている。
 引っかかったのは空間情報変動。 転移の兆候だ。
 自機を取り囲むような転移反応はふわわのアレだろう。 

 初見の時から思っていたが訳が分からなかった。 
 どうやってアレをまともに当てられているのかを。 
 ただ、前知識があったお陰で躱す事は不可能ではない。

 この手の武装を攻略する上で重要なのは初動を掴む事だ。 
 基本的に転移系の武装は転移位置を確定させた後に変更はできない。
 フェイクを混ぜる事は可能だが、反応がある場所から必ず出現する。 

 つまり反応が出てすぐに動けば躱す、防ぐ事は充分に可能だ。 
 回避よりも防御を念頭に置いたビルドのまんまるは迷わずに突破を選択。
 囲むように出現した刃の包囲を強引に突破――したと同時に少し離れた位置にいきなりふわわの機体が現れたのだ。 何か布のような物を脱ぎ捨てている点からあれで居場所を隠したのだろう。

 彼女は既に肩の野太刀を構えており、抜き放つ準備も終わっていた。
 振り下ろすような軌道で一閃。 回避、間に合わない。

 「にゃー!」

 振り下ろされた斬撃に横から割り込んだニャーコが拳を叩きこみ、野太刀を半ばから圧し折る。

 『驚いたぁ、よくタイミング合わせられたなぁ』

 ふわわの感心した声が聞こえるが、そんな余裕は欠片もない。

 「まんまる!」
 
 ニャーコの鋭い叫びに応じるように胸部の大口径レーザーを発射。 
 薙ぐような一撃をふわわ最小の動きで躱すだけでなく、エネルギーウイングを用いた緩急で間合いを詰めて来る。 

 ――どんな反応!?

 完全に見切った上での回避。 まんまるの目にはすり抜けたようにすら見えた。
 磁界を展開して野太刀の柄を鞘に戻しながら空いた手で腰の太刀に手をかける。
 それを回避しながら行っているのだ。 

 近距離のレンジまで踏み込まれるが割り込んだニャーコがそれを阻止。

 「任せるにゃ!」
 「だ、大丈夫そう?」
 「あんまり大丈夫じゃないにゃ。 だから早く他を片付けて戻ってきて欲しいにゃ」

 何とも心許ない返答だったが、今はそれを信じるしかなかった。
 他のメンバーは既に東側の抑えに向かっている。 
 まんまるは早くグロウモスとマルメルを仕留めなければならない。 
 
 グロウモスを狙おうとして急旋回。 僅かに遅れてまんまるの居た位置に弾体が通り過ぎる。
 ハンドレールキャノンだ。 

 『俺を無視とか舐めすぎでしょ』

 どうやら北側を全滅させたマルメルがこちらに来たようだ。
 もう少しかかると思っていたが、移動時間も含めて妙に早い。
 最大望遠にしてマルメルの機体を視認。 それを見て思わず眉を顰めた。

 構成がかなり変わっていたからだ。 滑るような移動と大型化した脚部パーツ。
 ホバリングで移動している。 移動速度の向上はこの所為か。
 元々、マルメルは機体構成上、空中戦は出来ない。 その為、機動は基本的に平面だ。

 地形が入り組んでいるのならそれに合わせた立体的な起動にはなるが、しっかり見ていれば分かる。
 プラズマグレネードをばら撒いて退路を制限。 両肩の砲はレーザーとの撃ち分けが可能なのだ。
 そのままチャージして発射。 砲口を個々に動かす事で照射位置を動かせる。

 『ひぇ!? ちょ、これヤバ――』

 仕留められそうなタイミングだったが、選択したのは回避。 
 高出力のレーザーが飛んでくる。 グロウモスだ。
 マルメルに気を取られている間に移動してこちらに狙いを付けて来た。

 こちらは空中、二人は地上。 距離があるお陰で対処は出来るが、相手も同様だ。
 グロウモスは位置を変えながら常にこちらを狙い、マルメルはエネルギー弾を撃ち込んで牽制を入れて来る。
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