Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第736話

 今回、『豹変』は優勝を見据えて様々な準備をしてきた。
 強敵には個別で対策を練り、この日に備えて積んで来たのだ。
 『星座盤』対策もその一つで、ポンポンは思う所があったのかかなり力を入れていた。

 ヨシナリとはそれなり以上に仲がいいとは思っていたが、勝負事に関しては別のようだ。
 彼女としては意地でも叩き潰したい相手の一人とかなり力が入っている。
 ヨシナリに関してはもう既にポンポンが当たっている以上は気にしなくていい。

 問題は残りのメンバーだ。 
 マルメル、グロウモスはまんまる自身が相手にする事もあって彼女の頑張り次第となる。
 安定した中衛とほぼ必中の狙撃手。 前者は爆撃によって狙いを絞らせず、ばら撒きに専念させればハンドレールキャノンは飛んで来ない。 

 あの扱いの難しい武装を簡単に当てられるのは中衛、後衛どちらもこなしてきたまんまるとしては素直に尊敬できる。 あれは簡単に真似できる物ではない。
 感じから狙って当てるというよりは何度も何度も撃ち続けて弾道を目に焼き付けた先にある「感覚で当てる」という境地だろう。 

 恐らくマルメルには見えているのだ。 撃つとどんな軌跡を描いて弾体が飛ぶのかを。
 対策は練って来たが、当然ながら相手も弱点をそのままにしている訳がなかった。
 ホバー移動によって地上での走破性能が大きく向上しており、装備している武器も変わっている。

 突撃散弾銃。 近~中距離戦を意識しての事だろう。
 これまでも戦闘からアノマリー以外の携行武装の使用頻度は低い点から役割をざっくりと変える事で持ち変えを意識している。 

 よくよく見れば背面のバックパックも大型化している。 
 付け加えるならバックパック、突撃散弾銃と見覚えのない型だ。
 特に後者は特殊な装飾が施されている点から市販品ではなく、特注品――恐らくはジェネシスフレーム用に製造された専用装備だ。 間違いなくマルメルもランカーからの支援を受けている。

 立ち回りからアリスだろう。 ケイロンが参戦しているのはその関係?
 以前までの彼であったなら既に仕留めていた自信はあったが、そうならないのは進化しているからだ。
 木々を器用にすり抜け、こちらの砲撃を掻い潜り、ハンドレールキャノンをチャージして牽制しつつ、アノマリーによる銃撃。 

 ――駆け引きが上手くなってますぅ。

 最初に狙いの正確さを見せられている以上、警戒せざるを得ない。
 直撃を貰うと今のまんまるでも不味い。 あれだけは喰らってはいけないのだ。
 意識させる事が狙いという事も理解はしているが、とてもではないが無視はできない。

 加えてシックスセンスによるセンサーリンクを行っているのを知ってる事もあって片方をチャージしていつでも撃てるという事を見せつけている。 目が良い事を逆手に取った動きも上手い。
 そしてマルメルに意識を向けすぎるとグロウモスが刈り取りに来る。

 ちらりと少し離れた位置ではニャーコがふわわ相手に頑張っているが、あの様子だと早めに助けに行かないと不味い。 ふわわに関してはまんまるの理解を大きく超えていた。
 下位のフレームを使っているにも関わらずあの強さ。 意味が分からない。

 戦力評価は既にランカーと同じ扱いだ。 直接相対しているニャーコに至っては格上と認識している。
 ホーコートが落ちた以上、人数的に僅かなアドバンテージはあるが、他のメンバーも油断できない。
 シニフィエもふわわの身内という事もあって格下と侮っていい相手ではなかった。

 そして残りのユウヤとケイロン。 ランカーである以上、要注意人物だ。
 無理に撃破を狙うよりは足止めに徹して他が片付くのを待つのが賢い。
 だから他のメンバーには徹底してまともにぶつかるなと指示を受けていた。

 ――とにかく数を減らすゾ!

 ポンポンが「星座盤」に対して最も重要なのは前置きしたのはこれだ。
 彼らの強みは個人技だけでなく、高度な連携にある。
 実際「烏合衆」は分断する事でそれを封じて見せた。 

 結局の所、勝つにはまんまる達がどうにか落とさなければならないのだ。
 本音を言えばポンポンかツェツィーリエに頑張って欲しい所ではあるが、あの様子だと時間がかかる。
 つまり自分が頑張らないといけない。 かかるプレッシャーに胃の辺りが重くなるが、頑張るぞと奮い立たせる。

 攻撃をレーザーからプラズマグレネードに変更。 マルメル相手にレーザーでは捉えきれない。
 線でなく面で削る。 そして撃ったら即座に移動。 
 一瞬前までいた位置をレーザーが薙ぐ。 グロウモスだ。
 
 彼女の厄介な点は正確に狙って来る上、こちらの撃ち終わりのタイミングで撃って来る。
 両肩の主砲は威力が高い分、ジェネレーターへの負荷が高い事もあって気軽に連射できない。
 防御や飛行にも出力を回さなければならない関係で、撃ち終わりが最も脆弱になる瞬間だ。

 向こうにはヨシナリだけでなくアルフレッドというシックスセンス搭載の支援機が居る。
 こちらのエネルギー流動は常に監視されていると見ていい。
 更に厄介な点は撃った後に即座に位置を変える点だ。 

 追えはするがそれをするとマルメルが狙って来る。
 
 ――やっぱり二対一は無茶だよぉ……。

 どちらか片方であるならかなり正確に勝ち筋を見出せたが、今の状態だと凌ぎながら隙を伺う千日手に近い状態になってしまう。 まんまるは必死に頭を働かせる。 
 この状況は二対一だからこそ成立している以上、片方を無理してでも落とせたなら勝ちの目が見えてくるのだが、どちらも簡単に落ちてくれないのが問題だ。

 今のまんまるで思いつく手はカウンター。 グロウモスが撃ってきたタイミングで撃ち返す。
 こちらも喰らう可能性が非常に高いが、防御力を比較するとこちらは無事で済む可能性は低くない。
 他のメンバーの事もある。 

 ちらりと確認するとケイロンの射撃とユウヤ相手に逃げ回る仲間の姿が見えた。
 下手に反撃せずに逃げに徹しているお陰でどうにか生き残っているがあの様子では長くは保たない。
 ニャーコもまだ健在。 通信からは「にゃ、にゃ……」と焦りの混ざった声が聞こえる。

 ――次、次で勝負に出る。

 守ってばかりでは勝てない。 積極的に攻めに行かないと。
 次にグロウモスが仕掛けたタイミングでカウンターを決める。 
 マルメルから一瞬でも意識を切るのは怖いが、自分ならやれると自己暗示。
 
 センサーの感度を最大にしてグロウモスの姿を追う。 動き回っている。
 狙うのは足を止めた時、こちらが狙っていると悟られるな。
 マルメルの銃撃を凌ぎながら応射。 足を止めた。 

 ――ここだ。
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