Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第737話

 二機のトルーパーが螺旋を描くように上昇している。
 一機はヨシナリのホロスコープ。 
 パンドラを解放しエーテルの黒に染まったその機体は敵を噛み砕かんとしている。 

 対するもう一機――ポンポンは背後を取ろうとするヨシナリ相手に常に正面を取る為に同じような動きをし、結果的に螺旋を描いて上昇を続けているのだ。 
 知ってはいたが目の当たりにすると思った以上というのはヨシナリ達を相手にすると常に思ってしまう。
 
 ヨシナリを正面に捉えるように旋回し、銃撃を繰り返す。 
 機動性と旋回性能では負けているポンポンは攻撃を躱せずに盾で防ぎながら撃ち返す形になる。 
 自分だけ一方的に撃たれるのは面白くないが、ヨシナリの機動は諸刃の剣だ。

 使えば使うほどに機体は損耗する。 その為、余裕がないのはヨシナリの方だ。
 ポンポンはちらりと高度を確認する。 そろそろトルーパーで上がれる限界高度。
 つまり動きを変えなければならない。 どうする? 下に回り込むか?

 ――いや、意表を突くなら――

 「上だよナぁ!」

 ホロスコープの出力が更に上がり、背後ではなく真上を取りに来た。
 エーテルに浸食されたアトルムとクルックスが凄まじい勢いでエーテルの弾を吐き出す。
 銃を使い潰す覚悟で無理をさせに来た。 本来なら実弾と単発のエネルギー弾しか撃てないアトルムとクルックスがエーテルで構成された散弾をフルオートで吐き出す。

 盾を構え、機能を解放。 液体金属が淵から飛び出し防御範囲を広げる。
 射程が短いと聞いていたが、有効射程内なら威力は申し分ない。
 盾に伝わる衝撃から重たい一撃である事が分かる。 破壊はされないが衝撃で押し込まれるのが分かった。

 銃撃が止むと同時にヨシナリが小さく舌打ちする。 
 シックスセンスで確認するとアトルムとクルックスが無理な稼働で壊れたようだ。
 反撃の為に液体金属部分を破棄し、銃を向けようとしたがそれよりも早く更に重たい衝撃が盾に叩きつけられる。

 何だと思ったのも刹那。 
 ヨシナリはアトルムとクルックスが使えなくなったと同時に推力を全開にして盾に突っ込んで来たのだ。 流石に機体一機分の質量と衝撃は殺しきれずに体勢が崩れるが、この盾――ゼラチナス・ヌガーは平らではなく機体を覆う関係でやや丸く膨らんだような形状をしている。

 ――つまり。

 「お前みたいに突っ込んで来る奴はこうやって処理できるんだよナぁ!」

 強引に盾を振ってヨシナリのタックルをいなす。 
 ホロスコープが流されるが、そこはヨシナリも想定していたようで旋回で背後を取ろうとする。
 無駄だとポンポンも即座に対応するがヨシナリは背後を取らずにそのまま一周。

 上を取りに来る。 ポンポンが銃を構える前にヨシナリがアシンメトリーを連射。
 こちらもエーテルで強引な稼働を強いているらしく凄まじい連射速度と威力だ。
 ポンポンの盾は物理、光学の両面で高い防御性能を誇るが、エーテルで半物質化した弾は質量を伴った衝撃となって打ち据える。

 跳ね除けようとするが想定以上に重たい衝撃が連続して発生して動けない。
 徐々に地上へと押し込まれていく。 

 ――何が狙いだ?

 地上戦へと引き込みたい? 
 ヨシナリとしてはポンポンの盾を攻略しない事にはまともにダメージを与えられない。
 ならどう崩す? ヨシナリの武装でポンポンの防御を崩せそうなのは――

 「それだよナぁ!」

 ヨシナリは撃ちながら接近していたようで既に接近戦の間合い。
 アシンメトリーは大破したらしく投げ捨てており、ハンマーを既に振りかぶっている。
 だが、ポンポンの盾は簡単には砕けない。 

 「何で盾が丸いか知ってるか? こうやって衝撃を流す為だゾ!」

 確かにそのハンマーの威力は凄まじい。 だが、衝撃の芯さえ流せたならそこまでではない。
 受けて流す。 盾の扱いはかなり練習したのだ。 今では息をするように実行できる。
 ヨシナリの横薙ぎの一撃は盾のギリギリを通過して当たっていない。

 外した? 違う、溜めたのだ。 ヨシナリはハンマーを振り回しすモーションを維持。
 独楽のように回りながら旋回。 背後を取る気だ。 
 ポンポンは受け流すつもりでいた事もあって反応が僅かに遅れる。
 それでも旋回するヨシナリとその場で回るだけでいいポンポンとは速度に差があった。

 ――充分に間に合う。

 背後に回るヨシナリに追いついたがヨシナリは振らずに一周。
 そこで溜めていた力を解放した。 防御は間に合ったがタイミングが微妙にズレた。
 衝撃。 ダメージはないが機体と盾が僅かに軋む。

 防いだと判断して突撃銃を構えたと同時にヨシナリの両足のクレイモアが起爆。
 視界一杯に散弾が広がる。 

 「クソッ!」

 思わず声が漏れる。 何故なら今ので突撃銃が破壊されたからだ。
 投げ捨てながらお返しとばかりに盾を突き出してのシールドバッシュ。
 
 『ぐお!?』
  
 完璧に捉え、ヨシナリの手から大剣が零れ落ちる。 
 盾の裏に仕込んでいた拳銃を掴みながら次の攻撃の組み立て。
 このまま吹き飛ばして銃弾を浴びせようとしたのだが――離れない。
 
 盾にしがみ付いている。 

 「この、離せ!」
 『いやぁ、実を言うと前の対抗戦で負けたの割と気にしててですね。 絶対に借りを返してやろうと思ってたんですよ』

 不味い。 理屈ではなく嫌な予感がした。 
 何か見落としたのか? そう考えてヨシナリの言葉の意味を考える。
 正解は直ぐに出た。 ヨシナリが言っているのは以前の対抗戦の話だろう。

 あの時、追い込まれたポンポンはツェツィーリエのいる場所までヨシナリを誘導して仕留めた。
 意趣返しを狙っているのなら、死角から飛んでくる。 それができる奴が『星座盤』に一人いる事も知っていた。 

 シックスセンスの感度を最大。 エネルギーの反応を――見つけた。
 グロウモスだ。 既にチャージを終えたライフルをこちらに向けて構えており、観測したと同時に発射。
 シールドバッシュで腕が伸びきっている状態では防御は確かに間に合わない。

 なら盾を手放せばいい。 マウントを解除。 手を放し、エネルギーウイングを全開にして回避。
 グロウモスの狙いは正確だが、裏を返せば確実に当たる軌跡を描く。
 つまり狙っているであろう位置を避ければ躱せるのだ。 際どいが充分に間に合う。

 いや、間に合ったのだ。 
 だが、高出力のレーザーは途中で折れ曲がりポンポンの回避先を正確に射抜いた。
 反射ドローン。 見落としていた事を思い出す。

 「畜生。 次は負けないからナ!」
 『えぇ、待ってますよ』

 そんな捨て台詞しか残せずにポンポンの機体は爆散。 脱落となった。
 
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