Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第738話

 ――あぁ、マジで神経が磨り減る相手だったな。

 ヨシナリはパンドラを停止させ小さく息を吐いた。 
 ポンポンは仕留めるには中々に骨が折れる相手だ。 
 盾による防御を軸とした戦い方は完成度が高く。 見た目以上に崩すのが難しかった。

 あの盾を貫ける武器があれば楽だったのだが、そんな代物はホロスコープにはない。
 エーテルで強化したアシンメトリーの連射で碌に傷つけられなかったのだ。
 貫通は現実的ではない。 加えて肩のアタッチメントと自機に密着させる事で身を固める事で衝撃にも強い。

 高威力の連打を叩きこめばノックバックは起こせるが、それもハードルが高い。
 事実としてあそこまで追い込むのにアトルムとクルックスだけでなくアシンメトリーまで使い捨ててしまったからだ。 

 ――それだけの犠牲を払ってでも仕留める価値のある相手ではあったが。

 可能であれば自力で仕留めたい相手ではあったが、チーム戦である以上はそういった拘りは捨てるべきだ。 そんな訳でグロウモスの狙撃が届く位置まで追い込んで奇襲への警戒心を可能な限り削ぎ落した。
 防がれる事を防ぐ為にあの盾が邪魔だった事もあって手放させる為に頃合を見計らって警戒心を復活させ、躱す以外にない状況に持って行った。

 手放す所までは読み通りだったが、当てたのは紛れもなくグロウモスの技量だ。

 「いや、マジで助かりましたよ。 グロウモスさん」
 「ふ、フヒ! わ、私も泥棒猫を駆除出来て嬉しい」
 「泥棒?」
 「こ、こっちの話だから気にしなくていいよ」

 よく分からなかったが幾分かスッキリした様子のグロウモスを見る限りきっと良い事なのだろう。

 「なぁ! おしゃべりするのは良いんだけどそろそろ助けてくれねぇかなぁ!?」

 不意にマルメルの声が割り込んで来る。 見ればまんまるの砲撃で追い込まれつつあった。
 ヨシナリとグロウモスは苦笑して同時に動き出す。

 「悪い、悪い。 イラを拾いに行くからもうちょっと待っててくれ」
 「早くしてくれよぉ……」

 即座にグロウモスの援護が飛ぶ。 
 ヨシナリは強敵を撃破した手応えに小さく拳を握り次の戦いへと急いだ。


 ――あぁ、駄目でしたぁ……。

 まんまるは敗北を悟る。 ポンポンが撃墜されたからだ。 
 グロウモスの狙撃を許してしまったのは失敗ではあったが、どうしようもなかった。
 それに――レーダー表示から味方のシグナルが次々と減っていく。 
 
 ケイロンとユウヤをいつまでも抑えておけるわけがなかったからだ。
 最後にニャーコだが――逃げるように森から上昇して飛び出してくるが酷い有様だった。
 全身を切り刻まれ、片腕がなくなっている。 

 「にゃぁ、やっぱ無理だったにゃ……」

 悪あがきと言わんばかりに残った拳を構えているが、諦観の色が濃い。
 周囲に出現した刃の群れを突破したが、その頃にはふわわが突っ込んで来ていた。
 ニャーコが拳を分身させてのラッシュを繰り出すが、目の前すれすれを通り過ぎて当たらない。

 それを見てまんまるは青ざめる。 ニャーコのラッシュを分身込みで完全に見切っているからだ。
  
 ――あんなのに当てられる訳がないですぅ……。

 『増える拳は面白かったわ。 また戦ろうな?』
 「割に合わないからできればもうごめんにゃぁ……」
 
 斬。 まんまるの見ている前でそんなやり取りが交わされ機体が両断された。
 二つになったニャーコの機体が爆散。 

 「あぁ……」

 思わず声が漏れた。 
 ツェツィーリエはまだ生き残っているが、ベリアルとの戦いに夢中で他に構っている余裕がない。
 最後に残った味方機がユウヤの散弾砲を喰らって爆散するのを見てまんまるの胸に諦めが浮かぶ。

 それでもと足掻く為に砲を向けるが、グロウモスの狙撃が飛び、大剣を回収したヨシナリが突っ込んで来る。 狙撃を躱したタイミングで大剣をハンマーへと変形。
 こちらの防御を剥がしに来る。 まんまるの機体は砲戦機だけあって他に比べると機動性は低い。

 その為、正面からの機動戦闘になると分が悪いのだ。
 こうなると逃げ出すべきかとも思うのだが、ツェツィーリエが残っている以上はそんな真似は出来ない。
 結果、後退しながら砲撃するという事しかできなくなるのだが、それすらも満足に出来なさそうだった。 強引に後退した後に地上――マルメルのいる位置とは違う方向から二発の砲弾。
 
 ユウヤとケイロンだ。 防御フィールドが剥がされた所を見計らっての砲撃。
 完全に同期して仕掛けてきている。 この状況は厄介どころか詰んでいた。
 ヨシナリに防御を剥がされ、後退に一手。 グロウモスの狙撃を躱すのに一手。

 ユウヤとケイロンの砲撃を躱すのに更に一手。 
 これだけ誘導されれてしまえば、マルメルの一撃を躱せるわけがなかった。
 ダメ押しとばかりに飛んで来たマルメルのハンドレールキャノンの一撃を正面から喰らい機体に大きな風穴が開く。

 「せ、折角、機体を新調したのになぁ……」

 もうちょっといい所を見せたかったと悔しさを滲ませて爆発。 
 そのまま脱落となった。 

 
 ――今回は負けね。

 ツェツィーリエはチーム戦での敗北を悟っていた。 
 今回に関しては経験を積ませる意味でもポンポンをリーダーとして指揮を任せる形を取っていたのだ。
 元々、ツェツィーリエは指揮官には余り向かないと自覚していた事もあって将来的には自分よりも視野の広いポンポンを核にチームを形成できればと思っていた。

 その一環だったのだが『星座盤』相手は少し分が悪かったようだ。
 特に枠を全て埋めており、片方はケイロンでもう片方は未だに正体不明。
 味方の減り方に不自然な点がいくつかあった事もあって何かされた可能性が高い。

 結局の所、相手の戦力の未知の部分に対する備えが足りなかったという事だろう。
 後で反省会は必要だろうが、今はこの戦いを楽しみたい。 
 ベリアルとの攻撃の応酬。 あの時は付いて行くだけで精一杯だったが、今は拮抗できている。

 その事実に自身の成長を実感できた手応えがあった。 
 当然ながらツェツィーリエはそれだけで満足しない。 これから目の前のベリアルを越えるのだ。
 ベリアルを近接で圧倒できるぐらいの力がなければこの先――Sランクへは届かない。
 
 彼女にも上への渇望は存在する。 Sランクという称号が欲しい。
 ラーガストを倒し、王座を簒奪したいといった欲望があるのだ。 
 
 ――私が頂点に至るまでの通過点として倒されて頂戴。

 ツェツィーリエは更にギアを上げ、足だけでなく手を使う為に攻撃を切り替えた。
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