Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第740話

 ホーコートはぶつぶつとこうかな?こうだったかな?と何やら反芻しているのか心ここにあらずといった様子だ。
 そんな話をしている間に全員が帰って来た。 

 「はい、皆さんお疲れさまでした。 取り敢えず感想戦を始めたいんですけど大丈夫ですか?」
 
 見た所、多少の疲労はあるようだが感想戦をする余力はありそうだった。
 
 「おう、俺の活躍を見ろ! そして褒めろ!」
 
 ふんふんと鼻息の荒いマルメルに苦笑しながら映像の再生を開始。
 俯瞰視点でフィールドにメンバーの機体が次々と現れる。 
 開始と同時に全員が移動を始める。 

 元々、マップの端に移動して襲ってくる相手を迎え撃つ方針だったのだ。 
 マップの中央付近でやや北寄りだった事もあって北側の端へと向かう。
 フォーメーションはケイロンをトップに少し後ろのマルメルとユウヤ。

 これはケイロンの方が突進力に優れている事もあるが、連携に不慣れな彼を起点にした方が他も動き易いからだ。 ふわわ、シニフィエは更に後ろ。 
 彼女達を下がった位置に置いているのは側面からの奇襲に備えてだ。

 加えてグロウモスやアルフレッドが襲われた場合、即座にカバーに入れる位置でもあった。
 ヨシナリとホーコートも同じ位置だが高さが違う。 やや上で空からの強襲への対処だ。
 ほぼ全員が何かしらのアップグレードを行っている事もあって動きを見たかったという考えもあっての配置だったが、対応力も高い。

 実際、正面に居た敵機を瞬く間に処理するのは見ていて気持ちがいい。
 ケイロンが斬り込み、取りこぼしをマルメルとユウヤが処理する。
 空から来た相手はヨシナリとホーコートで対処。 こうして見ると中々にバランスがいい。

 そもそも正面からの撃ち合い、殴り合いに滅法強いケイロンが敵を散らしてくれるだけで後ろにいるマルメルとユウヤはやり易かっただろう。
 ヨシナリ自身に関しては確認以上の意味はなかったので意識を向けるのはホーコートだ。

 四基のエネルギーウイングを用いた急加速と急停止。
 特に小刻みに噴かす事で動きに緩急が付いているのは秀逸だ。 
 それにより相手の距離感を微妙に狂わせている。 これが自力なら素直に褒めてやりたい所だなのだが、挙動に無駄がなさすぎた。 

 インドのカンチャーナや敵性トルーパーの動きに類似点が多く見られる挙動だ。
 つまりやってる・・・・。 どうやら自分の言葉は一切響かなかったのかと思い少し悲しくなったが、ホーコートがそれを選択し、運営が許容しているのならヨシナリからは何も言う事がなかった。

 ――それにしてもどういう事だ?

 これまでは右旋回のみだったが、バリエーションが増えてる点から運営から貰ったのだろう。
 接触があった? 例の機体を貰ったタイミングが怪しいな。
 機体と挙動に関しての考察は既に済んでいる。 何か隠していないのならこれ以上は視るべき点はなかった。

 見ている間に映像は進み。 「豹変」が仕掛けて来た。
 
 「嫌なタイミングで仕掛けて来たなぁ」
 
 思わず呟く。 実際、嫌なタイミングだった。
 最初の敵の処理を終えて少し気を抜いた所だったからだ。
 
 「ってかこれ狙ってなくね?」 
 「俺も段々そう思えて来た」

 実際、そうなのだろう。 更に俯瞰するとこの時点でコンシャス達が包囲に入っていた。
 「豹変」にくっ付いて移動している点から同期して仕掛けるつもりなのが明白だ。
 北側の端に移動する事を見越して多めに戦力を割り振り、残りで退路を断つと。

 数が居る事もあるが、布陣のやり方が秀逸だ。 
 明らかに今、声をかけて集めたといった様子ではない。 
 
 「これは事前に声をかけてたな」
 「そうなん? でも予選のブロック分けってランダムやないの?」 
 「そうですけど、恐らく同じブロックに入ったら共闘という条件でかなりの数に声をかけたんでしょうね」

 どれだけのユニオンに声をかけたのかは不明だが、完全ランダムで振り分けられるはずにもかかわらずに6チームも集まっている時点で尋常ではない。
 規模の小さい所からすればコンシャスと組めれば予選突破が見込めるとでも思ったのだろう。

 付け加えるなら同じブロックに振り分けられたらという不確定な話という事もあって取り敢えずで頷いた所は多いと見ていい。 そういった点でも上手くやっている。
 ポンポンの反応から「豹変」にも声をかけたのだろうが、断られたといった所か。
 ただ「豹変」は高い確率でこちらに襲い掛かって来ると読んで彼女達が仕掛けるのを待ち、始まったのを確認した後、同期して仕掛けに行ったと。

 「勝てないって分かってるなら逃げりゃいいのにチマチマとお友達集めて他所に便乗して囲んで袋狙いかよ。 雑魚は必死だなぁ」
 
 ユウヤは侮蔑を隠しもしない。 ヨシナリとしても同意する所だった。
 数で押し潰すという何の捻りもない手段しかないのなら避けて予選突破を狙えばいい。
 包囲する所までは指示が行き渡ってはいたが、所詮は即席のチーム。

 頭数だけでまるで統制が取れていない。 

 ――まぁ、だからこんな事になってるんだよなぁ……。

 映像を見ると非常に分かり易い。  
 ヨシナリとホーコートが引き剥がされ、指揮に意識を割けなくなった所で各々が動き出した。
 一応は最低限の動きは事前に言い含んでおり、動揺は少ない。

 真っ先に動いたのはケイロンだ。 真っすぐにコンシャスへと突っ込んで行く。
 それに続く形でユウヤ、ふわわ、シニフィエも移動を開始。 
 見え辛いがアイロニーも気配を消して東へと向かう。
 
 マルメルは敵の気勢を削ぐ為に北側へと向かう。 
 ユウヤ達に続かない辺りは周りが見えていた。 
 包囲されるのは不味いと判断して敵の意識を散らそうとしているのだろう。
 
 グロウモスも似た考えなのか、アルフレッドを連れて西側へと移動。
 さて、誰からフォーカスするかと迷うがマルメルが俺にしろと熱い視線を向けてくるのでまぁいいかと動きを追いかける。 
 
 北側はヨシナリ達の目的地である事は掴んでいたはずだ。 
 根拠としては前回と同様にマップの端に陣取って迎撃態勢を取られて負けた事もあって対策を取るのは当たり前だった。 

 「それにしてもホバー移動いいな。 何というかスーッと動くなぁ」

 思わずそう呟く。 挙動の滑らかさが以前までの比ではない。
 地上ではエネルギーウイング以上に小回りが利く事もあって減速がほとんどないのだ。
 
 「だろ? ここまで仕上げるのに結構かかったぜ……」

 練習でぶつけまくったかいがあったとマルメルは何度も頷いた。
 
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