Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第741話

 言うだけあって大したものだった。
 木々の隙間を縫うように移動している姿はすり抜けているのではないかと思うほどだ。
 射程に入ったと同時にアノマリーで牽制射撃からの有効射程に入ったと同時に当てに行った。

 上手い。 有効射程外だと当てても即死にならない事もあって牽制に留めたのだ。
 敵は二十機。 三分の一が固まっている。 
 グロウモスとアルフレッドが比較的、近くに居た事もあってセンサーリンクが活きている事もあって回避に入るまでの反応が早い。 敵がエイムした頃には既に躱しに行っている。

 ハンドレールキャノンを使わないのは防御に出力を回す為だ。 
 今までなら取り敢えずハンドレールキャノンをぶっ放すというのがマルメルの挙動だったのだが、動きに防御と回避を意識できる余裕のような物が感じられる。

 攻撃密度の薄い所を狙って突撃。 被弾はフィールドと自前の装甲で防ぐ。
 突破。 そこで新しく持ち変えた武器を構えた。 
 ハンドレールキャノンを使わなかった最大の理由はこれだろう。 
 
 突撃散弾銃。 名称の通り、散弾をフルオートでぶっ放せるという非常に凶悪な代物だ。
 しかも使っているのは市販品ではなく特注品――恐らくはアリスが以前に使っていた物だろう。
 その証拠に非常に凝った装飾が施されている。 トランプの兵隊や城の刻印が目立つ。

 射程に捉えたと同時にフルオート射撃。 

 「うひゃぁ……」

 シニフィエが思わずといった様子で声を漏らした。 
 表には出さなかったがヨシナリもひぇと内心で声を漏らす。
 連射されたスラグ弾が重装甲のパンツァータイプを瞬く間に穴だらけにする。

 ――携行火器の威力じゃない。

 敵の布陣はマルメルから見て左右に十機ずつ。 恐らくはユニオン単位で固まっていたのだろう。
 狙ったのはソルジャータイプとパンツァータイプで構成されている方。
 機体構成から当て易いと判断しての選択だろう。 

 「それにしてもとんでもない威力だな」
 
 スラグ弾のフルオート射撃とかホロスコープが喰らったら一瞬で粉々になってしまう。
 
 「だろ? 元々は重装甲の大型エネミーを意識した武装だったんだってよ。 だけど、防御系の兵装が充実してきたからトルーパー相手でも過剰火力にならないってよ」
 「あぁ、防御特化のジェネシスフレームだとあれぐらいは要るのか」

 固まっていた事が災いし、パンツァータイプは瞬く間に食い尽くされた。
 即座に次の獲物へと銃口向けると今度は散弾が吐き出される。 
 上昇して躱そうとしていたソルジャータイプが瞬く間にハチの巣になった。
 
 「あぁ、マガジンの前後で弾種が違うのか」
 「おう、機体側の操作で切り替えられるんだ」

 ――なるほど。

 使う前はマウントした状態だから機体側でどちらを使うか決められるのも便利だ。
 戦闘中は任意で切り替え。 面白い武器だ。
 何よりも素晴らしいのは実弾兵器である事。 ジェネレーターに一切負担がかからないという大きな利点がある。

 特に被弾率が高いマルメルからすれば防御に出力を回せるのはかなりありがたいはずだ。
 瞬く間に1チームを喰いつくしたマルメルは次の獲物を狙いに行く。 
 敵はⅡ型とキマイラが数機の高機動型のチーム。 相性が余り良くない。

 マルメルは突撃散弾銃からアノマリーへとスイッチ。 
 小刻みに連射しつつ相手の視界を遮る為に木々の深い所へと入る。
 良い判断だ。 無理に仕留めに行かずに削る方針に切り替えた

 それ以上に判断そのものが早い。 敵はキマイラが先回りして森に銃弾や砲弾をばら撒き始める。
 恐らくは炙り出した所で集中砲火を喰らわせるつもりなのだろう。
 マルメルはどう対応したのかというと――キマイラを完全に無視して木々を躱しながらアノマリーをすっと構える。 狙うのは比較的、動きの悪いソルジャータイプ。

 アノマリーから放たれたエネルギー弾は狙った機体の肩を捉える。

 「一応、コックピットを狙ったんだけどやっぱ動きながらの精密射撃は難しいな」
 「それでも効果はあったな」

 敵機は狙われていると判断して後退。 
 元々、突撃散弾銃を警戒して距離を取っていたのだが、更に離れて安全を確保しに行った。
 
 「あぁ、怖くなったんかな?」
 「相手は一人で包囲も出来てるのに何でそこで日和るかなぁ……」

 ふわわとシニフィエの反応はやや辛辣だ。
 
 「ち、直撃はしなかったけど当てたのはかなり大きかったと思う。 あれで相手がかなり警戒しだした」
 「所詮は頭のない群れ。 統率が取れていないのは仕方もない、か」
 
 グロウモスは感心、ベリアルは纏まりのない敵にやや呆れている。
 ユウヤは所詮は雑魚と侮蔑を隠しもしない。 
 ホーコートはさっきから何かを考えるようにうーんと首を捻っており、アイロニーとケイロンは無言。

 ヨシナリは敵からマルメルに視線を戻す。 彼は精密射撃はあまり得意ではない。
 移動しながらだと精度はかなり落ちる。
 それで数を減らすのは余り賢いとは言えないだろう。 なら狙いは何だ?
 
 動きからそれが見えてくる。 
 攻めていると見せかけて牽制に留めているのは時間を稼いでいるのだろう。

 逃げ回る振りをして中々に良い位置に移動していた。 
 そして狩場に入った所でキマイラ二機が撃ち抜かれる。 
 グロウモスの狙撃だ。 彼女が相手を片付けるまで敵を牽制しつつ、狙い易い位置まで誘導した。

 「何処から見えてた?」
 「割と最初から。 足の遅い連中は俺で処理できるけど、あの数の高機動機は無理。 ――そんな訳でグロウモスさんの手が空くまでダラダラ時間を潰してたって訳だ」

 時間を潰していたと言ってはいるが撃ちやすい位置までしっかり誘導している点からも視野が広がっている事が分かる。 残りは消化試合に近く、フリーになったグロウモスが狙いに来た事により意識が散った敵を狙ってマルメルが逆襲を開始。 

 敵が全滅するまでそうかからなかった。 

 「どうよ?」
 「いや、お見事。 機体も目立ったダメージ受けてないし、あの乱戦でこれだけの生存力を見せつけられたら褒めるしかねぇよ」

 本音だった。 映像を見る限り頼もしさしか感じない。

 「だろ? 褒めろ! 俺をもっと褒めろ!!」
 「マルメル偉い! 強い! 頼りになる!」
 「マルメル君凄ーい」「凄ーい」
 「流石っす」「まぁ、いいんじゃねぇの?」「中庸の戦士よ。 安定感が増したな」
 
 口々に褒め言葉を口にし、グロウモスはうんうんと頷く。 
 アイロニーとケイロンは付いて行けずに目を白黒させていたが、慣れていたメンバーは流れるように称賛から拍手へと移行。 

 皆から褒められてマルメルは嬉しそうにくねくねと身をくねらせた。 
 
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