Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第742話

 気持ちよくなっているマルメルから視線を切って映像を操作。
 次だ。 マルメルとの絡みがあったので、次はグロウモスを選択。
 フォーカスすると彼女の立ち回りは終始「らしい」動きだった。

 敵からすれば逃げ回るような動きだったが、彼女からすれば狙い易い狙撃ポイントへ移動したに過ぎない。 西側は合計で十機。 キマイラが三機、残りは高機動タイプのⅡ型。
 空から圧をかける役目でも与えられていたのか散っている。
  
 挨拶代わりと言わんばかりに一発目でキマイラが落ちた。 
 停止から狙撃に移行するまでが早い。 アルフレッドの支援があると言え尋常ではない照準速度だ。
 残りの二機のキマイラが散開。 敵討ちと言わんばかりに加速するが、グロウモスは一切慌てる様子を見せずに明後日の方向へレーザーを放つ。

 放たれた光は空中で反射してグロウモスへと肉薄しようとした機体を綺麗に撃ち抜いた。
 反射ドローンだ。 二機以上を経由すると精度が著しく落ちるが、一機なら普通に狙うのと遜色ないクオリティが出せる。

 「うわ、すっげー角度で曲がったな」
 「まぁ、反射だからな。 ドローンの動かし方と当てた角度で割と自由が効くらしいぞ」

 グロウモスはスコーピオン・アンタレスを敵機に見せつけるように明後日の方向へと向ける。
 敵機は即座にバレルロール。 ヨシナリは内心でこれは駄目だと顔を手で覆いたくなった。

 「見るのは銃口じゃなくてドローンの方がよかったな」
 「うん。 だからこんな簡単な手に引っかかる」

 グロウモスはすっと銃口を回避先に向けて発射。 
 実体弾がキマイラの両足――推力偏向ノズルを二基を綺麗に撃ち抜く。
 推進装置を破壊されたキマイラは煙を上げたと思ったらそのまま爆発。

 一番厄介なキマイラを落とせば後は楽なものだろう。 高機動に特化したキマイラであれなのだ。
 それ以下の機動性しかないⅡ型で躱せる訳もなかった。 次々と撃墜され、瞬く間に全滅。
 
 ――これは酷い。 

 相変わらず恐ろしいまでの狙撃精度だ。 射程内ならほぼ必中。
 森に身を隠している事もあって発射のタイミングが取り辛いのも相手が躱せなかった要因だろう。
 自分の獲物を全て処理したグロウモスはちらりとヨシナリの方を見たが、マルメルの援護を優先。

 「いい判断ですね」
 「う、うん。 遅くなってごめん」
 
 謝る必要は全くなかった。 マルメルを優先したのは敵がまだ残っている状態でヨシナリへの援護を優先すれば居場所を割られる可能性が高かったからだろう。
 ポンポンはグロウモスのいる場所に一発銃弾を撃ち込むだけでマルメルの相手をしている連中が察知してターゲットを変える可能性は充分に有り得る。

 そのリスクを排除する選択をしたのは良い判断だ。
 マルメルの相手をしていた敵機を全て処理し終えた所で、ポンポンと戦っているヨシナリの方へと銃口を向ける。 
 
 ポンポンと凄まじい高機動戦闘を行っているヨシナリだったが、グロウモスがフリーになったと察して射線に誘い込むような動きに変わった。

 「なぁ、ヨシナリ。 気付いてたのか?」
 「まぁな。 ポンポンさんは明らかに俺を他から切り離したかったからみたいだし、裏を返すと連携を取られると困るって考えているのは丸分かりだったからな。 近い味方の挙動は意識して見てた」

 マルメルの質問に即答。
 手の内を知られている格上相手なのだ。 まともに戦えば分が悪いのは分かり切っていた。
 
 「ただ、あの人は中々、警戒を解いてくれないからグロウモスさんから意識を切らせるのは中々に苦労したぞ」

 結局、パンドラを切らされたしなと付け加える。 
 連続戦闘が想定される大規模戦では機体の損耗はかなりのリスクだ。
 その為、パンドラを使うのは必要に迫られた時だけと決めていたが、こうもあっさりと使わされるのはあまりいい傾向とは言えない。

 気付かせるのは最後の最後。 ポンポンはグロウモスの狙撃の腕を知っている。
 咄嗟の判断で躱しに来るはずだ。 そこを逆手にとって反射で回避先を狙い撃つ。
 
 「ってかあのタイミングで反応できるポンポンもヤベぇな」
 「シックスセンスを積んでるからあれぐらいはやるよ」

 回避先を綺麗に撃ち抜かれて爆散したポンポンを見てグロウモスはフヒと笑いを漏らした。
 笑い方にいつも以上の粘着質な何かを感じたが、努めて無視。
 良い感じでしたねと締めて次の映像へと切り替える。

 ――早めに消化しておくか。

 少し迷ったが出番の短い上、いい顔をしない者が多そうなホーコートにフォーカス。
 彼の動きをじっくり見たい気持ちとニャーコの機体が気になっていたからだ。
 まずはホーコートの機体から。 オビディエンスフレーム。

 どう見てもリベリオンフレームのコンパチモデルだ。 
 見た目が微妙に違うだけでほぼ同じものというのがヨシナリの感想だった。
 ただ、推進装置がエネルギーウイングだけあって総合力ではこちらが上だろう。
 
 本人は抽選で当たったと言っているが間違いなく違うと見ていい。
 装備もグレードこそ上がっているが構成自体は大きく変わっていないようだ。
 戦い方自体はそのままで――動いている姿を見て内心で小さく溜息を吐く。

 何故なら完全にやっている・・・・・動きだからだ。
 起点が右旋回だけでなくなった所からチートもアップグレードされている。
 実際、序盤は無駄がなさすぎる動きで敵を次々と処理していた。

 機関拳銃とバトルライフルの組み合わせもバランスがいい。
 バトルライフルは弾丸に銃弾ではなくライフル弾を使っているだけあって装填数が少ない代わりに貫通力が高く、以前まで使っていた突撃銃よりも大型なだけあって射程も長い。

 動きの組み立てから以前よりも下がった位置からバトルライフルで銃撃。
 掻い潜って来た場合、機関拳銃に切り替えて牽制。 距離をとってバトルライフルにスイッチ。
 エネルギーウイングを複数使っているだけあって機関拳銃は緊急用といった所だろう。

 腰の滑空砲は重装甲の敵に対しての備えか。 
 挙動に関してもインドサーバーに居たカンチャーナにかなり近くなっている。
 特に回避の組み立ては似ているなんてものではなかった。
 
 ヨシナリは平静を装いつつ他のメンバーの反応を見る。
 マルメルは「あー」と僅かに声が漏れており、ふわわは何も言わない。
 グロウモスも無言でシニフィエはアバター状態で分かり辛いが視線がホーコートに行っている。

 ――明らかに好意的な態度ではなかった。
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