Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第743話

 流石にここまで露骨だとほぼ初見のアイロニーとケイロンも気付いたらしく、アイロニーはやや不審な目を向け、ケイロンは一瞥したが視界に入れる価値もないと言わんばかりにすぐ逸らす。
 ユウヤとベリアルは見もしない。 

 「どうっすか!? いやぁ、新しい機体もそうですけど調子いいんですよね!」
 
 気付いているのかいないのか当の本人はやや興奮気味だ。
 ヨシナリはそうかと曖昧に応え、ハイライトであるニャーコとの戦闘まで進める。
 こうしておけば全員の注目がニャーコに集まる事もあって空気も少しは変わるはずだ。

 戦闘が始まった。 ニャーコの機体は装甲の薄い軽量機という事もあって機動性が高い。
 ホーコートの射撃も正確ではあったが、まともに捉えられていないのは流石だ。
 元々、接近戦でのスキルが高い事もあって距離を詰めながらもしっかりと躱している。

 特に上半身を縮めて全身を振るような動きはボクサーのそれに近い。
 
 「上手いな」
 「そうやねー。 射線を見てから躱すまでかなり早くなってる」
 
 特に緩急の付け方が秀逸だ。 
 旋回を用いずに躱す技術を磨いたのだろう、間合いを詰めるのが異様に早く見える。
 無駄を減らした事で接近戦での動きのクオリティが上がっていた。

 中距離を維持したいホーコートは接近される前に後退しつつ銃撃で追い払う。
 ニャーコは腕を交差させて防御。 それを見てヨシナリはおやとなる。
 明らかに防御を捨てているビルドに見えたが、何らかの防御機構を積んでいるのだろうか?

 注視するとなるほどと理解が広がる。 腕を中心に空間歪曲を展開して銃撃を防いでいた。
 ここで注目したいのは腕を中心にしているという事だ。
 
 「空間歪曲かー。 あれって燃費悪いから軽量機には積みにくいんじゃなかったか?」
 
 マルメルがいいなぁと少し羨ましそうにしている。
 それに苦笑しながら「いったん止めます」と断ってから映像を停止。
 防御しているニャーコの機体をフォーカス。 

 「よく見たら分かるんだけど腕に展開装置を積んでるんだ。 多分だけど両腕合わせて辛うじて上半身を守れるってレベルの狭い範囲に限定する事で機動性を落とさずに実装出来たんだろうな」
 「あぁ、なら横とか後ろはがら空きって事か?」
 「そうだと思う。 明らかに間合いを詰める事に特化した機体だし、横と後ろはどうでもいいんだろ」

 思い切った構成だ。 強みを活かして可能な限り尖らせた戦い方は面白い。
 数度の攻防を繰り返すがそれを見てヨシナリはふーむと考察にシフトする。
 
 「ふ、見に入ったか」

 最初にニャーコの動きに対しての答えを出したのはベリアルだ。
 彼の言う通りだろう。 ニャーコはホーコートの動きに一定のパターンがある事を察してモーションパターンを盗む事に集中したのだ。 

 ホーコートの戦い方の組み立ては中距離より手前は機関拳銃で牽制し、離れた所でバトルライフルでの射撃。 バトルライフルは取り回しにやや難がある代わりに長射程だ。
 その為、以前よりも得意レンジが後ろになってしまう。 下がり過ぎた場合は腰の滑空砲の出番となる。

 単純ではあるがバランスはいい。 
 問題はバリエーションが増えたと言ってもチートの本質は変わらない事だ。
 特定の挙動をほぼ100%再現するといった縛りがある以上、どれか一つでも完全に盗めたならそこから崩せる。

 ――やっぱり、最適解を自動で選択するからある程度の読み合いができる奴が相手だと話にならないな。

 ニャーコが盗んだのは機関拳銃からバトルライフルへとスイッチする瞬間だ。
 一気に肉薄。 ホーコートは躱そうとしたがニャーコのショートフックが脇腹に突き刺さる。
 回避自体は成功しているはずだったが、ニャーコの拳は普通ではなかった。

 「なんか拳増えてません?」

 シニフィエの言う通りだった。 拳の周囲に二つほどの分身が現れ、文字通りの三連発だ。
 出現の仕方と拳を構成している代物に覚えがあった。 エーテルだ。
 ニャーコはエーテルで拳を増やして手数を増やしつつ間合いを微妙に狂わせている。

 増やした拳は射出している事もあって見た目よりもかなり大きく伸びた。
 実際、ホーコートは躱しきれずに貰っている。 これに関してはチートの有無は関係ないだろう。
 ヨシナリも初見では躱せる自信がなかった。

 こうなってしまうともうどうにもならない。 
 スイッチのタイミングを狙われた事もあってバトルライフルが手から零れ落ちる。
 それでも諦めずに機関拳銃で反撃しようとするが、見せた以上は隠す理由もなく打撃に乗せてエーテルの拳を次々と射出。 速度は拳の速さに依存するのか、パンチの質によって軌道も変わっていた。

 「タクティカル。 本来の拳はレールと考えた方がいいのかもしれないな」
 「ですね。 最初に見せたフックの時は弧を描く感じで、ジャブは真っ直ぐ。 拳の動きで軌道を操ってるって感じでしょう」
 
 ヨシナリは面白いと思いながら自分ならどう攻略するかを考える。
 ニャーコの機体は明らかに攻撃と防御の全てを腕に依存していた。
 一番いいのは腕の破壊だ。 片腕で単純に半減、両腕で無力化まで行ける。
 
 高威力で防御を飽和させる? ホーコートのやり方はそこまで不味くなかった。
 泥仕合になるが、徹底して距離を取って削りに徹すれば仕留められるか?
 いや、距離を維持できない。 どこかのタイミング踏み込まれる。
 
 なら誘い込んでカウンター――ヨシナリの思考は映像の中で撃破されたホーコートの姿で断ち切られた。 

 「まぁ、頑張ったな」
 「はは、お恥ずかしいっす」

 ホーコートは余り気にしている様子もなく、失敗したと言わんばかりに身を縮ませる。
 それを見て内心で眉を顰めた。 インド戦の後と態度が違い過ぎたからだ。
 心境の変化でもあったのだろうか? 少し気持ち悪いと感じるぐらいの違和感だ。

 「……次、ふわわさん行きますか」
 「お? ウチー? ええよー」

 考えても答えが出ないのは分かり切っている事は思考から蹴り出し、映像を切り替える。
 
 「一番ヤバい映像になりそう」

 マルメルの呟きに苦笑しながらもヨシナリも同感だった。
 彼女の場合は少し特別だ。 前に負けた事もあってリベンジの為に研究させて貰おう。
 ふわわはケイロンに続く形で東――コンシャスを仕留めに動いていたのだが、途中で停止。

 理由は南に布陣していた敵機が追いかけてきていたからだ。 
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