Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
744 / 865

第744話

 恐らくはコンシャスの指示だろう。
 包囲を敷いたのだが、南側は完全に無視しているのだ。 
 射程外に逃げられるぐらいなら包囲を崩してても挟撃に使おうと判断したのだろう。

 ケイロンを先頭に大部分が固まっているのなら最大戦力で噛み砕くという判断は悪くないが――

 「メンバーの練度を計算に入れてないなぁ」

 足りなかったのはそれだろう。 寄せ集めという事実が頭から抜けている。
 ふわわは少し迷ったが一人だけ引き返す。 
 シニフィエが付いて行こうとしていたが追い払うように手を振っていた。

 「えーん、お義兄さん。 獲物を横取りするなって姉が横暴なんですよー」

 棒読みで泣き真似を始めるシニフィエからそっと目を逸らし、映像を進める。
 ぶーぶーと抗議するシニフィエをはいはいとあしらって映像内ではそろそろ接敵だ。
 敵はキマイラが三機、残りはⅡ型。 

 どこも空と地上から圧をかける形にしたのは最低限の作戦共有をしているからだろうか?
 足を止めたふわわは野太刀を構え、キマイラが寄って来た所で横薙ぎに一閃。
 ギリギリで届く距離だ。 いくら彼女の腕でも捉えるのは難しいはずだ。

 ――狙いは別か。 

 キマイラ三機は想定していたのか慌てる事なく急上昇で回避。 
 横の一撃なのだ上か下に逃げれば躱せる。 
 一見、意味のない一撃に見えたが、明らかに次への布石だ。
 
 「狙いはその後か」
 「そうやねー」

 振り切った野太刀の柄を手放し、即座にナインヘッドドラゴンを一閃。
 持ち変えるまでの速さがこれまでとは段違いだ。 ほぼ溜めがない。
 だからと言って力が入っていない訳ではない。 ふわわはエネルギーウイングを使って強引に姿勢を変えてそれに乗せる形で振ったのだ。

 元々、人体の一部として機体を操っていた彼女だったが、機体として人体から逸脱した挙動で攻撃を成立させている。 タイミングは躱した後、ふわわを射程に収める為に僅かに減速した所を狙ったのだ。
 三機纏めて切り刻まれた。 全て綺麗に両断とは行かなかったが、一機は胴体を横に真っ二つ。
 一機は両膝を切り飛ばされてそのまま墜落。 残りの一機は片足、片腕を切断。

 推進装置を失って錐揉みしながら墜落し、損傷の影響か途中で爆散した。
 
 「減速した所を狙って一網打尽か」
 「いつまでも上がらへんやろうからどっかで足を止めると思ったわー」
 
 映像は進む。 ふわわは斬撃の結果を見もせずに姿勢を低くして走り出す。
 
 ――もう次を捕捉してる。

 ヨシナリは空でアルフレッドはグロウモスが連れて行ったのでセンサーリンクは切れているはずなのにまっずぐに獲物へと突っ込んで行く。

 「エネルギーウイングを噴かさなかったのは何でですか?」
 「使うと光るからなぁ」
 「なるほど」

 先制する為に可能な限り気配を消しているのは分かるのだが、普通に体捌きだけで木々を躱しているのは一体何なんだろうと思ってしまう。
 50程の距離でふわわが敵を捉えたようだ。 背中に刺さっている柄を両手で一本ずつ抜くと投擲。
 柄は高速で回転しながら敵機へと飛び、完全に捉えたタイミングで柄から液体金属の刃を形成する。

 二本の刃は綺麗に狙った敵機のコックピット部分を貫いた。
 
 「あぁ、アレ当たるんだ」

 いい加減に驚くのにも疲れてしまったヨシナリは乾いた笑いを漏らしながら感想を呟く。
 投げた後には既に次の攻撃モーションに入っていた。 野太刀だ。
 敵機は唐突に味方機がやられた事に警戒して足を止める。 既視感すら感じる流れだ。

 横薙ぎに一閃。 森の一部と残りの敵機全てを一撃で切って落とした。
 
 ――投げて仕留めたのは全体の足を止める意味もあったが、長物を持った機体を狙ったのか。

 確実に足を止めてばらける際に他から離れると判断して真っ先に仕留めたのだろう。
 
 「質問いいですかね?」
 「なーに?」
 「長射程の機体をどうやって見分けたんですか?」
 「ちょっと後ろに居ったから」
 「そっすか」

 センサー系の支援なしで同じ真似ができるのだろうかとヨシナリは首を捻りながら木々と共に崩れ落ちる敵機を眺めていた。  
 不意にふわわが腰の太刀に手を伸ばしながら抜き放とうとして動きが止まる。
 理由は現れたのがアイロニーだったからだ。
 
 「あの距離まで気付かんかったから焦ったわぁ」
 「プラクティカル。 簡単に看破されても困る」

 ――で、何をしているかというとステルスヴェールを一枚ふわわに渡していた。

 理由は僅かな時間でも捕捉されるのを避ける為だ。
 用事が済むとアイロニーはすっと姿を消して何処かへ行ってしまった。
 ふわわは気配を消して移動を開始。 狙いは上空からヨシナリを砲撃していたまんまるだ。

 「それにしてもあれだけボカボカ撃たれてよく無事やったなぁヨシナリ君」
 「何とかって感じでしたよ」
 
 間合いに捉えたと同時に野太刀による振り下ろし。 
 完璧なタイミングでまんまるはふわわが攻撃に入るまで気付いていなかった。 
 入ると思ったが横から飛び込んで来たニャーコが野太刀を殴りつけ、半ばで圧し折る。 

 「やー、タイミングを合わせられるとは思わんかったわぁ」
 「ホーコートを処理してすぐに駆け付けたって感じですね」

 ようやく反応が追い付いたまんまるがふわわに向けて薙ぐようなレーザー攻撃。
 ふわわは何の問題もないと言わんばかりに躱す。 
 まんまるもふわわが尋常ではない躱し方をすると判断してレーザーで焼き切ろうとしたようだ。

 プラズマグレネードの方が範囲が広いがアレは爆発で視界が悪くなる。
 ふわわを一瞬でも視界から消すのを嫌がった結果だろう。 
 選択としては決して間違っていない。 そもそも砲戦機で彼女を捉える事自体が難易度が高いのだ。

 ふわわは超人的な反応でレーザーを掻い潜る。 
 六つの砲口を動かす事で攻撃範囲が異様に広いのだが、物ともしない。
 捉えきれないと判断したニャーコが前に出て足止めを買って出る。
 
 ふわわは接近戦ができると判断し、喜んでニャーコを迎え撃つべく野太刀から太刀と小太刀に得物を切り替えた。 推進装置に重力制御を使っているだけあって動きが滑らかだ。
 一気に肉薄すると拳を固めて殴りに行く。 

 ――ふわわさん相手に拳で行くとか勇者かよ。

 ちょっと尊敬してしまう。
 本来ならふわわの心配をする場面のはずなのだが、彼女が接近戦で負ける姿が想像できなかった事もあってニャーコは大丈夫そうかなとさえ思ってしまった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

局地戦闘機 飛電の栄光と終焉

みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

森のカフェしっぽっぽ

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。 一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、 猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。 しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。 地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。 ただし、異世界人は地球には来られない。 行き来できるのはサトルだけ。 向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、 頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、 静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、 サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。 仕事に疲れた会社員。 将来に迷う若者。 自信をなくした人。 サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。 そして、棚の影で震えるジル。 怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。 それでも店からは逃げない。 その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。 これは―― 福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。 震えながらでも前に立つ者が、 今日も小さく世界をつなぐ。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。