Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
750 / 865

第750話

 ヨシナリはよく凌いではいたが数が違いすぎる。
 早々に追い込まれ始める――具体的にはポジショニングが追い付かなくなってきた。
 
 「あー、やっぱりこの辺から露骨に遅れてきてるなぁ」

 自身の動きを見ながら試合の内容を振り返る。 
 明らかに捌き切れていないからだ。 徐々に追い込まれていたが、マルメルの援護によってわずかにフォーメーションに乱れが生じた隙を突いて変形。 急降下して森へと飛び込む。
 
 「おー、これやられると狙いづらくなるなぁ」
 「俺としては近くで戦闘している所まで行ってちょっとでも擦り付けられたらって思ってたんですけど、割と遠かったんですよね」

 俯瞰に切り替えるとよくわかる。 
 ヨシナリ達「星座盤」のいるエリアから一番近い戦闘区域は1キロ近くも離れているのだ。
 明らかにおかしい。

 「これは多分だけどコンシャス達の仕込みだろうなぁ」
 「そうなのか?」
 「あぁ、そうでもなきゃこんな露骨に隔離されないよ。 大方、声をかける過程で協力が得られなかったユニオンには因縁の相手との決着をつけたいから手を出すなとでも言ったんじゃないか?」

 コンシャスはヨシナリ達を疫病神の類と信じて疑っていないらしく、祓う為ならどんな事でもするだろう。 

 「なんか、あの人の中では俺達はどこまでも付きまとってくる怨霊か何かに見えたのかもしれないな」
 「は、雑魚が負けた時の言い訳に使いそうな文言だな」
 「ふん、どちらにしても数を頼んで嬲るような真似は好かん。 奴らは負けて当然の卑怯者だ」

 ユウヤは小馬鹿にしたように鼻で笑い、ケイロンもそれに同調した。
 
 「タクティカル。 私としてはその勝利への執着は買いたいところだがな!」
 「ふ、戦いとは最終的に勝者がその是非を問うもの。 愚劣な策であろうとも勝てば官軍とでも思ったのだろう。 だが、奴らは負けた。 あれだけの策を弄して負けた以上は無能と言われても文句は言えまい」
 「ルールには抵触していないから勝てば正当化はできたんだろうけど、やるにしてももうちょっと連携を詰めとけばよかったのに」
 
 言いながら割と肯定的なアイロニー以外は全員辛辣だなと思いながらヨシナリは映像を進める。
 ホロスコープは木々を縫うように飛んで距離を取ろうとポンポン達から離れるが、彼女達は上空から銃弾や砲弾をばらまき始めた。 ヨシナリが逃げを打った事で一方的に攻撃できると判断したのか容赦がない。

 「この体勢になるとまんまるさんが滅茶苦茶厄介でさぁ……」

 思い出しながら何度もひやひやしたと付け加える。

 「どうでもいいがなんで直接追わなかったんだ? 一人か二人使い潰す気で行きゃぁヨシナリ潰すぐらいは何とかなったんじゃねぇか?」
 
 ユウヤの指摘は尤もだった。 まんまるが自由に撃てる事で一方的に仕掛けられるのだ。
 ヨシナリを早めに片づけたいなら機動性の高い機体で退路を強引に潰しに行けばいい。
 少なくともそれをやるとヨシナリはさらなる綱渡りをするか森から空に上がらざるを得なかった。

 「それに関しては先を見据えてだろうな。 さっきも少し触れたけどポンポンさんとしては俺を可能な限り無傷で処理したかったんだと思う。 コンシャス達がいるからしばらくは安全だとは思ったんだろうけど、俺達が負けるとも思ってなかっただろうし、後に控えてるふわわさんや、ユウヤにケイロンさんと厄介な相手を処理したいならどうしたって戦力が要る」

 だから可能な限り安全に一機ずつ処理したい。 そんな考えだったのだろう。
 結果が伴わなかった以上は問題があったのだろうが、判断としては決して間違っていないと思っていた。 ポンポンが最終的に見据えていたのは「星座盤」の全滅。

 その目標に向け全力だったというだけの話だ。 

 ――ただ、ヨシナリの冷徹な部分は甘いと断じた。

 逆の立場だったらどうすれば勝てたか? 
 考えれば割とアイデアは出てくる。 敵は1チーム10+1機。
 未知数の機体を加味しても大半は既知だ。 処理はどうにでもなる。

 加えて協力的ではないとはいえ利用できるコンシャス達までいるのだ。
 どうしても勝ちたいのならヨシナリがポンポンの位置なら真っ先にホーコートを狙う。
 理由としては一番落としやすいからだ。 物量差がある以上、敵の数を減らす事はかなり大きい。

 つまりフォーメーションとしては逆にする。 ポンポンでヨシナリを抑え、残りでホーコートを瞬殺。
 次は可能であればグロウモスを狙う。 あれだけ派手に撃ち合っているのだ。
 シックスセンスがあれば補足は難しくない。 後は捉えやすいマルメル、シニフィエと数を減らせばコンシャス達の勢いも強まる事になり、そのまま崩せる。

 ベリアルはツェツィーリエが抑えているのでしばらくは放置し、ふわわ達を一機ずつ処理していけばいい。 少なくともグロウモスを落とす所まで持って行けたなら勝率はかなり上がる。
 単純に勝利だけを追求するのならこれぐらいはやった方がよかったのかもしれない。

 恐らく、ポンポンとしては指揮官としての仲間の安全、勝利の為の道筋、その際に発生するリスク――最後にヨシナリに対しての過大評価。 その全てを加味した上での判断だろう。
 視野が広いといえば聞こえは良いが、今回に限ってはノイズが多かった。

 一つか二つは捨てるべきで、目標が多すぎた所為で勝利への執着が薄まっている。
 少なくともヨシナリの処理に拘ったのは悪手だ。 
 それだけ危険と認識していたのだろうが、ポンポンは身内に甘すぎる。

 安全マージンを取る事と過保護なまでに守ることはイコールではない。 
 彼女はそこを見誤ったといえるだろう。 

 ――だからと言って何も手を打っていなかった訳ではない。

 よくよく見てみるとまんまるが砲撃に紛れて何かを地面に打ち込んでいた。
 
 「あぁ、これかぁ」
 
 思わず呟く。 
 以前の防衛線で似た武器を使われた経験もあって警戒はしていたのが幸いしてどうにか対処はできたが、早々に取り入れてくるとは思わなかった。

 「遠巻きに狙いながら罠を仕掛けてたって訳か。 危ねぇなぁ。 近くにいたら気づかずに踏んずけてたかもなぁ」
 「いや、戦場から剝がしながらだから可能性としては低いと思う」

 爆破。 ヨシナリはパンドラの開放でどうにか突破し、それに紛れてポンポンが勝負を仕掛けに行く。
 
 「無理に仕掛けに行ったのはコンシャス達が全滅したからか」
 「あぁ、これに関しては最初に決めてたんだろうよ。 遠距離から削るだけ削って時間が来たら直接叩きに行くってな」

 いくら森を逃げ回っていたとしてもあれだけの砲火にさらされて無傷とはいかなかったからだ。
 
感想 0

あなたにおすすめの小説

ホスト異世界へ行く

REON
ファンタジー
「勇者になってこの世界をお救いください」 え?勇者? 「なりたくない( ˙-˙ )スンッ」 ☆★☆★☆ 同伴する為に客と待ち合わせしていたら異世界へ! 国王のおっさんから「勇者になって魔王の討伐を」と、異世界系の王道展開だったけど……俺、勇者じゃないんですけど!?なに“うっかり”で召喚してくれちゃってんの!? しかも元の世界へは帰れないと来た。 よし、分かった。 じゃあ俺はおっさんのヒモになる! 銀髪銀目の異世界ホスト。 勇者じゃないのに勇者よりも特殊な容姿と特殊恩恵を持つこの男。 この男が召喚されたのは本当に“うっかり”だったのか。 人誑しで情緒不安定。 モフモフ大好きで自由人で女子供にはちょっぴり弱い。 そんな特殊イケメンホストが巻きおこす、笑いあり(?)涙あり(?)の異世界ライフ! ※注意※ パンセクシャル(全性愛)ハーレムです。 可愛い女の子をはべらせる普通のハーレムストーリーと思って読むと痛い目をみますのでご注意ください。笑

局地戦闘機 飛電の栄光と終焉

みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

森のカフェしっぽっぽ

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。 一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、 猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。 しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。 地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。 ただし、異世界人は地球には来られない。 行き来できるのはサトルだけ。 向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、 頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、 静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、 サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。 仕事に疲れた会社員。 将来に迷う若者。 自信をなくした人。 サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。 そして、棚の影で震えるジル。 怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。 それでも店からは逃げない。 その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。 これは―― 福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。 震えながらでも前に立つ者が、 今日も小さく世界をつなぐ。

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。