Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第752話

 カウントダウンがあっさりと始まるとそのままフィールドへと移動。
 ステージは毎回変わらずの荒野。 少しの間をおいて試合開始となった。
 このステージは精々、小さな岩山ぐらいしかない開けた場所と言う事もあって敵の補足は簡単だ。

 「フォーメーションはケイロンさんをトップにユウヤ、マルメルが左右。 ふわわさん、シニフィエ、ベリアルは相手の機体構成が一通り割れたら好きにしていいです。 ホーコートは俺と、グロウモスさんはいつも通りアルフレッドと身を隠しつつ狙撃を。 アイロニー戦場を見て独自判断で」

 一気に指示を出してヨシナリは機体を急上昇。 捕捉している敵機を視覚でも捉えようとするが――
 
 「いない?」

 反応のある場所に敵機の姿が見えなかった。 その割にはレーダー表示はそこに敵がいると示している。
 ヨシナリは即座にウイルスチェックを行いながら反応の位置をスキャニング。
 ウイルスチェックは異常なしと結果が出たと同時に反応の不自然さに気が付いた。

 微動だにしないのだ。 つまり――最大望遠。
 そこには杭のような物が複数突き刺さっており、何かの信号を発するようにランプが点滅していた。
 
 「反応を偽装するダミーって所か。 全員、警戒! もう来てます!」

 同時に前方から無数の反応。 三機のトルーパー――強化装甲装備のソルジャー+がグレネードランチャーを連射。 ポンポンと何かがすっぽ抜けたような音を立てながら榴弾が放物線を描いて飛ぶ。
 狙いは先頭のケイロンだ。 

 ヨシナリは先手を取られたと内心で小さく舌打ちしながらアシンメトリーを構える。
 発射前にエネルギーウイングを噴かして後退。 一瞬前までホロスコープが居た場所を無数の銃弾が通り抜ける。
 
 発射位置はヨシナリから見て正面。 光学迷彩を解いて現れたのはエンジェルフレーム――違う。
 その廉価版オビディエンスフレームだ。 こちらも三機。
 
 「おいおい、運営から抽選で当たった奴だけが貰えるんじゃないのかよ」

 思わず呟く。 プレイヤーネームを確認すると地上の三機は『α-3』『α-4』『α-5』。
 正面は『α-6』『α-7』『α-8』と胡散臭すぎるほどに統一感あふれる名前が並んでいた。
 突っ込みどころしかない連中ではあるがヨシナリの反応が遅れたからくりに関しては分かっている。

 初手で姿を消し、その場に偽の反応を残しておく。 
 そうしておくと敵を補足したと錯覚したヨシナリは奇襲の可能性を自ら消してしまう。
 結果、敵は悠々と探知を搔い潜れるという訳だ。 中々に屈辱的な躱され方だった。

 ――潰す。

 「ホーコート! 一機でいい。 抑えろ!」
 「はい! 任せてください!」

 打てば響くという速さでホーコートがバトルライフルを連射。 
 応じるつもりなのか一機が露骨に離れてホーコートの方へと向かう。
 残りの二機は光学迷彩で姿を消すが、シックスセンス搭載機であるホロスコープの前では無意味だ。

 ――それ以前に目の前で姿を消して逃がす訳がないだろうが!

 視覚から消えたとしても動体、熱源をごまかす事は難しい。 
 敵機は散開して挟み撃ち――反応が何故か十機分も検出された。 
 
 「またダミーか。 思った以上に厄介だな」

 シックスセンス対策なのか偽の反応があちこちで検出される。 
 よくよく視れば偽物と分かるが、その間に刺しに来る狙いだろう。
 明らかにこちらの強みを潰しに来ていた。 対策としてはよく練られていたが、ヨシナリとてシックスセンスの扱いに関しては熟達していると自負している。

 感覚で真贋の見分けぐらいはつけられるはずだ。 
 視ろ、見ろ、みろ。 ダミーに攻撃能力はない。 つまりあからさまな動きをしている物は怪しい。
 本当に警戒するべきは意識の死角を突く動きをしている奴。 つまり当たれば死ぬ奴だ。

 上下左右、正面背後。 今のヨシナリが最も反応し辛いのは――

 「下ぁ!」

 即座にアシンメトリーを撃ちこむ。 反応の一つが旋回で回避。
 真下、数メートルもない近距離。 姿を現すと同時に手榴弾のような物を放る。  
 シックスセンスでスキャニング。 ダミーではない。 内部でエネルギーが拡大している。

 どうやら居場所を看破される前には起動していたようで爆発まで一瞬もない。
 咄嗟にエーテルで機体を保護。 爆発。 熱や爆風ではなく、電磁パルスがまき散らされた。
 エーテルを纏ったお陰で駆動系は問題ないが、シックスセンスの探知項目の大半が死んだ。

 ――目的はこっちの目を潰す事か。

 至近距離だった事もあってしばらく――具体的には1分弱は使い物にならない。
 正確には探知項目の一部は数秒で戻るが、複合センサーだけあって機能が戻る項目に誤差が出るのだ。
 特に動体と熱源は戻りが遅い。 

 「この野郎。 随分と的を絞った目潰しをしてくるじゃねぇか」

 明らかに狙っていたとしか思えない効果だ。 同時にグロウモスの方でも似た爆発が発生。
 どうやらアルフレッドも同じ代物を食らったようだ。 前衛の出鼻を挫き、目であるヨシナリとアルフレッドを機能不全にした。 恐らく次の狙いはグロウモスだろう。

 足が速いのは――

 「ベリアル! お前が一番速い! 後衛のフォローを頼む!」
 「任せろ」
 
 即座にベリアルが後退し、マルメルがそれに続く。

 「ヨシナリ! 俺も下がる。 上に三機、下に三機、姿を見せてないのが四機だ。 手数が要るぞ!」
 「助かる! 油断するな。 なんか今までの連中とは毛色が違うぞ!」
 
 指示を出す前にマルメルが動いてくれたのはありがたい。 
 敵からすればグロウモスはかなり目障りなはずだ。 潰すのに人数をかけるのは間違いない。
 ベリアルだけでも大丈夫と思いたいが手数が足りなくなる恐れもある。
  
 それに前衛は足りている以上はマルメルの下がる判断は間違っていない。 
 マルメルの抜けた穴はふわわが即座に塞ぎ、敵機へと突っ込んでいく。
 シニフィエは敵に忍び寄るべく戦闘に紛れて姿を消した。 ケイロンに至ってはもう撃ち返している。
 
 ユウヤもいる上、アイロニーも危ない所を見てくれているはずだ。
 下は心配ない。 だから、ヨシナリは目の前の敵機に集中するべきだと判断。
 敵機も電磁パルスを浴びているはずだが、何の効果もないと言わんばかりに突撃銃――ではなく、ホーコートの使っている物とよく似たバトルライフルをバースト射撃。

 躱しながらアシンメトリーを実弾に切り替えてフルオートで撃ち返す。
 敵機は旋回で回避。 挙動に既視感を覚えて内心でまたかよと呟いた。
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