Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第754話

 連射されたニードルのいくつかを躱せずに被弾。 
 損傷は大きくないが、ニードルから発せられた高圧電流がアルフレッドの動きを硬直させる。
 敵機はグロウモスを無視してバトルライフルをアルフレッドへ向けた。
 
 ――こいつ、最初から。

 迷ったのは一瞬。 グロウモスはスコーピオン・アンタレスを投げ捨てて変形。 
 全速力でアルフレッドに突っ込み、体当たり。 射線から強引に吹き飛ばす。
 直後、バトルライフルからのフルオート射撃が彼女を襲い、機体を穴だらけにした。

 
 
 「グロウモスさん!? マジかよ……」

 味方機――グロウモスの反応がロスト。 近くにいた事もあって理由は分かり切っていた。
 アルフレッドを庇ったからだ。 マルメルは両肩のガトリングガンでアルフレッドに追撃しようとしている機体を追い払い。 その隙を突いてエネルギーライフルによる射撃をフィールドを展開して防御。

 「あ、くそ、やっぱり貫いてくるなぁ」

 機体にダメージ。 チェックするとあまりよろしくない状態だ。
 フィールドで威力の大部分を減衰したが、強化装甲まで削ってきている時点でかなり効く。
 同じ場所にもう一撃喰らうとまずい。 ベリアルの方も簡単にはいかないらしく、拮抗している。

 ――それにしてもなんだこいつら?

 名称、機体と全てにおいて胡散臭い。 
 そもそもベリアルを単騎で抑えられる奴が無名というのがあり得ないのだ。
 やってる挙動から運営の仕込みかなにかというのが正解だろう。

 その割にはこれまでに出くわした運営が繰り出してきた有人操作エネミーより遥かに強い。
 アノマリーのエネルギー弾をさらに撃ちこんで敵のエンジェルタイプもどきを追い払い、アルフレッドが復旧するまでの時間を稼ぐ。 

 麻痺が解けたアルフレッドは即座に状況を理解したのか榴弾を撃ちながら後退。 
 
 ――よし、いい子だ。 そのまま逃げてくれ。

 無事に離脱してくれた事に内心でほっとしつつ空いた手でリトル・クロコダイルを抜く。
 片手で撃つには向かないが二機を相手にする以上は無茶をするしかない。
 エンジェルタイプもどきは明らかにアルフレッドの撃墜をあきらめていなかったからだ。

 「二機相手はきついぞ!」

 リトル・クロコダイルによる散弾のフルオート射撃で弾幕を張ってエンジェルタイプを押さえ込みつつ、アノマリーでもどきを牽制。 
 敵機はマルメルの狙いを散らす為に固まらず、離れた位置にポジショニング。

 ――あくまでアルフレッドを狙いに行くつもりか。

 厄介ではある事は確かなのだが、それ以上にやり難い。
 
 「なんか嫌な感じだなぁ」

 上手く言葉にはできなかったが嫌な相手ではあった。 

 ――頼むから誰か片付けて助けに来てくれぇ。 
 
 マルメルはそんな事を考えながら常に自機を挟んで反対にいる二機を抑える為に銃弾をばら撒いた。


 「なーんか、やり難くされてる?」

 ふわわはぽつりとそう呟いた。 
 少し離れた所ではユウヤとケイロンが、さらに離れた位置ではシニフィエが敵機と交戦中だ。
 後方でも戦闘の気配。 恐らくはアイロニーが捕捉されたのだろう。
 
 相手のランクはB~Dランク。 低くはないが高くもない。
 そんな相手にランカー達が抑え込まれている。 不思議な話だ。

 ふわわの目の前には一機のオビディエンスフレーム。 
 他と違い強化装甲もなく、やや軽量化が図れているのかパーツの構成も違う。
 恐らくは近距離を意識したビルドだろう。 奇襲ではなく正面からくる点から自信があるようだ。

 「まぁ、どんな物か見せてもらおかな?」

 背の柄を抜いて即座に曲刃を形成し、流れるような動作で投擲。
 回転しながら刃が飛んだと頃には既にふわわは次のアクションに入っていた。
 腰の太刀――ナインヘッド・ドラゴンを掴むと一閃。

 範囲は既に括ってある。 どう躱す? 
 お手並み拝見と観察していたが敵機は彼女の想定の上を行った。
 曲刃を拳銃で撃ち落とし、何かを使用した。
 
 破壊は起こらないが、不可視の衝撃のようなものが伝播する。
 
 「うん?」

 ふわわは思わず眉を顰めた。 転移によって敵機を切り刻む刃があらぬ方へと飛んで行ったからだ。
 明らかに狙った座標と違う場所に出現していた。 ミスはなかったはずだ。
 何らかの手段で転移を妨害したのかもしれない。 

 つまりは転移系の武装は使えない。 

 「なら直接叩けばええなぁ」

 判断は即座。 ふわわは脳内の選択肢から転移を削除。 
 太刀と小太刀を抜いて斬りかかる。 敵機は腰にマウントされていたナイフを抜いて迎え撃つ構えだ。
 拳銃を連射して牽制を入れてくるが直撃弾だけ小太刀で叩き落し、残りは無視。
 
 間合いに入ったと同時に太刀で袈裟に斬りかかる。 
 敵機は拳銃を捨てると空けた手でナイフを逆手で抜いて受け止めた。
 単純に受けるだけでなく刃先を滑らせて懐に入ろうとまでしてくる。

 当然ながらそんな事をさせてやるつもりもなく、小太刀を振るうがそれよりも早く蹴りが飛んできた。
 小太刀を手の中で回して逆手に変え、手の甲で蹴りを撃ち落とす。
 バランスを崩した所で摺り足で相手の残った軸足を払おうとするが、エネルギーウイングを噴かして肩でぶつかろうとしてきた。 
 
 当然、喰らってやる訳もなく、ふわわもエネルギーウイングを噴かして機体を強引に回す。
 それによりタックルと太刀で受けていたナイフをいなしてそのまま背後を取りに行くが、敵機も回転を止めずに追いかけてくる。

 「うん。 えぇなぁ」

 小太刀を振るうのに合わせて敵機もナイフを振るい衝突により火花が散る。
 同時に蹴りを放ち距離が離れた。 ナイフと打撃を織り交ぜた動き。
 器用に順手、逆手に持ち変える構えから、近いのは軍隊格闘術だろうか?

 感触からかなりしっかり根付いた動きだ。 相当に訓練を積んでる。
 それだけならもう少し楽なのだが、この敵の最も面白い所は殺気がまるでない・・・・・・・・事だ。 

 目の前の敵機はフラットな気持ち――要は何もない空間に向けて素振りでもするような感覚でナイフを振り回し蹴りを放っている事になる。 以前に父が口にした無我の境地というものなのだろうか?
 よく分からないが違うような気がする。 

 ――まぁ、どちらにせよちょーっとは楽しめそうやなぁ。

 毛色の違う相手に思わず笑顔になる。 
 少し前まで頭にあった仲間の事はすっかり消え失せていた。
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