Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第756話

 マルメルはアイロニーと前線に戻ったのだが――

 「うん、やっぱり俺達要らなかったな」
 「タクティカル。 楽でいいではないか」

 ふわわの相手は四肢を切断されており、マルメル達が目にした時には無造作にとどめを刺されていた。
 少し離れた所にいたベリアルも既に敵機を撃破しており、前線もまた同様に終わっている。
 
 「流石はランカー様だ。 結構、苦労して倒したのになぁ……」

 言いながら敵機の残りを数える。 マルメルがとどめを刺したのが二機。
 アイロニーが既に一機。 ヨシナリ、ベリアルも一機。 これで五機。
 ふわわも仕留めた所なので六機。 ユウヤ、ケイロンの前衛二人も一機ずつと考えると残りは二機だ。

 シニフィエとホーコート。

 ――シニフィエはあんまり心配してないけどホーコートの奴は大丈夫か?

 そんな事を考えながら空を見上げると当の本人がエンジェルフレームもどきと戦っている姿が見えた。
 中々の接戦に見えるが――

 「うーん、なんというか……」
 「シニカル。 その様子だと全員が察しているようだな。 処罰されていないと言う事は一応は合法と判断されているのか……」
 「その辺はちょっとよくわかんないっす。 まぁ、ヨシナリは気にしてるみたいですけど、俺はなんて言ったらいいか分かんないから放置してますね」

 こんな会話をしているのには理由があった。 
 ホーコートと敵機はフレーム、機体構成、武装がほぼ同じなのだ。
 こんな状況ではなかったらミラーマッチだと笑うところだったが、視線の先で繰り広げられている戦いに関しては笑えなかった。 

 何故なら二機のトルーパーは鏡写しのように全く同じ挙動の攻防を繰り広げているからだ。
 回避モーションからのアタック。 死角への入り方と全く同じだ。
 
 「――はぁ」

 小さく溜息が漏れる。 ヨシナリだ。
 彼は近くにいたが特に手を出さずに黙ってみていた。 
 ホーコートと敵機は互いに後ろを取り合い、バトルライフルでライフル弾の応酬を繰り返し、最後は互いにブレードで突き刺し合って相打ちとなった。

 「ひっでぇ戦いだ」

 最後にマルメルがそう呟くとシニフィエの方も片付いて試合終了となった。


 ホームに戻るとグロウモスが済まなさそうにうつむいていた。

 「ご、ごめ、ごめんね。 やられちゃって……」

 ヨシナリは笑って見せる。 

 「お疲れ様です。 こっちこそすいません。 あれはグロウモスさんのミスじゃありませんよ。 速攻を許した俺のミスです。 気にしないで次に切り替えていきましょう」

 アバター状態になったアルフレッドがグロウモスの足に頬を摺り寄せる。
 グロウモスはユウヤをちらりと一瞥。

 「アルフレッドを助けてくれたんだってな。 ありがとな」

 ユウヤは気にするなと付け加えて近くのソファーに腰を下ろした。
 グロウモスは小さく頷くとアルフレッドを抱き上げる。 
 その間に各々が壁に寄りかかったり座ったりと感想戦に入る準備ができたと判断したヨシナリは小さく手を叩く。

 「はい、では感想戦をサクッと始めたいと思います。 ぶっちゃけ、突っ込み所しかない敵でしたが、一応は得るものはあったと思いますので、その辺の共有をしていきましょう」

 言いながらウインドウを可視化し、リプレイ映像を呼び出す。
 まさかとは思うが再生できないとかないよなと少しハラハラしながら操作すると映し出された。
 あぁ、よかったと思いながら映像を上空からの俯瞰に切り替える。

 「まずは反省会――というより俺の反省ですね。 初手でシックスセンスを使って居場所を確認したんですけど、どうやら敵は反応を誤認させるデコイを使って居場所をごまかしたみたいですね」

 映像を見ると敵機は開始と同時に地面に何かを打ち込むと光学迷彩を使用して姿を消す。
 
 「動き出し滅茶苦茶早えーな。 ヨシナリが捕捉するより先に動いてんじゃねーか」
 「そうなんだよ。 明らかに敵側はこっちの居場所を最初から知ってる動きなんだよなぁ」

 ヨシナリは納得いかねぇと呟きながら映像を進める。

 「敵機の構成はエンジェルフレームが二機、オビディエンスフレーム四機、ソルジャー+四機だな」
 「は、抽選で配ってるらしい機体が四機もあんのかよ。 大した運だな」

 ユウヤが鼻で笑う。 それに関しては全くの同感だった。
 ここまで露骨だといちいち気にする方が馬鹿らしくなってしまう。
 
 「装備構成はほぼ同じだな。 エンジェルフレームはエネルギーライフルとブレードっていうオーソドックスな構成だけど、見慣れない強化装甲で性能を盛ってる。 オビディエンスフレームの半分はバトルライフルにサイドアームがマシンピストルと中距離戦を意識したビルドで残りは軽量化による接近戦主体だな」
 「ヨシナリ質問!」
 「はい、マルメル」

 挙手したマルメルにどうぞと促す。

 「俺さ、よく分かってないんだけどバトルライフルって突撃銃とどう違うんだ?」
 「そこまで大きな違いはないよ。 使ってる弾がライフル弾だから装弾数が少ない代わりに貫通力とかは全然違うけどな。 気になってるのはチョイスした理由か?」
 「あぁ、デカい上、装弾数も少ないんだろ? メリットって何だろうなって思って」
 「恐らくは防御系のフィールド対策だ。 通常弾とライフル弾じゃ、貫通力がかなり違う。 だから防御系のフィールドに対して効果が期待できる上、実際に貫通できたのなら回避を意識させやすい」

 付け加えるなら当たった場合、フィールドに与える負荷も強い。 
 特にマルメルみたいなタイプには効くだろうなと思ったが敢えて口には出さなかった。
 
 「個々の動きよりはまずは全体の流れを見ていこうか。 デコイを仕掛けて俺の目を眩ませた敵は三機は俺の頭を抑えに空へ、残りの七機だけど三機はケイロンさんとユウヤの抑え、残りは回り込んで後衛の処理だな」
 
 映像の中のヨシナリが敵のデコイに気づく。 

 「ここで騙されている事に気が付いて警告を飛ばしたんだけど、またデコイを喰らって煙に巻かれてるなぁ」
 
 偽の反応をばら撒き、ヨシナリが真贋の確認をしている間にホーコートに一機、ヨシナリの抑えに一機残して残りはグロウモス達の方へ。
 気づいたマルメルとベリアルが下がってカバーに行ったが、足の速いエンジェルフレームは既に喉元まで迫っていた。

 「この速さ、マジで納得いかねぇ」

 ヨシナリは思わずそう呟いた。 それほどまでに敵が後衛に迫るのが早かったからだ。
 
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