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第759話
敵機は両手のブレードを器用に振り回してベリアルを切り刻もうとするが、その全てを正面から受けたベリアルはエーテルの爪で受けるどころか押し返す。
「転移を封じた程度で何で勝てると思ったのか……」
「頑張ってるけど押し込まれてきたな」
「だんだん可哀そうになって来た」
ヨシナリはやや呆れ気味にそう呟き、結果が見えているマルメルはもう敵がどう負けるかにしか関心がなさそうだ。 そしてグロウモスはやや同情の眼差し。
敵機の攻撃に慣れて来たのか徐々にベリアルが攻める回数が増え、敵機が受けに回る頻度が上がって来た。
こうして見れば見るほどにベリアルというプレイヤーのセンスの高さには驚かされる。
ふわわのように専門技能や知識を学んだ様子はない。
完全な我流――自らの才覚のみでここまで上がって来たのだ。
紛れもなく天才。 少なくともヨシナリはベリアルの事をそう認識していた。
完全に押し負けた敵機は後退して攻撃の組み立てを中距離戦仕様に切り替えようとしたのだろうが、ベリアル相手にそれは悪手だ。
例の妨害装置、わざわざ接近戦に持ち込んでいた以上は離れると効果が著しく落ちるはず。
マシンピストルを抜こうとしたが影響から脱したベリアルは既に背後だ。
「闇に呑まれよ」
ベリアルがそう呟いたと同時に敵機は背後からエーテルのブレードに貫かれ内部から無数の棘が爆発するように突き出し、力なく崩れ落ちた。
「はっはぁ! 愚かな神の走狗よ! 我が闇の輪郭を微かに捉えた程度で深淵を掴んだと錯覚したか? 何たる浅薄、闇の王たるこの俺と我が現身たるプセウドテイを仕留るには力が足りなかったなぁ!」
そう言ってベリアルは上機嫌に笑う。
ヨシナリはは何となく、自由に動けなくてストレスの溜まる相手だったんだなぁと察した。
「さっきちょっと触れたのでふわわさん行ってみましょうか」
そう言って映像を切り替える。
相手はソルジャー+とフレームは下位互換だが、ベリアルと装備構成が同じ機体。
例の妨害装置で転移系の武装を無効化しているのは直ぐに分かった。
小手調べと言わんばかりに彼女が振るったナインヘッド・ドラゴンがあらぬ方向へと飛んでいったからだ。
「なぁ、ヨシナリ君。 これの理屈分かる?」
「あー、多分ですけど、自機を中心に何らかの空間異常を発生させる代物でしょうね。 原理的には空間歪曲系防御兵装の下位互換みたいな代物だと解釈してます」
あれも空間を歪曲させる事で攻撃を捻じ曲げているのだ。
それの前段階と考えればそこまで不思議な事でもない。
――問題は使える相手が限られている装備である事なんだよなぁ。
完全に相手が転移を使って来る事を前提とした装備だ。
「空間を引っかき回し、その結果としてふわわさんのナインヘッド・ドラゴンは狙った位置に転移できずに変な場所に出て飛んでいったって感じでしょう。 今後は相手の周囲に空間情報の変動が観測された場合転移系の武装は控える事を意識すればいいと思いますよ。 特にベリアルは機体ごと行くから下手すれば大きな隙になる」
「分かったー」
「ふ、小さくとも松明の光は闇を退ける、か。 肝に銘じておくとしよう」
素直に頷く二人を尻目に意識は映像へ。
転移が通用しないと判断したふわわは正面からの正攻法で行くべきと判断。
太刀と小太刀の二刀に切り替える。 対する敵機は両手でナイフを一本ずつ。
「折角転移を封じたんだから中距離まで下がりゃいいのに」
「下手に距離を取ると逃げられるとでも思ったんじゃないか?」
マルメルの言う通りだが、個人戦ではない以上は他の可能性も視野に入れなければならない。
実際、ユウヤ達の戦闘している場所から近い。 割り込まれる事を嫌がったのだろう。
ふわわの斬撃に対してナイフで流して懐に入るような戦い方。 蹴りを織り交ぜたり、ナイフの持ち方を順手、逆手と小刻みに入れ替えて微妙に攻撃のタイミングを覚えさせない工夫もある。
――リアルで何かやってそうな動きだな。
「軍隊格闘で使うナイフに似とったなぁ」
「よく知ってますね」
「ちょっと前に手合わせしてん」
それを聞いて察してしまった。
ログインしていなかった時期あちこちで道場破りをしていたらしく、その時だろう。
「手合わせって具体的には?」
「噛みつきと締め技以外何でもありの手合わせでして、かわいそうに姉の相手はしばらくまともに食事が喉を通らなかったようですよ」
「分かった。 もういい聞きたくない」
モタシラの反応から恐ろしい事が起こったであろう事は察せられる。
気を取り直して映像へ戻る。 ヨシナリとしてはふわわの動きよりも敵機の動きの方が興味深い。
ブレードを器用に手の中で回転させる動きは使えそうだ。
コツとしては攻撃を繰り出すタイミングで回して相手に間合いを誤認させる事か。
――小指か薬指に引っかけるようなリングを付けて回すのもアリか?
いや、余計な仕掛けは形状から狙いを逆算されやすい。
あの動きは手の動きに意識を吸わせる役目もあるのだ。
動き出しの瞬間まで分からないようにしないと価値が落ちる。 実際、ふわわの相手は仕掛ける時は順手、防御の際は逆手に持ち替え、意識が手に向いたと判断した所で蹴りを混ぜていた。
胡散臭さはある上、チートも使っているがこの動きだけは洗練された本物であると感じる。
脇を締めて上半身をなるべく縮め、下半身の構えはやや広いのは重心移動をスムーズに行う為だろう。
「お義兄さん。 興味ありですか?」
「まぁな。 部分的に真似られないかなって思ってるよ。 特に上半身の重心移動が面白いな」
「お目が高い。 上半身だけで躱せるなら下半身で前に出てすぐに返せますからね。 我流だとは思いますけどベリアルさんとか割とよくやってますよ」
――確かに。
言われてみればベリアルは簡単な攻撃は足を使わずに上半身を振って躱している場面が多い。
掻い潜った後、そのまま反撃に繋げている。
短距離転移に頼りがちな印象もあるが、反応速度も凄まじい。
「ベリアルさんの場合はエーテルでの形状変化があるからこれをやられると怖いですね」
シニフィエは何処から飛んでくるのか本当に分からないのでと付け加える。
「それに相手の意識を上半身に向けると下半身で足を引っかけたりできるので覚えとくと割と便利ですよ。 ただ、逆に引っ掛けられる事もあるので注意も必要ですが」
なるほど。 参考になる話だ。
「転移を封じた程度で何で勝てると思ったのか……」
「頑張ってるけど押し込まれてきたな」
「だんだん可哀そうになって来た」
ヨシナリはやや呆れ気味にそう呟き、結果が見えているマルメルはもう敵がどう負けるかにしか関心がなさそうだ。 そしてグロウモスはやや同情の眼差し。
敵機の攻撃に慣れて来たのか徐々にベリアルが攻める回数が増え、敵機が受けに回る頻度が上がって来た。
こうして見れば見るほどにベリアルというプレイヤーのセンスの高さには驚かされる。
ふわわのように専門技能や知識を学んだ様子はない。
完全な我流――自らの才覚のみでここまで上がって来たのだ。
紛れもなく天才。 少なくともヨシナリはベリアルの事をそう認識していた。
完全に押し負けた敵機は後退して攻撃の組み立てを中距離戦仕様に切り替えようとしたのだろうが、ベリアル相手にそれは悪手だ。
例の妨害装置、わざわざ接近戦に持ち込んでいた以上は離れると効果が著しく落ちるはず。
マシンピストルを抜こうとしたが影響から脱したベリアルは既に背後だ。
「闇に呑まれよ」
ベリアルがそう呟いたと同時に敵機は背後からエーテルのブレードに貫かれ内部から無数の棘が爆発するように突き出し、力なく崩れ落ちた。
「はっはぁ! 愚かな神の走狗よ! 我が闇の輪郭を微かに捉えた程度で深淵を掴んだと錯覚したか? 何たる浅薄、闇の王たるこの俺と我が現身たるプセウドテイを仕留るには力が足りなかったなぁ!」
そう言ってベリアルは上機嫌に笑う。
ヨシナリはは何となく、自由に動けなくてストレスの溜まる相手だったんだなぁと察した。
「さっきちょっと触れたのでふわわさん行ってみましょうか」
そう言って映像を切り替える。
相手はソルジャー+とフレームは下位互換だが、ベリアルと装備構成が同じ機体。
例の妨害装置で転移系の武装を無効化しているのは直ぐに分かった。
小手調べと言わんばかりに彼女が振るったナインヘッド・ドラゴンがあらぬ方向へと飛んでいったからだ。
「なぁ、ヨシナリ君。 これの理屈分かる?」
「あー、多分ですけど、自機を中心に何らかの空間異常を発生させる代物でしょうね。 原理的には空間歪曲系防御兵装の下位互換みたいな代物だと解釈してます」
あれも空間を歪曲させる事で攻撃を捻じ曲げているのだ。
それの前段階と考えればそこまで不思議な事でもない。
――問題は使える相手が限られている装備である事なんだよなぁ。
完全に相手が転移を使って来る事を前提とした装備だ。
「空間を引っかき回し、その結果としてふわわさんのナインヘッド・ドラゴンは狙った位置に転移できずに変な場所に出て飛んでいったって感じでしょう。 今後は相手の周囲に空間情報の変動が観測された場合転移系の武装は控える事を意識すればいいと思いますよ。 特にベリアルは機体ごと行くから下手すれば大きな隙になる」
「分かったー」
「ふ、小さくとも松明の光は闇を退ける、か。 肝に銘じておくとしよう」
素直に頷く二人を尻目に意識は映像へ。
転移が通用しないと判断したふわわは正面からの正攻法で行くべきと判断。
太刀と小太刀の二刀に切り替える。 対する敵機は両手でナイフを一本ずつ。
「折角転移を封じたんだから中距離まで下がりゃいいのに」
「下手に距離を取ると逃げられるとでも思ったんじゃないか?」
マルメルの言う通りだが、個人戦ではない以上は他の可能性も視野に入れなければならない。
実際、ユウヤ達の戦闘している場所から近い。 割り込まれる事を嫌がったのだろう。
ふわわの斬撃に対してナイフで流して懐に入るような戦い方。 蹴りを織り交ぜたり、ナイフの持ち方を順手、逆手と小刻みに入れ替えて微妙に攻撃のタイミングを覚えさせない工夫もある。
――リアルで何かやってそうな動きだな。
「軍隊格闘で使うナイフに似とったなぁ」
「よく知ってますね」
「ちょっと前に手合わせしてん」
それを聞いて察してしまった。
ログインしていなかった時期あちこちで道場破りをしていたらしく、その時だろう。
「手合わせって具体的には?」
「噛みつきと締め技以外何でもありの手合わせでして、かわいそうに姉の相手はしばらくまともに食事が喉を通らなかったようですよ」
「分かった。 もういい聞きたくない」
モタシラの反応から恐ろしい事が起こったであろう事は察せられる。
気を取り直して映像へ戻る。 ヨシナリとしてはふわわの動きよりも敵機の動きの方が興味深い。
ブレードを器用に手の中で回転させる動きは使えそうだ。
コツとしては攻撃を繰り出すタイミングで回して相手に間合いを誤認させる事か。
――小指か薬指に引っかけるようなリングを付けて回すのもアリか?
いや、余計な仕掛けは形状から狙いを逆算されやすい。
あの動きは手の動きに意識を吸わせる役目もあるのだ。
動き出しの瞬間まで分からないようにしないと価値が落ちる。 実際、ふわわの相手は仕掛ける時は順手、防御の際は逆手に持ち替え、意識が手に向いたと判断した所で蹴りを混ぜていた。
胡散臭さはある上、チートも使っているがこの動きだけは洗練された本物であると感じる。
脇を締めて上半身をなるべく縮め、下半身の構えはやや広いのは重心移動をスムーズに行う為だろう。
「お義兄さん。 興味ありですか?」
「まぁな。 部分的に真似られないかなって思ってるよ。 特に上半身の重心移動が面白いな」
「お目が高い。 上半身だけで躱せるなら下半身で前に出てすぐに返せますからね。 我流だとは思いますけどベリアルさんとか割とよくやってますよ」
――確かに。
言われてみればベリアルは簡単な攻撃は足を使わずに上半身を振って躱している場面が多い。
掻い潜った後、そのまま反撃に繋げている。
短距離転移に頼りがちな印象もあるが、反応速度も凄まじい。
「ベリアルさんの場合はエーテルでの形状変化があるからこれをやられると怖いですね」
シニフィエは何処から飛んでくるのか本当に分からないのでと付け加える。
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