Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第767話

 「下がれ。 こいつは俺がやる」

 白を基調とした近接機で白い靄を纏っている。 凍露の機体「サーモカルスト」だ。
 これといった携行武装を持っていないが、彼の機体には必要がない。
 腕部分のスリットから水が噴き出し、長槍のような形状に変化。
 
 瞬く間に凍り付き、即座にふわわに向けて刺突を繰り出した。
 
 『へぇ、ウチと斬り合いしてくれるんや?』
 「モタシラを倒したと聞いた。 その力を見せてみろ」

 凍露の長槍が半ばで切断されるが形が崩れない。 
 完全に凍っておらず、表面だけで中は水で満たされていたからだ。 
 再度、氷結し攻撃も止まらない。 

 「俺に武器破壊は通用しないぞ」
 『みたいやねぇ?』

 ふわわは凍露の刺突を器用に躱しながら仕切り直す為か僅かに後退。 
 凍露は逃がさないとばかりに追撃に入るが、霧ヶ峰はそれを見て引き剥がされていると判断していたがどうにもならない。

 後はユウヤだが――不意に味方機の反応が一つロスト。 
 いつの間にかユウヤがこちら側の深くまで斬り込んでいたのだ。 
 シックスセンスに引っかからなかった。 記憶にある限り、プルガトリオにあそこまでのステルス性がなかったはずだ。 

 ――これは私達が知らないメンバーが居るな。

 恐らくは隠形に特化した機体がもう一機いる。 
 初手で三機落とされたのは痛いが、速攻の効果はもうない。 ここから巻き返す。
 そう切り替え、霧ヶ峰は戦況を変える為に動き出した。


 ――綱渡りだが上手くいった。

 ヨシナリは豪雨のような攻撃を凌ぎながら思考を回す。
 タカミムスビのアマノイワトの圧倒的な攻撃密度は物理的に回避できる隙間がない。 

 これに比べればカカラの攻撃はまだ可愛い物だった。
 知ってはいたが目の当たりにすると中々に苦しい。 
 「思金神」の主力と当たる上で立てた作戦は割とシンプルだ。 

 速攻で数を減らす。 勝負は最初の一分。
 速攻による奇襲をかけたとしても速くて一分、遅くても二分以内に立て直される。
 それまでに数を最低でも三機、可能なら四機は減らさないと確実に負けると見ていた。
 
 幸いにもこちらにはランカーが四人もいる。 
 彼等からの情報で「思金神」のチームメンバーを割って撃破の優先順位を決めたのだ。
 
 カタトゥンボとサニー。 
 この二人は前に出る傾向にある上、どちらも単純な戦闘能力だけでなく絡め手も使って来るタイプという事もあって撃破が比較的容易かつ、生かしておけない事もあって真っ先に狙った。

 本音を言えばシックスセンス持ちであろう索敵要因である霧ヶ峰を処理したかったが彼女に奇襲は通じ辛い事と守りを固めている可能性が高い事もあって優先順位を落とした。
 グロウモスが仕留めてくれれば楽ではあったが、Aランクプレイヤーだ。

 隙を作らなければ当てるのは難しい。 
 遠くでユウヤが一機仕留めた事を確認し、何とか最低条件はクリアできた事に胸を撫で下ろす。
 「星座盤」の動きとしては初手でタカミムスビの斉射が飛んでくるのは読めていた事もあって、アイロニーを中心に持ち込んだレーザーを減衰させるタイプのスモークを大量に焚いて視界を封じつつ身を守る。 

 その間にヨシナリはホロスコープをプセウドテイと合体させて斉射の射線を避けて突っ込む。
 ホロスコープ=プセウドテイなら大抵の相手――特に初見は瞬殺できる自信があった。
 カタトゥンボ、サニーと立て続けに撃破。 あの二人は決して弱くはない。
 
 正面から戦えばかなり厳しい相手だ。 
 脅威度としては他も似たような物だが、そんな連中を十人もいちいちまともに相手をしていられない。
 何かをする前に奇襲で瞬殺が最適解。 最低三機、可能なら四機と決めた事には理由があった。
 
 ――それ以上は物理的に不可能だからだ。

 何故ならタカミムスビがこちらを捕捉するまでに事を済ませなければならない以上、どう頑張ってもヨシナリとベリアルの二人で力を合わせたとしても二機が限界。
 同じタイミングでマルメルとケイロン地上から正面突破し、他のメンバーも散る事で敵の警戒を分散さたのだが、あそこまで派手にやれば攪乱してもあまり意味がない。

 後はアイロニーのステルスヴェールを使ったユウヤ次第だが、そこはあまり心配していなかった。
 ヨシナリはユウヤのこのゲームに対する矜持を心から信じていたからだ。
 そんな彼が最低でも一人は仕留めるといった以上、必ずやってのけるだろう。

 期待通り、敵の後衛機の反応が消えた。 
 これで敵の残りは七機。 三機分の数的有利を手に入れた。
 最初の条件はクリアしたが、これから更に厳しい関門を突破しなければならない。

 『君と――いや、君達と戦える機会がこんなに早く来るとは思わなかった。 エーテルを用いて二機を結合させるとは考えたね。 観測できる出力が既存機の比ではないよ』

 タカミムスビは素晴らしいと付け足して更に武装を解放。
 レーザー、ガトリング砲、ミサイル、エネルギー弾と凄まじい密度で飛んでくるのだ。
 
 「ベリアル! 転移は――」
 「奴の結界に囚われた。 脱しなければ使えん!」

 霧ヶ峰のジャミングフィールドだ。 
 効果範囲内のレーダー系のシステムを強制的に使用不能にする恐ろしい妨害兵装。
 これの範囲内に居る限り、座標の指定が不可能になるのでヨシナリ達は空間転移が使えない。

 本音を言えば霧ヶ峰はこれがあるから真っ先に処理したかったが、時間をかけると負けると判断して諦めたのだ。 推進装置を全開にして全力で逃げを打つ。
 
 ――頼むから乗ってくれよ。

 最低限、霧ヶ峰の妨害範囲から逃れなければならない。
 タカミムスビがヨシナリへの好奇心を優先するのなら食いついて来るが、そうでなければこの場から動かずに他に狙いを変えるはずなのだが――

 「こりゃ大丈夫そうだな」

 単純に勝ちたいだけならヨシナリ相手は牽制に留め、他の処理に注力するはずなのだが、どうやらタカミムスビには勝敗以上にこちらにご執心のようだ。 
 意図を察しているにも関わらず追って来る。 

  シックスセンスのノイズが消滅。

 「ベリアル! いけるぞ!」

 即座に転移での回避。 
 タカミムスビも空間情報の変動を感知できるようだが、図体の大きさの所為か旋回性能はそこまで高くない。
 その為、全力で回避に徹すれば逃げ回るぐらいは何とかなるのだ。

 「戦友よ。 まだ行けるか?」
 「負荷を大部分負担して貰っている事もあってしばらくは大丈夫だ!」
 
 短期決着が不可能である以上、ペース配分は必須だった。
 その為、パンドラの出力は全開にせず、大部分をベリアルからのエーテル供給に頼る形になっていたのだ。
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