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第771話
――ふぅ。
キュムラスは内心で小さく息を吐いた。 目の前には力なく崩れ落ちた機体。
コックピットを綺麗にレーザーで貫いた事もあってほぼ無傷で無力化できた。
それにしても恐ろしい相手だったと胸を撫で下ろす。
レーダーやセンサー系はほぼ機能しない状態でこちらの位置を正確に割って来たのはどうなっているのだろうか?
『星座盤』の試合に関してはタカミムスビが興味を抱いているだけあって情報は集まっていたのだ。
中でもキュムラスが気にしていたのはふわわというプレイヤーだった。
彼女は三軍のアノビィ相手に勝利して見せたのだ。
しかもウイルスでセンサー欺瞞を喰らっている状態にも関わらず、だ。 少し信じられなかった。
同じ欺瞞系の武装を使う事もあって偶にだが情報を交換する仲という事もあって話を聞けたのだが、当の本人にも訳が分からないとの事。
何度も映像を見返したにも関わらずさっぱり分からないと頭を抱えていた。
当人に分からない事が部外者に理解できる訳もなく、キュムラスはふわわとぶつかるのは危険と避けた結果が今なのだが、このシニフィエというプレイヤーも同類だったようで明らかにこちらが見えていた。
――違う。
正確には位置が分かっていた。 観察して少しだが見えた事もある。
こちらの行動による反応だ。
まずは何もしていない状態だと無反応だが、こちらが攻撃行動を取ると即座に動き出した。
ドローンによるレーザー攻撃も反応から見えている感じではなく、攻撃のタイミングを掴んでいるといった様子に見える。
根拠としてシニフィエはこちらの位置を確認した後に回避行動に入っているからだ。
詳細は不明だが、シニフィエは何らかの手段でこちらが攻撃に入るタイミングを感知できるのだろう。
そこまで分かれば対処は難しくない。
相手はこちらがドローンを使う事を知っており、居場所を割る手段を持っている。
つまりは両者の位置関係から攻撃の角度を逆算しているのだ。
咄嗟でそれができる事も驚きだが、今はいい。
重要なのはドローンの位置を把握できていない事と、この躱し方には死角がある事だ。
自機の背後――要は自分の機体ごと撃てば躱せない。
結果、シニフィエはコックピットを撃ち抜かれてそのまま崩れ落ちたという訳だ。
極細のレーザーにはこういった使い方もできる。
殺傷力が低いという事は自機ごと撃つといった使い方もできるのだ。
――……これでBランクですらないのは恐ろしいな。
同ランクのライバルも怖いがそれ以上に下から上がって来る奴が怖い。
もっと頑張ろうと内心で溜息を吐きながらケイロン達を追いかけないと――
『わたしは囚われた哀れな虜囚。 牢獄の格子窓から天を仰いだ時、雲が開き神の姿を見た』
躱せたのは運もあった。 咄嗟に前方に加速。
僅かに遅れて見慣れない機体が頭部のあった部分を腕で薙ぐ。
ドローンを操作してレーザーを発射。
敵機――フォーカスするとプレイヤーネームは「ホーコート」と表示される。
ホーコート? あぁ、例のチートユーザーかと思い当たる。
この手のチート使いが一定数存在する事は一部のプレイヤーの間では知られている事だった。
通報しても「調査します」の一点張り。
その為「思金神」では運営が配っていると認識されていた。
実の所「思金神」内部にもそこそこの数、そういったプレイヤーが存在する。
タカミムスビは表にこそ出さないがこの手のプレイヤーを酷く嫌っている節があった。
あの男の本性を知れば納得できる話だ。
そんな理由でチート使いはそうと分かった瞬間、梯子を外されてヒラから碌に上がれなくなる。
裏で調べてもいるようだが、運営が絡んでいる以上は迂闊に手を出さない方がいいという結論なのだろう。
機体に関してはよく分からなかったが、形状からエンジェルフレームの下位互換といった所か。
『主の言葉が祭司に臨み、主の手が彼の上にあった』
訳の分からない呪文のような物がノイズ混じりで聞こえる。
目の当たりにするのは初めてだが、存在は知っていた。
チートユーザーの中でも特に依存度の高い者に見られる特徴だ。
何らかの引用なのか、ブツブツと呟きながら当人の技量を逸脱した動きで襲ってくる。
奇妙な事もある。 この謎の呪文だが、調べる事が出来なかった。
何故ならたった今、聞いたばかりにも関わらず全く思い出せないからだ。
残っているのは不気味な事を呟いているという事だけ。
具体的に何を言ったのかを認識できない。 性質の悪いホラー映画のようだ。
だからこそタカミムスビも調査をほどほどに切り上げたのだろう。
バトルライフルを連射。 この霧にも関わらず、恐ろしいほどに正確だ。
さっきのシニフィエとは違い、明らかに見えている動きだった。
『見よ。 激しき風、大いなる雲が北から来りてその周囲に絶えず火を噴きだす青銅の輝き在り』
ホーコートは淡々と呟きながら加速して旋回。 こちらを先回りする動き。
キュムラスはだったらとその動きを逆手にとってドローンで包囲。
コックピットは無理でも推進系か動力系をやれれば――
ホーコートは待ってましたと言わんばかりに掌を大きく開いて前に突き出す。
次の瞬間、掌が発光。 カメラのフラッシュのように一瞬だったが、それだけで充分だったようだ。
EMP攻撃。 ドローンは機能停止し、ボトボトと力なく落下する。
『その中から四つの形が現れ、彼等は人の姿を持っていた』
霧は電磁パルスの拡散を防ぐ役割もあるが、発射の為に近づけたのが不味かった。
こちらの動きを完全に読まれている。
ホーコートは上昇。 機体の脇腹の辺りが開くと無数の発射口。
――ニードルガン。
形状から即座に正体を看破して回避。 小さな爆発音がしたと同時に無数のニードルが飛来する。
完全に躱す事は難しく、いくらか被弾したがダメージはほとんどない。
牽制用の武装か? 無意味にばら撒いたとは思えなかったからだ。
ドローンを失った以上はリングを用いた接近戦しかない。
距離を維持しつつ、モーションパターンを読んで対策を練らなければと考えている間にホーコートはバトルライフルのマガジンを交換。 何故か銃口を上に向けてフルオート射撃。
何だと思考に使った時間は刹那。
即座に意図に気付き、刺さったニードルの正体を悟ったがもう遅い。
防御の為にリングのブレードを展開して高速回転。
不自然な軌道を描いて飛んでくるライフル弾に対して全力で防御姿勢を取った。
キュムラスは内心で小さく息を吐いた。 目の前には力なく崩れ落ちた機体。
コックピットを綺麗にレーザーで貫いた事もあってほぼ無傷で無力化できた。
それにしても恐ろしい相手だったと胸を撫で下ろす。
レーダーやセンサー系はほぼ機能しない状態でこちらの位置を正確に割って来たのはどうなっているのだろうか?
『星座盤』の試合に関してはタカミムスビが興味を抱いているだけあって情報は集まっていたのだ。
中でもキュムラスが気にしていたのはふわわというプレイヤーだった。
彼女は三軍のアノビィ相手に勝利して見せたのだ。
しかもウイルスでセンサー欺瞞を喰らっている状態にも関わらず、だ。 少し信じられなかった。
同じ欺瞞系の武装を使う事もあって偶にだが情報を交換する仲という事もあって話を聞けたのだが、当の本人にも訳が分からないとの事。
何度も映像を見返したにも関わらずさっぱり分からないと頭を抱えていた。
当人に分からない事が部外者に理解できる訳もなく、キュムラスはふわわとぶつかるのは危険と避けた結果が今なのだが、このシニフィエというプレイヤーも同類だったようで明らかにこちらが見えていた。
――違う。
正確には位置が分かっていた。 観察して少しだが見えた事もある。
こちらの行動による反応だ。
まずは何もしていない状態だと無反応だが、こちらが攻撃行動を取ると即座に動き出した。
ドローンによるレーザー攻撃も反応から見えている感じではなく、攻撃のタイミングを掴んでいるといった様子に見える。
根拠としてシニフィエはこちらの位置を確認した後に回避行動に入っているからだ。
詳細は不明だが、シニフィエは何らかの手段でこちらが攻撃に入るタイミングを感知できるのだろう。
そこまで分かれば対処は難しくない。
相手はこちらがドローンを使う事を知っており、居場所を割る手段を持っている。
つまりは両者の位置関係から攻撃の角度を逆算しているのだ。
咄嗟でそれができる事も驚きだが、今はいい。
重要なのはドローンの位置を把握できていない事と、この躱し方には死角がある事だ。
自機の背後――要は自分の機体ごと撃てば躱せない。
結果、シニフィエはコックピットを撃ち抜かれてそのまま崩れ落ちたという訳だ。
極細のレーザーにはこういった使い方もできる。
殺傷力が低いという事は自機ごと撃つといった使い方もできるのだ。
――……これでBランクですらないのは恐ろしいな。
同ランクのライバルも怖いがそれ以上に下から上がって来る奴が怖い。
もっと頑張ろうと内心で溜息を吐きながらケイロン達を追いかけないと――
『わたしは囚われた哀れな虜囚。 牢獄の格子窓から天を仰いだ時、雲が開き神の姿を見た』
躱せたのは運もあった。 咄嗟に前方に加速。
僅かに遅れて見慣れない機体が頭部のあった部分を腕で薙ぐ。
ドローンを操作してレーザーを発射。
敵機――フォーカスするとプレイヤーネームは「ホーコート」と表示される。
ホーコート? あぁ、例のチートユーザーかと思い当たる。
この手のチート使いが一定数存在する事は一部のプレイヤーの間では知られている事だった。
通報しても「調査します」の一点張り。
その為「思金神」では運営が配っていると認識されていた。
実の所「思金神」内部にもそこそこの数、そういったプレイヤーが存在する。
タカミムスビは表にこそ出さないがこの手のプレイヤーを酷く嫌っている節があった。
あの男の本性を知れば納得できる話だ。
そんな理由でチート使いはそうと分かった瞬間、梯子を外されてヒラから碌に上がれなくなる。
裏で調べてもいるようだが、運営が絡んでいる以上は迂闊に手を出さない方がいいという結論なのだろう。
機体に関してはよく分からなかったが、形状からエンジェルフレームの下位互換といった所か。
『主の言葉が祭司に臨み、主の手が彼の上にあった』
訳の分からない呪文のような物がノイズ混じりで聞こえる。
目の当たりにするのは初めてだが、存在は知っていた。
チートユーザーの中でも特に依存度の高い者に見られる特徴だ。
何らかの引用なのか、ブツブツと呟きながら当人の技量を逸脱した動きで襲ってくる。
奇妙な事もある。 この謎の呪文だが、調べる事が出来なかった。
何故ならたった今、聞いたばかりにも関わらず全く思い出せないからだ。
残っているのは不気味な事を呟いているという事だけ。
具体的に何を言ったのかを認識できない。 性質の悪いホラー映画のようだ。
だからこそタカミムスビも調査をほどほどに切り上げたのだろう。
バトルライフルを連射。 この霧にも関わらず、恐ろしいほどに正確だ。
さっきのシニフィエとは違い、明らかに見えている動きだった。
『見よ。 激しき風、大いなる雲が北から来りてその周囲に絶えず火を噴きだす青銅の輝き在り』
ホーコートは淡々と呟きながら加速して旋回。 こちらを先回りする動き。
キュムラスはだったらとその動きを逆手にとってドローンで包囲。
コックピットは無理でも推進系か動力系をやれれば――
ホーコートは待ってましたと言わんばかりに掌を大きく開いて前に突き出す。
次の瞬間、掌が発光。 カメラのフラッシュのように一瞬だったが、それだけで充分だったようだ。
EMP攻撃。 ドローンは機能停止し、ボトボトと力なく落下する。
『その中から四つの形が現れ、彼等は人の姿を持っていた』
霧は電磁パルスの拡散を防ぐ役割もあるが、発射の為に近づけたのが不味かった。
こちらの動きを完全に読まれている。
ホーコートは上昇。 機体の脇腹の辺りが開くと無数の発射口。
――ニードルガン。
形状から即座に正体を看破して回避。 小さな爆発音がしたと同時に無数のニードルが飛来する。
完全に躱す事は難しく、いくらか被弾したがダメージはほとんどない。
牽制用の武装か? 無意味にばら撒いたとは思えなかったからだ。
ドローンを失った以上はリングを用いた接近戦しかない。
距離を維持しつつ、モーションパターンを読んで対策を練らなければと考えている間にホーコートはバトルライフルのマガジンを交換。 何故か銃口を上に向けてフルオート射撃。
何だと思考に使った時間は刹那。
即座に意図に気付き、刺さったニードルの正体を悟ったがもう遅い。
防御の為にリングのブレードを展開して高速回転。
不自然な軌道を描いて飛んでくるライフル弾に対して全力で防御姿勢を取った。
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