Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
771 / 865

第771話

 ――ふぅ。

 キュムラスは内心で小さく息を吐いた。 目の前には力なく崩れ落ちた機体。
 コックピットを綺麗にレーザーで貫いた事もあってほぼ無傷で無力化できた。
 それにしても恐ろしい相手だったと胸を撫で下ろす。

 レーダーやセンサー系はほぼ機能しない状態でこちらの位置を正確に割って来たのはどうなっているのだろうか? 
 『星座盤』の試合に関してはタカミムスビが興味を抱いているだけあって情報は集まっていたのだ。
 中でもキュムラスが気にしていたのはふわわというプレイヤーだった。

 彼女は三軍のアノビィ相手に勝利して見せたのだ。 
 しかもウイルスでセンサー欺瞞を喰らっている状態にも関わらず、だ。 少し信じられなかった。
 同じ欺瞞系の武装を使う事もあって偶にだが情報を交換する仲という事もあって話を聞けたのだが、当の本人にも訳が分からないとの事。

 何度も映像を見返したにも関わらずさっぱり分からないと頭を抱えていた。
 当人に分からない事が部外者に理解できる訳もなく、キュムラスはふわわとぶつかるのは危険と避けた結果が今なのだが、このシニフィエというプレイヤーも同類だったようで明らかにこちらが見えていた。

 ――違う。 

 正確には位置が分かっていた。 観察して少しだが見えた事もある。
 こちらの行動による反応だ。 
 まずは何もしていない状態だと無反応だが、こちらが攻撃行動を取ると即座に動き出した。

 ドローンによるレーザー攻撃も反応から見えている感じではなく、攻撃のタイミングを掴んでいるといった様子に見える。 
 根拠としてシニフィエはこちらの位置を確認した後に回避行動に入っているからだ。

 詳細は不明だが、シニフィエは何らかの手段でこちらが攻撃に入るタイミングを感知できるのだろう。
 そこまで分かれば対処は難しくない。 
 相手はこちらがドローンを使う事を知っており、居場所を割る手段を持っている。

 つまりは両者の位置関係から攻撃の角度を逆算しているのだ。
 咄嗟でそれができる事も驚きだが、今はいい。 
 重要なのはドローンの位置を把握できていない事と、この躱し方には死角がある事だ。
 
 自機の背後――要は自分の機体ごと撃てば躱せない。 
 結果、シニフィエはコックピットを撃ち抜かれてそのまま崩れ落ちたという訳だ。
 極細のレーザーにはこういった使い方もできる。 

 殺傷力が低いという事は自機ごと撃つといった使い方もできるのだ。
 
 ――……これでBランクですらないのは恐ろしいな。

 同ランクのライバルも怖いがそれ以上に下から上がって来る奴が怖い。
 もっと頑張ろうと内心で溜息を吐きながらケイロン達を追いかけないと――

 『わたしは囚われた哀れな虜囚。 牢獄の格子窓から天を仰いだ時、雲が開き神の姿を見た』
 
 躱せたのは運もあった。 咄嗟に前方に加速。
 僅かに遅れて見慣れない機体が頭部のあった部分を腕で薙ぐ。
 ドローンを操作してレーザーを発射。 

 敵機――フォーカスするとプレイヤーネームは「ホーコート」と表示される。
 ホーコート? あぁ、例のチートユーザーかと思い当たる。
 この手のチート使いが一定数存在する事は一部のプレイヤーの間では知られている事だった。

 通報しても「調査します」の一点張り。 
 その為「思金神」では運営が配っていると認識されていた。
 実の所「思金神」内部にもそこそこの数、そういったプレイヤーが存在する。 

 タカミムスビは表にこそ出さないがこの手のプレイヤーを酷く嫌っている節があった。
 あの男の本性を知れば納得できる話だ。 
 そんな理由でチート使いはそうと分かった瞬間、梯子を外されてヒラから碌に上がれなくなる。

 裏で調べてもいるようだが、運営が絡んでいる以上は迂闊に手を出さない方がいいという結論なのだろう。 
 機体に関してはよく分からなかったが、形状からエンジェルフレームの下位互換といった所か。
 
 『主の言葉が祭司に臨み、主の手が彼の上にあった』
 
 訳の分からない呪文のような物がノイズ混じりで聞こえる。 
 目の当たりにするのは初めてだが、存在は知っていた。 
 チートユーザーの中でも特に依存度の高い者に見られる特徴だ。

 何らかの引用なのか、ブツブツと呟きながら当人の技量を逸脱した動きで襲ってくる。
 奇妙な事もある。 この謎の呪文だが、調べる事が出来なかった。
 何故ならたった今、聞いたばかりにも関わらず全く思い出せないからだ。

 残っているのは不気味な事を呟いているという事だけ。 
 具体的に何を言ったのかを認識できない。 性質の悪いホラー映画のようだ。
 だからこそタカミムスビも調査をほどほどに切り上げたのだろう。

 バトルライフルを連射。 この霧にも関わらず、恐ろしいほどに正確だ。
 さっきのシニフィエとは違い、明らかに見えている動きだった。
 
 『見よ。 激しき風、大いなる雲が北から来りてその周囲に絶えず火を噴きだす青銅の輝き在り』

 ホーコートは淡々と呟きながら加速して旋回。 こちらを先回りする動き。
 キュムラスはだったらとその動きを逆手にとってドローンで包囲。 
 コックピットは無理でも推進系か動力系をやれれば――

 ホーコートは待ってましたと言わんばかりに掌を大きく開いて前に突き出す。
 次の瞬間、掌が発光。 カメラのフラッシュのように一瞬だったが、それだけで充分だったようだ。
 EMP攻撃。 ドローンは機能停止し、ボトボトと力なく落下する。 

 『その中から四つの形が現れ、彼等は人の姿を持っていた』

 霧は電磁パルスの拡散を防ぐ役割もあるが、発射の為に近づけたのが不味かった。
 こちらの動きを完全に読まれている。 
 ホーコートは上昇。 機体の脇腹の辺りが開くと無数の発射口。
 
 ――ニードルガン。

 形状から即座に正体を看破して回避。 小さな爆発音がしたと同時に無数のニードルが飛来する。
 完全に躱す事は難しく、いくらか被弾したがダメージはほとんどない。
 牽制用の武装か? 無意味にばら撒いたとは思えなかったからだ。

 ドローンを失った以上はリングを用いた接近戦しかない。  
 距離を維持しつつ、モーションパターンを読んで対策を練らなければと考えている間にホーコートはバトルライフルのマガジンを交換。 何故か銃口を上に向けてフルオート射撃。

 何だと思考に使った時間は刹那。 
 即座に意図に気付き、刺さったニードルの正体を悟ったがもう遅い。 
 防御の為にリングのブレードを展開して高速回転。 

 不自然な軌道を描いて飛んでくるライフル弾に対して全力で防御姿勢を取った。
感想 0

あなたにおすすめの小説

ホスト異世界へ行く

REON
ファンタジー
「勇者になってこの世界をお救いください」 え?勇者? 「なりたくない( ˙-˙ )スンッ」 ☆★☆★☆ 同伴する為に客と待ち合わせしていたら異世界へ! 国王のおっさんから「勇者になって魔王の討伐を」と、異世界系の王道展開だったけど……俺、勇者じゃないんですけど!?なに“うっかり”で召喚してくれちゃってんの!? しかも元の世界へは帰れないと来た。 よし、分かった。 じゃあ俺はおっさんのヒモになる! 銀髪銀目の異世界ホスト。 勇者じゃないのに勇者よりも特殊な容姿と特殊恩恵を持つこの男。 この男が召喚されたのは本当に“うっかり”だったのか。 人誑しで情緒不安定。 モフモフ大好きで自由人で女子供にはちょっぴり弱い。 そんな特殊イケメンホストが巻きおこす、笑いあり(?)涙あり(?)の異世界ライフ! ※注意※ パンセクシャル(全性愛)ハーレムです。 可愛い女の子をはべらせる普通のハーレムストーリーと思って読むと痛い目をみますのでご注意ください。笑

局地戦闘機 飛電の栄光と終焉

みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

森のカフェしっぽっぽ

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。 一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、 猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。 しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。 地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。 ただし、異世界人は地球には来られない。 行き来できるのはサトルだけ。 向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、 頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、 静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、 サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。 仕事に疲れた会社員。 将来に迷う若者。 自信をなくした人。 サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。 そして、棚の影で震えるジル。 怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。 それでも店からは逃げない。 その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。 これは―― 福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。 震えながらでも前に立つ者が、 今日も小さく世界をつなぐ。

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。