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第787話
――いや、本当の狙いはこっちか。
篠突の逃げ方には霧ヶ峰から引き剥がす意図とは別に明確な目的地があった。
俯瞰にするとそれは明らかで近くに居たキュムラスがカバーに入ろうとしている姿が見える。
キュムラスはふわわの抑えに回ると思っていた事もあって下がるのは意外だった。
火力ではなく攪乱担当だった事もあって、中衛よりも霧ヶ峰のカバーに入ると思っていたからだ。
霧ヶ峰の動きを見る限り、彼女の指示だろうか?
キュムラスは火力こそ低いが一度捕まると簡単に逃がしてくれない厄介な相手だ。
足止めという点においては適任ではあるが、篠突に必要だったのか疑問が――
「あぁ、違うな。 こっちの意図を読んだのか」
そこまで考えて霧ヶ峰の考えに気が付いた。
彼女はヨシナリ達が速攻をかけて人数を減らそうとしている事を見切ったのだ。
だから、時間を稼ぐ方針にシフトした。 この盤面なら時間稼ぎは非常に有効だからだ。
早々に二機落とされはしたが、総合力ではまだ「思金神」は負けていない。
充分に巻き返せはするが、こちらに主導権を握られるのは良くないと考えた。
その思考なら突破力に優れるマルメル、ケイロンにキュムラスを当てて止めるのは理に適っている。
少なくとも分かり易く斬り込んで来る奴を止められれば勢いは削げるからだ。
ただ、キュムラスの動きに合わせてシニフィエが行った事でケアは問題なくできている。
一番相性のいいのはふわわだった事もあって本来なら彼女を当てる予定ではあったのだが、凍露が仕掛けに行った事でそれは叶わなかった。
キュムラスの気が逸れた所でケイロンが霧を突破。
そのまま篠突の追撃に戻る。 少しのロスはあったが、許容範囲内だ。
篠突としては安定して射撃できるポジションを確保してこちらを削るつもりだったのだろうが、想定よりも早くケイロンがキュムラスを振り切った事で思惑が崩れ、諦めて処理をする事に決めたようだ。
位置はもうマップの端に近い事もあってこれ以上逃げられないという事もその行動を後押ししたとみていい。 反応も速い。
追撃の気配を察知した瞬間にミサイル発射。
垂直に飛んだ後、急降下して小型のミサイルをばら撒くクラスタータイプだ。
二人を視認したと同時に斉射を開始。 上手い。
上と下からの飽和攻撃。 下はともかく、上のミサイルは早めに処理しないとまずい。
ケイロンは基本的に真っすぐにしか走れない事をよく理解しているが故の組み立てだ。
実際、かなり有効な攻撃だった。
ケイロンの強みは突破力で、それを最大限に活かす為に彼は常に敵を正面捉える傾向にある。
その為、上は死角とまでは行かないが、比較的ではあるが手薄なのだ。
――ただ、それは彼が一人だった場合の話だが。
ケイロンが取った行動は篠突の想定を超えていた。
立ち上がるように前半身を大きく持ち上げたのだ。
ケイロンの機体はケンタウロスのように半人半馬、要は人間の上半身に馬の体がくっついている。
そんな形状の機体が前半分を持ち上げるとどうなるのか?
上半身が真上に向く。 それにより背に乗っているマルメルが射線を取れるのだ。
両肩に乗せた二挺の銃器が火を噴き、その間にケイロンはやや無理のある体勢で篠突に向けて対物ライフルを向ける。 マルメルは自分の突撃散弾銃とケイロンの散弾砲で広範囲に弾をばら撒く。
特にケイロンの散弾砲はオーダーメイドで長銃身で射程も長い。
クラスターのようなばら撒くタイプのミサイル迎撃には適している。
二人は弾丸の驟雨を浴びて全身に傷が刻まれるが構わない。
マルメルはミサイル迎撃に全てを傾け、ケイロンは冷静、冷徹に狙いを付けて発射。
上下同時に処理されるとは思っていなかったのか、それともマルメルの存在を軽視したのかは何とも言えないが、二人という事をあまり意識しなかった。 それは篠突の敗因と言える。
放たれたケイロンの弾体は吸い込まれるように機体の中心を射抜き、そのまま撃破。
「お見事です」
「背に頼りになる乗り手が居たからだ。 偶にはこういうのもいいな」
ケイロンはマルメルに大きく頷いて見せると「いやぁ」と照れるように身をくねらせた。
そのマルメルもしっかりとミサイルを迎撃して見せたのは見事だ。
「あの体勢でしっかり当てるケイロンさんも凄かったけど、ミサイルを防ぎきったお前も凄ぇよ! 焦らずに落ち着いていたし、前よりも安定感が出て来たな!」
「まぁな! 師匠との特訓の成果って所だな!」
アリスと特訓していたという話は聞いていたので、なるほどと頷く。
彼女は中衛としての完成度は極めて高い。 マルメルとしてもいい刺激を貰ったのだろう。
映像の中の二人はそのままヨシナリの援護に向かうのだが、それは後に回したい事もあっていったん止めて巻き戻す。
次は――
「あー、私でお願いしていいですか? お恥ずかしい話、早々にやられてしまったのであんまり見どころがない事もあって早めに消化して欲しいと言いますか……」
シニフィエが申し訳なさそうに挙手していた。
「分かった。 えーっと、特に反対もないので次はシニフィエで」
映像を戦闘の開始付近まで戻し、シニフィエへとフォーカス。
彼女は身を隠しつつ近接機の抑えか後衛機の奇襲を担っていた。
その為、アイロニーからステルスヴェールを借りて気配を消しつつ峡谷を渡り、最初は霧ヶ峰を仕留めに行くつもりだったのだが、マルメル達がキュムラスに捕まったのを見てそちらのカバーに回ったのだ。
「キュムラスはマルメル達とあんまり相性が良くなかったからいい判断だったよ」
「これで勝てたらもうちょっと大きな顔が出来たんですけどねぇ……」
キュムラスの機体「ネーフォス」は霧状のフィールドを展開し、その内部で一方的な優位を得てから相手を狩るという変わったスタイルのプレイヤーだ。
機体の傾向としてはベリアルのプセウドテイに近く、特定の機能に特化したタイプと言える。
手足はなく胴体と頭部、そして霧と攻防、ドローンの制御を担う巨大なリングのみといったシンプルなデザインだ。 この霧はかなりの曲者で影響下に入るとシックスセンスですら大半の探知項目が死ぬ。
その為、ヨシナリとは相性が最悪の相手だ。
これに霧ヶ峰が加わると完封すらされかねない恐ろしい機体といえる。
篠突の逃げ方には霧ヶ峰から引き剥がす意図とは別に明確な目的地があった。
俯瞰にするとそれは明らかで近くに居たキュムラスがカバーに入ろうとしている姿が見える。
キュムラスはふわわの抑えに回ると思っていた事もあって下がるのは意外だった。
火力ではなく攪乱担当だった事もあって、中衛よりも霧ヶ峰のカバーに入ると思っていたからだ。
霧ヶ峰の動きを見る限り、彼女の指示だろうか?
キュムラスは火力こそ低いが一度捕まると簡単に逃がしてくれない厄介な相手だ。
足止めという点においては適任ではあるが、篠突に必要だったのか疑問が――
「あぁ、違うな。 こっちの意図を読んだのか」
そこまで考えて霧ヶ峰の考えに気が付いた。
彼女はヨシナリ達が速攻をかけて人数を減らそうとしている事を見切ったのだ。
だから、時間を稼ぐ方針にシフトした。 この盤面なら時間稼ぎは非常に有効だからだ。
早々に二機落とされはしたが、総合力ではまだ「思金神」は負けていない。
充分に巻き返せはするが、こちらに主導権を握られるのは良くないと考えた。
その思考なら突破力に優れるマルメル、ケイロンにキュムラスを当てて止めるのは理に適っている。
少なくとも分かり易く斬り込んで来る奴を止められれば勢いは削げるからだ。
ただ、キュムラスの動きに合わせてシニフィエが行った事でケアは問題なくできている。
一番相性のいいのはふわわだった事もあって本来なら彼女を当てる予定ではあったのだが、凍露が仕掛けに行った事でそれは叶わなかった。
キュムラスの気が逸れた所でケイロンが霧を突破。
そのまま篠突の追撃に戻る。 少しのロスはあったが、許容範囲内だ。
篠突としては安定して射撃できるポジションを確保してこちらを削るつもりだったのだろうが、想定よりも早くケイロンがキュムラスを振り切った事で思惑が崩れ、諦めて処理をする事に決めたようだ。
位置はもうマップの端に近い事もあってこれ以上逃げられないという事もその行動を後押ししたとみていい。 反応も速い。
追撃の気配を察知した瞬間にミサイル発射。
垂直に飛んだ後、急降下して小型のミサイルをばら撒くクラスタータイプだ。
二人を視認したと同時に斉射を開始。 上手い。
上と下からの飽和攻撃。 下はともかく、上のミサイルは早めに処理しないとまずい。
ケイロンは基本的に真っすぐにしか走れない事をよく理解しているが故の組み立てだ。
実際、かなり有効な攻撃だった。
ケイロンの強みは突破力で、それを最大限に活かす為に彼は常に敵を正面捉える傾向にある。
その為、上は死角とまでは行かないが、比較的ではあるが手薄なのだ。
――ただ、それは彼が一人だった場合の話だが。
ケイロンが取った行動は篠突の想定を超えていた。
立ち上がるように前半身を大きく持ち上げたのだ。
ケイロンの機体はケンタウロスのように半人半馬、要は人間の上半身に馬の体がくっついている。
そんな形状の機体が前半分を持ち上げるとどうなるのか?
上半身が真上に向く。 それにより背に乗っているマルメルが射線を取れるのだ。
両肩に乗せた二挺の銃器が火を噴き、その間にケイロンはやや無理のある体勢で篠突に向けて対物ライフルを向ける。 マルメルは自分の突撃散弾銃とケイロンの散弾砲で広範囲に弾をばら撒く。
特にケイロンの散弾砲はオーダーメイドで長銃身で射程も長い。
クラスターのようなばら撒くタイプのミサイル迎撃には適している。
二人は弾丸の驟雨を浴びて全身に傷が刻まれるが構わない。
マルメルはミサイル迎撃に全てを傾け、ケイロンは冷静、冷徹に狙いを付けて発射。
上下同時に処理されるとは思っていなかったのか、それともマルメルの存在を軽視したのかは何とも言えないが、二人という事をあまり意識しなかった。 それは篠突の敗因と言える。
放たれたケイロンの弾体は吸い込まれるように機体の中心を射抜き、そのまま撃破。
「お見事です」
「背に頼りになる乗り手が居たからだ。 偶にはこういうのもいいな」
ケイロンはマルメルに大きく頷いて見せると「いやぁ」と照れるように身をくねらせた。
そのマルメルもしっかりとミサイルを迎撃して見せたのは見事だ。
「あの体勢でしっかり当てるケイロンさんも凄かったけど、ミサイルを防ぎきったお前も凄ぇよ! 焦らずに落ち着いていたし、前よりも安定感が出て来たな!」
「まぁな! 師匠との特訓の成果って所だな!」
アリスと特訓していたという話は聞いていたので、なるほどと頷く。
彼女は中衛としての完成度は極めて高い。 マルメルとしてもいい刺激を貰ったのだろう。
映像の中の二人はそのままヨシナリの援護に向かうのだが、それは後に回したい事もあっていったん止めて巻き戻す。
次は――
「あー、私でお願いしていいですか? お恥ずかしい話、早々にやられてしまったのであんまり見どころがない事もあって早めに消化して欲しいと言いますか……」
シニフィエが申し訳なさそうに挙手していた。
「分かった。 えーっと、特に反対もないので次はシニフィエで」
映像を戦闘の開始付近まで戻し、シニフィエへとフォーカス。
彼女は身を隠しつつ近接機の抑えか後衛機の奇襲を担っていた。
その為、アイロニーからステルスヴェールを借りて気配を消しつつ峡谷を渡り、最初は霧ヶ峰を仕留めに行くつもりだったのだが、マルメル達がキュムラスに捕まったのを見てそちらのカバーに回ったのだ。
「キュムラスはマルメル達とあんまり相性が良くなかったからいい判断だったよ」
「これで勝てたらもうちょっと大きな顔が出来たんですけどねぇ……」
キュムラスの機体「ネーフォス」は霧状のフィールドを展開し、その内部で一方的な優位を得てから相手を狩るという変わったスタイルのプレイヤーだ。
機体の傾向としてはベリアルのプセウドテイに近く、特定の機能に特化したタイプと言える。
手足はなく胴体と頭部、そして霧と攻防、ドローンの制御を担う巨大なリングのみといったシンプルなデザインだ。 この霧はかなりの曲者で影響下に入るとシックスセンスですら大半の探知項目が死ぬ。
その為、ヨシナリとは相性が最悪の相手だ。
これに霧ヶ峰が加わると完封すらされかねない恐ろしい機体といえる。
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