Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第789話

 シニフィエがやられたからではなく向かったタイミングで彼女が落ちた事もあって、結果的にはキュムラスにマルメル達の追撃を許さなかったのはいい判断だと言える。
 相変わらず銃声と推進装置の噴射音ぐらいしか聞こえないのでなにが起こっているのかが分からない。 

 「ホーコート。 動きに関しての説明を頼む」
 「うっす。 弾をばら撒いて敵の炙り出しをやりました」

 ――炙り出し?

 視界がゼロの状態で? 相手の推進装置は重力制御だ。
 そもそもステルスに力を入れている機体がその程度でボロを出すものか?
 これが爆発物で霧を散らした後にやったのなら理解はできるが、音の感じから適当に撃っていないのなら明らかに見えている動きだ。

 「見えてはいなかったんだな」
 「うっす。 でも、何となく居場所は分かりました」
 
 その後、霧の奥が光る。 爆発ではない。
 
 「プラズマグレネードか何かか?」

 そう口にしたのはアリスとの訓練でその手の武装を見慣れているマルメルだ。
 
 「似たような物です。 俺のはEMP撒く事に特化した奴なんでドローンはこれで処理しました」
 
 ――なるほど。 

 ドローンを排除されてしまえばキュムラスはリングによる直接攻撃に切り替えざるを得ない。
 捉えやすくなるのは納得ではあるが、違和感は拭えなかった。
 
 「後は誘導用のニードルを撃ち込んで仕留めました」

 聞けば突き刺さった位置に弾丸を誘導するといった代物だったらしい。
 それが本当ならキュムラスは何処へ隠れても弾丸が追いかけて仕留める事が可能となる。

 「そうか、頑張ったな」
 「うっす。 運もあったと思いまずがお役に立てて本当に良かったっす!」

 ホーコートは心から嬉しそうに笑う。 
 ヨシナリとしては反応に困る状況だった事もあって曖昧に頷く事しかできなかった。
 
 「次はどうするか……」
 「ウチにしてくれへん?」

 映像を戻しているとふわわが挙手したのでそちらに切り替える。 
 彼女は斉射をやり過ごすどころか正面から渓谷を突破して真っ先に霧ヶ峰を斬りに行っていた。
 
 「し、初っ端から飛ばすなぁ……」

 タイミング的にマルメル達を真っすぐに追いかける形になっている。
 二人が篠突を追いかけて所で入れ替わる形で戦場の中央に辿り着き、霧ヶ峰に斬りかかったのだがそれを凍露が妨害に入った。 そしてそのままマッチアップとなる。

 「うーん。 間に合わへんかったわぁ」
 「機体の性能的にもあれ以上早くは難しいので仕方ないですよ」

 ふわわとしては凍露の相手をする前に霧ヶ峰を処理してしまいたかったのだろう。
 彼女はシックスセンスとセンサー系の妨害システムが最大の強みだ。
 相手の情報を制限しつつ、相手の情報を常に把握するといったやり方でアドバンテージを取って来る。

 その為、集団戦では非常に邪魔な相手と言える。 
 初手で落とせればかなり大きかったのだが、初期配置は基本的に真ん中――つまりは何かあれば常に誰かがフォローに入れる位置なのだ。 

 篠突が早々にマルメル達を引き剥がしにかかったのもそれが理由だろう。
 意地でも落としたいと深追いすれば碌な事にならない。 だからこそ全員に徹底していた事がある。
 霧ヶ峰に関しては可能であれば撃墜を狙うが深追いはしない。 

 生かしておく厄介ではあるが、他もそれは同じだ。 
 この戦いは数を減らさなければ話にならない以上、時間をかける事はリスクでしかない。
 付け加えるなら霧ヶ峰に関してはグロウモスに任せると考えていた事もあって問題はないと思っていたのだ。

 ――実際、敵のカバーも速かったからな。

 ふわわも速い段階で追撃を諦めた。 

 「ウチはそこまでやないけど鬱陶しかったわぁ」
 「俺は効果範囲外でしたから直に喰らってませんが、機体構成によってはかなりぶっ刺さりますからね」
 
 霧ヶ峰のジャミングシステム「ホワイト・ノイズ」。
 範囲内の敵機の索敵能力の低下。 
 これの嫌な所は機能を露骨に停止させるのではなく制限してくるところだ。 
 
 見えなくなる訳ではない事で死角が増えた事に気付き辛くなる。
 ヨシナリとしては使われるとかなり嫌な代物だ。 
 そして最大の目玉は敵機のロックオンとロックオン警告を無効化する事。 
 
 つまりは誘導兵器や座標を指定する類の武装が扱えなくなる。 
 「星座盤」で該当するのはふわわのナインヘッド・ドラゴン、ベリアルの短距離転移などだろう。
 ミサイル系の武装を多用するメンバーが居ない事もあって攻撃面ではそこまで大きなデバフという訳ではないが、ロックオン警告を切られるのは地味に厄介だ。

 普段なら飛んでくる警告が来ずに反応が遅れる可能性が上がる。
 使われたふわわも早々にナインヘッド・ドラゴンの使用は諦めていた。
 即座に背の柄を用いて曲刃を形成して投擲で気を散らせた後、踏み込もうとしていたがこのタイミングで凍露が割り込んで来た。

 機体名「サーモカルスト」。 白を基調とした機体で常に白い靄のような物を纏っている。
 かなりユニークな機体でその真髄は液体の操作にあった。 
 詳細は不明な点が多いが、何ができるのかは分かっている。

 両手、両足、胴体のスリットから透明な液体を放出し、それを凝固、融解させる事で武器としている。
 単なる水ではないらしく、ふわわと普通に斬り合えている時点でそれが窺えた。
 
 「どうでした?」
 「んー? 何かやってるのは間違いないよー。 多分、キックボクシングか何かやと思う。 それを機体に合わせて弄ったって感じやったなぁ」
 「なるほど」

 機体の特性を最大限に活かす戦い方はベリアルに近い。
 それにリアルのスキルを乗せたといった感じだろうか。
 確かにそう言われると凍露の戦い方は武器こそ使うが打撃の延長といった動きだ。

 氷の長槍による刺突、ブレードも刀剣というには短く、ナイフと呼ぶには少し長かった。
 凍結させて硬度を上げているのは分かるのだが、実体剣と普通に打ち合えるのは凄まじい。
 今回はほぼ使わなかったが、液体化させたそれを盾のように広げる事も可能との事。

 単純に水の性質を変えるだけでなく、力場のような物を用いて操っているのだろう。
 だから零れたりしない訳だ。 それを両手足で行う事でどこからでも攻撃と防御に繋げられる。
 ある程度の壊れない保証がある武器を自由に振り回せるが故に思い切りのいい攻めを行えるのは彼の強みと言えるだろう。

 攻撃の組み立てもいい。 
 ふわわの見立て通り、格闘技をやっているようで立ち回りに隙が少なかった。
 
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