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第793話
機体名は「テンジンコウ」
デザインとしては和風の甲冑といった感じではあるが、意匠は西洋鎧のような印象を受ける。
両肩のシールド。 背面には機体と一体化したバックパック。
携行武装はなし。 ベリアルや凍露のように自機の機能で全てを賄うタイプだ。
面識はないが話は聞いており、事前にリサーチも済ませている。
彼の印象を一言で表すなら単純に強い、だ。
戦い方も正面から相手を叩き潰すといった高い実力に裏打ちされた物で機体もそれに応えうるスペックを誇る。
さて、前評判は分かったが、このニニギというプレイヤー。
どう強いのか? それは映像を見ればすぐに分かった。
先制したユウヤの散弾砲を躱しながら肉薄。
ダッシュと推進装置によるブーストを合わせる事で一歩のストライドを大きく取れるテクニックだ。
これの厄介な所は目測よりも早く間合いに入られるのでタイミングを狂わされる点にある。
そうなると対処が一手遅れるのだ。 あらゆる速度が求められる高速戦闘でそれは致命的となる。
加えて攻撃手段なのだが。 機体が熱を孕む事で真っ赤に染まる。
掌から熱線が飛び出しユウヤを狙うが回避。 代わりに周囲を焼き払う。
これだ。 ニニギの武器は単純で「熱」だ。
とにかく相手を焼き尽くす事を念頭に置いた機体構成と機能は方向性こそ違うがスタイルの似ているベリアル達に通じる物があった。
「うわ、これ思った以上にヤバいなぁ」
「ですねぇ。 熱線を出すだけじゃなくて打撃にも乗ってるから下手に受けられない」
マルメルが思わずそう呟き、シニフィエが同調する。
その通りだった。 どんな熱量を叩き出しているのか蹴りで岩が溶けている。
得意レンジは近距離で熱線は命中精度が余り良くない所から中距離なら危ないが、遠距離なら躱せない事はないレベルだろう。
「ふ、奴の火はただの見掛け倒しではない。 その輝きは闇を祓い、見た者の目を眩ませる」
「なるほど。 強すぎる光は闇に潜む我らの姿を露わにし、五感すら焼くという訳か」
熱でセンサー系にダメージを与えてくるという訳か。
ユウヤとしても接近戦は望む所といいたいのだろうが、余り近寄り過ぎると内部へのダメージが蓄積していく。 それこそ無理をすれば文字通り、五感が死ぬのだ。
一対一なら勝負をかける為に少々のリスクを飲み込んで踏み込むだろうが、まだタカミムスビが後に控えている以上はなるべく少ないダメージで撃破したい。
そんな思惑もあったのだろう。 付かず離れずの距離を維持していた。
――いや、違うのか。
「もしかして勝負所を探っているのか?」
ヨシナリの呟きを肯定するかのようにユウヤは大剣をハンマーに変形させる。
腰を落とし、明らかに勝負を誘っていた。
対するニニギはそれを見て動きを止める。 どうやら受けるつもりのようだ。
機体が真っ赤に染まる。 この戦いは長期戦になれば「星座盤」が不利になる事は明白だ。
無難に勝ちたいのであればダラダラと時間をかければいい。
それをやらなかったのは正々堂々した戦いを好むのか、小細工なしでも勝てるとの判断なのか。
ヨシナリにはどちらとも取れる動きだが、ベリアル、ユウヤの反応を見るに前者だろう。
その高潔さに付け入る形にはなったが、都合のいい展開ではあった。
ニニギは本当に小細工なしで行くようだ。 正面から突っ込んで行った。
普通ならカウンターの餌食と喜ぶところだが、ニニギの場合は速度が並ではない。
10メートル以上の距離を一息で詰めて来る。 これの厄介な点は動きの起点からトップスピードに入るのが異様に早く、動いたと認識した次の瞬間には既に懐に入られるのだ。
対処法としては初動を先読みしてのカウンターだが、ニニギの場合はそこで仕留めなければ全身から噴き出す放射熱で焼かれるという二段構え。
単純すぎるが故に攻略が難しい。 恐らく初見だとタイミングが取れずにそのまま打ち貫かれて終わりだろう。
ユウヤは初見ではないだけあってタイミングは完璧だった。
踏み込む前にアケディアを起動。 相手のエネルギー発生を阻害する。
特に外に向けて作用する物への効果が非常に高い。 特に推進装置まで干渉するのが強力だ。
これを喰らうと通常の推進装置を使っていない上位機種は足を使えなくなる。
その為、ユウヤとの殴り合いを強いられるのだ。
ただ、ニニギの場合は最初の一歩で既にトップスピードに入っている事もあって踏み込み自体を止める事は不可能。 ユウヤの狙いはそこではなく、制御できなくすることにある。
アケディアを使う事で追加の推力を得る事が出来ない。
つまりは真っ直ぐに来るしかなくなるのだ。 そこを狙ってユウヤは拳に付いた新装備を展開。
カウンターを狙う。 両者の一撃が交差した。
ユウヤの一撃はニニギの胴体を、ニニギの一撃はプルガトリオの頭部を完全に破壊する。
決着となったが、ユウヤの様子から勝ったとは思っていないようだ。
明らかにユウヤに合わせ、彼の土俵で戦った結果なのだ。 内容的に素直に勝ったとは言い難い。
それでもこの結果を受け入れたのはこれがチーム戦だからだろう。
ユウヤはチームの勝利の為に妥協したのだ。
ヨシナリの視線から何を考えているのかを察したのか小さく肩を竦めて見せる。
「おまえが気にする事じゃない。 これは俺と奴の問題だ」
その後にユウヤはこの借りはランク戦で返すと付け加えた。
終わって見ればあっさりとしたものだったが、僅かな時間に様々な物が詰まった非常に濃い戦いだったと言える。
そのまま映像を切り替えてアイロニーへとフォーカス。
「メタフィジカル。 私の番か」
アイロニーはこの戦いに於いて常に裏方を担ってくれていた。
序盤はドローンの撒いて情報を集めつつ、グロウモスの為にアルフレッドに偽装した物を随伴させたりと地味ながらもかなりいい仕事をしてくれている。
そんな彼女の動きだが、マルメル達に続く形で渓谷を越え、敵の一機を誘引していた。
対象は雪華というプレイヤー。 高機動の中衛機で特筆するべきはその反応速度だろう。
話によれば攻撃を見てから躱すといったふわわのような超反応を見せるとの事。
ヨシナリとしては処理に時間がかかりそうだと思っていた事もあって引っ張ってくれたのはありがたい。 アイロニーは敢えて姿を晒して捕捉させ、そのまま谷底へと誘導した。
デザインとしては和風の甲冑といった感じではあるが、意匠は西洋鎧のような印象を受ける。
両肩のシールド。 背面には機体と一体化したバックパック。
携行武装はなし。 ベリアルや凍露のように自機の機能で全てを賄うタイプだ。
面識はないが話は聞いており、事前にリサーチも済ませている。
彼の印象を一言で表すなら単純に強い、だ。
戦い方も正面から相手を叩き潰すといった高い実力に裏打ちされた物で機体もそれに応えうるスペックを誇る。
さて、前評判は分かったが、このニニギというプレイヤー。
どう強いのか? それは映像を見ればすぐに分かった。
先制したユウヤの散弾砲を躱しながら肉薄。
ダッシュと推進装置によるブーストを合わせる事で一歩のストライドを大きく取れるテクニックだ。
これの厄介な所は目測よりも早く間合いに入られるのでタイミングを狂わされる点にある。
そうなると対処が一手遅れるのだ。 あらゆる速度が求められる高速戦闘でそれは致命的となる。
加えて攻撃手段なのだが。 機体が熱を孕む事で真っ赤に染まる。
掌から熱線が飛び出しユウヤを狙うが回避。 代わりに周囲を焼き払う。
これだ。 ニニギの武器は単純で「熱」だ。
とにかく相手を焼き尽くす事を念頭に置いた機体構成と機能は方向性こそ違うがスタイルの似ているベリアル達に通じる物があった。
「うわ、これ思った以上にヤバいなぁ」
「ですねぇ。 熱線を出すだけじゃなくて打撃にも乗ってるから下手に受けられない」
マルメルが思わずそう呟き、シニフィエが同調する。
その通りだった。 どんな熱量を叩き出しているのか蹴りで岩が溶けている。
得意レンジは近距離で熱線は命中精度が余り良くない所から中距離なら危ないが、遠距離なら躱せない事はないレベルだろう。
「ふ、奴の火はただの見掛け倒しではない。 その輝きは闇を祓い、見た者の目を眩ませる」
「なるほど。 強すぎる光は闇に潜む我らの姿を露わにし、五感すら焼くという訳か」
熱でセンサー系にダメージを与えてくるという訳か。
ユウヤとしても接近戦は望む所といいたいのだろうが、余り近寄り過ぎると内部へのダメージが蓄積していく。 それこそ無理をすれば文字通り、五感が死ぬのだ。
一対一なら勝負をかける為に少々のリスクを飲み込んで踏み込むだろうが、まだタカミムスビが後に控えている以上はなるべく少ないダメージで撃破したい。
そんな思惑もあったのだろう。 付かず離れずの距離を維持していた。
――いや、違うのか。
「もしかして勝負所を探っているのか?」
ヨシナリの呟きを肯定するかのようにユウヤは大剣をハンマーに変形させる。
腰を落とし、明らかに勝負を誘っていた。
対するニニギはそれを見て動きを止める。 どうやら受けるつもりのようだ。
機体が真っ赤に染まる。 この戦いは長期戦になれば「星座盤」が不利になる事は明白だ。
無難に勝ちたいのであればダラダラと時間をかければいい。
それをやらなかったのは正々堂々した戦いを好むのか、小細工なしでも勝てるとの判断なのか。
ヨシナリにはどちらとも取れる動きだが、ベリアル、ユウヤの反応を見るに前者だろう。
その高潔さに付け入る形にはなったが、都合のいい展開ではあった。
ニニギは本当に小細工なしで行くようだ。 正面から突っ込んで行った。
普通ならカウンターの餌食と喜ぶところだが、ニニギの場合は速度が並ではない。
10メートル以上の距離を一息で詰めて来る。 これの厄介な点は動きの起点からトップスピードに入るのが異様に早く、動いたと認識した次の瞬間には既に懐に入られるのだ。
対処法としては初動を先読みしてのカウンターだが、ニニギの場合はそこで仕留めなければ全身から噴き出す放射熱で焼かれるという二段構え。
単純すぎるが故に攻略が難しい。 恐らく初見だとタイミングが取れずにそのまま打ち貫かれて終わりだろう。
ユウヤは初見ではないだけあってタイミングは完璧だった。
踏み込む前にアケディアを起動。 相手のエネルギー発生を阻害する。
特に外に向けて作用する物への効果が非常に高い。 特に推進装置まで干渉するのが強力だ。
これを喰らうと通常の推進装置を使っていない上位機種は足を使えなくなる。
その為、ユウヤとの殴り合いを強いられるのだ。
ただ、ニニギの場合は最初の一歩で既にトップスピードに入っている事もあって踏み込み自体を止める事は不可能。 ユウヤの狙いはそこではなく、制御できなくすることにある。
アケディアを使う事で追加の推力を得る事が出来ない。
つまりは真っ直ぐに来るしかなくなるのだ。 そこを狙ってユウヤは拳に付いた新装備を展開。
カウンターを狙う。 両者の一撃が交差した。
ユウヤの一撃はニニギの胴体を、ニニギの一撃はプルガトリオの頭部を完全に破壊する。
決着となったが、ユウヤの様子から勝ったとは思っていないようだ。
明らかにユウヤに合わせ、彼の土俵で戦った結果なのだ。 内容的に素直に勝ったとは言い難い。
それでもこの結果を受け入れたのはこれがチーム戦だからだろう。
ユウヤはチームの勝利の為に妥協したのだ。
ヨシナリの視線から何を考えているのかを察したのか小さく肩を竦めて見せる。
「おまえが気にする事じゃない。 これは俺と奴の問題だ」
その後にユウヤはこの借りはランク戦で返すと付け加えた。
終わって見ればあっさりとしたものだったが、僅かな時間に様々な物が詰まった非常に濃い戦いだったと言える。
そのまま映像を切り替えてアイロニーへとフォーカス。
「メタフィジカル。 私の番か」
アイロニーはこの戦いに於いて常に裏方を担ってくれていた。
序盤はドローンの撒いて情報を集めつつ、グロウモスの為にアルフレッドに偽装した物を随伴させたりと地味ながらもかなりいい仕事をしてくれている。
そんな彼女の動きだが、マルメル達に続く形で渓谷を越え、敵の一機を誘引していた。
対象は雪華というプレイヤー。 高機動の中衛機で特筆するべきはその反応速度だろう。
話によれば攻撃を見てから躱すといったふわわのような超反応を見せるとの事。
ヨシナリとしては処理に時間がかかりそうだと思っていた事もあって引っ張ってくれたのはありがたい。 アイロニーは敢えて姿を晒して捕捉させ、そのまま谷底へと誘導した。
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