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第800話
タカミムスビの爪の一閃による一撃で隠れていたアイロニーの機体が両断。
辛うじて撃破は免れたようにも見えるが、後の事と彼の口振りからわざと生かしておいたと見ていい。
アイロニーが分かり易く表情を歪めていた。
残りはヨシナリとアイロニーのみ。
タカミムスビは損傷こそ負っているが戦闘に支障はないレベルだ。
普通に考えればどう考えても勝ち目はない。
だが、ここまで舐められて終われないヨシナリは切り札を切る事にした。
本来ならもっと先で披露するつもりで碌に訓練もしてないのだが、躊躇する理由はない。
「魔弾の射手よ。 その身に秘められた闇の心臓――その力を完全に解き放つ時が来たようだな」
「あぁ、貴公から受け継ぎし、闇の叡智が秘められしその心臓。 前々からその力を引き出せぬ事に歯がゆさを感じていた。 我がホロスコープに闇の叡智の全てを受け入れるだけの器はないが、彼女の秘薬によりその枷を一時的に取り払ったのだ」
最初にアイロニーの特性を知った時から考えていた事だ。
彼女の力を借りればパンドラの最大出力を一時的にでも引き出す事が可能ではないかと。
そもそも上限を500%に制限しているのはそれ以上だと機体――フレームが耐えられないからだ。
キマイラフレームはパンドラが齎す闇の叡智を受け止めるように設計されていないのだから当然だった。 それを無理に使っているのだ。
歪みが出るのは仕方がない事ではあるが、性能上限という絶対的な格差がある以上はそれを補う為に少々の無茶は必要だった。
勧誘の際に依頼した事もあってアイロニーは割と早い段階でホロスコープ用のレシピを開発してくれた。 急速冷却とナノマシンによるフレームの修復。
この二つを持続的に行う事で臨界による爆発を抑えつつ機体の寿命を僅かに伸ばす効果があった。
「ヘロイカル。 それを以ってしても保って30秒という所だがな」
「充分でしたよ」
パンドラが叩き出す最大出力はキマイラフレームの上限を突破し1000%という冗談みたいな数字を叩き出す。 ベリアルのプセウドテイが化け物じみた強さの一因だろう。
映像の中のホロスコープの全身からエーテルが噴き出し機体を覆いつくす。
「うぉ、すっげ。 これどうなってんだ?」
「機体を覆うエーテルの密度を極限まで高めたんだ。 この状態だと常にエネルギーを吐き出し続けないと爆発するからな」
爆発する事に関しては今のスタイルを確立する時点で分かり切っていた。
アイロニーによるドーピングを用いてもその問題は付いて回る。
映像の中でホロスコープが闇色の帯を残しながらタカミムスビを中心に大きく弧を描くように旋回。
尾を引いているのは余剰のエーテルを吐き出しているからだ。
常に全開でいなければ30秒を待たずに爆散するのでトップスピードを維持しなければならないという綱渡りのような操作を要求される。
だが、それが齎す速度はこれまでの比ではない。
タカミムスビが先に仕掛けたにもかかわらずその反応を上回って背後を取っていた。
「どう見ても反応できてへんなぁ」
ヨシナリは進路上の反射板を全て破壊しながらアマノイワトの背に腕を向ける。
僅かに遅れて防御に入ったタカミムスビが腕でガードを固めるが、突き出した腕から無数の銃口が噴き出すように顔を覗かせる。
現れたのは見覚えのあるケイロンの銃だ。
「先輩、あの一瞬の間に武器を拾ったんっすか?」
「あぁ、大きな動きで旋回したのは武器を拾う目的もあったんだ」
エーテルによって強化――もはや浸食とも取れる状態のそれによって吐き出された銃弾の破壊力は凄まじく、これまで碌にダメージの通らなかったアマノイワトの腕が瞬時に穴だらけになり、千切れ飛ぶ。
凄まじい威力だった。 銃声というよりはもはや爆発音のような何かが連続して戦場に響き渡る。
流石のタカミムスビもこれは無理だとレーザーを放ちながら後退。
速度差は明らかで点では捉えられないと瞬時に判断し、照射時間を伸ばして面で焼き切ろうとしたが、成立する前に反射板を破壊して結界が成立する前に打ち砕く。
ヨシナリは既に背後。 まるで影のように纏わりついている。
タカミムスビは振り返りながら爪を一閃。 ブレードはホロスコープを捉えきれずに空を切る。
ふわわが目を凝らすように映像を凝視。
「もしかして目晦ましでも使うた?」
「正確には漏れているエーテルのお陰で微妙に目測が狂ったみたいですね。 あの状態のホロスコープは形がはっきりしませんから」
ヨシナリはお返しとばかりにケイロンの銃を構えるが発射前にエーテル流入に耐え切れずに爆散。
ならと反対の腕を突き出すとホーコートのバトルライフルとアノマリーの銃口が突き出し連射。
アマノイワトの表面で無数の爆発。 装甲、パーツが次々と脱落。
「お義兄さん。 すご……」
銃弾の一部は機体を貫通すらしていた。
だが、無茶な強化に銃自体が耐えられずに内部から爆発して使い物にならなくなる。
もはや残骸のような有様だがタカミムスビは楽し気に笑いながら特徴的な頭部の口を大きく開く。
口腔ないにエネルギーが充填される。 応じるようにホロスコープの胸部にエーテルが収束。
発射は同時。 両者の砲撃が拮抗する。
――ここは撃ち合いに付き合う必要はなかったか。
実を言うとこの時点でホロスコープの内部は凄い事になっていた。
急激な加熱と冷却によってフレームの強度が落ち込んでおり、凄まじい量のエラーメッセージがポップアップしていたのだ。
この時点で冷却の効果は切れかかっており、胴体部分はフレームがバターみたいに溶けかかっていた。
そんな焦りもあってこのまま押し切ろうといった思考になったのは分かるが熱くなり過ぎだ。
残り時間が10秒も残っていなかった事も要因の一つだろう。
そして最後の10秒――ヨシナリにとっては勝利を得る為の最後のチャンスであり、その価値は黄金に等しい。 勝負を決めに行く。
見ている全員がそうだと分かる程にヨシナリは前のめりだった。
回転しながら旋回。 タカミムスビが迎撃に腕を振り回すがスピードが違いすぎる。
ユウヤの機体から回収した物と自前の二本のイラで切り裂き、突き刺す。
タカミムスビは転移で距離を取りながらレーザー攻撃。
ヨシナリはエーテルによる分身で攪乱。
ベリアルのように転移を絡めず、スピードに物を言わせてその場に分身を残したのだ。
辛うじて撃破は免れたようにも見えるが、後の事と彼の口振りからわざと生かしておいたと見ていい。
アイロニーが分かり易く表情を歪めていた。
残りはヨシナリとアイロニーのみ。
タカミムスビは損傷こそ負っているが戦闘に支障はないレベルだ。
普通に考えればどう考えても勝ち目はない。
だが、ここまで舐められて終われないヨシナリは切り札を切る事にした。
本来ならもっと先で披露するつもりで碌に訓練もしてないのだが、躊躇する理由はない。
「魔弾の射手よ。 その身に秘められた闇の心臓――その力を完全に解き放つ時が来たようだな」
「あぁ、貴公から受け継ぎし、闇の叡智が秘められしその心臓。 前々からその力を引き出せぬ事に歯がゆさを感じていた。 我がホロスコープに闇の叡智の全てを受け入れるだけの器はないが、彼女の秘薬によりその枷を一時的に取り払ったのだ」
最初にアイロニーの特性を知った時から考えていた事だ。
彼女の力を借りればパンドラの最大出力を一時的にでも引き出す事が可能ではないかと。
そもそも上限を500%に制限しているのはそれ以上だと機体――フレームが耐えられないからだ。
キマイラフレームはパンドラが齎す闇の叡智を受け止めるように設計されていないのだから当然だった。 それを無理に使っているのだ。
歪みが出るのは仕方がない事ではあるが、性能上限という絶対的な格差がある以上はそれを補う為に少々の無茶は必要だった。
勧誘の際に依頼した事もあってアイロニーは割と早い段階でホロスコープ用のレシピを開発してくれた。 急速冷却とナノマシンによるフレームの修復。
この二つを持続的に行う事で臨界による爆発を抑えつつ機体の寿命を僅かに伸ばす効果があった。
「ヘロイカル。 それを以ってしても保って30秒という所だがな」
「充分でしたよ」
パンドラが叩き出す最大出力はキマイラフレームの上限を突破し1000%という冗談みたいな数字を叩き出す。 ベリアルのプセウドテイが化け物じみた強さの一因だろう。
映像の中のホロスコープの全身からエーテルが噴き出し機体を覆いつくす。
「うぉ、すっげ。 これどうなってんだ?」
「機体を覆うエーテルの密度を極限まで高めたんだ。 この状態だと常にエネルギーを吐き出し続けないと爆発するからな」
爆発する事に関しては今のスタイルを確立する時点で分かり切っていた。
アイロニーによるドーピングを用いてもその問題は付いて回る。
映像の中でホロスコープが闇色の帯を残しながらタカミムスビを中心に大きく弧を描くように旋回。
尾を引いているのは余剰のエーテルを吐き出しているからだ。
常に全開でいなければ30秒を待たずに爆散するのでトップスピードを維持しなければならないという綱渡りのような操作を要求される。
だが、それが齎す速度はこれまでの比ではない。
タカミムスビが先に仕掛けたにもかかわらずその反応を上回って背後を取っていた。
「どう見ても反応できてへんなぁ」
ヨシナリは進路上の反射板を全て破壊しながらアマノイワトの背に腕を向ける。
僅かに遅れて防御に入ったタカミムスビが腕でガードを固めるが、突き出した腕から無数の銃口が噴き出すように顔を覗かせる。
現れたのは見覚えのあるケイロンの銃だ。
「先輩、あの一瞬の間に武器を拾ったんっすか?」
「あぁ、大きな動きで旋回したのは武器を拾う目的もあったんだ」
エーテルによって強化――もはや浸食とも取れる状態のそれによって吐き出された銃弾の破壊力は凄まじく、これまで碌にダメージの通らなかったアマノイワトの腕が瞬時に穴だらけになり、千切れ飛ぶ。
凄まじい威力だった。 銃声というよりはもはや爆発音のような何かが連続して戦場に響き渡る。
流石のタカミムスビもこれは無理だとレーザーを放ちながら後退。
速度差は明らかで点では捉えられないと瞬時に判断し、照射時間を伸ばして面で焼き切ろうとしたが、成立する前に反射板を破壊して結界が成立する前に打ち砕く。
ヨシナリは既に背後。 まるで影のように纏わりついている。
タカミムスビは振り返りながら爪を一閃。 ブレードはホロスコープを捉えきれずに空を切る。
ふわわが目を凝らすように映像を凝視。
「もしかして目晦ましでも使うた?」
「正確には漏れているエーテルのお陰で微妙に目測が狂ったみたいですね。 あの状態のホロスコープは形がはっきりしませんから」
ヨシナリはお返しとばかりにケイロンの銃を構えるが発射前にエーテル流入に耐え切れずに爆散。
ならと反対の腕を突き出すとホーコートのバトルライフルとアノマリーの銃口が突き出し連射。
アマノイワトの表面で無数の爆発。 装甲、パーツが次々と脱落。
「お義兄さん。 すご……」
銃弾の一部は機体を貫通すらしていた。
だが、無茶な強化に銃自体が耐えられずに内部から爆発して使い物にならなくなる。
もはや残骸のような有様だがタカミムスビは楽し気に笑いながら特徴的な頭部の口を大きく開く。
口腔ないにエネルギーが充填される。 応じるようにホロスコープの胸部にエーテルが収束。
発射は同時。 両者の砲撃が拮抗する。
――ここは撃ち合いに付き合う必要はなかったか。
実を言うとこの時点でホロスコープの内部は凄い事になっていた。
急激な加熱と冷却によってフレームの強度が落ち込んでおり、凄まじい量のエラーメッセージがポップアップしていたのだ。
この時点で冷却の効果は切れかかっており、胴体部分はフレームがバターみたいに溶けかかっていた。
そんな焦りもあってこのまま押し切ろうといった思考になったのは分かるが熱くなり過ぎだ。
残り時間が10秒も残っていなかった事も要因の一つだろう。
そして最後の10秒――ヨシナリにとっては勝利を得る為の最後のチャンスであり、その価値は黄金に等しい。 勝負を決めに行く。
見ている全員がそうだと分かる程にヨシナリは前のめりだった。
回転しながら旋回。 タカミムスビが迎撃に腕を振り回すがスピードが違いすぎる。
ユウヤの機体から回収した物と自前の二本のイラで切り裂き、突き刺す。
タカミムスビは転移で距離を取りながらレーザー攻撃。
ヨシナリはエーテルによる分身で攪乱。
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