Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第802話

 「あー……。 まぁ、見えてた結果とはいえ落ちるなぁ……」

 マルメルはユニオンホーム内の自室でそう呟いた。
 相手は日本最強ユニオン「思金神」の一軍だ。 つまりチームとしてはこのサーバーで最高峰。
 そんなヤバすぎる相手にあそこまで戦えたのだ。 

 ここはいい結果が出せたなと満足したい所ではあったが、相棒はそうは考えていないようで目に見えて落ち込んでいた。 恐らくは一人で反省会でもしているかもしれない。
 ヨシナリがそんな調子なのだ。 自分だけ切り替えという訳にも行かなかった。

 「ただ、どうすれば勝てたかって聞かれても何も言えねぇんだよなぁ……」

 正直、マルメルとしてはベストは尽くし、調子も悪くなかった。
 少なくとも出せるものは出しきったと言い切れる程度には動けていたと思っている。
 ケイロンと組んで敵機の処理。 そのままタカミムスビへの強襲とそこまでは良かったのだが、肝心のタカミムスビの強さが想定を遥かに上回っていた。

 Q:「星座盤」足りなかったのはなにか?
 A:機体性能と経験値。

 最終的にはその結論に落ち着いてしまう。 今回ばかりは相手が悪かった。

 ――まぁ、そこで終わるつもりはねぇけどな。

 そう、今はまだ、だ。 「星座盤」というチームにはまだまだ強くなる余地はある。
 次に戦う時はもっといい所まで行けるかもしれない。 その次はもしかしたら勝てるかもしれない。
 そんな結果を手繰り寄せる為にもっと頑張ろう。 良い感じに思考が着地し、うんうんと内心で頷く。

 「――それはそうとして、ちょっとぐらい役得があってもいいよなぁ」

 マルメルはそう呟くと部屋の壁際へと移動。 
 室内には数が増えて来たトルーパーフィギュアが並んでいる。
 初期のヨシナリ、マルメル、ふわわの機体に始まり、徐々にバージョンアップした機体が並んでおり、フィールドのセットも購入した事もあって中々に本格的になってきていた。

 様々な戦場を再現したセットによって手狭になったので部屋を拡張したのだ。 
 その為、マルメルの部屋は初期の十倍近くの広さへと変わっていた。 
 お陰でGが全く溜まらないが些細な問題だ。
 
 これまでに買い揃えた様々な戦場を再現したセットにこれまでに経験した激戦が再現されていた。

 最近はユウヤとベリアルが自分の機体のフィギュアをくれた事もあって色々と捗っている。
 そして今回、新しいコレクションが加わったのだ。 一番奥――祭壇のようにメンバーの最新機体のフィギュアの並んでいる棚にマルメルは新しく手に入れたフィギュアを並べる。

 まずはアリスの機体。 最近は師匠としてお世話になっているプレイヤーで中距離戦の大先輩だ。
 
 「いや、ホバー移動の重量機に長物。 デザインも格好いいし、最高だなぁ……」

 腰だめにレーザー砲を構えている姿をうっとりと眺め、ぐるぐると回してデザイン性の高さを堪能した後、次のフィギュアを実体化。
 ケンタウロスのような馬の下半身と人型の上半身、ハルバードに大型銃が三挺マウントされているのはケイロンの機体だ。
 
 「この重厚さと力強さよ。 強度上げる為に上半身がマッシブなのもいいなぁ」

 前足を大きく持ち上げた状態で重機関銃を構えている力強いポーズのそれを同じように眺めた後、武器やポージングを変えて楽しんでから棚に置く。
 最後に布を被っているお陰でデザインがよく分からないが、その特定機能に特化した使い手の合理を突き詰めたアイロニーの機体。 

 ちなみに布を剥がすと中が見られるのだが、シルエットからも分かる異形感が最高だった。

 「やっぱりジェネシスフレームはどれも独自のデザイン性があっていいなぁ。 しかも専用の完全オリジナル機体。 俺も欲しいぜ」

 ベリアルとユウヤからフィギュアを貰った事でマルメルの中にあったブレーキの一部が壊れてしまったようだ。 ランカーと話す機会があればフィギュアを分けて貰えないか頼むようになってしまった。
 タヂカラオやポンポン達に会ったら頼もうと密かに企んでおり、どんな感じで飾って遊ぼうかという皮算用までしていた。
 
 今回もアイロニーとケイロンに頼んだのだが、二人とも快く譲ってくれたので感謝しかない。
 格好よく並べた後、スクリーンショットを撮るとメッセージを作成。
 送り先は譲ってくれたランカー達だ。 感謝に写真を添えて送信。
 
 「負けたのは悔しいが、タカミムスビの機体もいいなぁ。 フィギュア譲ってくれねぇかなぁ……」

 あの大きさなのだ。 市街地ステージのセットに置くと建物とのサイズ差で映えるぞぉ……。
 そんな事を考えながら手に入れたフィギュアをニヤニヤと上機嫌に眺めていた。


 ――傲慢な人間はこうして足元を掬われるものだよ。

 タカミムスビの言葉が脳内でリフレインする。
 ふわわは努めてそれを脳内から追い出し、自室でインテリアの日本刀を構え鉄芯入りの巻き藁を一閃。
 切断は叶わず。 刀は半ばから折れ飛んだ。

 「あかんなぁ……」

 口調はいつも通りだが、内心は屈辱感でいっぱいだった。 明らかに集中できていない。
 見透かされた上で叩き潰されたのだ。 ふわわにとってこれ以上ないほどの屈辱的な敗北だった。
 ヨシナリの時とは違い、不快感と怒りの混ざった嫌な敗北感だ。

 同時に頭の冷静な部分では敢えてそうした事も分かっていた。 
 タカミムスビは歪んではいるが、自分と同類の人間で自らのエゴを何よりも優先する破綻者だ。
 彼の目的はふわわ達に徹底的に敗北の屈辱を植えつけた上での発奮を促す事。

 要は悔しかったら強くなって自分を叩き潰しに来いというメッセージ。
 そんな物を仕込める程度には余裕のある戦いだったのだ。 つまりは舐められた上で負けた。
 ヨシナリは無言で部屋に引っ込んだが、ふわわと同様に今頃は怒り狂っている頃だろう。

 「――なんや、ウチって負けてイラついてんのか」

 そこまで考えて自分の思考が客観視できた。 
 悔しいではないのはこの感情があそこまで煽られて無様に負けた事に起因しているからだろう。
 内容的に単純に総合力で負けたと言い切れないのが、屈辱感が増している要因だ。

 タカミムスビ。 
 最初は性能で圧倒するタイプかとも思ったが、相手を研究してから勝算を叩き出すヨシナリに近いタイプだ。 恐らくヨシナリが歳を取って三回ぐらい捻じれればあんな感じになるかもしれない。
 
 特に殺気の隠し方が秀逸だった。 
 一部の攻撃には殺気どころか意識すら乗っていなかった事を考えると何らかの手段で代行させている?
 レーザー攻撃に至ってはほとんどがそうだった事もあって何かしらのカラクリがあると見ていい。

 あれだけやって底が見えなかったというのは凄まじい相手だ。
 
 「まぁ、その方が斬りがいがあってえぇか」

 そう呟いて刀を一閃。 巻き藁の上半分が音もなく斜めにズレた。 
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