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第808話
「――という事があったんですよ」
「いやはや、僕の知らない所で盛り上がっていると思ったらそんな事になっていたのか」
ヨシナリがそう言って溜息を吐くとタヂカラオは苦笑。
場所は「思金神」の一角。 高層ビルの上層階で窓からは広大なホームが一望できる。
二人が話しているのは先日のユニオン対抗戦の話だ。
「俺としては三軍に復帰したタヂカラオさんが予選落ちした事に驚きですよ」
「はは、タカミムスビさんと同じブロックに当たってね。 ついつい突っかかってしまったよ」
聞けばタヂカラオはヤガミを説得して一軍に仕掛けに行ったらしい。
随分と思い切った事をしたと思ったが、タカミムスビの垣間見た本性を考えれば「思金神」のメンバーとしては健全なのかもしれない。
「――というか他のメンバーはよく了承しましたね?」
「実を言うと半分以上が反対してたけど、ヤガミさんが一機落とす度に特別報酬を出すって話をしたら皆、黙ったよ。 現金な奴らだね?」
三軍は自己利益に寄ったプレイヤーが多いというのはユウヤの談だがなるほど。
報酬で釣れば動くし、問題があればヤガミの責任にもできるので抵抗がないのか。
「どうでした?」
「カカラさん達と戦って消耗していた所を狙って四機まで落としたんだけど、やっぱり火力差が大きすぎたね」
「流石です」
素直にそう思った。 ただの撃墜ではない。
一軍相手に正面から仕掛けてこの結果なのだ。 充分に自慢できる内容だった。
「アノビィ君が思った以上に働いてくれてね。 想定以上に敵の分断が上手くいったよ」
ナチュラルに一軍を敵呼ばわりしてるのに若干、突っ込みたかったがタヂカラオは負けて悔しいといった様子以上に楽しそうだった。
「そうなんですね。 アノビィさんにはインド戦でお世話になったんで活躍を聞くとちょっと嬉しいですよ」
「はは、気難しい奴だが、何だかんだと仕事はしてくれるから仲間だと頼りになるんだ」
実際、アノビィのウイルスを用いたステルスは敵の基地内部の探索を容易にし、メンテナンスまで可能としたのだ。 ヨシナリとしては感謝しかなかった。
「僕としてはタカミムスビさん以外を全滅させた君達の話を聞きたい所だよ。 『星座盤』の活躍は『思金神』内部でもちょっとしたニュースになっててね。 特にニニギ君がやられたのは僕としても少し驚きだったよ」
「ユウヤ曰く胸を借りた形になってしまったって言ってたんで、当人的には余り勝った気がしないっていうのが本音みたいです」
「そうなのかい? ニニギ君当人は完敗だったとか言っていたらしいけど――」
タヂカラオは言いかけた所で二つのアバターが入室。
「うーっす。 おつかれぃ」
「おっす。 来たゾ」
ツガルとポンポンだ。
ツガルは少し疲れた様子なのが気になったが努めて気にせずにヨシナリは「お疲れです」と会釈。
「ヨシナリぃ。 予選ではやられたが次はあたしが勝つからナ?」
「はは、リベンジマッチはいつでも待ってますよ。 まぁ、返り討ちですけどね?」
「あぁ、『豹変』は予選で負けたんだっけな。 普通にやってりゃ突破は訳なかっただろうにどいつもこいつもリスク取るよなぁ」
「そりゃ、ぶっ倒しがいがある奴が目の前にいるんだゾ? 行かない訳ないだろ?」
即答するポンポンにツガルは苦笑して肩を竦めて見せる。
「――ま、対抗戦の話は置いといて、先に本題を済ませちまおうぜ。 面子はこれで全部か?」
「いや、実はもう一人、声をかけているよ」
「誰だ? 俺の知ってる奴??」
ツガルの疑問に答えるように新しい入室があった。
現れたラフな服装をしたアバターは黒髪のパッとしない印象ではあるが、名前を見ればそうでない事が分かる。
「あれ? 俺が最後か。 時間通りだと思ったんだが遅れちまったか?」
「いや、時間通りだよ。 ようこそアドルファス君」
ユニオン「烏合衆」リーダー、アドルファス。 この集まりに呼んだ最後の一人だ。
タヂカラオとしては呼んでも来ないと思ったが、ヨシナリがダメ元で声をかけてみようと提案した結果、参加の意思を示したプレイヤーだ。
「前まではこういった集まりって意味あるのかって思ってたけど、最近は割と重要なんだなって思い直してな」
「はは、君らしいね。 そんな畏まった場じゃないよ。 ちょっとした情報交換の場と思って気楽に構えてくれよ」
「そうかい。 ま、よろしく頼むぜ」
アドルファスはそう言ってタヂカラオに勧められた席に着く。
「はい、これでメンバーが全員揃ったんですが、今回のお題は次のイベントについてです。 概要には目を通されましたか?」
ヨシナリが全員席に着いた所で話題を切り出しつつ、ウインドウを可視化。
表示されたのは次回のイベントについてだ。
ワールドレイド。 これまでになかった新コンテンツだ。
「今回はサーバー単位での共同戦線となるみたいだね」
「他所のサーバーの連中と組むって考えると面白そうだけど、ルールを考えると微妙だナ」
ポンポンの言う通りだった。 まず、基本的なルール。
三つのサーバーでの共同戦線となるのだが、入れ替わり制なのだ。
最初のサーバーが五時間の戦闘を行い、三時間経過の時点で次のサーバーが入る。
五時間経過の時点で最初のサーバーは離脱。 六時間経過で三つの目のサーバーが参戦。
二つ目のサーバーは戦闘開始から十時間経過で状態に関わらず戦闘終了となる。
「なんかすっきりしなさそうな内容だな」
「スコアアタックって認識でいいのか?」
ツガルは微妙といった様子でアドルファスはやや首を傾げる。
「作戦目的が敵の戦力を削るって形になってるんで全滅とかじゃないんですよね。 恐らくはウェーブ制の無限湧きかなにかかと思います。 感じから相手は宇宙生物らしいんでようやくあってないような感じだったこのゲームのストーリー部分に触れられるのかと思って期待はしてますよ」
「だナ。 あたしはこのゲームが宇宙生物から惑星を守るのが本題だって事をすっかり忘れてたゾ」
「それは俺もです。 マジで対人かよく分からないエネミーの相手ばっかりでしたからね」
苦笑しながらヨシナリはウインドウの表示を切り替える。
「で、次は戦場となる場所についてなんですけど――」
表示されたのは明らかに何処かの惑星といった様子だった。
空は真っ暗で星がはっきりと瞬いている点から大気がない月面のような場所と思われる。
「いやはや、僕の知らない所で盛り上がっていると思ったらそんな事になっていたのか」
ヨシナリがそう言って溜息を吐くとタヂカラオは苦笑。
場所は「思金神」の一角。 高層ビルの上層階で窓からは広大なホームが一望できる。
二人が話しているのは先日のユニオン対抗戦の話だ。
「俺としては三軍に復帰したタヂカラオさんが予選落ちした事に驚きですよ」
「はは、タカミムスビさんと同じブロックに当たってね。 ついつい突っかかってしまったよ」
聞けばタヂカラオはヤガミを説得して一軍に仕掛けに行ったらしい。
随分と思い切った事をしたと思ったが、タカミムスビの垣間見た本性を考えれば「思金神」のメンバーとしては健全なのかもしれない。
「――というか他のメンバーはよく了承しましたね?」
「実を言うと半分以上が反対してたけど、ヤガミさんが一機落とす度に特別報酬を出すって話をしたら皆、黙ったよ。 現金な奴らだね?」
三軍は自己利益に寄ったプレイヤーが多いというのはユウヤの談だがなるほど。
報酬で釣れば動くし、問題があればヤガミの責任にもできるので抵抗がないのか。
「どうでした?」
「カカラさん達と戦って消耗していた所を狙って四機まで落としたんだけど、やっぱり火力差が大きすぎたね」
「流石です」
素直にそう思った。 ただの撃墜ではない。
一軍相手に正面から仕掛けてこの結果なのだ。 充分に自慢できる内容だった。
「アノビィ君が思った以上に働いてくれてね。 想定以上に敵の分断が上手くいったよ」
ナチュラルに一軍を敵呼ばわりしてるのに若干、突っ込みたかったがタヂカラオは負けて悔しいといった様子以上に楽しそうだった。
「そうなんですね。 アノビィさんにはインド戦でお世話になったんで活躍を聞くとちょっと嬉しいですよ」
「はは、気難しい奴だが、何だかんだと仕事はしてくれるから仲間だと頼りになるんだ」
実際、アノビィのウイルスを用いたステルスは敵の基地内部の探索を容易にし、メンテナンスまで可能としたのだ。 ヨシナリとしては感謝しかなかった。
「僕としてはタカミムスビさん以外を全滅させた君達の話を聞きたい所だよ。 『星座盤』の活躍は『思金神』内部でもちょっとしたニュースになっててね。 特にニニギ君がやられたのは僕としても少し驚きだったよ」
「ユウヤ曰く胸を借りた形になってしまったって言ってたんで、当人的には余り勝った気がしないっていうのが本音みたいです」
「そうなのかい? ニニギ君当人は完敗だったとか言っていたらしいけど――」
タヂカラオは言いかけた所で二つのアバターが入室。
「うーっす。 おつかれぃ」
「おっす。 来たゾ」
ツガルとポンポンだ。
ツガルは少し疲れた様子なのが気になったが努めて気にせずにヨシナリは「お疲れです」と会釈。
「ヨシナリぃ。 予選ではやられたが次はあたしが勝つからナ?」
「はは、リベンジマッチはいつでも待ってますよ。 まぁ、返り討ちですけどね?」
「あぁ、『豹変』は予選で負けたんだっけな。 普通にやってりゃ突破は訳なかっただろうにどいつもこいつもリスク取るよなぁ」
「そりゃ、ぶっ倒しがいがある奴が目の前にいるんだゾ? 行かない訳ないだろ?」
即答するポンポンにツガルは苦笑して肩を竦めて見せる。
「――ま、対抗戦の話は置いといて、先に本題を済ませちまおうぜ。 面子はこれで全部か?」
「いや、実はもう一人、声をかけているよ」
「誰だ? 俺の知ってる奴??」
ツガルの疑問に答えるように新しい入室があった。
現れたラフな服装をしたアバターは黒髪のパッとしない印象ではあるが、名前を見ればそうでない事が分かる。
「あれ? 俺が最後か。 時間通りだと思ったんだが遅れちまったか?」
「いや、時間通りだよ。 ようこそアドルファス君」
ユニオン「烏合衆」リーダー、アドルファス。 この集まりに呼んだ最後の一人だ。
タヂカラオとしては呼んでも来ないと思ったが、ヨシナリがダメ元で声をかけてみようと提案した結果、参加の意思を示したプレイヤーだ。
「前まではこういった集まりって意味あるのかって思ってたけど、最近は割と重要なんだなって思い直してな」
「はは、君らしいね。 そんな畏まった場じゃないよ。 ちょっとした情報交換の場と思って気楽に構えてくれよ」
「そうかい。 ま、よろしく頼むぜ」
アドルファスはそう言ってタヂカラオに勧められた席に着く。
「はい、これでメンバーが全員揃ったんですが、今回のお題は次のイベントについてです。 概要には目を通されましたか?」
ヨシナリが全員席に着いた所で話題を切り出しつつ、ウインドウを可視化。
表示されたのは次回のイベントについてだ。
ワールドレイド。 これまでになかった新コンテンツだ。
「今回はサーバー単位での共同戦線となるみたいだね」
「他所のサーバーの連中と組むって考えると面白そうだけど、ルールを考えると微妙だナ」
ポンポンの言う通りだった。 まず、基本的なルール。
三つのサーバーでの共同戦線となるのだが、入れ替わり制なのだ。
最初のサーバーが五時間の戦闘を行い、三時間経過の時点で次のサーバーが入る。
五時間経過の時点で最初のサーバーは離脱。 六時間経過で三つの目のサーバーが参戦。
二つ目のサーバーは戦闘開始から十時間経過で状態に関わらず戦闘終了となる。
「なんかすっきりしなさそうな内容だな」
「スコアアタックって認識でいいのか?」
ツガルは微妙といった様子でアドルファスはやや首を傾げる。
「作戦目的が敵の戦力を削るって形になってるんで全滅とかじゃないんですよね。 恐らくはウェーブ制の無限湧きかなにかかと思います。 感じから相手は宇宙生物らしいんでようやくあってないような感じだったこのゲームのストーリー部分に触れられるのかと思って期待はしてますよ」
「だナ。 あたしはこのゲームが宇宙生物から惑星を守るのが本題だって事をすっかり忘れてたゾ」
「それは俺もです。 マジで対人かよく分からないエネミーの相手ばっかりでしたからね」
苦笑しながらヨシナリはウインドウの表示を切り替える。
「で、次は戦場となる場所についてなんですけど――」
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