Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
809 / 865

第809話

 「詳細は記されてませんが、多分重力も違うと思うので普段とは挙動が変わってくると思います」
  
 公式サイトに公開されている映像、画像では本当に月面に近い様子で岩山や粒子の細かな砂のある砂漠のような地表。 明らかにこれまでのフィールドとは違う。
 
 「あー、そう言う事か。 こういうのを実装するなら事前にトレーニングルームで低重力下の環境とか再現させて欲しいんだけど――なかったよな?」
 「俺が知る限りありませんね。 精々、水深のある湖とか海辺とかなんで辛うじて水中戦ができるぐらいです」
 「変わった所だと火山地帯とか山脈内とか森とかだナ」

 ランク戦等で偶に引くぐらいであまり馴染みがないステージだ。 
 
 「無理もないよ。 平原、荒野とか遮蔽物のないステージのバリエーションが多すぎるからね」
 「そうだな。 運営の方針なのか機体に過度な負担のかかるステージはあんまりない印象だな。 ウチだとカカラ辺りはどんな環境でも戦えるってコンセプトで機体の強化をしてるけど基本的にそういった感じのはあんま想定してない感じだ」

 ――とはいってもこれに関しては心構え以上の備えができない。

 恐らくは機体に負担はかからないはずなので宇宙空間に近い環境なのは問題ないはずだ。
 ただ、別の問題はあった。 

 「後、個人的に気になるのが追加の項目ですね」

 ヨシナリが画面をスクロールさせると注意事項と記された項目があった。
 一部の装備の機能制限。 具体的には弾丸精製系の武装、AIによる支援機等の使用不可だ。
 
 「弾丸増やすの禁止か。 割と使ってる奴多いから地味にしんどいですね」
 
 正確にはバックパックなどを用いて自動で弾丸を精製するタイプの装備が該当するようだ。
 先日戦った「思金神」の篠突のような鉱物を直接弾丸に変化するタイプは使用可能らしい。
 その他、光学兵器のリチャージ時間の延長など、要は武器の再使用タイミングが大きく遅れるようだ。
 
 「地味に嫌な仕様だナ。 要は大量にマガジン持ち込めって事か?」 
 「この仕様だとマガジンを大量に持ち込んだ方が、攻撃の回転は上がりますね」
 「なぁ、これ何でだと思う? 宇宙空間って環境の所為か?」
 「設定的には自動給弾システムって、空気中の塵とかから必要な物を抽出して変換してるみたいなんだけど、寧ろこの環境だと普通に使えても不思議はないんだけどね」

 ツガルの疑問にタヂカラオが首を傾げつつも回答する。
  
 「ってか設定的にそんな感じになってたんですか?」
 「みたいだよ。 戦闘時に巻き上がる粉塵とかを給排気口から吸いこんでそれを利用するとか」
 「あぁ、なるほど。 そんな感じなんだ」
 
 中々に興味深い話だと頷いていると横でポンポンとアドルファスが画面をスクロールさせていた。

 「光学兵器のリチャージの遅延の具体的な数字って出てないのか?」
 「あー、書いてないナ。 使ってるとヘタってくる感じなのかもしれないナ」
 「もしかすると戦闘時間に制限がかかってるのってこの辺が理由か?」
 「わからん。 あたしとしては全滅じゃなくて制限時間で終了扱いになるのも解せないナ。 できるなら活かしたい部分ではあるけど、他所のサーバーと連絡を取る手段がないから出くわしたら完全にアドリブになるだろうし、この共闘部分はあんまり期待しない方がいいかもナ」

 基本的に抑えておきたいポイントとしては一部武装の使用制限と制限時間。
 この二点だろう。 出撃に関する制限はなく、出撃人数に関しても同様だ。
 つまりは全プレイヤーの参加は自由となる。 

 「マップの詳細が出ないのと敵の詳細が不明な以上はあんまり言う事ないですね。 「思金神」では何か方針は決めていたりするんですか?」
 「いや、僕は聞いてないな。 いつもみたいに開始数日前に有力ユニオンを集めて情報の交換会をするとは思うから何かしら共有したい話があればその場ですると思う」

 付け加えるなら時間制限がある時点でスコアアタックに近い形式なのは明らかだ。
 つまり敵は無限湧きの可能性が極めて高い。 要は最初の防衛戦に近い形になる。
 
 「まーたしんどい事になりそうだナ」
 「ってか継戦能力落とした上で耐久戦強いるの勘弁して欲しいんですけど……」
 「まぁ、もしかすると追加の情報もあるかもしれないから少し待とうじゃないか」

 タヂカラオがそう締めてこの話題は終わりとなったが、実を言うと本題はこの先だった。

 「さて、未知のイベントに関してはここまでにして直近の話をしましょう」

 ヨシナリはウインドウを操作。 表示されたのはミッションの概要だ。
 内容は復刻イベント戦――以前に挑戦した侵攻戦のダウングレード版だ。
 
 「前の防衛戦復刻は中々に実りある内容だったので、今回も同等以上の濃い経験ができると思いまして。 良かったら皆さんも一緒にどうですかというお誘いです」

 概要は事前に伝えていた事もあって迷う様子のある者はいない。
 
 「当然、あたしは行くゾ! ニャーコとまんまるも来てくれるしそれ以外では10人ほど連れていくつもりだナ。 時間が合えばおねーたまも来たいって言ってたけど用事があるってさ」
 「俺も行くぜ。 フカヤと何人か暇そうな奴を連れて来る」

 ポンポン、ツガルは真っ先に名乗りを上げた。 
 そう言ってくれると期待している部分もあったが侵攻戦は性質上、とにかく頭数が欲しい。
 強ければなお良しだ。 

 「僕も何人か連れて参加する予定だよ。 ヤガミさんに話したら何人か貸してくれるみたいだし、前よりは役に立てそうだ」
 「おいおい、何を言ってやがる。 前の話するならお前、一番活躍したまであるだろうが」

 アドルファスが肘でタヂカラオを小突く。

 「はは、ベリアル君達が力を貸してくれたからだよ」
 「いやいや、タヂカラオさんじゃないとあれは成立しませんでした。 もう少し自慢してもいいと思いますよ」

 タヂカラオは参ったなと少し照れたように笑う。 
 
 「そう言えばヨシナリ君の方は助っ人を用意しているのかい?」
 「アイロニーは返事待ちですが、外部からは『大渦』に協力を要請しています」

 どうやら前の報酬が余程美味しかったのか事ある毎に似た機会があれば声をかけろよと言っていた事もあって真っ先に誘いのメッセージを送っておいた。 
 五分で参加すると返って来たのには笑ってしまったのは記憶に新しい。
感想 0

あなたにおすすめの小説

局地戦闘機 飛電の栄光と終焉

みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

森のカフェしっぽっぽ

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。 一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、 猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。 しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。 地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。 ただし、異世界人は地球には来られない。 行き来できるのはサトルだけ。 向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、 頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、 静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、 サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。 仕事に疲れた会社員。 将来に迷う若者。 自信をなくした人。 サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。 そして、棚の影で震えるジル。 怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。 それでも店からは逃げない。 その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。 これは―― 福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。 震えながらでも前に立つ者が、 今日も小さく世界をつなぐ。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。