Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第811話

 「ま、いいんじゃねぇか? 一から十まで分かってる奴よりは想定外があった方が、ぶっ倒しがいがあるってもんだろ?」
 
 ツガルの言葉にその場の全員が沈黙し、ややあって頷いた。

 「ま、そうだナ。 前も何とかなったし、今回は心構えができるだけマシか」
 「ですね。 出てきた奴を倒せばいいかと思います」
 「はは、そう言ってくれると情報を出す側としては気楽で済むよ」
 「いいねぇ。 楽しくなってきた」

 ツガルはそれに笑って見せ、ヨシナリ、ポンポンは最初から関係ないと言わんばかりにやる気を漲らせている。
 タヂカラオはほっと胸を撫で下ろしアドルファスは楽し気に笑う。 
 結果はどうあれ楽しくなりそうだと全員が確信していた。



 その後は参加人数と簡単な全体の動きの確認だったのだが、どちらにせよ参加者全員向けに同じ話をするので簡素なものに留まった。 後は雑談を交えてのイベント戦についての考察を行っていたのだが、一通り話を済ませそろそろ解散といった流れになった所でツガルが不意に別の話題を切り出したのだ。

 「――なぁ、解散前に俺の個人的な相談があるんだけど聞いて貰ってもいいか?」
 
 タヂカラオは思わずといった様子でヨシナリと顔を見合わせる。
 ポンポン、アドルファスはやや困惑といった様子だ。

 「どうかしたんですか? もしかして『栄光』で何か言われたとかですか?」
 
 ヨシナリはカナタに良く思われていない。 
 もし、ツガルがこちらに顔を出す事で何か言われたのだとしたら今後の付き合い方も見直さなければならなかった。
 そんな予想もあって口にしたのだが、ツガルは小さく首を振る。

 「いや、このゲーム外のこう、リアルな人間関係的な話だ」
 「と、唐突に重たいのが来たな。 部外者の僕達に振るという事は割と深刻なのかい?」
 「マジでどうした? 話ぐらいは聞くけど、あんまりガチな内容だと無難な事しか言えねーぞ」

 本当に唐突だった事もあってタヂカラオとアドルファスは少し困った様子だ。
 
 「まさかとは思うけど彼女に振られたとかいうんじゃないだろうナ?」
 
 ポンポンが冗談めかしてそんな事を言うとツガルは応えない。
 
 ――あー。

 ヨシナリは察してしまった。 僅かに遅れてポンポンもマジかよと呟く。

 「……そうなんだ。 いや、まだ振られてねぇんだけどこのまま行くと振られそうなんだ……」

 ツガルはなぁ、どうすればいいと震える声で尋ねて来た。 
 ヨシナリは反射的にそういった事はユニオンメンバーに相談した方がいいんじゃないかと思ったが、ツガルの周りに居る者達について考える。

 カナタは論外。 彼女は他人の恋愛に口を出す余裕があるなら自己を客観視するべきだ。
 フカヤも性格的に難しいだろう。 そうなるとイワモトになるのだが――

 「イワモトさんには相談しましたか?」
 「したんだけど話し合えとだけ言われたよ」

 突き放した訳ではなく、彼からすればこれまでそうやって乗り越えてきたのだろう。 
 知らんと突き放すのは簡単ではあるが、ツガルとはそれなり以上に良い関係を築けていると自負しているヨシナリとしては可能な限り為になるアドバイスをしたい所ではあった。

 「うーん、まずは基本的な所からはっきりさせようか。 ツガル君、君と君の彼女の関係は何故そこまで拗れたんだい?」 
 「おいおい、そんなの聞くまでもないゾ。 このゲームのログイン時間と長丁場のイベント出席率を考えろ。 どうせ彼女そっちのけでここにいるからだろうナ」

 ポンポンの言う通りだったようでツガルは小さく呻く。

 「……だったら、彼女さんとの時間を増やしたらどうだ? 原因がはっきりしてるならそこを直しゃある程度の改善は見込めるんじゃないのか?」
 「いや、一応は時間を決めて定期的に会うようにはしてるんだよ。 この前なんてインドの対抗戦を欠席するつもりでお高いホテルで一泊とディナーまでセッティングしてたんだぜ?」
 「唐突に具体性のある生々しい話きましたね。 ――あー、察するにもっと会う時間増やせとかそんな感じの事を言われたんですかね?」

 対抗戦に出ていたという事はキャンセルになったのだろう。
 
 「まぁ、そんな感じでちょっと喧嘩になっちゃって。 サプライズで用意した旅行がパーだぜ」

 そう言ってツガルは乾いた笑いを漏らす。 
 ヨシナリとタヂカラオは反応に困って曖昧に笑うしかできなかった。
 アドルファスは何やら考えこんでいる様子でポンポンは何故か黙っている。

 「ちょっとその彼女さんの性格やらが分からないので何とも言えない部分ではありますが、原因は自分よりこのゲームを優先している点にあるって事でいいんですよね?」
 「あぁ、そこだけははっきり言ってきたよ」 
 「そこがはっきりしているなら期間限定でもいいから少しログインを控えるというのはどうだい? 別に引退しろとまでは言わないけど、多少でも譲歩して見せる事で態度が軟化するかもしれない」

 ヨシナリとしてもタヂカラオと同意見だった。 
 実際に見ていない以上、その彼女とやらの怒り具合が掴めない。
 単に不満が蓄積して爆発したのか、元々爆発しやすい気性なのかも不明な以上は譲歩して軟化を促すのはベストではないかもしれないがベターな選択と言える。

 「あぁ、やっぱりその方がいいのかねぇ」

 ツガルは頭を抱えていたが、アドルファスが何故か不思議そうに首を傾げた。

 「なぁ、もしかしてだけどお前ってデートとかに金をかける方か?」
 「あ? あぁ、そこそこは使ってる。 ほら、あんまり構ってやれてないからその分、金かけた方がいいかなって思ってよ」

 アドルファスはそうかーと何故か遠い目をした後、言うのを迷うような素振りを見せていた。 

 「な、なんだ? 何かあるのか?」
 「いや、これがお前に当てはまるのかは何ともいえねぇんだけど、前に知り合いが経験した事と似てるなーって」
 
 碌な話ではない事は前置きをしている時点で明らかだったが、ツガルは黙って先を促す。
 
 「そいつの場合はバイトだったんだけどな、シフト入れまくった所為で時間が取れなくて似たような感じになったんだよ。 自分と仕事、どっちが大事なのってな感じだな」
 「そ、それで、どうなったんだ?」

 アドルファスは凄まじく言い難そうにしていたが、ややあって口を開く。
 
 「結論から先に言うと浮気されてた」
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