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第812話
「気持ちはとっくに冷めてたんだけど、金出してくれるからそれ目当てで付き合ってたって感じだな」
ツガルは絶句。 アドルファスは気の毒そうな視線を向けながらも話を続ける。
「そいつの場合は彼女が本命の彼氏とそろそろ結婚を視野に入れるとかで関係の整理するからって感じで捨てられたそうだ」
「え? いや、マジ??」
「マジだゾ。 あたしも似た話を結構聞いた事あるからそこまで的を外してないと思う」
どうやらポンポンも似た結論に至ったのかアドルファスの話を支持する。
「定期的に会っているにも関わらずそれなんだろ? 単に不満があったとも取れるけど、ガス抜きの機会があるのにそうなるって事は十中八九気持ちが冷めてる兆候だナ」
「いや、でも、俺ともっと一緒に居たいからそんな事を言ったんじゃないのかよ!?」
ツガルの反論にポンポンは溜息。
「ぶっちゃけ、俺もポンポンと同じ意見だ。 お前がゲームやっててそこから出てる収益でデート費用とかを賄ってたんだろ? で、相手もそれを知ってる。 だったら何でこのタイミングでそんな二択が飛び出すんだ? 俺に言わせりゃ今更、何を言ってるんだって話だぜ?」
「だナ。 このタイミングでキレたのは喧嘩別れって体でお前の前から穏便にフェードアウトする為だゾ」
正直、恋愛経験のないヨシナリからすればこの手の話題はよく分からないが言っている事は理解できた。 つまり二人が考えているのはツガルの彼女は既に彼を恋人と認識しておらず金づると思っており、そろそろ邪魔になって来たので切りたいという事だろう。
話としては理解できるのだが、ツガルの様子を見るととてもではないがそうなんですねと言えなかった。 ツガルは想像もしていなかったのか明らかに動揺した様子で「いや、でも」とどうにか反論を口にしようとしているが思い当たる節があるのか弱弱しい。
――これ、どうすりゃいいんだ?
「まぁ、ツガル君の懸念も二人の考えも分かった。 ただ、現状では断定ができないんだ。 結論を出す前にツガル君の彼女にやましい点がないか調べてみてはどうだい?」
「浮気調査的な事をしろって事か?」
「あぁ、少し値は張るが、話を聞く限り一回のデート代よりは安いんじゃないかな?」
ツガルは両手で顔を覆って天を仰ぐ。
しばらくの間、そうしていたがややあって分かったと呟くと早速準備して来ると言ってログアウトした。
そして残されたヨシナリ達の間には微妙な空気が流れるのだが――
「あ、あー、俺はちょっとよく分からないんですけど、皆さん的にはどうですかね?」
ほぼ答えが分かり切った質問ではあったが、間を持たせる為に敢えて口にした。
「僕としては些細なすれ違いで済めばいいとは思っているけど、余りいい結果にはならなさそうだね」
「絶対に黒だゾ。 ツガルみたいなデリカシーに欠ける奴と付き合ってヒスる奴は金目当てだろ」
「俺も黒じゃねーかと思ってる。 デリカシー云々は知らねえけど、あの様子だとデート代やらほとんど負担させてるっぽいし、金づるにはされてた感はあったし碌な物じゃねーだろ」
話は終わったと判断したのかポンポンが立ち上がる。
「ま、次に会う時にでも結果は分かるだろ。 その時を楽しみにしておくゾ」
じゃーナと言って彼女は帰って行った。
「んじゃ、俺もここらで引き上げるか。 当日はよろしくな」
「あぁ、そろそろ解散としよう」
「ですね。 お疲れ様です」
ヨシナリもウインドウ操作で移動。 「星座盤」のユニオンホームへと帰って行った。
――とんでもない話を聞いてしまった。
ツガルの落胆ぶりやヨシナリ達に相談した点から相当追いつめられていたのだろう。
正直、例の復刻戦の打ち合わせのつもりだったのだが、意外な方向に流れた事もあって少しもやもやとしてしまう。
ヨシナリとしては彼氏彼女という関係に多少の憧れに近い物は抱いてこそいるが、冷静に考えると自分の時間が減ると考えると必要か?と思ってしまう。
これに関しては経験値の関係でさっぱり分からない。
他人事なので気にしないのが吉なのだろうが、ツガルがどうなるのか少し気になってしまっていたのだ。 一瞬、誰かに相談するかといった疑問が脳裏を過ぎったが、他人のデリケートな問題を言いふらすのは余りよろしくないとも思ってもいた。
本音を言えば異性のふわわやグロウモスにツガルの彼女は本当に浮気をしていると思うかと意見を聞いてみたいが――何故か背筋に寒気のようなものが走ったので、本能的な何かが止めろと囁いていると解釈して諦めた。
それでもすっきりしない事は確かだ。 ならどうするか?
ランク戦しかない。 そう、戦うのだ。
戦う事で雑念を追い払いついでにランクアップにも繋がる。 まさに一石二鳥。
――それにそろそろだしな。
選択するのはハイグレードマッチ。 最近、実装されたこの機能は非常にありがたい。
同格以上としか当たらない代わりにランクアップまでの道のりが大幅に短縮される。
今のヨシナリに足りないのは格上との戦闘経験。
もっともっと様々なジェネシスフレームと戦い未知の戦い方を既知に変え、自身の内に取り込むのだ。 現在、ヨシナリのランクはC。
これまででそれなりに勝利を重ねて来ただけあって、そろそろランクアップのはずだ。
マッチングを開始すると早速当たった。 相手はBランク。
機体はエンジェルフレーム。 手頃な相手だ。
戦闘開始。 エンジェルフレーム相手だと基本的に空中戦になる事が多い事もあって地形は余り意識しなくていいもは楽だが、駆け引きが少なすぎると面白味が薄れるのも考え物だった。
フィールドは平原。 レーダー表示に即座に反応。
敵機は真っ直ぐに突っ込んで来る。 エネルギーウイングは推進装置としては非常に優秀だが放出しているエネルギー量が多いので絞らないと簡単に捕捉できてしまう。
飛んで来たエネルギー弾を変形しながらバレルロールで回避。
マウントしたアシンメトリーで応射。 慣れた挙動で躱す。
基本的にエンジェルタイプは機動力で振り回してくるプレイヤーが非常に多い。
理に適ってはいるのだが、機種自体の拡張性の低さもあって動きにセオリーのようなものが存在するのだ。 相手がキマイラなら直線勝負はせずに横の動きを多用する事で強みを殺しに来る。
直線加速ならキマイラの可変形態に分があるが、追いつけないほどではない。
つまりは程々の距離を維持して横に躱さざるを得ない展開に持って行く事で減速を促し、そこを一刺しだ。
ツガルは絶句。 アドルファスは気の毒そうな視線を向けながらも話を続ける。
「そいつの場合は彼女が本命の彼氏とそろそろ結婚を視野に入れるとかで関係の整理するからって感じで捨てられたそうだ」
「え? いや、マジ??」
「マジだゾ。 あたしも似た話を結構聞いた事あるからそこまで的を外してないと思う」
どうやらポンポンも似た結論に至ったのかアドルファスの話を支持する。
「定期的に会っているにも関わらずそれなんだろ? 単に不満があったとも取れるけど、ガス抜きの機会があるのにそうなるって事は十中八九気持ちが冷めてる兆候だナ」
「いや、でも、俺ともっと一緒に居たいからそんな事を言ったんじゃないのかよ!?」
ツガルの反論にポンポンは溜息。
「ぶっちゃけ、俺もポンポンと同じ意見だ。 お前がゲームやっててそこから出てる収益でデート費用とかを賄ってたんだろ? で、相手もそれを知ってる。 だったら何でこのタイミングでそんな二択が飛び出すんだ? 俺に言わせりゃ今更、何を言ってるんだって話だぜ?」
「だナ。 このタイミングでキレたのは喧嘩別れって体でお前の前から穏便にフェードアウトする為だゾ」
正直、恋愛経験のないヨシナリからすればこの手の話題はよく分からないが言っている事は理解できた。 つまり二人が考えているのはツガルの彼女は既に彼を恋人と認識しておらず金づると思っており、そろそろ邪魔になって来たので切りたいという事だろう。
話としては理解できるのだが、ツガルの様子を見るととてもではないがそうなんですねと言えなかった。 ツガルは想像もしていなかったのか明らかに動揺した様子で「いや、でも」とどうにか反論を口にしようとしているが思い当たる節があるのか弱弱しい。
――これ、どうすりゃいいんだ?
「まぁ、ツガル君の懸念も二人の考えも分かった。 ただ、現状では断定ができないんだ。 結論を出す前にツガル君の彼女にやましい点がないか調べてみてはどうだい?」
「浮気調査的な事をしろって事か?」
「あぁ、少し値は張るが、話を聞く限り一回のデート代よりは安いんじゃないかな?」
ツガルは両手で顔を覆って天を仰ぐ。
しばらくの間、そうしていたがややあって分かったと呟くと早速準備して来ると言ってログアウトした。
そして残されたヨシナリ達の間には微妙な空気が流れるのだが――
「あ、あー、俺はちょっとよく分からないんですけど、皆さん的にはどうですかね?」
ほぼ答えが分かり切った質問ではあったが、間を持たせる為に敢えて口にした。
「僕としては些細なすれ違いで済めばいいとは思っているけど、余りいい結果にはならなさそうだね」
「絶対に黒だゾ。 ツガルみたいなデリカシーに欠ける奴と付き合ってヒスる奴は金目当てだろ」
「俺も黒じゃねーかと思ってる。 デリカシー云々は知らねえけど、あの様子だとデート代やらほとんど負担させてるっぽいし、金づるにはされてた感はあったし碌な物じゃねーだろ」
話は終わったと判断したのかポンポンが立ち上がる。
「ま、次に会う時にでも結果は分かるだろ。 その時を楽しみにしておくゾ」
じゃーナと言って彼女は帰って行った。
「んじゃ、俺もここらで引き上げるか。 当日はよろしくな」
「あぁ、そろそろ解散としよう」
「ですね。 お疲れ様です」
ヨシナリもウインドウ操作で移動。 「星座盤」のユニオンホームへと帰って行った。
――とんでもない話を聞いてしまった。
ツガルの落胆ぶりやヨシナリ達に相談した点から相当追いつめられていたのだろう。
正直、例の復刻戦の打ち合わせのつもりだったのだが、意外な方向に流れた事もあって少しもやもやとしてしまう。
ヨシナリとしては彼氏彼女という関係に多少の憧れに近い物は抱いてこそいるが、冷静に考えると自分の時間が減ると考えると必要か?と思ってしまう。
これに関しては経験値の関係でさっぱり分からない。
他人事なので気にしないのが吉なのだろうが、ツガルがどうなるのか少し気になってしまっていたのだ。 一瞬、誰かに相談するかといった疑問が脳裏を過ぎったが、他人のデリケートな問題を言いふらすのは余りよろしくないとも思ってもいた。
本音を言えば異性のふわわやグロウモスにツガルの彼女は本当に浮気をしていると思うかと意見を聞いてみたいが――何故か背筋に寒気のようなものが走ったので、本能的な何かが止めろと囁いていると解釈して諦めた。
それでもすっきりしない事は確かだ。 ならどうするか?
ランク戦しかない。 そう、戦うのだ。
戦う事で雑念を追い払いついでにランクアップにも繋がる。 まさに一石二鳥。
――それにそろそろだしな。
選択するのはハイグレードマッチ。 最近、実装されたこの機能は非常にありがたい。
同格以上としか当たらない代わりにランクアップまでの道のりが大幅に短縮される。
今のヨシナリに足りないのは格上との戦闘経験。
もっともっと様々なジェネシスフレームと戦い未知の戦い方を既知に変え、自身の内に取り込むのだ。 現在、ヨシナリのランクはC。
これまででそれなりに勝利を重ねて来ただけあって、そろそろランクアップのはずだ。
マッチングを開始すると早速当たった。 相手はBランク。
機体はエンジェルフレーム。 手頃な相手だ。
戦闘開始。 エンジェルフレーム相手だと基本的に空中戦になる事が多い事もあって地形は余り意識しなくていいもは楽だが、駆け引きが少なすぎると面白味が薄れるのも考え物だった。
フィールドは平原。 レーダー表示に即座に反応。
敵機は真っ直ぐに突っ込んで来る。 エネルギーウイングは推進装置としては非常に優秀だが放出しているエネルギー量が多いので絞らないと簡単に捕捉できてしまう。
飛んで来たエネルギー弾を変形しながらバレルロールで回避。
マウントしたアシンメトリーで応射。 慣れた挙動で躱す。
基本的にエンジェルタイプは機動力で振り回してくるプレイヤーが非常に多い。
理に適ってはいるのだが、機種自体の拡張性の低さもあって動きにセオリーのようなものが存在するのだ。 相手がキマイラなら直線勝負はせずに横の動きを多用する事で強みを殺しに来る。
直線加速ならキマイラの可変形態に分があるが、追いつけないほどではない。
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