Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第9話

 割と忘れそうになるが、この『ICpw』はサービス開始からまだ半年しか経過していない生まれたてのゲームだ。 その為、イベントなどはほとんど行われておらず、様々なものが不足している。
 プレイヤー全体のノウハウもそうだが、何よりイベントなどの傾向を調べる為の材料もそうだ。

 だからヨシナリも完全新規のイベントかと思っていたが、意外な事に二か月前に一度実施されていたイベントだった。 内容はどこかの惑星に存在する基地を敵の大軍勢から一定時間守り抜く事。
 今回の敵はヘリや戦車ではなく謎の無人機械だ。 他のプレイヤーやNPCの戦車やヘリとしか戦っていないので忘れそうになるが、このゲームのストーリーは宇宙生物から世界を守る内容なのだ。 ヨシナリはイベントなのに宇宙生物じゃないのかと内心で首を捻るがまぁいいかと流した。

 よくよく考えればフリーミッションでヘリや戦車が出て来た事が不自然だったのかもしれない。
 
 ――話を戻そう。
 
 勝利条件はミッション開始から十二時間の経過。
 終了時の基地の損壊状況で報酬が決まる形になる。 要は防衛対象の傷が浅ければ浅い程に報酬が増えるシステムでそれにプラスして参加賞、敵の撃破に応じての撃破報酬が上乗せされる。
 
 ぶっ続けでログインし続けろとはならないが、ログアウト中の機体は基地内のハンガーに預ける形になるので基地が攻撃を受け、ハンガー内の機体が破壊されればそのままゲームオーバーでイベントに参加はできない。 そう、このイベントの酷い所は一度でも撃破されれば終了となるのだ。

 弾薬の補充や機体の耐久回復はハンガーで行えるので、そこまで消耗を意識しなくても良いが撃破は駄目のようだ。 やられた場合はイベント終了まで戦況を見守る事しかできない。 酷過ぎる。
 ちなみに参加時の要項に記載されているが、意図的、または意図的と思われるフレンドリーファイヤには重い罰則が付くので行ったプレイヤーには厳しい処分がいい渡される。 最悪、規約違反にと同等の罰則になる場合もあるようだ。

 ――本当にこのゲームはプレイヤーに高いモラルを要求するなぁ……。

 いくら何でも厳しすぎやしないかとは思うが、その厳しさに納得してプレイしたのだ。
 文句を言っても仕方がない。 他の足を引っ張るような奴は碌な目に遭わない訳だ。
 報酬を得ようと欲張る輩もいるのではないかとも思うが、敵の数が尋常ではないのでまず取り合いにならないらしい。 足を引っ張っている暇があるなら一体でも撃破しろと言うのが運営の意向なのかもしれない。 なら高火力の武器を持っているであろうランカーの独壇場になるのでは?

 そう思う者も多いが、そうはならない。
 何故なら、このミッションはランクに応じて参加時間が異なるからだ。
 開始と同時に参加できるのは最低のIランク。 三十分後にH、更に三十分後にGと三十分刻みで高ランク帯のプレイヤーが参加可能になる。 Eまでは三十分刻みだが、EからDランクの間は一時間だ。

 下位のランクは開始から二時間で出撃が可能となり、中位は一時間刻みそしてCからBは一時間半、BからAは二時間そしてSは更に二時間半だ。
 この辺りは下層プレイヤーへの救済措置なのかもしれないが、最高ランクであるSランクプレイヤーは実質二時間しか動けないのは流石にやり過ぎではないだろうかと思ってしまう。

 ざっくりまとめるとランクに応じてイベントに参加できる時間が異なり内訳は――
 I:開始直後。 H:開始から三十分後。 G:開始から一時間後。
 F:開始から一時間三十分後。 E:開始から二時間後。 D:開始から三時間後 
 C:開始から四時間後。 B:開始から五時間三十分後。 A:開始から七時間三十分後。
 S:開始から十時間後。

 ――となる。

 当時はAランクまでしかいなかったので七時間三十分で全員が出撃可能となったが、今回はSランクがいるので揃うまで十時間かかる。 それにしても制限時間十二時間にもかかわらず十時間経たないと出撃出来ないとはSランクの力はそれほどまでと言うのだろうか?

 Sランクに関してヨシナリは詳しく知らない。
 本来なら動画などがアップされているはずだが、このゲームは映像の流出もコントロールされており、動画化するにも運営の許可が要るのだ。 あれも制限、これも制限だなと思ってしまう。
 
 そんな理由で外からだとSランクの強さは分からないのだ。
 観戦するのも手だが、録画ができないのでリアルタイムで行っている試合を見なければならない。
 その辺りは機会があればと考えていたが、十時間粘れば見られそうだと前向きに考える。

 ちなみに前回の結果だが、十時間保たずに終了していた。
 理由は基地が全壊したからだ。 それによりミッション自体が消滅し、防衛に伴う報酬は支払われず参加報酬と撃破に応じた報酬のみが支払われた。

 このゲームについて話すチャットルームや掲示板では今度こそ成功させて報酬を手に入れてやるぜと息巻いている者が多いらしい。 他は他、自分は自分。
 ヨシナリは参加するにあたってどうするべきかと考えた。 生き残る事を念頭に置くなら防御を厚くして身を守ればいいが、肝心の基地が破壊されればなんの意味もないので貢献する為、武装面での強化が望ましいが――今から丸一日使ったとしても劇的な強化は望めないので今回はタイミングが悪かったと諦めて今あるだけの武器で臨むとしよう。
  
 ランク戦に関してはIランクで留めておく事にした。
 とは言っても十勝するまでは上がらないので、九勝までは重ねて置くつもりではあるが。
 イベントの概要は理解した。 心構えも充分だ。
 
 唐突だったので準備は万全とは行かないが、下手に欲張らずに気軽な気持ちで楽しめばいい。
 
 ――あぁ、楽しみだ。

 個人戦も面白いが、大人数での大規模戦。 
 流石にサーバーで分けられるだろうが、この地方だけでも数十万から数百万は居るはずだ。
 大陸の方だと数百万規模になるだろうが、こちらではそれぐらいが限度だろう。

 前回はまだユーザー数も多くなかったが、数十万人規模の大戦争だったそうだ。
 参加者は凄い経験をした。 負けたが楽しかった、次は絶対に勝つと概ね好評だったようだ。
 
 ――まぁ、運営に文句を言うようなプレイヤーは排除されるだろうが。

 取りあえずは明後日だ。 今日と明日はランク戦とフリーミッションに使い。
 本番に備えて早めに就寝して英気を養おう。 何せ十二時間フルで参加するつもりなので家族にも説明しておかなければならない。 燃えて来た。

 ヨシナリは早く始まれと念じながらソワソワした気持ちでランク戦に参加した。
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