Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第11話

 レーダーを確認すると白兵戦を挑んだプレイヤー達が敵の群れを押し留めているが、徐々に喰われ始めていた。 プレイヤーを示す青い層はエネミーの赤い波涛に呑まれつつある。
 結構な数が突っ込んだはずだが、戦い慣れていない事もあってかヨシナリの想像以上に脆かった。

 減って行く味方の表示に少し不味いなとは思ったが、そこまでの問題はない。
 何故ならそろそろ三十分が経過するからだ。 夢中で蛾を撃ち落とし続けていたらあっという間だった。
 タイマーがゼロになり――基地のあちこちにHランクのプレイヤー達が次々と現れる。

 「しゃぁ! 行くぞオラぁ!」
 「ぶっ殺す! ぶっ殺す!」
 
 口々に物騒なセリフを叫びながら血の気の多い連中がスラスターを全開にして防壁を飛び越え、敵へと突っ込んでいく。 流石に一つランクが上だけあって、機体の装備もIランクよりも充実している。
 取りあえずは戦力的に一息つけそうかとヨシナリは陣取っていたビルから降りた。

 理由は弾薬の補充だ。 抱える程の弾薬を持ち込んだのだが、三十分も撃ち続けたのでいい加減に弾切れだった。 それに何度も使った所為か、照準がブレて狙った場所に飛ばなくなってきていた事もある。
 ライフルを一瞥。 やはり安物は駄目か。

 これが終わったら新しいのを買おう。 そんな事を考えていると破壊されたトルーパーの残骸が目に入った。 機銃にやられたのか胴体から頭部にかけて無数の穴が開いている。
 ここまでで結構な数がやられているので残骸ぐらいは転がっていても不思議ではない。

 気になるのはそれではなく、残骸が握りしめている武器だ。
 マガジンを挿入して使うタイプのライフル。 今のヨシナリの経済状況ではちょっと手が出ない値段の高級品だ。 試しに拾って構えると、ライフルのステータスが表示される。

 ――使えるのか。

 これは良い事を知った。 
 所有権を奪う事は無理だろうが、このイベント中に使えるだけでもありがたい。 
 ヨシナリは傷んだ自らのライフルを捨てて、拾ったライフルを持って弾薬庫へ向かう。

 弾薬庫は内部にあるホログラムに触れて弾丸を指定すると勝手に現れる。
 武器の劣化などはリアルなのにこういう所だけはゲーム臭いなと思いながらライフルの弾を持てるだけ取り寄せた。 補給を済ませたヨシナリが元の場所に戻ると別の機体がライフルを構えて陣取っている。

 流石にどけとは言えなかったので他の機体の少ない場所へと移動する。
 背の高い建物は射線が通るので陣取っていたかったが、そろそろ潮時かとも思っていたのでそこまでの未練はない。 何故ならもう基地内に蜂が入り込んで機銃であちこちに銃弾の雨を降らせているからだ。

 背の高い建物は目を引くので狙われやすい。 スナイパーは身動きが取れないので狙われ難い位置に移動する事は賢い選択だからだ。 ヨシナリは基地の中心に近く、尚且つ他の機体の少ない背の低い建物の屋上を新しい狙撃位置として陣取る。

 ライフルを構えて発砲。 さっきまで使っていた安物と違って反動も小さく、何より狙った場所へ飛ぶのがいい。 そして連射ができる。
 
 「いいなこれ」

 思わずそう呟いて次々と敵機を撃ち落とす。 背の低い建物に移ったので基地の外を狙うのはもう無理なので的を蜂へと変更する。 蜂は動きが早く小回りも利くが、動きそのものは単調なので慣れれば当てるのはそこまで難しくない。 前のライフルだといちいち、排莢を行わなければならなかったので、相性はかなり悪かったが、今のライフルなら何の問題もない。

 報酬の額次第で購入を検討しようと真剣に考えながら次々と蜂を撃墜する。
 拾ったライフルの性能は素晴らしく、今まで使っていた武器の不自由さを意識するとちょっとした開放感すらあった。 あまりにも気分が良かったので夢中で撃ち続け、気が付けば更に三十分が経過。

 Gランクのプレイヤーが参戦する時間だ。 次々と新しい機体が基地のあちこちに出現する。
 流石大人気ゲーム。 プレイヤーの数が圧倒的だ。
 いくら夏休み期間で学生が入りやすい時期とはいえ、万単位のプレイヤーが続々と参戦する光景は凄まじい。 無数の火線が上空にいる敵の悉くを叩き落す。

 ――一先ずは基地の防衛は問題なさそうか?

 レーダーを確認すると前線もかなりの人数が突っ込んでいるので完全に押し留めていた。
 流石に押し返すまではいかないが、この戦いは制限時間まで基地を守る事が目的なので時間を稼げる状況は何かと都合が良いのだ。 ただ、前回の戦いでは基地が壊滅まで追い込まれた事を考えると楽観するのはまだ早い。 空が開いたのでヨシナリは機体のスラスターを全開にして大きくジャンプして基地の上空まで上がる。 

 「まぁ、そうなるよな」

 機体のカメラを最大望遠にして前線を確認すると陸上戦力はカブトムシやクワガタムシのような個体で、防衛線を敷いている者達と派手に殴り合っている。
 そしてその向こうから厄介そうな新顔が現れていた。 形状は爆撃機の役割を担っていた蛾と同じ。

 違いはサイズだ。 明らかに十倍近く大きい。
 何だあれは? 今度は核弾頭でも詰んでいるのか?
 用途を考えたが答え合わせはすぐだった。 前線の上空に来た所で巨大蛾が腹に抱えたコンテナが開き、中から巨大なカマキリののような個体が大量に現れたからだ。

 爆撃機ではなく輸送機か。
 結果、前線は大きく混乱する事となった。 真上から敵の増援が現れたのだ。
 正面に集中していた者達からすればたまったものではないだろう。

 次々とトルーパーが撃破されて行く。 
 カマキリの鎌は凄まじい切れ味で一撃で機体が両断されている。 

 「輸送機かよふざけやがって!」
 「皆殺しだクソが!」

 狙撃や遠距離武器持ちが輸送機に集中砲火を浴びせるが、対弾性能も大きさに見合った物らしく損傷は負うが中々、撃墜まで行かない。
 ヨシナリは落下しながら巨大な蛾を凝視していたが、途中に違和感を感じて思わず更に目を凝らす。

 ――あれ? おかしくないか?

 同じ疑問を抱いた者が居たようで思わずと言った様子で口にする。

 「なぁ、あのコンテナ。 どれだけ入ってるんだ?」

 カマキリのサイズとコンテナのサイズを考えればどう見てもいい所、十体前後が限界だろう。
 だが、空中の巨大蛾は十では利かない数のカマキリを透過し続けている。

 「残しておくと無限に吐き出すのかよ!」
 
 結論に達した誰かの悲鳴が響き渡った。
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