Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第17話

 Dランクプレイヤーの参戦は絶望的な戦況を引っくり返すとまではいかなかったが、押し戻す事は出来ていた。 特に彼等の大半は前回の経験者だけあって、戦い方には余裕すら感じさせられる。
 事実、会話しながら敵を撃破している者が多い。

 「ちーっす。 今来たんだけどどんな感じ?」
 
 高機動戦闘が可能なようにカスタムされたソルジャーⅡ型を操るプレイヤーが近くに居たプレイヤーに尋ねる。 

 「取りあえず芋虫が出て来てちょっと経った所だな」
 「前の時はぶっちゃけ余裕なかったからあんまり覚えてないんだけど、あのクソ蟻共はまだだっけ?」

 話しながら持っていたハンドガンで蜂を次々と撃墜し、ヤドカリの直上に到着したと同時に突撃銃を構えて真下へとばら撒く。

 「前の時は飛べる奴がマジで少なかったからこいつらにサンドバッグにされたんだよなぁ。 思い出すと死ぬほど腹立ってきた」
 「マジそれな。 内容も敵の戦力構成も前回とほぼ同じ。 運営は何を考えてるんだか」
 「多分だけど、クリアできるまで一定間隔で同じイベントを繰り返すつもりなんじゃないか?」
 「おいおい、ここでそんな手抜きするか?」
 
 突撃銃の弾が切れたので手榴弾を投げ込みながらマガジン交換。

 「ちょっと考えてみろよ。 今でこそ全体的に装備の質が上がってるし、前情報があるからここまで有利に戦えてるが前回って前情報なしでここに放り込まれたんだぞ」

 彼等の言う通り、このイベントは復刻されたもので展開、敵の戦力構成は全く同じだ。
 つまり運営の意図としてはプレイヤーの敗北は織り込み済みの内容で、クリアできるまで使いまわす腹積もりで組んだイベントではないかと考えていた。

 実際、当時はSランクは存在せず、Aランクですらたったの数名が到達できたぐらいで、機体も大半がノーマルフレームしか入手できていない状態だったのだ。 明らかにこのイベントを戦い抜く事は不可能な戦力だったのだ。
 
 彼等は当時の地獄を思い出して瞑目する。
 航空戦力が碌にない状況で光学兵器も僅か。 つまり芋虫の突進を止められず、前線を押し返す事が不可能な状態だったのだ。 その為、基地の防衛よりも自分達の生存に比重を置いた戦い方を強いられた。

 防壁の一部を意図的に破壊し、敵を基地内に誘引して片端から撃破。
 そうでもしなければ数を減らす事すらできなかった。 何せパンツァータイプですら碌に数が居なかったので狙撃から身を守る術がなく、防壁の上は早々に捨てざるを得なかったのだ。

 その時の阿鼻叫喚を思い出して彼等は表情を歪める。
 ゲームではあるが、一方的に叩きのめされて面白い訳がない。 イベント終了後にクレームを入れたプレイヤーは相当数に上った。 内容自体は変えなくていいが、敵の構成をどうにかして欲しい、せめてクリアできる難易度にしてくれ。 クレームと言うよりは懇願に近いそれを運営は一顧だにせず、淡々と二か月ほどで復刻と言う形でもう一度やるとアナウンスしたのだ。

 それを知って察しのいい者は早々に気が付いた。 

 ――あぁ、このイベントはクリアするまで何度でも復刻されるんだろうなと。

 大抵のゲームでは復刻イベントは新規の合間などに行うケースが多いが、開催からの復刻の流れを見れば疑いようがない。 

 「ったくとんだクソゲーだぜ」
 「まったくだ。 この様子だとどうせ今回も負けそうだとか思ってるんじゃないか?」
 「負けたら二か月後にまた復刻?」
 「次から煽りも込みで第三次防衛戦とかタイトルつけるかもな。 俺が運営ならそうする。 暗に『まだ勝てねーの? 雑っ魚(笑)』って感じで」
 「第三次(内容同一イベント)とか、舐めてんのかよ」
 「結構、開発コストのかかってるゲームだし、これで一年ぐらい引っ張りたいとか思ってるんじゃねーの?」
 「虚無ゲーかよ。 これ一年も繰り返すとか運営の連中、俺達をマゾかなんかと勘違いしてるんじゃねーだろうな」
 「一年、これ繰り返すとかねーわ。 引退を考えるレベル」
 「ってかプレイヤー減って困るのって運営じゃねーの?」
 「いや、減りはするけど絶滅はしねーだろ。 ほら、RMTあるし」
 「あー……。 Pの相場どんなだっけ?」
 「興味ないから小まめに見てねーけど一週間前だったら、1P=三万から五万で変動してたな」
 「引退前なら売り飛ばしてもいいかもしれねーけど買う奴マジでいるのかよ」
 「噂レベルだけど、ハイランカー様がお買い求めらしいぜ」
 「は? あいつら買わなくても充分P貰ってるだろ?」
 「だから噂だって。 BはともかくA以上の連中マジもんの化け物じゃん。 あれだけの装備揃えるのに自前のPだけじゃ足りねーから買い集めてるってよ」
 「ほえー。 じゃあSの人もそんな感じ?」

 そう口にしたプレイヤーは疑問を口にする。
 彼はSランカーを見た事がないのでもしかしたら金に物を言わせて勝利を得ているのでは思ったからだ。
 このゲームはプレイヤースキルが占める割合が多いので、要因程度には考えていたがやっぱり金を積むとその辺が違って来るのだろうか? そんな事を考えたのだ。

 「いや、なくはないだろうがあそこまで上がったのは間違いなく腕だと思う」

 会話に割り込んだのは武装せず、全身に大量の予備マガジンを抱えた機体だった。
 その機体は周囲に弾を配りながら会話に入って来る。 

 「お、サンキュー。 弾はいくらあっても足りねーから給弾ありがてぇ」
 「ありがてぇ、ありがてぇ……。 で、Sランクが何だって?」
 「あぁ、俺、前のイベントは終盤まで生き残ったんだが、今のSランクの人と一緒だったんだよ。 近くで見てたけど挙動やべぇぞ。 同じゲームやってんのかって疑いたくなるレベルだった」
 「まさかとは思うけどチートやってるとか?」
 「だったらSランクまで行けねーだろ。 このゲームのペナルティの洒落にならなさは知ってるだろうが」
 「確かに。 で?噂のSランク様はどんなだったんだ?」
 「ありゃこのゲームに命を懸けてるってレベルだな。 鬼気迫るっつーか、なんつーか……」
 「取りあえずお前に語彙力がないとだけは分かった」
 「(泣)。 ま、まぁ、とにかく、Sランクはヤベーんだよ」

 それだけ言い残すと弾を配って回っている機体はそのまま去って行った。
 彼はイベントクリアの為に撃破を狙わず、前線に武器や弾薬を配って回る事を選んだようだ。
 
 「ま、どっちにしてもこのまま粘れれば噂のSランク様の姿は見られるし、どうヤベーか見せて貰いますか」

 話題がなくなったので二人は無言で足元に銃弾をばら撒く作業を続けた。
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