Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第20話

 ――凄まじい。

 現れたCランクプレイヤーの姿を見てヨシナリが真っ先に思ったのはそれだった。
 このレベルになると明らかに装備の質が他とは段違いだ。
 可変フレームに高性能な光学兵器とそれを賄うジェネレーター。

 前線の機体は派手に戦っているにもかかわらず、息切れする様子がない所から燃費も段違いに良いのだろう。 Cランクともなると維持する為の実力が必要となる。
 さっきから通信で垂れ流している規制によって聞き取れない単語を垂れ流している姿からは想像し辛いが、彼等はこのゲームでも上位の技量を持つ腕利きなのだ。

 凄まじい誘導性能を持つミサイルにロックした相手をほぼノータイムで撃破する追尾性のレーザー。
 前線に向かった者に関してはジグザグに動いているようにしか見えない挙動で敵の攻撃を掻い潜り、瞬く間縫い敵陣を文字通り切り裂いている。

 これだけのスペックの機体とそれを十全に扱える技量を両立させているだけでも凄まじいのに、彼等が未だにCランクプレイヤーなのだ。 つまりそんな彼等ですら及ばない存在がまだまだ控えている。
 その事実にヨシナリは震えた。 サービス開始からたったの半年でここまでの飛躍を見せるのか。

 ここまで成長するまで人をのめり込ませるこのゲームの魔性とも言える魅力もそうだが、この世界は一体どこを目指しているのか?それを見たくなった。
 プレイヤーへ徹底的に絶望を与えて叩きのめすイベント。 そこから這い上がった者達は彼等が生み出した怪物と言えるだろう。 恐らくだが、このイベントを突破すれば更なる試練が襲いかかるのは想像に難くない。 

 このゲームの運営は何処に向かっているのだろうか? 明らかにプレイヤーを楽しませると言うよりは自ら生み出した世界を見た者の脳に叩きつけたいと言わんばかりの圧倒的な主張を感じる。
 恐らくだが、最前線で戦っている者達は誰よりもその運営の叩きつける世界観を最高の席で眺めているのだ。 

 そう考えたヨシナリの心にあったのは焦燥感に似た感情だった。
 クソ、もっと早く始められていれば。 そう思わずにはいられない。
 俺も最前線に行ってあいつ等に混ざって虫共を殺しまくって、運営の垂れ流す世界観を頭から浴びてどっぷりと浸かって脳を侵食されたい。 そんな気持ちになったが、今の自分の現状を見るとそれは叶わない。 こんな低スペックの機体では前線では話にならない上、技量面でも遠く及ばないだろう。

 ――俺も絶対にあそこへ行く。
 
 ヨシナリは最前線で繰り広げられる地獄の景色とそこでゲームと楽しんで笑うプレイヤー達を心底から羨ましいと思いながら今は自分にできる事をと歯がゆさを感じつつもライフルで射撃を続けた。



 戦況は拮抗――と言うよりはややプレイヤー側が優勢となっている。
 特に可変機の性能は圧倒的で凄まじい挙動で変形を繰り返して敵を攪乱しつつ、慣れた動きでエネミーを次々と撃破していく。 優勢になった事で手の空いたDランクプレイヤー達は後方で攻撃を続けているヤドカリ型の駆除に入った。 

 当然ながらエネミー側も黙ってやられる訳もなく、強化された蟻型エネミーを繰り出す。
 複数の銃身を束ねたガトリング砲を構えたタイプと槍を手に持ち、羽が四枚になって機動力が大幅に向上したタイプだ。

 「お、強化型がおいでなすったか。 槍に気を付けろよ!」

 誰かの警告が飛ぶが矢のように真っ直ぐに突っ込んで来る蟻の槍に貫かれた機体が次々と爆散する。
 
 「あぁ、言わんこっちゃない」
 「クソ、分かってたけど、こいつら滅茶苦茶速いな」
 「ソルジャータイプじゃ分が悪い。 槍持ちは素直にCランクに任せて俺達はガトリング持ちを潰すぞ」

 ガトリング砲を持った蟻型が横一列に並んで凄まじい量のエネルギー弾をばら撒く。
 空間そのものを制圧する弾幕をキマイラタイプは掻い潜るが、回避に失敗して被弾した機体が一部爆散する。 Dランクプレイヤー達はやらせないと言わんばかりに火力を集中するが、制圧力では大きく劣っており押し負けて次々と撃墜されて行く。

 「あぁ、クソここまでかよ。 せめて道連れにしてやる」
 「今回は頼むぜ。 防衛報酬期待してるからな!」

 一部の被弾して戦闘が難しくなった機体が敵に取り付いて道連れに爆発。
 優位に進めていた前線が押し込まれつつあり、前線が後退しつつあった。
 それにより出現と同時に破壊されていたヤドカリ型が息を吹き返し、改めて防壁への攻撃を開始。

 一部の前線を突破した蟻型も蜂型に混ざって基地の上空に出現する。
 Cランクプレイヤー達がいるのでそう簡単には危機的状況にはならないが、基地の被害が大きく増した事は間違いなかった。 せめても救いはガトリング砲を持った蟻型は足が遅いので前線を突破できていない点だろう。 それでも槍を持った高機動タイプは槍を突き出して自身を砲弾のように扱って基地に攻撃を仕掛ける。 

 「あぁ、うざってぇ! 蜂と混ざってるからロックし辛い!」

 ミサイル、レーザーの両方に言える事だが、自動操作で敵をロックする場合は蜂、蟻の区別がつかないので狙いが散ってしまうのだ。 蟻を優先したいプレイヤー側としては非常に面倒な状況だった。

 「畜生、畜生! くたばれ! くたばれぇぇぇ!」

 今となっては数が少なくなった低ランクプレイヤーが突撃銃を空に乱射していたが、機動性能に大きな開きがある蟻型を捕えるのは難しく槍に貫かれて撃破される。
 レーザー砲を連射したパンツァータイプが再度発射しようとして撃てなくなっている事に気付く。

 「!? エネルギー切れか。 誰か予備の――」

 最後まで言い切れずに四方から槍に貫かれて爆散。
 
 「やっぱ、電源は直引きだよなぁ!」

 そんな中、Cランクプレイヤーの一部はそう言って景気よく燃費の悪いエネルギー兵器を撃ちまくる。
 彼等はわざわざ高級な基地から直接電源を引っ張れるコネクターとケーブルを購入し、ついでにジェネレーターも大容量なものを購入しているので移動できない代償に武器の使用に際して残弾には気を使う必要はなかった。

 ――だが、完全に撃ち放題かと言えばそうでもなかった。

 武装の排気口が全開放し、煙が噴き出す。

 「あ、やっべ、オーバーヒートだ」
 「あーあ、お前冷却装置安物にしただろ? ケチるのはいかんよ」
 「いやぁ、ケーブル、コンデンサー、ジェネレーターに金使っちゃって冷却装置まで手が回らなくて……」
 「気持ちは分かるけどやられると困るからちょっと下がっとけ」
 「ごめんよー。 冷却済んだら戻って来るわ」

 戦いは続く。
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