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第24話
撃って逃げ回る。
言葉だけならその行動はシンプルで、簡単に出来そうな事なのかもしれない。
だが、現実はそうもいかなかった。 今のヨシナリ達には足りないものが多すぎた。
経験、技量、知識――そして何よりも機体性能が圧倒的に不足している。
建物の隙間を抜けて広い空間へと飛び出す。 本来なら敵の機動が限定される限られた空間で攻撃する事が今の彼等が多少なりとも戦える手段だった。
それができなかったのは単純にスペックの差だ。
敵の攻撃に追い立てられるように広い空間に飛び出した彼等は複数のエネミー――蟻型にロックオンされた事を悟る。 蟻型の行動傾向は『敵の数を減らす』だ。
それはヨシナリも察していた。 執拗にプレイヤーを追いかけまわす姿を何度も見ているのだ。
察するなと言う方が無理な話だった。
「あっちゃぁ。 こりゃ無理っぽいな」
マルメルが諦めたようにそう呟き、ヨシナリも内心では同意していたがもっと戦いたい。
この戦場を味わいたい。 この戦いの結末に関わりたい。
そんな強い欲求が渦を巻いており、諦めきれずにどうにか生き残りたいと生存への道を模索していた。
引き返す? 無理だ。 蟻型の機動性は何の強化もしていないソルジャータイプの比ではない。
迎撃? 有り得ない。 遠距離からの狙撃なら低いが撃墜できなくもないが、数百メートル程度の距離で数十に捕捉されている状況では間違いなく返り討ちだ。
どうすれば、どうすればいい? 諦めろと脳裏で囁く声がする。
どう見ても詰んでいるんだ。 次のイベントで頑張ればいいじゃないか。
今の上位ランカー達もそうやって今日と言う日に備えて来たからこそ、前線で戦えているんだ。
時間も経験も詰んでいないお前が、時間を手間をかけてここまで積んで来た連中と同じ土俵に立とうだなんておこがましいとは思わないか?
分かっている。 そんな事は分かっているんだ。
たかがゲーム。 されどゲーム。 本気になれない遊びに何の価値があると言うんだ。
――だから俺はこのゲームを全力で楽しむ為にみっともなく生き足掻――
「ヨシナリのそういう所、俺はちょっといいなって思うね。 連中が突っ込んで来たタイミングで元来た道を戻れ。 数秒ぐらいは保たせるよ」
ヨシナリの思考は不意に聞えたマルメルの声に断ち切られた。
「マルメル?」
「もっと頑張りたいって顔してる。 ――見える訳じゃないけどね。 ほら、俺って君の護衛だからな。 後、報酬は忘れるなよ?」
「俺は――」
「行け!」
ヨシナリは何か言いかけたが、マルメルの鋭い言葉に押される形で踵を返して駆け出す。
背後で突撃銃を乱射する音が聞こえたが、数秒後には消えた。
マルメルがやられた事を悟ったヨシナリは振り返ると倒れ込みながら手元に残していた二挺のハンドガンを連射。 近くまで迫っていた蟻型を瞬く間に穴だらけにするが、そこまでだった。
追加で迫って来るエネミーは処理できず、ヨシナリは成す術もなく槍で貫かれて機体は大破。
ゲームオーバーとなった。 敗北後は戦場の上空から俯瞰視点で戦況を確認する事しかできなくなる。 もはやヨシナリは当事者ではなく、傍観者となったのだ。
その事実に凄まじい寂寥感を覚えたが、結果が出てしまった以上はどうしようもない。
諦めて戦場を俯瞰するが、カメラを移動させる事も出来ずに戦場の全体をぼんやりと眺める事しかできないので段々と気持ちが萎えていく。 ヨシナリの視線の先で巨大なカタツムリのエネミーをどうにかしようと無数の可変機と特殊フレームを使用した機体が戦っている姿が見えるが、気持ちが切れた彼にとってはあまり興味が持てなかった。
小さく溜息を吐いて戦場から離脱。 結果が出ていないので防衛報酬の有無は不明だが、ヨシナリ個人の戦闘は終了したのでリザルトは表示され、撃破報酬が支払われる。
額を確認し、マルメルに報酬支払の確認メールを送り、返事が来て本人と確認した後に送金。
やる事を済ませた後、しばらく何もせずにぼーっとしていたが、精神的な疲労もあったので取りあえずログアウトして休息を取ろう。
そう考えたヨシナリはそのままゲームから現実へと戻って行った。
現実に戻った嘉成はぼんやりと自室の天井を眺めていたが、ややあって目を閉じた。
疲労もあって睡魔はすぐに訪れ――嘉成は眠りに落ちる。 夢は恐らく見なかった。
目を覚ますと朝になっていた。 時計を確認すると時刻は既に昼。
丸々、半日眠っていた事になる。 長時間眠っていただけあって頭はすっきりしていた。
部屋から出てリビングへ向かうと洗い物をしていた母が嘉成を見つけて呆れた表情を浮かべている。
「ようやく起きたの? どうする? 何か食べる?」
嘉成がうんと頷くと母は「パンでいい?」と尋ねて来たので頷くで答えた。
待っている間、適当にニュースサイトを眺める。
内容は有名配信者が結婚したとか、どこかの研究機関が新型の宇宙船を開発したとか、偉い学者がこの惑星の資源が枯渇しつつあるのでもっと大地を労われとか言っていた。
どれも興味がなかったので適当に流し見して出された食事をもそもそと食べると部屋に戻る。
ベッドで横になるとゲームを起動しログイン。
防衛戦の結果はどうなったのかと確認するとゲーム内メールで結果が送られていた。
開いてみると防衛失敗とでかでかと表示されている。 詳細を確認するとタイムは十一時間三十分。
後三十分だったのだが、持ち堪えられなかったようだ。
ミッション失敗に付き、防衛報酬はゼロ。 特に興味はなかったので他のメールはと確認するとマルメルから来ていた。 内容は防衛戦、楽しかったですねと言った前置きに始まり、報酬のお礼と守り切れなかった事に対する謝罪が長々と書かれており、何が言いたいんだこいつはと思っていたが、最後に一緒に遊びませんかとお誘いが記されている。
どうやらこれが本命でそれ以外は前置きだたようだ。
長いなと思いながら了承する旨の内容を送り返す。 マルメルは同ランク帯ではかなり上手く、モチベーションを維持できるなら将来は恐らく高ランクに足を踏み入れるだろう。
そんな相手と今の内に仲良くなっておけるのは悪い話ではない。
加えて同ランク帯なので、寄生みたいなプレイにならずに済むのも良かった。
それにマルメルとは何となく合いそうな気がしたので、一緒に遊べば楽しそうだったからだ。
言葉だけならその行動はシンプルで、簡単に出来そうな事なのかもしれない。
だが、現実はそうもいかなかった。 今のヨシナリ達には足りないものが多すぎた。
経験、技量、知識――そして何よりも機体性能が圧倒的に不足している。
建物の隙間を抜けて広い空間へと飛び出す。 本来なら敵の機動が限定される限られた空間で攻撃する事が今の彼等が多少なりとも戦える手段だった。
それができなかったのは単純にスペックの差だ。
敵の攻撃に追い立てられるように広い空間に飛び出した彼等は複数のエネミー――蟻型にロックオンされた事を悟る。 蟻型の行動傾向は『敵の数を減らす』だ。
それはヨシナリも察していた。 執拗にプレイヤーを追いかけまわす姿を何度も見ているのだ。
察するなと言う方が無理な話だった。
「あっちゃぁ。 こりゃ無理っぽいな」
マルメルが諦めたようにそう呟き、ヨシナリも内心では同意していたがもっと戦いたい。
この戦場を味わいたい。 この戦いの結末に関わりたい。
そんな強い欲求が渦を巻いており、諦めきれずにどうにか生き残りたいと生存への道を模索していた。
引き返す? 無理だ。 蟻型の機動性は何の強化もしていないソルジャータイプの比ではない。
迎撃? 有り得ない。 遠距離からの狙撃なら低いが撃墜できなくもないが、数百メートル程度の距離で数十に捕捉されている状況では間違いなく返り討ちだ。
どうすれば、どうすればいい? 諦めろと脳裏で囁く声がする。
どう見ても詰んでいるんだ。 次のイベントで頑張ればいいじゃないか。
今の上位ランカー達もそうやって今日と言う日に備えて来たからこそ、前線で戦えているんだ。
時間も経験も詰んでいないお前が、時間を手間をかけてここまで積んで来た連中と同じ土俵に立とうだなんておこがましいとは思わないか?
分かっている。 そんな事は分かっているんだ。
たかがゲーム。 されどゲーム。 本気になれない遊びに何の価値があると言うんだ。
――だから俺はこのゲームを全力で楽しむ為にみっともなく生き足掻――
「ヨシナリのそういう所、俺はちょっといいなって思うね。 連中が突っ込んで来たタイミングで元来た道を戻れ。 数秒ぐらいは保たせるよ」
ヨシナリの思考は不意に聞えたマルメルの声に断ち切られた。
「マルメル?」
「もっと頑張りたいって顔してる。 ――見える訳じゃないけどね。 ほら、俺って君の護衛だからな。 後、報酬は忘れるなよ?」
「俺は――」
「行け!」
ヨシナリは何か言いかけたが、マルメルの鋭い言葉に押される形で踵を返して駆け出す。
背後で突撃銃を乱射する音が聞こえたが、数秒後には消えた。
マルメルがやられた事を悟ったヨシナリは振り返ると倒れ込みながら手元に残していた二挺のハンドガンを連射。 近くまで迫っていた蟻型を瞬く間に穴だらけにするが、そこまでだった。
追加で迫って来るエネミーは処理できず、ヨシナリは成す術もなく槍で貫かれて機体は大破。
ゲームオーバーとなった。 敗北後は戦場の上空から俯瞰視点で戦況を確認する事しかできなくなる。 もはやヨシナリは当事者ではなく、傍観者となったのだ。
その事実に凄まじい寂寥感を覚えたが、結果が出てしまった以上はどうしようもない。
諦めて戦場を俯瞰するが、カメラを移動させる事も出来ずに戦場の全体をぼんやりと眺める事しかできないので段々と気持ちが萎えていく。 ヨシナリの視線の先で巨大なカタツムリのエネミーをどうにかしようと無数の可変機と特殊フレームを使用した機体が戦っている姿が見えるが、気持ちが切れた彼にとってはあまり興味が持てなかった。
小さく溜息を吐いて戦場から離脱。 結果が出ていないので防衛報酬の有無は不明だが、ヨシナリ個人の戦闘は終了したのでリザルトは表示され、撃破報酬が支払われる。
額を確認し、マルメルに報酬支払の確認メールを送り、返事が来て本人と確認した後に送金。
やる事を済ませた後、しばらく何もせずにぼーっとしていたが、精神的な疲労もあったので取りあえずログアウトして休息を取ろう。
そう考えたヨシナリはそのままゲームから現実へと戻って行った。
現実に戻った嘉成はぼんやりと自室の天井を眺めていたが、ややあって目を閉じた。
疲労もあって睡魔はすぐに訪れ――嘉成は眠りに落ちる。 夢は恐らく見なかった。
目を覚ますと朝になっていた。 時計を確認すると時刻は既に昼。
丸々、半日眠っていた事になる。 長時間眠っていただけあって頭はすっきりしていた。
部屋から出てリビングへ向かうと洗い物をしていた母が嘉成を見つけて呆れた表情を浮かべている。
「ようやく起きたの? どうする? 何か食べる?」
嘉成がうんと頷くと母は「パンでいい?」と尋ねて来たので頷くで答えた。
待っている間、適当にニュースサイトを眺める。
内容は有名配信者が結婚したとか、どこかの研究機関が新型の宇宙船を開発したとか、偉い学者がこの惑星の資源が枯渇しつつあるのでもっと大地を労われとか言っていた。
どれも興味がなかったので適当に流し見して出された食事をもそもそと食べると部屋に戻る。
ベッドで横になるとゲームを起動しログイン。
防衛戦の結果はどうなったのかと確認するとゲーム内メールで結果が送られていた。
開いてみると防衛失敗とでかでかと表示されている。 詳細を確認するとタイムは十一時間三十分。
後三十分だったのだが、持ち堪えられなかったようだ。
ミッション失敗に付き、防衛報酬はゼロ。 特に興味はなかったので他のメールはと確認するとマルメルから来ていた。 内容は防衛戦、楽しかったですねと言った前置きに始まり、報酬のお礼と守り切れなかった事に対する謝罪が長々と書かれており、何が言いたいんだこいつはと思っていたが、最後に一緒に遊びませんかとお誘いが記されている。
どうやらこれが本命でそれ以外は前置きだたようだ。
長いなと思いながら了承する旨の内容を送り返す。 マルメルは同ランク帯ではかなり上手く、モチベーションを維持できるなら将来は恐らく高ランクに足を踏み入れるだろう。
そんな相手と今の内に仲良くなっておけるのは悪い話ではない。
加えて同ランク帯なので、寄生みたいなプレイにならずに済むのも良かった。
それにマルメルとは何となく合いそうな気がしたので、一緒に遊べば楽しそうだったからだ。
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