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第26話
護衛と言う枷を取り払ったマルメルの動きは想像以上だった。
自己申告の通り精密射撃に関してはあまりよろしくないが、反射神経がいいのかターゲットを認識してからの挙動が異様に早い。 確かに突撃銃で中距離戦が彼には最も適した戦い方だろうとヨシナリは思った。
試しにと近接で手合わせしたが、確かに微妙だ。
反応は良いのでポテンシャルだけで見るならヨシナリよりは圧倒的に上だと思う。
それでも勝率は三割を切ったのは何故だろうと首を捻った結果、出た結論は動きの組み立てが拙い事だ。
「――どういう事?」
「お前に足りないのは戦い方の組み立てだと思う」
一通り、お互いの手の内を見せあった二人が、相手について思う所を述べていた。
ヨシナリの指摘にマルメルは首を捻る。 その様子を見てどう伝えたものかと同様に首を捻った。
父親からの受け売りなのだが、話す時は相手の理解を促す事を意識するのが上手く伝えるコツなのだそうだ。
その教えに従ってうんうんと唸りながら言葉を選ぶ。
「さっきの近接戦でダガーを振る時に何を考えてた?」
「どこを刺せば倒せるか」
「うん。 で?」
「? それだけだけど?」
「躱されたらどうするかとか考えない感じ?」
「避けられたり防がれたならその時に考える感じだな」
それは何か駄目なのかと首を捻るマルメルに感覚派だなぁと思いながらも説明を続ける。
「えっとだな。 躱された後にどう動くかを考えておくと二撃目、三撃目の出が早くなる。 傍から見るとちょっとの差なんだが、そいつを積み重ねると割と馬鹿にならないぐらい変わって来るんだ」
「あー……、なんか似たような話を漫画で見たような気がする」
「俺もそれっぽい事言ってるなって自覚はあるけど、まぁ聞いてくれよ。 お前は反応がいいからこっちのフェイントにあっさり釣られてしまうんだ。 で、俺の攻撃が見えていても遅れてしまう。 それがお前の敗因だな」
実際、ダガーを用いた近接戦では空いた腕を意味深に動かすと防御しようと僅かに反応するので、隙を作り易かった。
「なるほど、つまりは余計な動きに惑わされ過ぎって事か」
「そんな感じ、反応の良さは凄い強みだけど、それに振り回されないようにすれば勝率はぐっと上がると思う。 突撃銃を使った中距離戦がやりやすいのはその辺が活きているからだと思うから、無理にとは言わないけどちょっと意識してもいいかも。 特にランク戦で勝ちたいなら攻撃の引き出しは多いに越した事はないからな」
指摘はしても指図はしない。 行動の矯正は強制であってはならない。
人によっては上手く働く場合もあるがヨシナリは違うと感じているので、あくまで勧めるだけに留めるのだ。 マルメルの長所は反応の良さ、そして短所は反射で動いているのでフェイントなどに弱い。
克服したいなら戦い方に一工夫が必要。
具体的には感覚に頼らずに「こうすれば通りやすい」攻撃パターンをいくつか用意する事。
要は行き当たりばったりではなく、臨機応変を目指せと言う事だ。
マルメルは一通り聞いた後、うんうんと何度も頷く。
「分かった。 反映できるかはちょっと約束できないが意識はしてみるよ。 ――にしてもヨシナリはいつもそんなに考えてやってるのか? それ結構凄いんじゃないか?」
「いや、大半は経験則だ。 今までもそこそこの数のタイトルを渡り歩いたから、その時の実体験がメインだな」
「ほぇー、今でも色々やってる感じ?」
「いや、今はこれ一本に絞るつもり」
「そうなん? なんでまた?」
ヨシナリは基本的に一本しかゲームをやらない。
代わりに時間は全てその一本に使う。 気に入った世界を極限まで味わい尽くし、楽しめそうな所がなくなったらそのまま引退して次へと向かう。 それがこのゲームだったと言う訳だ。
「何とも変わったスタイルだなぁ。 ならこのゲームはどの辺まで行くと楽しめなくなるんだ?」
「少なくともSランク行くまではやろうかなって思ってる」
目標は大事だ。 あるのとないのとではモチベーションに大きく差が出る。
それを聞いたマルメルは小さく笑う。
「そりゃいい。 少なくともそれまでは消えられる心配はしなくていいって事だからな」
「まぁ、俺の言葉を何処まで真に受けるかは任せるよ。 さっきから俺ばっかり喋ってるからそろそろそっちの話も聞かせてくれよ」
「あぁ、そうだな。 さっきみたいな真面目な考察を聞かされた後だとかなりハードル高いな」
「別にそこまで気を使わなくていいから思っている事をそのまま言ってくれ」
他人からの客観的な意見は非常に重要だ。
自分が問題ないと思っていたり見落としている点を別の視点から見つけてくれる。
明らかに的外れだったりする場合や感情的な意見で参考にならないものもあるにはあるが、それを込みで聞く価値は充分にあるので人から自分がどう見えるのかは是非とも聞いておきたかった。
「取りあえずさっきの近接戦の話なんだが……」
ヨシナリは話しやすいようにうんと相槌を打つ。
「俺が勝った時あったじゃん」
「あったな」
「上手く説明できないんだけど、あの時はこうするだろうなって思ったんだ」
「うん?」
マルメルはヨシナリが首を傾げているのを見て必死に頭を回転させる。
どうすれば上手く伝わるだろうか? 今までは割とフィーリングでの会話ばかりしていたので、自分でも手探りで話しているなと思いながら言葉を選ぶ。
「何て言えばいいんだろう。 俺がダガーを突き出すとヨシナリは上に跳ね上げるって思ったから、突く直前で引っ込めて別の場所を刺した」
「そうだったな。 意表を突かれたから驚いた」
マルメルはそうじゃないと言いながらうーんと唸る。
真剣に考えているようなので急かすような真似はせずに考えが形になるまで待つ。
ややあってマルメルは何かを思いついたように話を続けた。
「さっきのヨシナリの話と逆だ!」
「逆?」
「そう、俺は何で防がれるって思ったのかを考えると何回も同じ方法で防がれたからなんだ」
そこまで聞いてヨシナリはなるほどと理解した。
「つまり無意識の内に同じ方法で何度も防いでいるから俺の動きが読めたと」
「そう! 動きに癖みたいなものがあるんじゃないか?」
「なるほど。 パターン化しているから逆に読まれるって事か」
気付かなかった。 恐らくは最小の動作で躱す事を意識しすぎて同じ行動を高頻度で行っていたのだ。
練習で良かった。 今後は気を付けよう。
自己申告の通り精密射撃に関してはあまりよろしくないが、反射神経がいいのかターゲットを認識してからの挙動が異様に早い。 確かに突撃銃で中距離戦が彼には最も適した戦い方だろうとヨシナリは思った。
試しにと近接で手合わせしたが、確かに微妙だ。
反応は良いのでポテンシャルだけで見るならヨシナリよりは圧倒的に上だと思う。
それでも勝率は三割を切ったのは何故だろうと首を捻った結果、出た結論は動きの組み立てが拙い事だ。
「――どういう事?」
「お前に足りないのは戦い方の組み立てだと思う」
一通り、お互いの手の内を見せあった二人が、相手について思う所を述べていた。
ヨシナリの指摘にマルメルは首を捻る。 その様子を見てどう伝えたものかと同様に首を捻った。
父親からの受け売りなのだが、話す時は相手の理解を促す事を意識するのが上手く伝えるコツなのだそうだ。
その教えに従ってうんうんと唸りながら言葉を選ぶ。
「さっきの近接戦でダガーを振る時に何を考えてた?」
「どこを刺せば倒せるか」
「うん。 で?」
「? それだけだけど?」
「躱されたらどうするかとか考えない感じ?」
「避けられたり防がれたならその時に考える感じだな」
それは何か駄目なのかと首を捻るマルメルに感覚派だなぁと思いながらも説明を続ける。
「えっとだな。 躱された後にどう動くかを考えておくと二撃目、三撃目の出が早くなる。 傍から見るとちょっとの差なんだが、そいつを積み重ねると割と馬鹿にならないぐらい変わって来るんだ」
「あー……、なんか似たような話を漫画で見たような気がする」
「俺もそれっぽい事言ってるなって自覚はあるけど、まぁ聞いてくれよ。 お前は反応がいいからこっちのフェイントにあっさり釣られてしまうんだ。 で、俺の攻撃が見えていても遅れてしまう。 それがお前の敗因だな」
実際、ダガーを用いた近接戦では空いた腕を意味深に動かすと防御しようと僅かに反応するので、隙を作り易かった。
「なるほど、つまりは余計な動きに惑わされ過ぎって事か」
「そんな感じ、反応の良さは凄い強みだけど、それに振り回されないようにすれば勝率はぐっと上がると思う。 突撃銃を使った中距離戦がやりやすいのはその辺が活きているからだと思うから、無理にとは言わないけどちょっと意識してもいいかも。 特にランク戦で勝ちたいなら攻撃の引き出しは多いに越した事はないからな」
指摘はしても指図はしない。 行動の矯正は強制であってはならない。
人によっては上手く働く場合もあるがヨシナリは違うと感じているので、あくまで勧めるだけに留めるのだ。 マルメルの長所は反応の良さ、そして短所は反射で動いているのでフェイントなどに弱い。
克服したいなら戦い方に一工夫が必要。
具体的には感覚に頼らずに「こうすれば通りやすい」攻撃パターンをいくつか用意する事。
要は行き当たりばったりではなく、臨機応変を目指せと言う事だ。
マルメルは一通り聞いた後、うんうんと何度も頷く。
「分かった。 反映できるかはちょっと約束できないが意識はしてみるよ。 ――にしてもヨシナリはいつもそんなに考えてやってるのか? それ結構凄いんじゃないか?」
「いや、大半は経験則だ。 今までもそこそこの数のタイトルを渡り歩いたから、その時の実体験がメインだな」
「ほぇー、今でも色々やってる感じ?」
「いや、今はこれ一本に絞るつもり」
「そうなん? なんでまた?」
ヨシナリは基本的に一本しかゲームをやらない。
代わりに時間は全てその一本に使う。 気に入った世界を極限まで味わい尽くし、楽しめそうな所がなくなったらそのまま引退して次へと向かう。 それがこのゲームだったと言う訳だ。
「何とも変わったスタイルだなぁ。 ならこのゲームはどの辺まで行くと楽しめなくなるんだ?」
「少なくともSランク行くまではやろうかなって思ってる」
目標は大事だ。 あるのとないのとではモチベーションに大きく差が出る。
それを聞いたマルメルは小さく笑う。
「そりゃいい。 少なくともそれまでは消えられる心配はしなくていいって事だからな」
「まぁ、俺の言葉を何処まで真に受けるかは任せるよ。 さっきから俺ばっかり喋ってるからそろそろそっちの話も聞かせてくれよ」
「あぁ、そうだな。 さっきみたいな真面目な考察を聞かされた後だとかなりハードル高いな」
「別にそこまで気を使わなくていいから思っている事をそのまま言ってくれ」
他人からの客観的な意見は非常に重要だ。
自分が問題ないと思っていたり見落としている点を別の視点から見つけてくれる。
明らかに的外れだったりする場合や感情的な意見で参考にならないものもあるにはあるが、それを込みで聞く価値は充分にあるので人から自分がどう見えるのかは是非とも聞いておきたかった。
「取りあえずさっきの近接戦の話なんだが……」
ヨシナリは話しやすいようにうんと相槌を打つ。
「俺が勝った時あったじゃん」
「あったな」
「上手く説明できないんだけど、あの時はこうするだろうなって思ったんだ」
「うん?」
マルメルはヨシナリが首を傾げているのを見て必死に頭を回転させる。
どうすれば上手く伝わるだろうか? 今までは割とフィーリングでの会話ばかりしていたので、自分でも手探りで話しているなと思いながら言葉を選ぶ。
「何て言えばいいんだろう。 俺がダガーを突き出すとヨシナリは上に跳ね上げるって思ったから、突く直前で引っ込めて別の場所を刺した」
「そうだったな。 意表を突かれたから驚いた」
マルメルはそうじゃないと言いながらうーんと唸る。
真剣に考えているようなので急かすような真似はせずに考えが形になるまで待つ。
ややあってマルメルは何かを思いついたように話を続けた。
「さっきのヨシナリの話と逆だ!」
「逆?」
「そう、俺は何で防がれるって思ったのかを考えると何回も同じ方法で防がれたからなんだ」
そこまで聞いてヨシナリはなるほどと理解した。
「つまり無意識の内に同じ方法で何度も防いでいるから俺の動きが読めたと」
「そう! 動きに癖みたいなものがあるんじゃないか?」
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