Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第35話

 「ヨシナリ君がんばれー!」

 ふわわは先程と同様に応援を行う。
 隣のマルメルもがんばれーと同じように声を出す。
 マルメルが戻って、入れ替わりでヨシナリがランク戦に参加している。

 ヨシナリの機体、ホロスコープもマルメル達の機体と同様に強化を施されていた。
 装甲はマルメルと同様に追加で盛られており、メイン武装としてはやや大型の狙撃銃。
 エネミーに使用したものに比べれば小型だが、トルーパーであるなら上手く捉えれば一撃で沈められる破壊力を持った代物だ。

 「色々悩んでたみたいだけどライフルで行く事にしたんだ?」
 「みたいっすね。 ただ、どんな状況にも対応できるようにして行きたいって言ってたからその辺はちょっと工夫があると思いますよ」
 「へぇ、そう言えば聞いてなかったけどマルメル君はヨシナリ君と結構長いの?」
 「いや、そうでもないっすね。 前のイベント中に知り合って、そっから仲良くなった感じです」
 「あー、二人もあれ出てたんだ」
 「割と粘ったんですけど駄目でしたよ」
 「そうなんだぁ。 ウチは最初の方でやられちゃったからあんまり楽しめなかったよ~。 皆で戦うから大丈夫だと思ったんだけどあの数は無理だわ」

 ふわわはイベント開始から早々に前線へと突っ込んでいったのだが、物量の前に屈して脱落したのだ。
 
 「斬っても斬っても数が減らないし、気が付いたら囲まれて袋叩き。 ないわ~ってなっちゃった」
 「はは、前線の面子は早々に食われてましたからね。 芋虫型が湧いて来たタイミングぐらいですか?」
 「ううん。 カブトムシみたいなのにやられたから芋虫は見てないよ」
 「あ、じゃあ本当に最序盤で落ちたんだ。 まぁ、近接一本じゃあのイベントはきついでしょうね」

 ふわわは不意に黙ってマルメルをじっと見つめる。

 「な、なんすか?」
 「マルメル君ってヨシナリ君とはかなり距離近いよね。 だってウチ相手だとちょっと敬語だし」
 「あ、あー。 そっすね。 何でだろ? ヨシナリの場合は何か距離感が噛み合ったっていうか、何と言うか気が付いたらこうなってました」

 実際、マルメルはヨシナリに対して最初こそ敬語だったが、気が付けば打ち解けていたのだ。
 ヨシナリの必要以上に押しつけがましくない点が好ましかったのか、何だか話していて気が楽だった。
 
 「へー。 確かにヨシナリ君、誘って来たけどあんまりグイグイ来ないから気軽な感じはするよね」
 「後はこのゲームにかなりマジになってるんで、いきなり消えそうな感じがしない事もですかね」

 マルメルもこのゲームを始めるに当たって家族の同意を得ると言うハードルを越えてようやくログインまで漕ぎ着けたのだ。 出来るだけしっかりと楽しみたい。
 確かにこのゲームはソロでも充分に楽しめるが、他のプレイヤーとの摩擦が存在する以上は仲間は居た方が楽に進める事ができる。

 マルメルはヨシナリと絡んでそれを強く実感していた。 
 特に機体のカスタムに関しては情報を漁ってもどうしたらいいかピンとこない彼からすれば的確なアドバイスと習熟訓練まで付き合ってくれるヨシナリは得難い友人だったのだ。

 彼も当然ながら他のゲームもやっているのでそこに友人は存在する。
 ただ、そう広くない交友関係の中では残念ながら他にプレイしている友人は居なかった。
 プレイを始めて右も左も分からない手探りの状態で彼のような存在は非常にありがたい。

 「ふーん、ヨシナリ君ってそんなに本気なんだ?」
 「本人は隠してるっぽかったですけど、イベントで負けそうになった時はかなりマジで焦ってましたし、負けた時はマジで悔しそうでしたよ」
 「おおぅ、熱いねぇ」
 「本人嫌がるかもしれないから茶化すのは止めてやってくださいね」
 「しないしない。 真面目にやる人は素直に格好いいと思うよー」
 「面白い反応しそうだからそれは本人に言ってやってください」
 
 そう言って二人は笑う。
 開かれているウインドウの向こうではヨシナリがライフルで敵機を射程外から容赦なく撃ち抜いて撃破していた。 相手は中距離戦用の機体だったのでワンサイドゲームだ。

 動きが鈍重な相手は胴体を綺麗に撃ち抜いて一撃。
 素早い機体は動きを呼んで狙撃。 連続して撃ち込んで相手を焦らせ、回避を単調にするような攻撃はやられると嫌だなと素直に思える性質の悪さだった。
 
 実際、マルメルも訓練で散々、追いかけまわされたので彼の恐ろしさは身に染みている。
 本音を言えばスナイパーに対する苦手意識ができそうだったが、その経験で対策はある程度なれているので無駄ではなかったと思いたい。

 「やっぱりスナイパーって距離があると本当に厄介だねー」
 「そっすけど、当てられる技量が要るから誰でもできる訳じゃないんですよね」

 マルメルとしても扱えるなら自分も狙撃銃で遠距離から一方的に相手を痛めつけて気持ち良くなりたい。 だが、このゲームに置いて狙撃銃の扱いはかなり難しい部類に入る。
 止まっている的に対してはシステムのアシストが入るので、下手糞でも当てるだけならどうにでもなるだろう。 ただ、動いている的になるとそうもいかない。

 彼はチュートリアルでその事実を散々学ばされたので、早い段階で狙撃銃は諦めた。
 向いていない事はやるべきではない。 得意な事で勝負すればいいのだ。
 
 「あ、また勝った」
 
 見ている間にヨシナリはまた相手を撃ち抜いて仕留めていた。
 相手に恵まれた事もあって、次々と勝利を重ねていく。
 
 「凄いね。 もう五連勝ぐらい?」
 「そっすね。 ただ、そろそろそうもいかないんじゃないですか?」
 
 マルメルの言葉通り、次の相手は今までの相手とは一味違ったようだ。
 急制動、急加速、動きにランダム性を持たせて次々と回避して距離を詰める。
 
 「おぉ、躱してる凄い凄い!」
 「いや、あんたもできるでしょ……」
 「できると言うよりはできたって感じだね」
 「それなんか違いあるんですか?」
 
 マルメルの質問にふわわはうーんと悩む素振を見せる。

 「えっとね。 何かビビッと来るからその時に機体をグワっと加速させると良い感じに躱せるよ」
 「……さっぱりわからねぇ……」

 何となく何を言いたいのかは伝わるのだが、具体性に欠けているので理解ができない。
 ビビッとグワっでどうやってあの狙撃を躱せるのか、マルメルは一生理解できそうにないなと内心で溜息を吐く。 だが、目の前で動いているヨシナリの相手の挙動に関しては参考になった。

 最初の一射を躱した所で大雑把な狙撃位置は掴んでいるので動き回って狙いを散らす事に集中している。 
 後はどこまで距離を詰められるのかにもよるが――
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