Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第36話

 「そろそろ狙撃じゃ厳しい距離になってきたね」
 
 ふわわの言葉通り敵機がヨシナリを間合いに捉え、持っていた突撃銃で銃撃を始める。
 対するヨシナリは間合いに入られる直前に銃身の一部を排除。
 片膝を立てた体勢から機体を起こして応射。 
 
 「あれ? 狙撃銃じゃないの?」
 「多分、セミオート、フルオートに切り替えられる奴ですね。 ついでに銃身を外して振り回し易くしてます」
 
 両者は激しく動き回りながら一定の距離を保って撃ち合う。
 
 「やっぱり色々積んでるだけあってマルメル君より動きが重たいね」
 「元々、狙撃がメインでしたが、ランク戦に合わせて他にも対応できるようにしたみたいです」
 「そうなんだ?」 
 「中距離戦は俺と散々、練習しましたからね」
 「ウチとはやってないけど?」
 「そりゃふわわさんとやったら即座に細切れにされて練習にならないからでしょ」

 特にふわわは加減を知らないので不慣れな間合いでの練習相手としては不適切だった。 
 マルメル程ではないがヨシナリの立ち回りは充分に通用するもので、明らかに中距離戦を得意とする機体と対等以上に渡り合えている。

 「流石だね! 後は接近戦をこなせれば完璧じゃないかな?」
 「……そっすね」

 マルメルは内心でこの人は恐らく自分と同等クラスの近接能力を求めるんだろうなと少しだけ遠い目をした。 両機は激しい撃ち合いの後、ヨシナリの勝利という結果に終わる。
 それを見て二人は小さく首を捻った。

 「どう思います?」
 「うーん。 正直、微妙。 ヨシナリ君って狙撃は凄いけど、それ以外は微妙だね。 後、近接弱いし」
 「あんたに比べりゃ大抵の奴は近接雑魚ですよ。 さらっと毒吐くなぁ。 まぁ、ぶっちゃけできなくはないんでしょうが、突出している訳でもないんで遠距離以外の相手の得意レンジで戦り合うと脆さが出ますね」
 
 ふわわはこう言っているが、マルメルからすればヨシナリは全ての距離を平均的にこなせるオールラウンダーだと認識していた。 狙撃が凄いと言うのもこの三人で比較した上での評価だろう。
 突出したものがない代わりに隙なく、様々な武器を扱えるのは地味ではあるかもしれないが大きな強みと言える。 

 「俺達に合わせて戦い方を変えてくれてるみたいですし、突き抜けてはいないかもしれないですけど頼りにはなりますよ」
 「そこはウチもそう思うな!」
 
 その返しに思考と言動が直結しているのかとマルメルは隣にいる彼女の事を内心で「不思議ちゃん」とカテゴライズした。
 一段落してヨシナリが戻り、それぞれ戦い方に関しての話し合いを行い、そして入れ替わりでふわわ、マルメルの順で潜る。 それにより、欠点の洗い出しと改善できそうな所、後は伸ばすと良さそうな面などを分析していた。 

 もう少し気楽でもいいかもしれないとヨシナリは思ったが、マルメルもふわわも嫌がらずにしっかりと付き合ってくれるのでこれでいいと思って継続し、二巡する頃には三人ともGランクへと昇格。
 
 「やっぱり事前にしっかりと金を稼いだのがデカかったな」
 「はー、気が付いたらあっという間に昇格しちゃったねぇ」
 「取りあえず、Fぐらいまではこの調子で行けると思うけど、上に行けば行く程に支出が半端ないからGランク戦はまた稼いでからにしようと思う。 別に強制はしないから都合があったタイミングでまた周回する感じでどうかな?」

 ヨシナリはこの後、二人で周回できるミッションと三人で集会できるミッションを探すつもりだった。
 ランクが上がった事によって受注できるミッションの種類も増えたのでリサーチを行いつつ、自分とマルメル、自分とふわわ。 後は三人で比較的楽に周回できるものを探すつもりだった。

 難しいようだったら野良に混ぜて貰えばいい。 後は並行して今のランクで買える装備から良さそうな装備を見繕ってそれぞれの強化プランを練ろう。
 
 「取りあえず今日は解散して予定に関してはメールで調整していこう」
 「そうだな。 流石にちょっと疲れたから俺は寝るよ。 あ、ちなみに明日も空いてるからまた遊ぼうぜ!」
 「ウチは明日はやる事あるから夜にならないと無理かなぁ。 ヨシナリ君は?」
 「俺は基本、毎日入るつもりなんで都合の良い時に声をかけてください」
 「うん。 分かったー。 じゃあウチは落ちるねー。 おっつー!」

 ふわわのアバターは小さく手を振ってログアウトした。
 
 「よし、じゃあ俺もぼちぼち落ちるか。 このゲーム、面白いけど疲れるなぁ」
 「確かにランク戦とか結構消耗するよな」
 「脳ミソを休めてまた明日頑張ろうぜ!」
 
 そう言ってマルメルもログアウト。 ヨシナリもやる事はないなと確認しかけて――緊急ミッションが発注されている事に気が付いて慌てて受注した。
 貴重なPを手に入れられるチャンスだったので我ながらツイてるなと思いつつ参加。

 今回もよく分からない場所での荷物運びだ。 他にも数機の作業用の機体が精力的に働いている。
 前回と同じ、空にはユーピテルにそっくりな巨大惑星。 結構近いので二度目だが、凄い迫力だと思ってしまう。
 
 ヨシナリは視界の端に表示された指示に従って黙々と仕事をこなす。
 専ら荷物運びや時折、足元に居る作業員姿のアバターが頼みごとをしてくるので手を貸していく。

 働きながら周囲を見ると不思議なマップだった。
 機体が周囲の音を拾わない所為なのか、マップ的に大気のない惑星だからなのかとても静かだ。
 星の瞬きと遠くに見える巨大惑星は二度目にもかかわらず何度来てもいつまでも見ていられるような視線を吸い込むような魅力があった。 

 ここで空を眺めながら本でも読んだら落ち着いた時間を過ごせるだろう。
 やはり宇宙は良い。 この圧倒的なスケールを前にすればどんな悩みも些細な問題と思えてしまう。
 指示に従い、作業をこなしながら横目で美しい風景を眺める。

 そうこうしている内に作業は終わり、足元に居る作業員アバターがありがとうと言わんばかりに手を振っていたので、ヨシナリは小さく手を振り返してミッションは終了となった。
 報酬の受け取りを確認した後、ヨシナリはログアウトを行い、このゲームを後にした。

 
 ゲームから現実へと戻った嘉成はむくりと身を起こすともう遅い時間になっており、部屋から外に出ると入浴を済ませたらしい母親と出くわした。
 母親は呆れた口調でほどほどにしておきなさいよと言いながら食事は冷蔵庫にあるとだけ告げて寝室へと引っ込んだ。
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