Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第38話

 「おいおい、今更かよ」

 ヨシナリは運営からのお知らせを見て呆れたようにそう呟いた。
 内容は新機能の実装だ。 具体的に何かと言うと『ユニオン』機能。
 プレイヤー同士でユニオンというコミュニティを築けるようになるようだ。

 他のゲームだとギルドと呼称されたりもするが、作成、所属する事でどんなメリットがあるのか?
 まずは共同ミッション、イベントミッション中に同じユニオンに所属しているプレイヤーの位置がリアルタイムで把握できる事と専用の通信回線が用意され他をシャットアウトしてユニオンメンバーとだけ会話ができるようになる。 フレンド機能の延長のようなものだが、目玉は次にメンバーがミッションをクリアするとユニオンにも報酬が別で支払われるようになるようだ。

 さて、それが何かというとユニオンにストックされる資金はユニオンに与えられる拠点の強化や、武器や装備を購入する事ができる。 要は高額な装備やパーツを購入し、メンバーに与える事も可能だ。
 運用などはユニオンのマスター――要は責任者に一任されるとの事。

 ――横領とかやる奴が出て来そう。

 真っ先に出る感想がそれかよとヨシナリは自嘲気味に笑う。
 メンバーが多ければ多い程にユニオンの資産はあっさりと溜まり、扱える額も凄まじい事になる。
 どの程度かは要検証だが、戦力の底上げにも使えるだろう。 特に高額のGが溜まるなら多くのメンバーに上等な装備やパーツなどを配布する事も出来るので、プレイヤーの総合戦力の引き上げに大いに役立つ仕組みだ。

 「……つーか、これサービス開始と同時に実装してもいい機能だったんじゃ……」
 
 半年経って実装する機能なのかと思ってしまう。
 ヨシナリはうーんと首を捻る。 割とこの手のゲームで必要そうな機能が最初から実装されていないのはやはり開発が追いついていないのだろうか? 聞いた噂に信憑性が増した。

 実装は――今から。 今から!?
 
 「……えぇ……。 普通はこう、数日ぐらいのクッションを置くものじゃないのか?」
 
 同時に設置されたユニオンメンバー募集掲示板に次々とメンバー募集の告知が次々と表示される。
 ざっと見るが、告知されて早々に百人、千人規模のユニオンが誕生しているのはこの状況を読んで事前に準備などを行っていたのだろう。 先々の事を考えると所属しておいた方が得なのかもしれないが、ヨシナリはこういった上下関係や格差が生まれそうな環境があまり好きではなかった。

 やるなら少人数で問題が起こり難いような状況でだ。
 そうなると選択肢は自然と限られてくる。 取りあえずあの二人を誘ってみよう。
 善は急げと先人はよく言ったものだと思い、ユニオン立ち上げを行おうと思うので良かったらメンバーにならないかといった内容のメールを送る。
 
 フレンドリストを見ると二人はまだログインしていないので、返事はしばらくかかりそうだ。
 一応、ユニオンの機能の内容をざっと確認してミッションの周回へと戻った。
 単調な作業は飽きが来て苦痛になる場合が多いが、気分によっては同じ作業の繰り返しは気持ちを落ち着かせる場合もある。 

 今回に関してはやる事、やりたい事もあってやや気持ちが前のめりになって落ち着かない。
 早く新機能を使ってみたいと思い、早くどっちかログインしないかなとソワソワした気持ちで狙撃銃を撃ち続けた。



 そんな悶々とした気持ちで数時間ほど過ごしているとマルメルがログインして来た。
 返事はそっちに行くと一言。 アバターに移行して街へと向かい、マルメルと合流。
 お互い小さく手を上げて挨拶。

 「メール見たよ。 ユニオンねぇ、マジで今更な機能だな」
 「俺もそう思うけど、通常報酬とは別で資金が手に入るのはデカいと思う」
 「それは確かに。 つってもふわわさんを合わせても三人だろ? ぶっちゃけ微々たるものじゃないか?」
 「それもあるんだけど、ユニオン対抗戦とかもあるらしいからそっちで稼げたらいいかもと思ってる」
 「対抗戦? あぁ、ユニオン版のランク戦って奴か」
 「あぁ、俺も概要しか目を通してないから細かいルールとかは確認してないけど、ランクが高かったら定期的に報酬を貰えるみたいなんだ」
 「あ、分かった。 上位になるとPが貰えるとかだろ?」
 「その辺は普通のランク戦と同じだな。 報酬目当てにあっちこっちで勧誘合戦だ」

 マルメルはウインドウを操作するとうわと小さく声を漏らした。
 
 「参加募集、ランク問わず、F以上限定、ログインちゃんとする人……。 色々あるけど場所によっては結構ガチガチに縛って来るなぁ。 つーか、三日ログインしなければ追い出すとか意識高すぎない?」
 「別に悪いとは言わないけど俺は束縛きつい系は無理だから知り合いだけで固めて気楽にやれればって思ってる」
 「いいんじゃないか? 俺もうるせー事言われんの嫌だし、ほどほどに緩ーく行こうぜ」
 
 募集要項を見ると集めている者が何を目指しているのかが見えて来る。 
 誰でもいい奴はとにかく数を集めて規模を大きくしようと思っており、露骨に高ランクプレイヤーを集めたがっている者はランク報酬目当てだろう。

 「どうでもいいけどユニオンって括りにするって事はユニオン同士であんまり慣れ合わせない感じかな?」
 「俺もそう思う。 機能の説明によると合併も出来るみたいだから、倒して取り込みとかも出来そうだ」
 「すっげぇ競争意識を煽るな。 これ絶対わざとだろ」

 わざわざランクで格付けしている点からもそれは明らかで、運営はどこまでもプレイヤーに上を目指せと唆す。 

 「なぁ、ユニオン戦もう始まってるみたいだから観戦しようぜ」
 
 マルメルが見ようぜと肩を叩いて来たので分かったと言いながら観戦メニューを開いてリアルタイムで行われているユニオン戦を見る。
 ウインドウの向こうでは五体五での集団戦が行われており、複数のトルーパーが入り乱れての戦いを繰り広げていた。 ソルジャータイプばかりなので、比較的ではあるがランクの低いプレイヤー同士の戦いに見える。

 「えーっと参加者の名前とランクは――あ、これか。 あぁ、戦力が偏らないように参加ランクが制限されのか」
 
 マルメルが納得したように呟く。 
 ヨシナリも同様に確認すると、参加者のランクが拮抗するように参加制限を行う事ができるらしい。
 あくまで任意なので格上との戦いも可能との事。 ふーんと思いながらヨシナリは繰り広げられている戦闘へと視線を戻した。
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