Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第40話

 「とりあえず作ったばかりでギルド資金もゼロだからユニオン戦かミッションやって稼ぐ必要があるな」
 「ちなみにどっちの方が儲かるんだ?」

 マルメルはパイプ椅子の背もたれが前に来るように座り、体重をかけてギイギイと鳴らしている。
 ヨシナリはウインドウを開いて操作。 

 「えーっと単価で言うなら高難度のミッションの方が儲かるが戦闘にかかるであろう時間を考えるとユニオン戦を回した方が効率的だな。 負けたら赤字になるけど」
 「ならユニオン戦やってみない? ウチちょっと興味あるなぁ」
 
 ヨシナリとマルメルが顔を見合わせると互いに頷く。
 折角、ユニオンを組んだんだんだ。 やらない手はないだろう。
 
 「よし、ならユニオン戦、やりますか!」

 
 やると決めればその後は早い。 
 ――というよりは普通のランク戦と同様にユニオン戦も条件――何人での参加を設定するだけですぐにマッチングするので始まるのは即座だ。 マッチング相手はランダムだが、同ランク帯のユニオンとしか当たらない。 ランクはアルファベットではなく数字で表されⅠからⅤの五つに区分けされる。

 ヨシナリ達『星座盤』は最低のⅤなので当たるのは同格のランクⅤか低確率で一つ上のランクⅣとなる。 
  
 「最初だし楽に勝てる相手がいいなぁ。 勢い付けたいし」
 「そお? ウチは格上の方が良いかもー。 貰える報酬増えるんでしょ?」

 マルメルとふわわがそんな事を話している間にマッチングが完了。
 相手のユニオンはランクⅤの同格、ユニオン名は『大渦ヴァッサーファル』。
 同時に相手プレイヤーの情報が表示。 対戦した経験のない相手なので二人は個人ランク以外は表示されないが、残り一人だけは違った。 『ゾン』初めてのマルチで組んだ相手だった。

 正直、いい印象のない相手だった上、会話もしていないのでほぼ他人だ。
 対戦、または共同ミッションで接触したプレイヤーは以降、ある程度の情報が表示される。
 ランクはH。 機体は相変わらずの中距離戦仕様。 装甲を盛った上で両手に突撃銃装備であちこちに弾倉を張り付けている。 

 ヨシナリ達は現在はGランクだったので個人レベルで言うなら格下だ。 
 だが、残りの二人――特に片方がFランクと一つ上だった。
 
 「相手のデータ持ってる? 俺はゾンって奴のデータはあるよ。 突撃銃二挺持ちの中距離戦特化、装甲盛り盛りで正面から殴り合うタイプだ」
 「俺は全員初見」
 「ウチもー。 装備の相性がいいならこのFランクの人とやりたいなぁ」
 「取り合えず、俺が相手の装備確認するから誰が誰の相手するかはその時に決めるって事で!」

 ヨシナリが纏めると二人は軽い調子で返事をして初のユニオン戦が始まった。
 場所は山岳地帯。 木々が連なっている場所もあるので隠れたりも可能だろう。
 開始と同時にヨシナリは即座に高台へと移動。 狙撃銃を構えて広い戦場を見渡す。
 
 この日の為にトルーパー用の広域センサーを購入したので索敵能力は格段に向上しており、狙撃精度も同様に跳ね上がっている。 ざっと見ると真っ先に発見できたのはゾンの機体だ。
 馬鹿正直に真っすぐ突っ込んで来ている。 その後ろにもう一機、プレイヤー名は『こーへい』。 Fランクだ。 最大望遠で装備を確認すると装甲は控えめで追加のスラスターなどを付けており、短機関銃と腰に刀? 恐らくは中距離をこなしつつ近距離主体と見ていい。 残りの一機は見当たらなかった。 何らかの手段でステルスしているか――瞬間、警告のアラート。 ヨシナリはホロスコープを即座に移動させ、高台から飛び降りる。

 ――スナイパーのどちらかだ。

 一瞬遅れてヨシナリの居た場所にライフル弾が命中し、地面を大きく抉る。
 間違いなく索敵に引っかからなかった最後の一人だ。 敵の中では一番厄介そうな相手だった。
 
 「最後の一人はスナイパーみたいだ。 俺は向こうとの牽制合戦になると思うから援護は期待しない方向でよろしく」
 『はーい』
 『了解。 ならヨシナリが抑えている間に居場所のはっきりしてる連中を片付けて残りのスナイパーを三人で袋にしちまおう』

 戦闘中の通信という事でマルメルとふわわの声はノイズ混じりで聞こえるが、何を言っているか分かるので特に問題はない。 スナイパーがやられて嫌がる事は分かるので抑えるぐらいはどうにでもなるだろう。 敵が居そうな場所に一発打ち込むと即座に移動。 応じるように一発返される。

 飛んできた方角から相手の大雑把な位置とどちらに移動したのかを予想しながらヨシナリは機体を走らせた。


 『あ、来たねー』
 
 ふわわが敵の姿を確認したと同時にマルメルは腰にマウントされた短機関銃を展開し、両腕の突撃銃を構える。 ふわわの索敵範囲に引っかかったという事はそろそろ互いを射程に捉える事になるだろう。

 『じゃあウチは後ろの格上の機体やるからマルメル君は正面から来るのよろしく』
 「逆の方が良くないっすか? 正面、瞬殺して残りを二人でボコしましょうよ」
 『えー、ヨシナリ君の口振りだと正面の子、弱そうだしそこまでしなくていいでしょ。 って事でよろしくねー』

 ふわわの機体が加速しそのまま突っ込んでいった。
 場所は山の麓に広がる森。 敵は木々に紛れて接近していたが、ゾンというプレイヤーが派手にスラスターを噴かしているので一発で位置が分かる。 

 ――あれじゃ、森を進む意味があんまりないぞ。

 マルメルはその迂闊な動きに若干、呆れながら内心で呟く
 ふわわのいう通り、明らかにヨシナリはゾンというプレイヤーを脅威とみなしていなかった。
 似たような構成のマルメルからしてもあまり技量面でも優れているように見えなかったのでふわわが興味を持たない理由も良く分かる。

 「取り合えず、相手するのは了解しましたけど、片方が終わったら残りが助けに入る。 そこは頼みますよ!」
 『は~い』

 本当に大丈夫かよと思いながらマルメルは近くの岩場の陰に移動。
 同時に銃弾が飛んできた。 射程に入った瞬間に撃ってきたようだ。
 本当にばら撒いているだけなので狙いも適当。 大雑把な位置を掴んでいるのでそこに弾をばら撒くだけの戦い方だった。 弾幕が途切れたと同時に岩場の陰から身を乗り出して応射。

 命中するが追加装甲に阻まれて致命傷にならない。
 マルメルはなるほどと岩陰に引っ込む。 少し遅れてまた弾幕が張られる。
 頭の中でこの後の動きを組み立てながら次で決めるかと内心で呟く。

 似たような事をやってヨシナリとふわわに散々、負けたのでこの手の戦い方をする相手の処理方法は頭に入っていたからだ。 恐らく問題なく処理できるだろう。
 それに格下のランクなので負けると非常に格好が悪い。 サクッと勝ってちょっといい所を二人に見せてやろう。 マルメルは相手の様子を窺いながら武器を持つ手に僅かに力を込めた。
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