Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
48 / 865

第48話

 レラナイトという男は性格にこそ問題はあるが、優れている点も存在した。
 勝てる勝負と勝てない勝負を見極める目だ。 彼は勝てない勝負は徹底して避け、勝てる勝負に全てを傾けてこのEランクという比較的上位まで上がってきた。 

 その為、勝てる相手と勝てない相手を見極める事だけは非常に上手かったのだ。
 ここで疑問がある。 ランク戦のマッチングはランダムだ。
 システム上、相手を選ぶ事は不可能だが、偏らせる事は可能だった。

 さて、彼はどのように偏らせたのかというと対戦には観戦機能が存在する。
 行われている戦闘をリアルタイムで見る事ができるというものだ。 それにより相手を物色し、勝てそうな相手が集まっている時間にマッチングを行い、相性のいい相手を狙う。

 完全ではないが多少の偏りは勝率に影響を与え、彼は一時Dランクにまで昇格する事に成功した。
 だが、そこまでだった。 Dランクはどんな相手にも勝てるような総合力が求められるので相性の良し悪しはあるが、それ以上に高い技量が求められる。

 その為、今までの作戦が通用せずにあっさりとEランクに降格。
 ならばとDランクに上がった後、対戦を止めればいいといった考えもあったが集計期間中の戦闘が一定数を割ると降格処分にされるのでそんな延命手段も通用しない。 特に上に上がれば上がるほど条件が厳しくなるのでDランク以上は無理だと結論を出さざるを得ない。

 彼は可能であれば高額のPが貰えるBランク以上になりたかった。
 理由はPの換金だ。 巷で囁かれている噂は本当で、Pは高額で取引される。
 彼はそれでちょっと稼ぎたいと思っていたのだ。 高ランクになれば定期的にPが手に入る。 少なくない額の収入が入るので、彼は意地でも高ランクになってやろうとしていたのだがこのゲームは欲望の強さだけでは上には上がれない。
  
 結局、ハイランカーになる事は諦め、巨大ユニオンの長になればいいと目標を切り替えた。
 その為にはとにかく頭数が必要だ。 強ければ尚いい。
 ユニオンのランクが上がれば同様に報酬が手に入る。 そこから一部を懐に収めればいい。

 彼はこういった即物的な物への執着が強く、何でもかんでも欲しがる。
 金もそうだが、自己評価が高いので異性にも強い執着を抱いており、ふわわにこだわる理由の一つでもあった。 そして他人を見下して悦に浸る事も好きだったので、ヨシナリ達の事も表面上の言葉でこそ取り繕っていたが格下と侮っている。 彼の中では二人はふわわのおこぼれ狙いの雑魚だった。

 勝ったら半年間、こき使ってやろうと心に決めている。
 繰り返しになるが彼は勝てる勝負と勝てない勝負を見極める目に関しては優れていた。
 だから、三対三の対等な条件であるなら負ける可能性が少し以上にあると無意識の部分で理解していたので今回のような方法を取ったのだが、あっさり受ける事だけは想定外だ。

 その点に少しだけ不安を覚えてはいたが、外部からの助っ人も引っ張れたので何の問題もない。
 
 ――勝てる。

 ふわわを仲間にしたら何をさせようか? まずはその生意気な態度を改めさせてやる。
 高ランクとして先輩としてしっかりと分からせないとな。
 勝った時の事を考えてレラナイトは仄暗い笑みを漏らした。


 二日という準備期間は瞬く間に過ぎ、ユニオン戦の当日。
 ヨシナリ達『星座盤』の面々の目の前には十五人に膨れ上がった『大渦』のメンバー。
 数が増えていた事にはそこまでの驚きはなく、精々五人で済んだかといったちょっとした安心だけだった。

 「人数差があるのに逃げないなんて立派ですね」
 「そりゃどうも。 俺としてはたった三人相手にここまでやるとか必死ですねって感じです。 負けるのそんなに怖いっすか?」

 レラナイトの煽りをヨシナリは涼しい顔で受け流し煽り返す。
 効いたのかレラナイトはぐっと押し黙り「覚悟しろよ」と捨て台詞を残して踵を返す。
 その背を見ながらヨシナリは小さく振り返る。

 「取り合えず作戦通りに。 人数差があるから油断するとあっさりやられる事を忘れないように」
 「おう! でも勝てばⅡ型パーツ一式が手に入るのかぁ。 思ったより早かったな」
 「頑張るよ!」

 二人は軽い調子でそう返す。 その様子に変に緊張したり焦ったりしている様子はない。
 これなら問題ないだろうとヨシナリは内心で頷くが、勝ち目が薄い事には変わりはない。
 戦力差は五倍。 追加の面子を確認したが一人だけFランクだが後はH、Iランク。

 不確定な要素は早めに排除しておきたいので可能であれば早めに処理できればいいが……。
 後は考えた作戦――と呼べるか怪しい戦い方が何処まで通用するかだ。
 
 ――やる事はやった。 後は行くだけだ。

 人間として尊敬できる点は一切ない相手だが、格上との戦いだ。
 気を引き締めて行こう。 ヨシナリは大きく呼吸をして戦場へとダイブした。


 初期配置は星座盤は街の北側、大渦は南側。
 高層ビルが多いので狙撃をする場合目立つ位置に陣取る必要があるので早々に高台に移動するのはあまり良い手ではない。 

 「どうだ?」

 同じように戦場に降り立ったマルメルがそう尋ねてくるのでヨシナリは小さく首を振る。
 
 「補足できるのは十二機。 残り三機はレーダーに映らない」

 今回の戦いに備えてヨシナリのホロスコープには可能な限り高性能なセンサーを搭載し、索敵範囲を広げておいたのだが、詳細な位置が分かるのは低ランクの十二機のみ。
 Fランク二機とレラナイトの機体は映っていない。 通用すればラッキー程度の認識だったので、そこまでの失望はなかった。 

 「ふわわさんは?」
 「もう行った。 勝手な行動はしないように釘は刺しているから大丈夫だとは思う」
 「よし、じゃあ俺も行ってくるわ。 頑張ろうぜ!」
 「あぁ、気をつけてな!」

 マルメルの機体が移動したのを確認してヨシナリも行動を開始した。


 基本的に物量は差があればあるだけ有利となる。 
 それが五倍ともなれば猶更だ。 大渦は敵を見つけて包囲、後は突撃銃なり短機関銃なりでハチの巣にすればいい。 その為に必要なのは早期発見。 同時にやられて困るのは各個撃破だ。

 その為、三機一組の編成で周囲の探索を開始する。
 素直に正面から突っ込んでくれば楽ではあったが、星座盤の機体は全機何らかの方法でレーダーに引っかからないようにしている様で補足できていない。 初期配置は分かっているのでどの辺りにいるのかは分かっている。 そこから移動範囲を絞り込めばいいので全くの手探りにならないのだが――

 最初の数分は互いに異常なしの通信を交わすだけだったが、最初の変化はそうかからずに起こった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

ホスト異世界へ行く

REON
ファンタジー
「勇者になってこの世界をお救いください」 え?勇者? 「なりたくない( ˙-˙ )スンッ」 ☆★☆★☆ 同伴する為に客と待ち合わせしていたら異世界へ! 国王のおっさんから「勇者になって魔王の討伐を」と、異世界系の王道展開だったけど……俺、勇者じゃないんですけど!?なに“うっかり”で召喚してくれちゃってんの!? しかも元の世界へは帰れないと来た。 よし、分かった。 じゃあ俺はおっさんのヒモになる! 銀髪銀目の異世界ホスト。 勇者じゃないのに勇者よりも特殊な容姿と特殊恩恵を持つこの男。 この男が召喚されたのは本当に“うっかり”だったのか。 人誑しで情緒不安定。 モフモフ大好きで自由人で女子供にはちょっぴり弱い。 そんな特殊イケメンホストが巻きおこす、笑いあり(?)涙あり(?)の異世界ライフ! ※注意※ パンセクシャル(全性愛)ハーレムです。 可愛い女の子をはべらせる普通のハーレムストーリーと思って読むと痛い目をみますのでご注意ください。笑

局地戦闘機 飛電の栄光と終焉

みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

森のカフェしっぽっぽ

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。 一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、 猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。 しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。 地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。 ただし、異世界人は地球には来られない。 行き来できるのはサトルだけ。 向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、 頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、 静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、 サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。 仕事に疲れた会社員。 将来に迷う若者。 自信をなくした人。 サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。 そして、棚の影で震えるジル。 怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。 それでも店からは逃げない。 その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。 これは―― 福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。 震えながらでも前に立つ者が、 今日も小さく世界をつなぐ。

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。