Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
49 / 863

第49話

 大渦の機体が三機、反応が一瞬で消えた。
 高い位置で戦場を俯瞰していたレラナイトは驚きに目を見開く。
 低ランクとは言え、トルーパー三機を気配もなく、文字通り瞬殺したのだ。 

 少なくとも彼には真似できない事だった。 

 「何が起こった!?」

 脱落した者達に声をかけるが、戦闘中の撃破は死亡扱いとなるのでやられた理由を説明する事は出来ない。
 彼ら自身に話を聞きたいのなら戦闘が終わった後になる。
 困惑している間にもう三機撃破された。 やられたタイミングと位置的にステルスを最大限に活かして移動しながら痕跡の出にくい武器で仕留めたという事だろう。

 間違いなくふわわの仕業だ。 ヨシナリは狙撃、マルメルは火器を用いた近~中距離戦。
 前者は発射の痕跡、後者は撃てば目立つので動けばすぐに分かる。
 つまり消去法でふわわが気配を消して忍び寄り、ダガーやブレードで刈り取って回っているのだ。

 このまま人数を減らされるのは不味いと。 

 「奇襲を受けている! 固まってお互いを守り合え!」

 そう指示を出しながらレラナイトも自らの機体を操って味方との合流に向かう。
 機体名は「ムーンナイト」白を基調としたソルジャーⅡ型で背の大型ブースターと各所に取り付けた隠しスラスターにより高速かつ精密な挙動を可能としている。

 武装はカートリッジ式のエネルギーライフル。
 これはマガジン交換式なので同カテゴリーの武器でも威力は低い部類に入るが、トルーパーの装甲程度なら簡単に貫通するので当たりさえすれば大抵の相手は一撃で仕留められる。 後は予備の短機関銃とエネルギーブレードのみ。

 機動力を損なわない為に武装を可能な限り削ぎ落した結果だった。
 同系統の装備――要は高機動タイプの機体が相手だと技量差が大きく出て負けるので、彼は相性のいい足の遅い重武装の機体ばかりを狙ってマッチングを繰り返し、今の地位を確立した。

 開始早々六機もやられたのはかなり痛いが、まだこちらは九機残っている。
 固めて手を出しにくくすれば得意の奇襲は使えない。 相手の思惑を挫く事が――

 「!?」

 レラナイトは咄嗟に機体をスライドさせる。
 アラートに気付くのが早かった事もあって反応はできたが、完全ではなく銃弾が肩を撃ち抜き態勢が大きく崩れた。 反射的に撃ってきたであろう方向を見るとビルとビルの隙間からヨシナリの機体が硝煙を燻らせる狙撃銃を構えた姿がある。 

 味方の集結させるタイミングでの狙撃。 初めからこれが狙いかとレラナイトは思ったが、それ以上に格下のプレイヤーに奇襲を喰らってやられそうになっている事実に怒りが込み上げる。
 次が飛んでくる前にこの状況を何とかしなければならない。 レラナイトはブースターを一気に噴かして加速、二射目を躱しながら地表スレスレの高度を飛んでビルの陰に入り射線を切る。

 ――これで狙撃は――

 「へい、らっしゃい」

 入ったビルの陰には既に先客が居た。 マルメルだ。
 二挺の突撃銃と腰にマウントされた短機関銃。 四つの銃口がレラナイトの機体に向けられている。
 待ち伏せているところを見ると今の二射目は回避方向を誘導する為の――
 
 「ふっざけんなぁ!」

 吠えたレラナイトは強引に急上昇。 同時に無数の銃弾が飛んでくるが胴体への被弾は免れたが、左足は逃げ切れずに銃弾の雨を受けて穴だらけになり千切れ飛ぶ。
 高機動の機体は対弾性能がかなり低く。 近い距離で突撃銃の斉射などを喰らえば容易く破壊される。

 空中に上がり、舐めた真似をしたマルメルに怒りの一撃を喰らわせようとエネルギーライフルを向けると同時に背のブースターが撃ち抜かれて爆散。 狙撃だ。
 高度を取りすぎたと後悔してももう遅い。 空中で態勢が大きく崩れる。

 メインのブースターが片方破壊された事により錐揉みしながら落下する機体。
 立て直そうにも飛行に最も重要なメインのブースターを破壊されてしまった以上、スラスターだけでは落下速度を殺すだけで精一杯だ。 
 
 「いやぁ、舐め切ってくれてありがとな。 お陰で楽に片付きそうだわ」

 そんな状況で下にいるマルメルの追撃を躱すなんて真似は不可能だった。
 
 ――嘘だろ?

 Eランクの自分が格下のGランクに負ける? こんなにもあっさりと?
 あり得ない。 信じられない。 そんな事があってはならない。
 嫌だ。 負けたくない。 ふざけるな。 お前らイカサマをしたんだろ?
 そうでもなければ。 俺が負けるわけがない。 汚い真似をしやがって、絶対に通報してやるからな。

 「おつかれ様っすEランク(笑)さん。 あとⅡ型のパーツありがとうございまーす」

 マルメルの煽りに反応する間もなくレラナイトの機体は四つの銃口から吐き出された無数の銃弾を喰らって全身が穴だらけになり爆散した。


 弾倉がなくなるまで吐き出された銃弾を喰らって派手に大破し、しっかりと撃破扱いになった事を確認したマルメルはふいーと小さく息を吐く。
 口調にこそ余裕があるように見えたが、割と必死だった。
 
 「いや、ここまで上手く行くとは思わなかった」

 大渦との戦いにおいて準備期間は二日。 できる事はそう多くなかった。
 ただ、敵のランク帯と戦闘の場となるフィールドの構造が事前に手に入るのは大きい。
 今回、作戦を考案したのはヨシナリだ。 彼は今回の戦闘で勝つ為に必要な要素が二つあるといった。

 まずは可能な限り見つからない事。 最上は一方的に相手の動きを掴む事だ。
 戦力差が五倍なので馬鹿正直に突っ込んだら間違いなく負ける。 なら隠れながら削るしかない。
 それともう一点。 レラナイトの早期撃破。

 大渦というユニオンは悪い意味でレラナイト一人のチームだ。
 ある程度、自分の言う事を聞いて、都合よく動く者達で固めた集まり。
 つまり裏を返せばレラナイトが居なくなれば瓦解するのが目に見えているのだ。

 この戦いは最初から真っ先にレラナイト一人を撃破する事に全てを傾けていた。
 ヨシナリはあの手の人種はそこそこ見て来たといい、執りそうな行動を予測し数パターンの作戦を用意していたのだ。 その内の一つが今の動きだった。

 条件としてはレラナイトが護衛を付けずに単騎で目立つ位置に陣取る事。
 最初に見た時点で高機動装備のソルジャーⅡ型だったので、他の機体では着いてこれず単独行動を取るだろうなと言うのはヨシナリの言。 後は人数差と自分達を舐め切っているであろう慢心をついての奇襲だ。  
感想 0

あなたにおすすめの小説

ハズレ職業【フリーター】を授かった少年は、王都で騙されて多額の借金を背負う。しかし、修復スキルでガラクタを修復して最下層の泥底から成り上がる

ninjin
ファンタジー
主人公アルトは、病気の母のため王都で一旗揚げるも、授かったのは「フリーター」という最弱の職業。その直後、無一文となり、多額の借金だけが残ってしまう。絶望の底で、アルトは神から与えられたフリーターの力を使い、誰も見向きもしない廃棄物から価値を創り出すという、裏の稼業に活路を見出す。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

名もなき民の戦国時代

のらしろ
ファンタジー
 徹夜で作った卒論を持って大学に向かう途中で、定番の異世界転生。  異世界特急便のトラックにはねられて戦国時代に飛ばされた。  しかも、よくある有名人の代わりや、戦国武将とは全く縁もゆかりもない庶民、しかも子供の姿で桑名傍の浜に打ち上げられる。  幸いなことに通りかかった修行僧の玄奘様に助けられて異世界生活が始まる。  でも、庶民、それも孤児の身分からの出発で、大学生までの生活で培った現代知識だけを持ってどこまで戦国の世でやっていけるか。  とにかく、主人公の孫空は生き残ることだけ考えて、周りを巻き込み無双していくお話です。

[完]異世界銭湯

三園 七詩
ファンタジー
下町で昔ながらの薪で沸かす銭湯を経営する一家が住んでいた。 しかし近くにスーパー銭湯が出来てから客足が激減…このままでは店を畳むしかない、そう思っていた。 暗い気持ちで目覚め、いつもの習慣のように準備をしようと外に出ると…そこは見慣れた下町ではなく見たことも無い場所に銭湯は建っていた…

スキルを駆使して人生勝ち組っ!R

momo
ファンタジー
失敗ばかりの人生だった。 夢も、恋も、キャリアも、全部中途半端。 だけど――もう一度やり直せるなら。 三十後半OL、まさかの逆行転生。 与えられたのは“努力を裏切らない”スキルボード。 毎日の積み重ねが、確実に未来を変えていく。 今度こそ堅実に、公務員になって、静かに幸せに暮らす。 そのはずだったのに。 なぜか才能が覚醒。 ピアノ界の神童? 子役スター候補? 違う、そうじゃない! 安定志向アラフォー女子の人生二周目、 思わぬ才能無双で開幕! ※スキルを駆使して人生勝ち組っ!の加筆修正した物になります。